元記事:52 Utility Companies Plus TVA Form EV Charging Coalition by Steve Hanley on 『CleanTechnica』
政府が75億ドルの補助金
電力会社が電気自動車用充電インフラに手をつけるのを恐れているとお思いでしょうか。ビジネスとは、例えばリンゴを1つ10セントで仕入れて15セントで売るというものです。しかし政府が75億ドル(約8,515億8,000万円)の支出をしてアメリカ全体にEV充電ステーションの設置をするという決定をするまで、ほとんどの電力会社は手をお尻の下に敷き、何もしないでいたのです。
ここに来て中央政府からじゃぶじゃぶとお金が湧いてきたため、電力会社の態度が変わりました。エジソン・エレクトリック・インスティテュート(EEI)によると、電気協同組合と51の民間電力会社、そしてTVA(Tennessee Valley Authority)が「2023年末までに主な米国の回廊道路網(幹線道路のネットワーク)を安心してEVで運転できるよう、電気自動車の急速充電を提供する」ことを目標に、National Electric Highway Coalitionという連合を設立しました。利幅を大きく取って電気を売るのでは満足できなかった企業ですが、パパが設置コストを払ってくれるのです。やらない理由がありません。
「EEIとメンバー企業はクリーンエネルギーへの転換をリードしており、電気による交通は国内経済全体の排出量を削減する鍵となります」と、EEI代表のTom Kuhn氏は言います。「National Electric Highway Coalitionの設立により、電気自動車の成長に必要な充電インフラに投資し、ユーザーが抱える航続距離への不安を払拭できるようコミットします。……主な道路沿いの急速充電インフラを設置するためになされている様々な試みを統合し、拡大することにより、より多くの人が電気自動車を買う後押しができるように基本的なEV充電ネットワークを構築しています。地域レベルで機運を高め、国家レベルでその努力を広げる道を整えてくれた電力会社には頭が上がりません」。
計画の詳細は詰められていないですが、EVオーナーが国内をどこでも「安心して」旅行できるようにするには、国全体で2023年末までに十分な量の急速充電が必要だと書かれています。連合がカバーする地域は上図で濃い青に塗られている部分です。鋭い読者なら気づくでしょうが、国土のかなりの部分が含まれていません。
地方 vs 都市
運輸長官のPete Buttigieg 氏は最近のインタビューで、地方のドライバーはより長い距離を運転し、ガソリンも多く使うため、電気自動車の恩恵を受けると話しました。最近ガソリン価格が上がっていることにお気づきかもしれませんが、この傾向は長引きがちです。電気の方がガソリンよりも安くつくだけでなく、電気料金はガソリンほど価格の上下が激しくありません。
「EV所有の恩恵を最も受けるのは最も長距離を運転し、一番ガソリンを燃やす地方住民、そしてガソリン料金が高く設定されて給料の低い地域の住民です。EVを持つことにより得るものは、彼らが一番大きいでしょう。贅沢品と捉えられている電気自動車に関わりを持ってこなかったような人達です」
フォードのCEO、Jim Farley氏は少し違う見方をしています。今週Automotive Newsに「フォードには、他ブランドと違って地方の顧客がたくさんいます。馬用運搬車両や、エネルギー事業で大きな物を長距離輸送するなど、かなり大型の牽引をする方達です。これから10年でこれらの顧客すべてが電気に移行するとは考えにくいです。彼らもテクノロジーには他の人たちと同じ位興味を持っています。ただ私達がこれまで設計した車とは使い方が違うのです。少なくともフォードは、考えていたよりも早く変化が訪れていると感じています。しかし、9回ゲームのうち、まだ1回目なのです」。
Buttigieg氏とFarley氏、どちらが正しいのでしょうか。議論の余地はありますが、どちらも、です。ニーズに見合った充電インフラがあれば、地方のドライバーは電気自動車を運転してお金を節約できるという点に疑問の余地はありません。同様にショベルカーをロッキーマウンテンに運ぶ業者が、フォードF-150ライトニングを仕事に使うこともないでしょう。
最近リビアンの従業員が、自身のR1Tを使ってマスタングをミシガンからカリフォルニアまで牽引してみました。距離は4,345キロです。その重さを取り扱うのは大丈夫だったのですが、大体100マイル(161キロ)ごとに充電しなければなりませんでした。道中で合計27回の充電が必要だったというわけです。Farley氏はこのようなケースを分かっているのかもしれませんね。
混沌とした充電ネットワーク
電気自動車を安心して運転できるようにするというのがポイントならば、現在の混沌とした充電ネットワークは役に立ちません。問題は、互換性の欠如です。ガソリン車ならば、どのガソリンスタンドに行っても大した違いはありません。ホースの先についたノズルはすべて同じサイズで、クレジットカードをスワイプし、ガソリンを入れ、出発です。簡単ですね。
しかしあなたが格好良いEVの新車を運転するとしたら、充電ケーブルの先には様々なプラグ(CHAdeMO、CCS、テスラ)があるだけでなく、多くの充電ネットワークがアカウントを先に作り、アプリをダウンロードし、支払い情報を入力するよう求めてきます。テスラは一番良い仕事をしています。スーパーチャージャーでプラグを挿入すれば、充電料金は自動的にあなたのテスラアカウントに請求されます。しかしみんながテスラを運転しているだけではありませんし、テスラのスーパーチャージャーネットワークはすべての道路をカバーしているわけでもありません。
アメリカにEV充電器と同じ位必要なのは、実際のEVの運転から想像して、統一性のある充電戦略を作ることです。充電会社は自社の設備をシームレスで苦痛なく使えるようにする必要があります。インターネット上には、「充電ステーションが使えなかった」、「前もって登録していなかったせいで、アカウントをセットアップするために何時間もカスタマーサービスに電話しなければならなかった」というようなEVドライバーの話がそこかしこにあります。そして何日も、何週間も、何カ月も壊れたままの充電器が放置されているという問題もあるのです。
誰(企業や政治家)もこれらの問題を話していませんが、潜在的なEVオーナーに不安を与える問題でもあるのです。EV革命にとって良いことではありません。したがって運輸長官殿、問題にただお金を出して声高に宣言をするのではなく、人々がなぜ今も電気自動車の運転にナーバスになっているのか分析して、不安を取り除く戦略を出せないものでしょうか。そうなれば嬉しいのですが。
(翻訳・文/杉田 明子)
こんにちは。アメリカの電気自動車充電環境は実にカオスですね。
そう考えると日本は電力問題以外問題が少ないように思います、少なくともCCSはないしCHAdeMOもeMPを中心に分単位の課金が成立していますし。
ただ計量法・消防法・電気事業法など庶民が納得しがたい法律が多すぎる難点もありますよ。電気自動車の高電圧化が進むと(750Vを超えた場合)電気事業法的に電気主任技術者を充電ステーションごとに専任することになれば働き方や労働経費が問題化します…配電線扱いになると電気管理技術者への委託が経済産業局で却下されるとか、充電ケーブルを構内で充電できる長さにせよなどメンドクサイ指導が予想されますが。
消防法にしても認定キュービクルにしたところで防火壁から1m間隔あけるなど無駄なコストがかかりそうな決まりがありますよ。計量法は設置緩和策が2022年度から始まるようですがこれも設置を妨げた感ありましたし。
皆さんわかり始めてるんやないですか!?EV革命は明日を乱すことから始まりますよ!?明日を乱さないと明日の充電環境は変わりませんから!!