京都「みやこめっせ」にパワーXの高出力急速充電器が登場〜12月末まで無料で利用可能

京都市勧業館「みやこめっせ」にパワーエックスの電気自動車(EV)用蓄電池型高出力急速充電器が設置されました。専用アプリによる完全予約制で最大出力は150kW。京都市の公民連携・課題解決推進事業の実証実験として設置され、2023年12月末まで無料で利用可能です。

京都「みやこめっせ」にパワーXの高出力急速充電器が登場〜12月末まで無料で利用可能

EV利用環境整備の課題解決を目指す

2023年11月1日、京都市勧業館「みやこめっせ」に株式会社パワーエックス(PowerX, Inc.)の蓄電池型高出力急速充電器「ハイパーチャージャー(Hypercharger)」が設置され、運用開始のセレモニーが開催されました。

ハイパーチャージャーは容量320kWhの大型蓄電池に、2口のストール(充電ケーブルを備えた充電器)を組み合わせたユニークな高出力急速充電器で、現状、最大出力は150kW(ブーストモードで15分間)で、2口の同時充電(その場合最大120kW×2)も可能となっています。2口が最大出力で充電する場合240kWの電力が必要になりますが、蓄電池に50kW未満の低圧受電で充電した電気を使うので、高圧受電に必要なキュービクルなどの初期投資やデマンド基本料金といったコストを抑えながら、国内最速級の複数台高出力充電を実現することができます。

門川大作京都市長が和服姿で充電を実演。

今回のハイパーチャージャー設置は、京都市が進める公民連携・課題解決推進事業「KYOTO CITY OPEN LABO」の実証実験として実現しました。市の環境政策局地球温暖化対策室から提示された「誰もが、いつでも、どこでも必要な充電サービスを受けることができる電気自動車(EV)の利用環境の整備」という課題解決に向けて、パワーエックスの提案が採択された結果の取り組みとなります。

設置したハイパーチャージャー蓄電池への充電は再生可能エネルギーによる電力(おもに太陽光発電)を用いる点も、脱炭素社会実現に向けた官民連携プロジェクトとしてのポイントになっています。

蓄電池は充電器脇の建屋裏の見えにくい場所に設置。見えにくい場所なので、カッコよくデザインされた筐体ではなくしてコストを節約していました。

高出力急速充電器へのニーズを検証する

みやこめっせは、平安神宮などの神社仏閣や京都国立近代美術館、京セラ美術館、京都市動物園など文化施設が集まるエリアに位置しています。道を挟んだ向かいには蔦屋書店やスタバもあって、充電時間の過ごし方もいろいろです。

目の前には蔦谷書店やスタバがあって。まさに、京都の中でもクルマで訪れる場所として一等地です。

ハイパーチャージャーの設置場所がみやこめっせになったのは、京都市が提供できる設置場所候補の中から、さまざまな調査や検討を重ねた上でパワーエックスが選択したということです。

今回の実証実験の目的は「今後の急速なEV普及を見据えて、京都市と株式会社パワーエックスが連携し、市内の民間駐車場・市営駐車場において、EVに関するニーズ調査を行い、利用者のニーズにマッチした市内のEV充電設備の今後の拡充を目指す」こととアナウンスされています。

セレモニーのプレゼンテーションでは、パワーエックスEVチャージステーション事業部長の森居紘平氏から、EV充電には基礎充電、経路充電、目的地充電といった用途別区分があるが、高出力充電器がどのように利用され、どのようなニーズがあるかを把握するために、基礎/経路/目的地というすべての利用形態のユーザー来訪が見込めるみやこめっせが、検証に最適の場所であった旨の説明がありました。みやこめっせの地下駐車場には、すでに無料(駐車料金は必要)で利用できるEV用200Vコンセント1口と、チャデモ規格の充電器(最大出力10kW)が設置されていますが、超急速充電器が実際にどう使われるか検証するには、ここがいちばん! ということですね。

テープカット後の囲み取材で、パワーエックスの伊藤正裕CEOから「弊社は超急速充電サービスを中心に事業を展開していきます(フリートの蓄電池式普通充電は手掛けるものの)。今回の実証実験を通じて超急速充電へのニーズを見極めながら、予約可能であるなど高付加価値の充電サービスを確立したい。(みやこめっせを選んだ)ポイントは、一等地であることです」という話も聞けました。

今回の充電器設置に国の充電インフラ補助金などは使っていないそうです。伊藤CEO、そしてパワーエックス&京都市が実証内容として提示している「民間事業者がクリーンなEV充電設備を整備及び運用していくモデル」を確立するため、真摯に取り組んでいることを感じます。

12月末までは無料で充電可能

ハイパーチャージャーは、地下駐車場への入口手前を右折してすぐ、みやこめっせの中でもまさに一等地に設置されています。真新しい案内看板も設置されていたので、現地へ行けばすぐに見つかるはずです。

