小型軽量化と高効率化を実現
2023年10月17日、ニチコンがV2H(Vehicle to Home)システムの第3世代となる新型「EVパワー・ステーション」VSG3シリーズをお披露目し、10月26日から東京ビッグサイトで開催される「JAPAN MOBILITY SHOW 2023(ジャパンモビリティショー)」に出展することを発表しました。
現行モデルと比べた特長は以下のようなポイントです。
●本体(パワーユニット)と操作部(プラグホルダ)をセパレートすることで大幅な小型軽量化に成功。
●本体の壁掛け設置も可能になった。
●新回路方式で軽負荷時も約10%変換効率UP(従来機種比)を達成。
●停電時は自動的に家庭に給電を開始。(従来は分電盤切り替えなどの操作が必要だった)
このほかにも、本体冷却用の外部ファンをなくしたことで静粛性が向上したり、プラグホルダのカラーをシルバーとブロンズの2色から選べたり、使用温度の上限が40度から50度に上がっていたり、5年保証が10年保証と長くなったりなど、全体として、よりスマートで実用的なアイテムに進化したといえそうです。
ライバルはテスラ「パワーウォール」?
発表された価格は、消費税・工事費別で128万円です。現行の最上位機種であるプレミアムモデルが89万8000円(税別)なので、約38万円高級になったことになります。経産省の「V2H充放電設備」補助金では、現行モデルに最大75万円の補助額でした。今年度分の申請受付はすでに終了していて、新型への補助金額がいくらになるかわかりませんが、本体購入価格は補助金活用後でも少し上がるのではないかと思います。
工事費についても、個人宅の場合は最大40万円の補助金額が設定されていました。新型では専用分電盤が不要になるなど工事費の軽減が想定できるので、全体として設置する個人の負担は現行モデルとあまり変わらない、かも知れません(仕組みが複雑で断言しにくいため、印象です)。
ちなみに、現行モデルのEVパワー・ステーションを使っているEVオーナーさんからは、次のような懸念点を聞いたことがあります。
●本体が重いので基礎工事が必要など、設置場所が限定される。
●充放電時それぞれの電力ロスが大きい。
●遠隔操作のスマホアプリのUIがイマイチ。
本体の重さや電力ロスについては、新型では大きく改善されたと思われます。
アプリの使い勝手などについては、発表会の内容だけではよくわからないので、ジャパンモビリティショーの出展ブースなど、追って取材してみたいと思います。
また、現行モデルでは半導体不足などによる納期の長期化が課題になっていましたが、新型では受注開始後の状況によるものの「1ヶ月程度」を見込んでいるということでした。
さらに、今回の発表会では、「発展型太陽光パワーコンディショナ」&「ハイブリッド蓄電システム」&「V2H=新型EVパワー・ステーション」を組み合わせ、自宅の屋根に設置した太陽光発電の再生可能エネルギーを最大限に活用するシステムについても紹介されていました。
蓄電池ユニット「ES-E1」の価格は、容量7.7kWhで180万円、容量9.7kWhで240万円(ともに税別)です。
EVパワー・ステーションを使うEVオーナーさんからは「●天気が良くて太陽光発電が好調な時に接続しているEVに乗りにくい」という声を聞いたこともあります。
【関連記事】
●太陽光発電とEVでエネルギー自給自足を目指した家~飯田哲也氏の思いと気付き(2022年5月25日)
CHAdeMO規格対応のV2H機器としてはトップシェアを誇るEVパワー・ステーションですが、家庭での再エネ最大活用法という点で考えると、容量13.5kWhで本体価格100万円(税込 ※ほかにゲートウェイ21万円@1台や工事費が必要)のテスラ「パワーウォール」が、今のところ最大のライバルとなるのでしょう。
電気自動車によるV2Hは再エネ普及にとっても重要な機能です。とはいえ、「定置型蓄電池でいいじゃん」というテスラのやり方にも一理あります。
はたして、EV普及の広がりとともに、V2Hや太陽光発電が日本でも普及していくのかどうか。ニチコンが独走するV2H=「EVパワー・ステーション」のさらなる進化や経済合理性の向上がポイント、になると思います。
新型の発表を祝福しつつ、ニチコンのさらなる奮闘に期待しています。
取材・文/寄本 好則
前モデル(とトライブリッドパワコンのEV放電)のカタログスペックと実際の評判が普通ならありえないレベルで乖離してるので理由を考えてたんですが、安くするために自社の10kW急速充電器と部品を共通化してたせいくらいしか思いつきませんでした
10kW出力での効率重視のために2kW以下の軽負荷での効率を切り捨てたのなら、1kWでの充放電効率60%の説明がつくんですよね
このモデルもプレスリリースでの改善幅からすると、やはり10kW出力を想定したままのように思います。
数が出ないからと専用設計にしなかったから実用効率が悪くて、それで評判が悪くなって余計に数が出ないという負のスパイラルになってるんじゃないでしょうか
一介の電気技師ですー。たしかにV2Hは非効率でもあり、交流直流変換の効率が80%程度、BEVへ蓄電しても変換ロスが生じ、住宅への給電も同じとすると0.8*0.8=0.64(64%)になっちゃいますよ(爆!)
それやから当家ソーラー発電システムはハイブリッドパワコン+ダイヤゼブラ7kWh蓄電池にしてますー…EVが自営業作業車やから車でなく自宅蓄電池のほうがフレキシブルに動けると判断、電気主任技術者的にも効率エエほうが仕事しやすいですし。
ニチコンはハイブリッドパワコン+トライブリッドを推進すべきやないですか!?ソーラーから直にDC-CHAdeMO充電できりゃ技術的にもすっきりしますし。
その昔、某自動車メーカー開発部長の言葉に「設計は基本である。どのようにな思想で設計しているか?理論的にどうなっているか?つめて持って来い」とあるように。哲学なき設計やと正直疑いとぅなりますわな。
なんで充電システムの話なのに車がNDなんでしょ?
センス疑うしこの程度の車の理解ならBEVなんか浸透しませんね(笑)
他のコメントにもある通り、V2Hの実利用者の状況を調べると罠があって、軽負荷時=ちょっとした用途でEVから家庭に電気を放電する状況だと、半分近くロスするので、結果的に家庭で直接買電した方が安いという状況が多いんですよね
この部分は、ニチコンにも都合が悪くて(補助金ビジネスで儲かってるので)、外にほとんど出てこない情報なので、消費者には注意が必要です
逆に言うと、今時点ではV2H機能搭載はEVのアピールポイントにはなりにくいと思っています
新機種で充放電ロスが大きく改善されたかというと、現状の効率60%から10%改善されてもわずか66%ということで、微妙な気がします。
「軽負荷時の」という断りを入れていることからして、それ以外の負荷時はそれ以下の改善とも読み取れてしまいます。