ブランドとしてフォーミュラEにも参戦
E-TENSEとはDSブランドの電動化テクノロジーの呼称。DSは2015年から「DSテチータ」としてフォーミュラEに参戦するなど、14年のブランド創設以来、グループPSAのなかでいち早く電動化を推進する役目を担っている。
DS3クロスバックE-TENSEは、ガソリンエンジンを搭載して19年に登場したDS3クロスバックと同時に19年に発表された。DS3クロスバックがCMP(コンパクト・モジュラー・プラットフォーム)というグループPSAの新世代プラットフォームを用いて開発されたのに対し、DS3クロスバックE-TENSEには『eCMP』というプラットフォームが用いられるが、それぞれのプラットフォームにほとんど違いはなく、元々CMPが電化も見据えた設計になっていたと考えるべき。実際、同じeCMPを用いたプジョー版のe208もすでに発表されている。今後、市場の動向次第でCMPを用いたモデルのEVバージョン追加の準備はできているはずだ。
急速充電は最大50kWに対応
最高出力100kW(136ps)、最大トルク260Nmのモーターによって前輪を駆動する。バッテリーの総電力量は50kWh。航続距離はJC08モードでは398km、欧州のWLTPモードでは320km、EPAでは約285km(推計値)となる。
日本仕様は当然CHAdeMO規格に対応しており、対応最大出力の50kWで充電した場合、約50分で80%まで充電可能とアナウンスされている。普通充電で満充電に必要な時間は6kWで約9時間、3kWだと約18時間。なお新世代のCHAdeMO充電器を使って100 kW以上の急速充電に対応できるかどうかを問い合わせ中だが、現時点では不明。
気になる価格は499万円〜
価格は17インチタイヤ&ホイール、ファブリックシートのSo Chic(受注生産)が499万円、18インチタイヤ&ホイール、レザーシートのGrand Chicが534万円。同じeCMPで開発されたプジョーe208は廉価グレードが388万9000円、上級グレードが423万円となっている。ガソリンエンジンモデル同様、プレミアムブランドのDS版はそれぞれ約110万円ほど高い。
次世代自動車振興センターからのCEV補助金対象車種のリストには現時点でまだ含まれていないが、実際にデリバリーが始まるまでには補助金額も決まるであろうと思われる。算定基準となるJC08モードの航続可能距離は398kmなので、38〜39万円程度かと想定される。このあたりの詳細も引き続き問い合わせ中。
参考までに他社EVの価格と総電力量を見てみると、日産リーフは40kWh版が332万6400〜429万4400円、62kWh版が441万1000〜499万8400円。DS3クロスバックE-TENSEとプジョーe208は、総電力量がリーフの2つのバージョンの中間に位置し、趣味性を考慮するとリーフのライバルとなりそう。特にe208は絶妙なプライシングではないだろうか。
その上のクラスとなると、テスラモデル3は55kWhとされるスタンダードレンジプラス(RWD)が511万円、75KWhとされるロングレンジが655万2000円、パフォーマンスが717万3000円。ここに日産が21年半ばにぶつける予定なのがアリアだ。65kWh版が約500万円〜。90kWh以上のバッテリーを搭載する1000万円級のテスラ、ジャガー、メルセデス・ベンツのラグジュアリーEVを含め、日本市場でもEVのラインアップが徐々に充実してきた。
グループPSAジャパンによれば、DS3クロスバックE-TENSEの登録が可能になるのは10月頃の予定。プジョーe208も同様。
(文/塩見 智)