2023年度 東京都のEV用充電設備補助金案内〜既設集合住宅や機械式駐車に設置の好機

東京都はこのほど、2023年度の集合住宅への電気自動車(EV)用充電設備設置に関する補助金の枠組みを発表しました。すでに公表されていた機械式駐車場への補助上限額の引き上げなど、いくつかの新規制度も確定しました。補助制度の概要を紹介します。

2023年度 東京都のEV用充電設備補助金案内〜既設集合住宅や機械式駐車に設置の好機

ゼロエミッション化に向けて進む東京都

東京都は2023年6月に、2023年度の集合住宅、および都内区市町村の公共用充電設備拡充を目指す補助事業の詳細を公表しました。東京都は、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする「ゼロエミッション東京」の実現に向けて、さまざまな施策を実施しています。

2022年末には、一定規模以上の集合住宅についてはEV等が利用できる充電器の設置を義務付けることを盛り込んだ、環境保護条例の改正も実施しました。

条例改正による効果を最大にするするため、区市町村や集合住宅への充電設備設置を後押しする「令和5年度集合住宅等への充電設備普及促進事業」では、従来の補助に加えて機械式駐車場への補助上限額引き上げなど新たな施策を盛り込んでいます。なおこの事業の受け付けは、6月30日に開始します。

事業の詳細は、クール・ネット東京の『充電設備普及促進事業(事業のご案内)』で確認できます。

3つの新規事業で充電インフラ整備を後押し

今回、公表された集合住宅等への補助制度の目玉は次の3つです。

●集合住宅の機械式駐車場に充電設備を設置するための工事費に対する補助上限額を引き上げ
●集合住宅への充電設備を導入するための、調査に関する経費の補助を新設
●集合住宅への充電設備設置後の電気料金(基本料金)に対する補助を新設

ひとつずつ見ていきます。まず集合住宅の機械式駐車場設置費用については、1基目の設置費への補助上限額が従来の81万円から171万円に引き上げられました。2基目からは1基あたり86万円になります。

充電器の設置費用についてはこの他、急速充電器の出力が従来は90kWを想定していたのが、超急速充電器として最大出力200kWまでが対象になりました。これに伴って補助金の上限は、設置工事費が500万円から1600万円に、設備購入費が500万円から1500万円(機種ごとに上限額の設定あり)に引き上げられています。

それぞれの費用に対する補助率は「10分の10」、つまり全額が補助金で充当されます。

なお区市町村以外の事業者が設置する公共用充電器については、後述するように産業労働局が所管する予算で補助が実施されています。

次の、充電設備導入のための調査等にかかる経費の補助は、1件あたり8万円を上限として補助をします。集合住宅に設置する場合、事前に、合意形成のための提案書などの作成が必要になります。このための現地調査費や、提案書作成にかかる経費に補助金を充てることができます。

補助金で集合住宅への設置義務を支援

さて、集合住宅に一定数以上の充電器の設置をすると、通常の契約でも基本料金が上がってしまうのは避けられません。この負担を軽減するために始まったのが、3つめの、充電器設置後の電気料金補助です。

ランニングコストの上昇に対する補助額の上限は年間18万円、期間は最大3年間になります。条件は、充電設備を10基以上設置することなどです。駐車場の区画が10未満の場合は、全区画に設置する必要があります。また、前述した事前調査のための補助制度を利用することも条件になっています。

東京都は『都民の健康と安全を確保する環境に関する条例 (環境確保条例)』を2022年12月に改正して、新築の建物に充電設備の設置を義務付けるなど、普通充電器の拡充に積極的です。

【関連記事】
東京都が電気自動車への補助金増額&新築へのEV用充電設備義務化へ(2022年6月22日)

