チャージポイントが新アプリと最大500kWのEV用超急速充電器を発表

北米エリアのEV充電サービス会社である「チャージポイント(ChargePoint)」が最大出力500kWの新型高出力急速充電器の展開などを発表しました。アメリカのメディア『CleanTechnica』から全文翻訳でお届けします。

チャージポイントが新アプリとEV用500kW超急速充電器を発表

【元記事】ChargePoint Unveils New App, 500 kW Chargers by Jennifer Sensiba on 『Clean Technica

※冒頭写真はChargePointのニュースサイトから引用。

より機能的になったアプリ

米国の充電プロバイダー、チャージポイントにとって11月は素晴らしい月になりました。先週、同社はEVユーザーのために、機能を充実させた最新版のアプリを発表し、続けて今度はアメリカ国内で最速の公共充電器を発表しました。早速それぞれについて詳しく見てみましょう。

チャージポイントは自社の充電サービスのアクティブユーザー数が100万人を突破するという大きな節目を迎え、これを機に充電器の検索や利用、支払いをより簡単に行えるよう自社アプリに大きく改良を加えました。

「EVの増加とともに、チャージポイントをお気に入りの充電ネットワークとして皆様にご愛顧いただいています。お陰様で四半期あたり100万人のアクティブユーザーの大台に乗ることができました」とチャージポイントのCEO、パスカル・ロマーノ氏は言います。「チャージポイントは引き続きお客様に最高の充電体験を提供することに注力しております。この度の弊社のアプリの改良は、ユーザーがさらに便利に充電器の検索、利用、および支払いができるようにする充電器の信頼性向上イニシアチブの一環です」

チャージポイントによると、米国だけで200万人のEVユーザーがチャージポイントアカウントを使って充電器を利用したそうです。米国では360万台のEVが走行しているため、半数近いEVユーザーがチャージポイントを利用したことになるため、同社にとってとても見栄えのするデータです。加えて、チャージポイントの充電網は北米の公共充電器の36%を占めており、公共の普通充電器ネットワークにおいては70%に達します。ただし、充電プロバイダーが発表するこうした数字は、テスラのスーパーチャージャーが(今のところまだ)ほとんどが公共ではないため、テスラ充電器を含まないものだと思ってください。

新しいアプリは3つの点で充電体験が改善されています。

まずチャージポイントは使いやすさにこだわりました。アプリを立ち上げると充電器のリストと地図の両方が表示されます。どちらかを最初に選択する必要もなく、画面をスワイプするだけで簡単に切り替えられます。衛星画像への切り替えや充電器の詳細、関連情報の表示もしやすくなりました。唯一まだ使い勝手が悪いと感じるのは価格情報です。15分の充電にかかる費用を予測するボタンの下に1kWhあたりの単価が埋もれて見えなくなっています。

お目当ての充電器を見つけた後、利用開始までの流れも少し改善されています。画面にはハッキリと「充電器の読み取り機にスマホをかざすと充電が開始されます」と書かれており、トラブルが発生してもユーザーのニーズに応じてサポートセンターに連絡したり、説明書を読んだりすることがより簡単にできます。

メルセデス・ベンツとパートナーシップを組んだ出力500kWの新型充電器

本稿の読者の多くは、新しい充電アプリのニュースに興味を持っていないのは分かっています。結局のところ、テスラ車を所有していればスーパーチャージャーに行ってケーブルを車両に挿すだけで、専用アプリの必要すら無く充電が始まるし、車両のインフォテイメントシステムに充電器までのナビ情報が表示されるため、そのような体験が当たり前のオーナーにとっては充電するために別のアプリを立ち上げる事自体がとても面倒だと感じるのではないでしょうか?

