フォルクスワーゲングループが独自にEV用150kW急速充電と目的地充電インフラ拡充を表明

フォルクスワーゲングループジャパンが、2022年中にフォルクスワーゲンやアウディの全販売店の7割にあたる約250店舗に電気自動車用の高出力急速充電器を設置することを明らかにしました。当面はフォルクスワーゲン、アウディの両ユーザーが相互に利用できるようにし、将来的には他社ユーザーも利用できるようにしていきます。

フォルクスワーゲングループが独自にEV用150kW急速充電と目的地充電インフラ拡充を表明

※冒頭写真はアウディジャパン、ブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏と『Q4 e-tron』。

90kW以上の急速充電器をVGJの250店舗に設置

EVsmartブログでは先日、アウディ『Q4 e-T-ron』と、フォルクスワーゲン『ID.4』の日本発売についてお伝えしました。その時に少し紹介した充電インフラの情報について、その後にわかったことを追加してお伝えします。

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フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)は2022年1月に開催したメディア向け記者会見の中で、2022年中に、フォルクスワーゲンとアウディの全販売店数の7割にあたる約250店舗に急速充電器を設置することを表明しました。また1月21日には、新たに設置する急速充電器は90kW以上の出力で、フォルクスワーゲンの約150の販売店に設置する計画を発表しました。

フォルクスワーゲングループが独自にEV用150kW急速充電と目的地充電インフラ拡充を表明
フォルクスワーゲンジャパンのブランドディレクターに就任、年内に約150のフォルクスワーゲン販売店にて急速充電拠点 (90kW以上)を設置することを表明したアンドレア・カルカーニ氏。

急速充電器の利用は、当面はフォルクスワーゲンやアウディのEVユーザーに限られますが、将来的には他社ユーザーの利用もできるようにする予定です。

これとは別に、アウディブランドを所管するアウディ ジャパンも年頭の記者会見を行いました。この会見で、アウディのブランド ディレクターを兼ねるマティアス・シェーパースVGJ社長は、2025年にアウディとして最後の内燃機関(ICE)を市場に投入することや、2033年までに一部の地域を除いてICEの生産を停止することなど、アウディ本社の電動化戦略について言及するとともに、日本での今後の方針について次のように述べました。

「日本市場で、まずアウディが動きます。アウディが動いて充電インフラを充実させます」

この会見の中でシェーパース氏は、少し踏み込んだ、アウディとしての充電インフラの設置方針を明らかにしています。

150kWでユーザーの利便性を上げ、ライフスタイルを変える

『Audi New Year Press Conference 2022』の動画より引用。

アウディは2021年10月1日に、アウディ販売店に設置した90kW以下の急速充電器を2024年6月までに最大150kWの高出力器に置き換えることを発表しました。これから導入する電気自動車(EV)が100kW以上の大出力充電に対応するモデルになるためです。急速充電器はABB製になる予定です。

なおアウディ広報に確認したところ、既設の急速充電器は90kWが8カ所、50kWが42カ所です。これらがすべて150kWになるほか、追加で54店舗、合計104店舗に150kWを設置します(2022年1末月時点の計画)。設置店舗数は今後も増える可能性があります。

150kWの急速充電器の設置に関してシェーパース社長は、こう強調しました。

「今、アウディのディーラーは100店舗以上ありますけれども、まだ大半が50kWの、どちらかと言うと遅い、まぁ、日本の基準で言えば決して遅くは無いんですが世界基準で言えば遅いチャージャーなんです。それを150kWに転換してお客様の利便性を上げていく。ライフスタイルに影響する大きな大きなチェンジです」

そして今後はVGJの、ベントレー、アウディ、フォルクスワーゲン、ランボルギーニの4ブランドは充電設備を共有化していくとのことです。

ここに、なぜポルシェが入っていないのかは謎だし、ベントレーとランボルギーニが日本にEVやPHEVを導入するという話は聞こえていません。ランボルギーニの電動化は数年後に始まるので、それを見越した計画なのでしょうか。諸々については、追加情報が出てきたらお伝えしたいと思います。

Audi New Year Press Conference 2022(YouTube)