今回の事前調査費やランニングコストへの補助金は、改正した条例を画に描いた餅にしないための支援と言えます。

加えて、区市町村が設置する公共用充電器の基本料金についても、超急速充電器の出力上昇に併せて電気料金への補助上限が310万円(最大5年間)、急速が上限60万円(最大3年間)、保守費用が上限40万円(最大3年間)になるなどしました。ただし再生可能エネルギー100%の電気を使うことが条件です。

なお、環境局所管の充電設備購入費、設置工事費などの施策では目標設置数を設定していませんが、予算額は2023年~24年度の2か年で40億円になるそうです。

仮に購入費、設置費の全額を200kW級の上限で受けるとすると合計3100万円、国の補助金と併用して半額ずつにすると倍の26基分になります。もっとも個人的には、都内に揃えるなら200kW級よりも、90kW級くらいで数を増やした方が効率的かなあとも思っているのですが、どうでしょうか。

いずれにしても充電設備は、単に数を揃えるよりも、どこにどれだけ設置されるかによって有用性に違いが出てきます。使われない設備を増やしても猫に小判、豚に真珠、日産『サクラ』に200kW超急速充電設備みたいな感じになってしまうので、その点は実際に設置が始まったらチェックしていければと考えています。

充電器設置に対する補助が拡大中

前述したように、集合住宅や区市町村以外の、事業者が個別に設置する充電設備については、2023年度分の内容が3月28日に発表されています。所管は東京都産業労働局です。

補助内容は集合住宅等とほぼ同じで、超急速充電設備は200kWまで、補助額は設備購入費が上限1500万円(機種ごとに上限額の設定あり)、設備工事費が同1600万円です。

急速充電設備の維持管理費も、保守費などが上限40万円(最大3年間)、電気料金のうち基本料金については超急速が上限310万円(最大5年間)、急速が上限60万円(最大3年間)などと、区市町村向けと同内容です。

東京都は2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする「ゼロエミッション東京」のロードマップに沿って、2030年までに都内で販売する新車乗用車は100%を「非ガソリン車(HEVはガソリン車に含まない)」にすることや、公共用急速充電設備を1000基にすることなどの目標を打ち出しています。

集合住宅や事業者の充電設備設置を支援する補助事業は、目標実現に向けた動きの一環です。

補助に関連する予算額は増え続けていて、2020年度の6億円が、21年度に13億円、22年度に55億円、本年23年度には24年度までの2か年で174億円がついています。ちなみに予算は、区市町村や集合住宅向けを所管する環境局が40億円ほどなので、事業者向けは134億円になると思われます(内訳の詳細は非公開)。

ということで、充電設備に関する東京都の補助金の紹介でした。

東京都はこのほか、EV購入費の補助金もアップデートしています。これについては後日、概要を紹介したいと思います。

●東京都の充電設備普及促進事業

(補助額や制度の内容は類似していますが、事業者向けと、集合住宅等向けは受け付け窓口が分かれています。HPで確認してください)

・事業の概要
ZEVの普及拡大に向けて、住宅・民間施設・区市町村等への充電設備の設置を促進するため、設置費及び急速・超急速充電設備の維持管理費の補助等を実施

・補助内容(一部抜粋)
超急速充電設備の補助を拡充
想定出力 200kW(従来90kW)
電気基本料金の補助 310万円/年(従来110万円/年)
設置工事費の補助上限 1600万円(従来500万円)
設備購入費の補助上限 1500万円(従来500万円)

・将来的な公共用充電器の目標数
2025年 普通充電設備 5000基
2030年 急速充電設備 1000基

●申請は以下のHPをご確認ください
クール・ネット東京
充電設備普及促進事業(事業のご案内)

文/木野 龍逸

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 東京都
    311東日本大震災の地に住む者。

    震災時に、色々と知りました。
    我等市民と、地方自治体の長や国会議員達とは、情報の格差が激しい(¯―¯٥)
    彼等は、正に上級国民!
    我々の預かり知らないところで、EV化の波が進んでると!( ᴖ ·̫ ᴖ )

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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