しかし、本日チャージポイントが発表したのはテスラファンですら驚く内容でした。まだ設置数がごく少数のテスラの大型トラック用充電器「テスラ・メガチャージャー」を除いて、あらゆるEV充電器を遥かに凌駕する充電速度です。

詳しく言うと、チャージポイントは新たに「エクスプレス・プラス・パワー・リンク2000」DC急速充電器プラットフォームを発表したのです。この革新的なパワー・リンク・システムは最大500kWの爆速充電を提供することができ、北米で最速の公共充電網「メルセデス・ベンツHPC NA」の要となっています(こちらの充電網も本日発表されたのですが、最初の充電ステーションのオープニングセレモニーに参加することができませんでした)。

Chargepoint のニュースサイトより引用。

「エクスプレス・プラス・パワー・リンク2000を展開することでチャージポイントはあらゆるEVユーザーに持続的な超急速充電を提供し、充電の新たなスタンダードを打ち立てています。」と述べるのはチャージポイントの最高運営責任者(COO)リック・ワーナー氏です。「メルセデス・ベンツのHPC NA充電網のローンチを嬉しく思います。今後も北米に急速かつ信頼性のある公共急速充電器を一台でも多く導入したいと願っています」

充電器の大電力は、旧モデルの充電器にも使用されているエクスプレス・プラス・アーキテクチャを利用しています。同社のシステムは充電のニーズに合わせて最大5つのパワー・モジュールを中に備えるパワー・ブロックで構成されています。パワー・ブロックは、パワー・リンク充電ステーションの間で動的に電力を配分することができます。また、充電器に接続されている車の充電能力に合わせて充電器が電力を調整するため、ユーザーも希望の出力に合わせて充電器を選んだりする必要がありません。つまり私のシボレー・ボルトがそこで充電していたとしても、他の方の急速充電の妨げになったりしないのです。

パワー・リンク2000には独自の冷却機構も備えられており、長時間連続して高い充電速度を維持することができるため、将来500kWで長時間充電できるEVが現れてもシステムがオーバーヒートして出力が絞られることはありません。小型のEV(乗用車やクロスオーバーなど)にとって500kWは無用の長物かも知れませんが、各社が電気ピックアップトラックや、それこそ中型トラックなどを販売し始めたら、最大速度をわずか数分しか維持できない充電器と比較して充電時間を大幅に短縮できます。

もう一つ重要なのが、このシステムはテスラ・セミのような大型トラック向けには設計されていないことです。メルセデス・ベンツはこうした充電器をセダンやクロスオーバー、ピックアップトラックのような乗用車向けの充電ステーションに設置しています。もちろん大型トラックも電欠のピンチになったらトレーラー部分を切り離してヘッド部分だけでやってきて、こうした超急速充電器をフルパワーで使うこともできるでしょうけど、大型トラックは車種によっては特大のバッテリーを搭載しているため、大型トラック用のもっと強力な充電器が必要になります。

今回の超急速充電器が最も実力を発揮するのはピックアップトラックなどの小型トラック用途です。レジャーボートやキャンピングトレーラーを牽引している方、もしくは建設機器や業務用の機器を運搬している方で、200kWh以上のバッテリーパックを備えたEVに乗っている方はたとえ250kWの急速充電器でも充電に時間がかかると感じることでしょう。まさに映画「60セカンズ」の名セリフ、時は金なりです。充電に1時間もかけず、すぐに運転を再開できるのは素晴らしいことだと私は身を持って経験しています(なにせシボレー・ボルトに乗っていますから)。

その他の一般的なEVのオーナーは恐らくこうした充電器に高い信頼性を感じられるのではないでしょうか。私の車はこの充電器の最大電力の10%を使えるかどうかです。最新型のEVなら50%ぐらいでしょうか。将来のEVのほとんども500kW充電なんてできやしないでしょう。その必要性がないからです。ほとんどの方にとって、15分で充電が完了すればそれで充分なのです。それでもこうした充電ステーションはほとんどのEVが受け止められるよりも多くの電力を提供できるよう作られています。エレクトリファイ・アメリカの充電網のように大きな問題を抱えていない限り、チャージポイントの新型充電器はとても頼りになる充電器になるでしょう。(訳注:エレクトリファイ・アメリカは北米の大手充電網のひとつで、互換性がなかったりよく故障していたりすることで有名です)

翻訳/池田 篤史(翻訳アトリエ)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 500kWとは恐れ入りました…
    日本じゃようやく90kW機が複数、しかも車が複数台同時充電始めると出力が下がるとかなのに。羨ましい限り。
    しかし車側って許容するんですかね?日本では車側の性能で充電器の出力の90kWすら出ない車種もありますから…

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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