アウディが目的地充電を充実させていく

『Audi New Year Press Conference 2022』の動画より引用。

もうひとつ、EVsmartブログとしては注目したい情報がありました。急速充電器だけでなく、アウディが目的地充電を拡充させていく方針が示されたのです

シェーパース社長によれば、アウディは、ACの普通充電器をホテルやゴルフ場、ショッピングモールなどの目的地に設置していくそうです。設置する場所については、アウディ販売店と協力して「適正なパートナーを選ぶ」(シェーパース社長)としています。

また、これらの普通充電器は、VGJのユーザーだけでなく、すべてのEVユーザーが利用できる仕組みを考えていくそうです。今のところ目標数は明らかではありませんが、「全国で設置していきたい」とシェーパース社長は強調していました。

シェーパース社長は販売店への急速充電器の設置について、日本では家庭での充電が難しい人が多いため急速充電器が重要になると話していました。一方、目的地充電は急速充電器に比べてコストをかけずに数を増やせるので、うまく回り出せば一気に数が増える可能性があります。メーカーがその気になれば意外に早く充実するかもしれません。

フォルクスワーゲンは90kW、アウディは150kWか

ということで、VGJの充電設備の現状を整理してみます。まず販売店の数は、1月時点でフォルクスワーゲンが249店舗、アウディが126店舗の合計375店舗です。このうちの約7割にあたる250店舗に、2022年までに90kW以上の急速充電器を設置していきます。この数は将来的に増える可能性があります。

実はVGJ広報からは、充電器メーカーは公表していないという回答がありましたが、前述のようにアウディはABBの150kWを設置していくとアナウンスしています。つまり、フォルクスワーゲンは90kW、アウディは150kWの急速充電器をメインに設置を進めていくことになると思われます。

2024年までの見通しはこんな感じでしょうか。
●フォルクスワーゲン販売店 約150店舗に90kW(2022年中)
●アウディ販売店 104店舗に150kW(2024年まで)

フォルクスワーゲンが日本に導入する『ID.4』は、バッテリー容量が52kWhと77kWhです。価格は正式には未発表ですが、52kWhが500万円台、補助金を入れれば最も安価なグレードの『Life』は400万円台になると思われます。なのでバッテリー容量が少ないモデルがボリュームゾーンになる可能性があります。

一方のアウディ『Q4 e-tron』は、当面の日本導入モデルとしてはバッテリー容量が82kWhの1択です。これだけ容量があると、ポテンシャルをフル活用するのなら急速充電器の出力は大きい方が効果的です。『Q4 e-tron』はCHAdeMOの125kW対応になる予定ですが、150kWの能力があればなおよしです。

それに今のところ、日本で急速充電器の設置を進めているe-Mobility PowerはCHAdeMOの90kW器拡充は計画しているものの、それ以上の高出力対応は白紙です。

シェーパース社長は『Q4 e-tron』について「一部のお金持ちが電気自動車を買う時代は既に終わっています。『Q4』はアウディが電気自動車を日本で本気でやるぞと言うシンボルになります」と力強く話しました。そしてアウディは2024年までに日本にEVを15モデル導入し、2025年には日本でのEV比率を35%、年間1万台以上にする目標を掲げました。昨年のEV比率は2%に満たないので、とんでもなく野心的な数字です。

『Audi New Year Press Conference 2022』の動画より引用。

新しいEVがどんどん日本に上陸するのが確実な中、貧弱なインフラが普及へのボトルネックになってしまったら笑うに笑えません。

だからこそ、数は限定的とはいえ、自前で90kW以上の急速充電器を設置していくことを明らかにしたVGJの発表には期待が膨らみます。

欧米では自動車メーカーが積極的にイニシアチブをとって充電インフラ整備を進めるのが当たり前になっていますが、日本では今でも、充電器が先か、車が先かという、四半世紀以上も変わらない議論を耳にします。VGJの充電インフラ整備が、そんな前時代の議論に終止符を打つ、第一歩になってほしいと思うのです。

