ニチコン「サイクリックマルチ充電器」発表/1台で複数台の商用EV急速充電を最適制御

電気自動車用急速充電器などで大きな国内シェアをもつニチコンが運輸事業者などが複数台の商用EVをスマートに急速充電できる「サイクリックマルチ充電器」を発表しました。発売は2025年7月の予定。EVバスやトラックなどの大規模導入を検討する事業者にとって魅力的なソリューションとなりそうです。

ニチコン「サイクリックマルチ充電器」発表/1台で複数台の商用EV急速充電を最適制御

複数台の商用EVをスマートに急速充電可能

ニチコン株式会社が、複数台のEVによる急速充電をスマートに制御できる「サイクリックマルチ充電器」をお披露目し、2025年7月に発売開始予定であることを発表しました。

サイクリックマルチ充電器は、1台の急速充電器(電源盤)に最大6口のディスペンサ(充電ケーブル格納部)を設置可能。最大6台のEVへの急速充電をクラウドで制御して、サイクリック(輪番)充電を行うことで、充電の集中による使用電力ピークの発生を抑え、電気基本料金やキュービクルなど高圧受電のための設備投資の負担を軽減。

ディスペンサは「壁掛け」「ロースタンド」「トールスタンド」というバリエーションを用意して、電源盤とスイッチャーボックスまでは最大300m、スイッチャーボックスから各ディスペンサ間は最大100mの設置距離が取れるなど、敷地状況などに合わせて省スペースとシステム設置の自由度を高めたコンセプトとなっています。ディスペンサは後から増設することも可能です。

【公式サイト】
サイクリックマルチ充電器(ニチコン)

出力は1口最大90kW

充電器の出力は1口最大90kW。仮に6台の90kW器を設置して同時充電すると集中時の最大で「90×6=540kW」もの大きな電力需要が発生してしまう可能性がありますが、サイクリック充電を制御することで、90kWを超えるような電力を消費することはありません。

ディスペンサにはカード認証の機能を備え、専用アプリで離れた場所のパソコンやスマートフォンで充電状態の確認などが可能。充電コネクタの挿し込み、カード認証、専用サーバーでの充電制御、専用ブラウザで充電状況の確認といった一連の流れをクラウドと連携させることにより、スマートなユーザビリティを実現しています。

トールスタンドタイプのケーブルは吊り下げ式で、重いケーブルの取り回しが楽。ワイヤーアシストは自動収納式になっていて、ケーブルの片付けをサポートしてくれます。こうした工夫は、高速道路SAPAのマルチタイプ急速充電器などを豊富に手掛けてきたニチコンのノウハウが活かされている印象です。

フリート充電の課題を解決するソリューション

バスやトラックなどの商用車のEVシフトは日本でも着々と拡がっています。とはいえ、複数台のEVを導入するとその充電設備をどうするかという点で、いくつかの課題がありました。

●普通充電設備だけでは出力が足りず能力不足。
●複数台の急速充電器を導入すると電力基本料金が高騰する。
●複数台のEV充電をコントロールする仕組みをどうするか。

新型のサイクリックマルチ充電器は、こうした課題を一気に解決するソリューションになり得る特長を備えています。

商用車をEVにシフトしていくことは、カーボンニュートラルなモビリティ社会実現のためにも大きな意味をもっています。場合によっては6台を超える大規模なフリートをEV化する場合、6kW普通充電を上手く組み合わせた仕組みを導入することも想定できるでしょう。また、駐車区画にソーラーカーポートを設置したり、倉庫や工場の屋根にソーラーパネルを設置するなど、電気の自産自消まで見据えた展開となればさらに有意義な取り組みになるでしょう。

ちなみに、EVタクシーなど小型車の充電運用最適化については、充電サービス事業者のプラゴなどが実証実験を進めている取り組み(関連記事)もあります。

日本でも商用車のEVシフトが進展することを応援しています。

文/寄本 好則

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

執筆した記事