実証期間は2023年11月1日〜2024年3月31日までとなっており、2023年12月末までは無料で充電可能です。2024年1月1日以降は従量課金制で有料となり、すでに東京でサービスを開始しているハイパーチャージャーの料金と同様になる予定。利用可能時間は施設の駐車場営業時間に合わせ、7時〜22時30分となっていて、24時間利用可能ではないのでご注意ください。

ハイパーチャージャー充電料金
Premium(純再エネ100%)105円/kWh
Reguler(純再エネ70%)95円/kWh
Economy(系統電力)85円/kWh

「レギュラー」や「プレミアム」という、なんというかガソリン臭が漂うネーミングにちょっと苦笑しつつ……。EVユーザーとして個人的に率直な思いとしては、できればeMPのビジター料金で77円/分の90kW器を使い30分で35kWh充電できたとして66円/kWh、のプラスアルファで70円/kWhくらいの価格ならいいのになぁとは感じます。とはいえ、「一等地」への2口設置で予約可能な高出力器設置が進むのであれば、高出力急速充電可能な高級EVオーナーにとっては許容範囲なのかな、とも思ったりして。

実証実験期間中、みやこめっせのハイパーチャージャーで充電し、充電器に表示された二次元バーコードからアンケートに回答すると、全員に500円相当のAmazonギフト券がプレゼントされるオマケもありました。

ちなみに、京都市は場所を無償提供し、設置や運用はすべてパワーエックスが行うことになっているそうです。伊藤氏によると「1日に5〜6台の利用」が有料化後のビジネスとしての採算ラインになるとのこと。はたして、無料期間と有料期間の利用実態はどうなるのか。今回の実証実験によって、充電料金を含めたパワーエックスの高出力充電サービスが持続可能で洗練されたものに磨かれていくことを期待します。

なんと、利用者第1号になってしまいました

今回の京都取材。東京から新幹線で、京都駅前でサクラのレンタカーを借りて行きました。お昼過ぎにセレモニーが終了し、さっそく16時30分からで予約して充電したのですが。なんと、充電が終わる直前、みやこめっせの広報ご担当者がやってきて「利用者第1号なんですけど、どこでお知りになりました?」と話しかけてくださいました。「セレモニーを取材に来たメディアです」と説明して「ご苦労様です」ってなことなんですけど、期せずして初利用者の栄誉を獲得してしまいました。

ケーブルは重いですが、伸縮式のワイヤーで吊り下げ式になっているのが秀逸でした。

私自身、ハイパーチャージャーを実際に利用するのも初体験。完全予約制といいつつ、充電区画に車止めとかないし、急に来て充電しちゃうユーザーがいたらどうなるんだろう? と思っていたら……。

充電開始時はアプリ画面に表示された二次元バーコードをリーダーにかざします。充電始まってから写真撮ったので、スマホの画面が違うけど……。

充電を開始するにはアプリから予約を入れて、予約時間10分前になったらアプリ画面に表示される二次元バーコードを充電器のリーダー部にかざさなければいけません。従って、予約してない人が割り込み充電するのはシステムとして不可能になっている、ってことが理解できました。

また、比叡山とか走り回って電池を減らし(サクラのレンタカーレポートは後日別記事にて!)、充電器に帰着したのが16時10分過ぎ。30分からの予約でバーコードが表示される10分前までボーッと待つのもイヤだったので、一度キャンセルして新たな予約を取ろうとしたら……。約10分後からの予約時間しか表示されません。「えー、やっぱり10分待つのかぁ」とゲンナリしそうになりましたけど、考えてみれば予約時間の10分前から充電開始のバーコードが表示されるので、事実上、即時充電開始ができることに気が付きました。

予約画面。
充電中の画面。

というわけで、16時25分に予約を取り直し、16時20分から16時55分まで、35分間充電することができたのでした。充電中の出力やSOCが表示されるアプリ画面も、動きがあって好印象でした。

ただし、有料のハイパーチャージャーを利用する際は「予約開始まで1時間未満でキャンセルした場合ペナルティが発生する可能性がある」ということなのでご注意ください。操作方法が未熟なのでなにか方法があるのかも知れないですが、少し早く到着した時、手軽に予約時間を調整できる機能があるといいですね。

まあ、最大30kWでしか急速充電できないサクラなので高出力充電器の恩恵はなく、35分で9.8kWhという充電結果でしたけど、SOCは32%から87%に回復。半日、比叡山や大原を走り回って、「9.8kWh×105円=1029円」であれば「ま、いいか」と、従量課金の合理性も実感することができました。

今回は無料!

再エネを活用し、コストを抑えた高出力急速充電サービスを実現するためにも、ハイパーチャージャーの「蓄電池式」は有効でしょう。たとえば、全国各地の自治体が有名観光地や高速道路IC近くの「一等地」を提供して、パワーエックスのような充電サービス事業者が高出力複数口で付加価値の高いEV充電インフラを設置していくといった、個人的に妄想している「EV充電パラダイス」があちらこちらで実現していくといいなぁと、さらに妄想を広げる京都取材となったのでした。

取材・文/寄本 好則

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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