パワーエックスがEV急速充電器を最大出力240kW対応可能へ〜最大120台の普通充電も!

株式会社パワーエックスは、蓄電池型超急速EV充電器『Hypercharger』がCHAdeMOの最新プロトコルである2.0.1認証を取得して最大出力240kWに対応可能になったことを発表しました。また、超急速充電器 6 台と普通充電器 30 台の同時接続に対応、最大で120台の同時充電に対応する「Hypercharger for Fleet」をすでに発表しています。

パワーエックスがEV急速充電器を最大出力240kW対応可能へ〜最大120台の普通充電も!

低圧受電で超急速充電器を運用可能

岡山県にリチウムイオンバッテリーの組立工場を開設、徳島県の工場とも提携し、蓄電池活用事業とともにEV用超急速充電器ネットワークの構築を目指す株式会社パワーエックスが、2023年7月14日、同社がすでに発表している蓄電池型超急速EV充電器『Hypercharger』が日本発の急速充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)の最新プロトコル「2.0.1」の認証を取得して、最大出力240kWに対応可能になったことを発表しました。

チャデモ規格の段階については、以前の記事で紹介しているので、その際に作成した表を引用しておきます。

Ver.最大出力プラグ形状など備考
CHAdeMO 1.0(0.9)50kW
(125A×500V)
互換現状整備済みの急速充電器の中心
CHAdeMO 1.2200kW
(400A×500V)
互換新電元90kW器、ポルシェの150kW器など
CHAdeMO 2.0400kW
(400A×1000V)
互換日本国内での設置には電気事業法の制約あり
CHAdeMO 3.0900kW
(600A×1500V)
新規格将来的な超高出力規格

現状、日本国内に設置されているEV用急速充電器はチャデモ「1.0(もしくは0.9)」と「1.2」規格がほとんどで、「2.0」規格に対応した充電器は北九州のEVモーターズジャパンが自社のEVバス用などに供給している程度でした。上位規格になるほど最大出力が大きくなり、チャデモ2.0規格では最大400kWまで対応可能です。

ただし、現状の市販EVのほとんどがシステム電圧400V基準となっており、最大400Aまでカバーしているチャデモ1.2規格でも製品としての急速充電器は最大で150kW程度となっています。また、市販EVのほうでもチャデモ急速充電の最大対応出力は150kWが最大レベルになっています。

パワーエックスのHyperchargerも、最大400kWに対応可能なチャデモ2.0規格の認証を得たとはいえ、すぐに最大240kW出力の急速充電器を展開するわけではありません。パワーエックスに質問したところ「358kWhの蓄電池搭載のStandardモデルは2口搭載で、一台接続時は10分間のブーストモードで150kW出力、その後120kWの連続出力となります。2台同時接続時は、120kW連続出力」となり、「179kWhの蓄電池搭載のコンパクトモデルは、1口搭載のモデルで、上記と同様に150kWで10分間のブーストモード、その後120kW連続出力」になるということです。

より高出力化していくことについては「日本では電気設備の技術基準の解釈により最大電圧が450V以下に制限されています。これにより、現状は1口240kW出力が実現できませんが、欧米と同様の800V級が認められれば1口240kWが可能」であり、市販EVの対応などを勘案しつつ、必要に応じてアップデートしていくことになります。
【編集部注】最大電圧450Vの場合、チャデモ2.0規格の最大電流である400Aが流れても、出力は「450V×400A=180kW」となります。

ともあれ、Hyperchargerの刮目すべき特長は、上記のように358kWhとか179kWhの大容量蓄電池と組み合わせた超急速充電器であるということです。

蓄電池への充電は低圧で行い、充電に使う電力は蓄電池から供給されるので、キュービクルが必要でデマンド料金が高額になる50kW以上の高圧での契約をすることなく、低圧受電契約のままで超急速充電器を運用できます。設置場所の状況によっては、施設の屋根に設置した太陽光発電パネルによる電気で蓄電池に充電することも可能になるでしょう。

今までにも、JFE製の蓄電池を搭載した急速充電器は市販されていました。とはいえ、JFE機種の内蔵蓄電池は容量がそんなに大きくなかった(現行モデルで最大52.8kWh)上に、蓄電池のアシストが途切れると50kW器でも30kW程度の出力しか得られなくなるため、利用頻度が高い新東名岡崎SAなどでは「残念、今回は中速充電器かぁ」ということがしばしばでした。179kWhや358kWhといった大容量蓄電池を備えるHyperchargerであれば、そうした残念なケースは激減するに違いありません。

普通充電にも対応するフリート充電ソリューション

パワーエックスでは、5月16日に、商用 EV 向け充電システム「Hypercharger for Fleet」を発表しています。これは、蓄電池(Power Cube) 1 台につき超急速充電器6台と普通充電器30台の同時接続に対応し、蓄電池を最大13台まで増やすことで最大120台の同時充電まで拡張可能というソリューションです。

普通充電にも対応しているので、配送車の拠点などはもちろん、宿泊施設や商業施設でも導入に興味を抱くところが多いのではないでしょうか。

パワーエックスの広報ご担当者に、HyperchargerやPower Cubeの価格などについても質問してみました。

●各製品を一般事業者が購入して利用することができますか?

B2Bは販売を行っており、ニチガス様の7つの営業所への導入も発表させていただいております。公共充電ネットワークはまずは自社直営での展開で立ち上げますが、今後、フランチャイズ制も含めて販売を検討しております。

●HyperchargerやPower Cubeの価格は?

非公表です。

●Power Cubeを、定置型蓄電池として購入&設置することも可能ですか?

蓄電池モジュールは、当社のより大きな定置用蓄電池と同じものを使用しているため、技術的には可能ですが、現時点では商品化されておりません。お客様からも限られたスペースに蓄電池を設置したいとのお声もいただいており、社内で対応を検討中です。

●V2G(V2H)には対応可能ですか?

弊社の充電器にはEVよりも大容量の蓄電池が搭載されているため、CHAdeMO等を使ったV2Xのシステムを提供することは現時点で予定しておりません。当社の充電器に搭載されている蓄電池をBCP電源などとしてもお使いいただける、双方向電力機能はアップデートでの対応を予定しております。
この様に基本的にはEVの電池を利用する必要はない機器ですが、V2X機能も将来的なオプションとして検討を行っております。

(Q&A ここまで)

北米のNACS騒動もあり、チャデモ規格の行く末はちょっとユラユラして見えるところではありますが。「大容量蓄電池×EV充電」というパワーエックスのビジョンには大きな可能性を感じます。

そろそろ、東京都内などに実際の超急速充電ステーションもオープンするはず。引き続き、注目していきます。

取材・文/寄本 好則
※記事中写真はプレスリリースなどから引用。

この記事のコメント(新着順)1件

  1. ライフラインが遮断された場合、EVで被災地外から電気を運んで蓄電池に溜めることができれば有効なBCP対策となりそうですね。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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