EV用のポータブル急速充電器など、EV充電関連事業を手掛けるベルエナジーが、EVのバッテリー技術を応用したゼロエミッション電源供給車「MESTA Gen」を開発。EVへの充電だけにとどまらず、建設現場の脱炭素化や災害時の緊急電源などとして役立つ「電気の宅配便」サービスを本格的に開始したことを発表しました。EVが社会の進化に貢献するユニークなアイデアです。
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日産リーフを改造した移動式電源供給車
2025年7月15日、ベルエナジー株式会社が独自に開発した移動式電源車「MESTA Gen(メスタ・ジェン)」の運用を本格的に開始、EVへの充電だけにとどまらず、建設現場や災害時の移動式電源として活用できる「電気の宅配便」サービスを本格的にスタートしたことを発表しました。
ベルエナジーはEV用のポータブル急速充電器「Roadie」を開発・発売しているEV充電関連事業に取り組むベンチャー企業です。
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移動式EV急速充電器「MESTA Pro(メスタ・プロ)」
ポータブル急速充電器「Roadie」の発想を拡げ、電気自動車である日産リーフを改造した移動式電源車による「電気の宅配便」サービス提供を目指したのがベルエナジーの「MESTAシリーズ」です。
2023年9月には、日産リーフe+に専用の急速充電器を搭載し、V2V (Vehicle to Vehicle)で他車(EV)に急速充電することができる「MESTA Pro(メスタ・プロ)」を開発。電欠時や、EV用充電器がない場所にでも、MESTA Proが現地に駆けつけて充電を行う「電気の宅配便」サービスを立ち上げました。搭載する急速充電器の最大出力は35kW。急速充電にはリーフe+の駆動用バッテリー(62kWh)の電気を使います。充電ポートの規格は日本で一般的なCHAdeMOはもちろん、北米などで多いCCS1、欧州などが中心のCCS2にも対応した車両が用意されていて、EV開発現場などでも活躍してきました。
ゼロエミッションEV専用急速充電車「MESTA pro」の紹介動画(YouTube)
ゼロエミッションの電源車「MESTA Gen」
さらに、今回本格的な運用開始が発表されたMESTA Genは、EVへの急速充電器ではなく「高出力V2L(Vehicle to Load)システム 」を搭載。ベース車両はこれも日産リーフe+で、電力の供給は62kWhの駆動用バッテリーが活用されます。供給できる電気の出力は、単相交流(100V/200V)で3kW、三相交流は200Vで最大50kWとなっています。三相交流の高出力なので、建築現場のコンプレッサーや溶接機など大きな電力を消費するニーズにも対応できるのが特長です。
ちなみに、開発中のMESTA Genで「ベルエナジーと清水建設が最大50kWのV2L活用を実演」の様子は、以前、レポート記事を紹介しています。
完全ゼロ・エミッション電源車「MESTA Gen」製品紹介動画(YouTube)
レンタカーのように活用できるサービスを目指す
「電気の宅配便」サービスで運用されるMESTAシリーズのベース車両は前述のように日産リーフe+です。走行時にゼロエミッションであることはもちろん、再生可能エネルギーによる電気で駆動用バッテリーを充電すれば、電気を届けた先の建設現場などの脱炭素化にも貢献します。
EV充電の「MESTA Pro」、AC電源供給の「MESTA Gen」ともに、サービスは全国どこでも対応するとのこと。サービス提供価格は都度見積もりということなので、興味のある方はベルエナジー(公式サイト)に問い合わせてみてください。また、ベルエナジーに確認したところ、「現状はオペレーター付きの運用となっているのを、レンタカーのように借りられるリーズナブルなプランを検討中」ということでした。
【問い合わせ先】
ベルエナジー株式会社 モビリティ事業部
TEL:029-859-7897
E-mail:sales@bellenergy.co.jp
(受付時間 9:00~17:00、土・日・祝日・年末年始除く)
今のところ「MESTA Gen」は1台のみということですが、EV技術を活用した移動式電源車が、全国各地の工事現場などで「うるさくて臭い」ディーゼル発電機に代わって活躍する光景が普通になれば素敵なことだと思います。
まずは、ベルエナジーの「電気の宅配便」サービスが順調に広がることを期待しています。
文/寄本 好則
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