(文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)6件

  1. 最近電気自動車の数が目立って増えてきましたね…名古屋でもテスラ車が増えてきたし岐阜県は今もEV普及率が高いし。

    ただそれに伴い電気主任技術者の需要が相当増えてきましたね。独立一年目で割と暇だった当事務所も受け持ち点数が増え始めました…電気管理技術者は一人当たりの持ち点数が設備容量で決まっており、それを超えそうな電気保安団体が入札しない物件を引き受ける話が出てきましたよ。当事務所には商機ですが、理由は当然ソーラー発電所やEV急速充電器の急激な増加が背景にあります。それに伴い高圧受電設備に必要な高圧ケーブルも品薄になり計画取替や事故復旧も厳しい有様。
    電気自動車普及のブレーキ要素は電気主任技術者視点で山ほどありますよ!?エネルギー補給は配電線容量(電力会社)・高圧受電設備(資材)・電気保安人材(主任技術者)のいずれかひとつ欠けても成立しませんから。それらを総体的に語れる人材がこのブログに増えてほしいですよホンマ。
    ※そのうち規制が連発して「電気自動車に乗るには電気工事士または電気主任技術者の資格が必要です」にならないことを祈ります(そんな大袈裟な!!)

    なんだか「ポケットモンスター」の世界に電気系国家資格をあてはめた2ch掲示板の書き込みみたいですが…ピカチュウ10万Vに第二種電気主任技術者免状が必要とかいわれたらやる人は限られるんやないですか!?あっ僕はピカチュウに5万ボルトまでしか命令できない電験三種持ちです(自爆)

  2. Audiのディーラーは150kw充電器を24時間使用できるように店舗を改良されるようですが、スタバやドトール、タリーズといったカフェを併設すると充電中に時間がつぶせるので、付加価値のあるサービスが提供できると思います。

    1. Audi user様、コメントありがとうございます!おっしゃるように、店舗を車を売るところ、サービスするところ、とだけ考えていると、消費者の意識とはずれが大きくなってきますよね。デジタルシフトで購入体験も変わり、メーカーや販売店の利益も修理や部品より、消費するものや追加サブスクリプション型のサービスに移行しないといけません。旅行するユーザーがディーラーに立ち寄る習慣をつけてくれるかどうか、そこまで考えないといけなさそうです。

  3. 欧州(大気汚染が割と厳しいエリアでした)に出向していたのですが、日本に帰国した時かなり驚きました。
    街中のあちこちを走っているBEVが数年で一気に増えていたからです。

    …とはいっても、電動アシスト自転車の事です。(ただ、システムの成り立ちと構成から考えると「BEV」と称してもほぼほぼ間違いはないように思えます)

    電動アシスト自転車には補助金もありませんが、老若男女問わないユーザー達は単純に自分のメリットで「割に合う」と判断して購入していますが、
    結果として、日本におけるICEの稼働率削減には相当の寄与をしているものと思われます。

    私自身も仕事としてエンジンやモーターを多少なりと扱っているのですが、
    モーターはその成り立ちから「低~中速エリア」「小型・軽量」な乗り物との相性が良いと感じています。

    貴ブログでも記載されている内容とも重複してしまいますが、
    ここ数年のバッテリーがやモーターの進化により、バッテリーが取り外せて家庭用のコンセントで充電できるような「電動バイク(まずは原付クラス)」も目にするようになってきました。

    こうした電動バイクが比較的手の届きやすい価格で、かつ片道20キロ~30キロをカバー出来る仕様で上市されるようになれば(さらには税制面のメリットがあれば)、
    メンテナンス費用と燃料費(?)の安さから「普段は電動バイクで移動し、条件の悪い時は今持っているICE車を使う。結果として炭素排出量の大幅な削減につながる」という生活スタイルも身近になると思われます。

    そうすると「BEVがSDGsの重要な一角を担う」事になり、貴ブログにとっても明るい未来が来そうだな、とワクワクしています。

  4. >アウディは、ACの普通充電器をホテルやゴルフ場、ショッピングモールなどの目的地に設置していく
    これも朗報なんですが、個人的には「湯快リゾート」や「大江戸温泉物語」に代表される「お手頃リゾート」の各施設に駐車台数の1%を目安に設置してもらえると非常に有り難いな~。

  5. >アウディは2021年10月1日に、アウディ販売店に設置した90kW以下の急速充電器を2024年6月までに最大150kWの高出力器に置き換える
    これは朗報なんですが、問題は24時間充電出来るか否か。
    営業時間だけしか使えないとなると、盆・正月・GWなどは全く役立たずになってしまいます。

    兵庫で言えば、「Audi神戸」にも設置されていますが、営業時間外は立ち入れない場所に設置されています。
    https://evsmart.net/spot/hyogo/l281000/q281107/v21269/

    今後同様な発表が有り、質疑応答が有れば「24時間充電出来るか?」も質問して回答を引き出して欲しいです。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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