EV充電サービスの WeCharge がさいたま市の賃貸住宅駐車場全区画にコンセントを設置

EV充電サービスの WeCharge が、埼玉県住宅供給公社の賃貸住宅で駐車場全区画にEV充電用の200Vコンセントを設置。2月1日から利用開始ということで、現地での記者発表を取材してきました。駐車場を契約している方を対象とした「EV普及応援キャンペーン」も用意されています。

EV充電サービスの WeCharge がさいたま市の賃貸住宅駐車場全区画にコンセントを設置

20区画すべての車室にEV充電用コンセントを設置

EV充電サービス「WeCharge(ウィーチャージ)」を展開するユビ電株式会社が、埼玉県住宅供給公社の賃貸住宅である「大宮今羽町ハイツ」(総戸数20戸)の駐車場20区画のすべてにEV充電用の認証・課金機能付き200Vコンセントを設置。2月1日の利用開始に先立って現地で記者発表を行いました。

EV充電コンセントの出力は3kWです。コンセントは20区画すべてに設置されていますが、当面は電力契約の容量を抑えるため、同時に充電できるのは7台までとして運用されます。8台目以降への充電は、ユビ電の『WeCharge HUB』の技術(関連記事はこちら)で、先約したEVの充電が終了次第順次(輪番充電)行うようにコントロールされるとのこと。

壁面のボックスに、漏電ブレーカーやWeChargeHubの機器が収められています。

利用方法は、スマホでコンセントに貼付されたステッカーの二次元バーコードを読み込んで、専用のWeChargeアプリで充電の開始や終了操作を行うことができ、充電料金は登録したクレジットカードから引き落とされる仕組みです。

充電料金はWeChargeの特長でもある定額制を中心にした料金プランが適用されます。

料金プラン(税込)

EVの交流電力消費率(電費)は、6.5km/1kWhで下記の定額内目安を提示。料金プランはいつでも変更可能(翌月より適用)。(WeCharge公式サイトから引用)

「未来の当たり前」を実現していく

住宅供給公社の大澤常務理事(左)と、ユビ電の山口社長(左)。

駐車場内で行われた記者発表では、埼玉県住宅供給公社の大澤由武常務理事が脱炭素社会を目指す県の施策の一環としてEV普及へのチャレンジを行う意欲を示し、賃貸住宅の駐車場全区画へのEV充電設備設置は全国の住宅供給公社でも初めてとなることを紹介しました。

続いて、ユビ電株式会社代表取締役社長の山口典男氏が国の充電インフラ補助金も活用して合理的に駐車場全区画への充電設備設置が完成したことについて「近未来の当たり前を実現できた」として、さらなるEV充電インフラ拡充への意欲を示しました。

現在、WeChargeの充電が利用できる場所は70カ所ほどで、500台弱の普通充電器やコンセントが設置(2023年1月現在)されています。ユビ電の共同創業者でCOOの白石辰郎さんに伺うと「2023年末までに1万2000口、2025年末までに8万口に拡大」する目標であるとのこと。

ユビ電(WeCharge)だけでなく、普通充電サービスを展開する複数の企業が、それぞれ意欲的な目標を表明しています。集合住宅や賃貸駐車場へのEV充電設備設置は日本のEV普及にとって大きな課題ではありますが、山口社長の言葉のように、数年後には「当たり前」が様変わりするのではないかという期待を感じます。

大宮今羽町ハイツ

入居者のEV購入は、まだこれから

大澤常務理事が充電開始のデモンストレーション!

記者発表では、デモンストレーション用に日産リーフやサクラが用意されていたものの、実際にこの駐車場(契約は満車状態)を借りている入居者のマイカーに、まだEVはないのが現状です。

それでもこの駐車場全区画にEV充電設備を設置したのは、「さいたま市の都心にも近い好立地で、築20年以上経過しても人気の物件であり、20区画という規模が全区画設置のモデルケースとして適していたから」(大澤常務理事)とのこと。

今回のコンセント設置のキーパーソンでもある埼玉県住宅供給公社賃貸住宅管理課の高田宏哉課長によると、公社ではこの大宮今羽町ハイツのほか、与野本町ハイツにもEV用普通充電器(6kW出力)1台を設置して、同じ2月1日から運用を開始。今後も「集合住宅の充電設備拡充を進め、EV普及に向けたEVカーシェアリングなどの取り組みも検討しているところ」とのことでした。

大宮今羽町ハイツの駐車場にはまだEVは1台もありませんが、ユビ電のご担当者によると「工事中にも住民のみなさんからいろいろと質問をいただき、充電できるようになるんだったらサクラを買おうかなという方もいた」そうです。記者発表の途中に駐車場に戻ってきた住民の方が、使用開始直前となったコンセントを前に、ユビ電担当者にいろいろ質問するシーンにも遭遇しました。

「ニワトリが先か卵が先か、EVが先か充電器が先か」というのはEV普及を語る常套句ですけど、集合住宅の場合はどうやら「充電器が先!」が正解のようです。

EVを購入すると駐車場が6カ月無料に!

さらに、公社の高田課長からいただいた資料のプリントを見ると、なんと、対象となる公社賃貸住宅の物件契約者で、EV(PHEVやHVは対象外)を購入、または保有する方の駐車場料金が6カ月無料となる「EV普及応援キャンペーン」を開始するというお知らせがありました。

EV普及応援キャンペーン
【内容】EVを購入(保有)する方の駐車場料金を6カ月無料にします。
【受付期間】令和5年2月1日〜令和5年12月28日まで。
【申込条件】下記に該当し上記期間に申込および必要書類を提出された方。
(1)対象車両/電気自動車(EV)
(2)対象者/駐車場の利用契約を締結中で、対象車両を保有または購入する方。
※車検証に記載される所有車が同居者の場合は可。
※駐車場の契約者が法人の場合は対象外。
(3)対象物件/公社賃貸住宅(16物件)
【問い合わせ先】
埼玉県住宅供給公社 賃貸住宅管理課
(8:30〜17:15)
TEL:048-829-2866
メール:k-chintai@saijk.or.jp

すでにEVを所有している人も対象だし、充電設備が設置された2物件以外(詳細は公社に要確認)も対象物件となっています。充電できない駐車場の方がEVを購入すると、「充電設備欲しい」ニーズが高まりそうではありますが……。期間は12月までなので、納車が間に合う車種はいろいろと選べそうです。

こうした試み、そして集合住宅の充電設備拡充が、全国あちらこちらに拡がることを願っています。

取材・文/寄本 好則

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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