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ホンダのEVスクーター『CUV e:』世界初公開/開発担当者が自らポチる期待の出来映え!

ホンダのEVスクーター『CUV e:』世界初公開/開発担当者が自らポチる期待の出来映え!

ホンダは東京ビッグサイトで開催された東京モーターサイクルショーに、6月20日に発売する電動スクーター『CUV e:』を展示しました。日本での実車公開は初めてです。どんなスクーターなのか、特徴を紹介します。

目次

125ccクラスの世界戦略モデル

ホンダは3月28日から30日にかけて東京ビッグサイトで開催された「東京モーターサイクルショー2025」に、原付二種(第二種原動機付自転車:125ccクラス)の電動スクーター『CUV e:』を日本で初めて公開しました。

CUV e:は「シーユーブイ・イー」と読みます。クリーン・アーバン・ビークルの略で、ホンダのベストセラーバイク『カブ(CUB)』とは別物のスクーターです。

車両本体価格は税込20万200円からです。バッテリーは交換式の『Honda Mobile Power Pack e:』を2個使用しているので、『Gachaco(ガチャコ)』のバッテリー交換ステーションを利用することができます(月額料金などが必要)。

ガチャコ(公式サイト)は、本田技研工業、ヤマハ発動機、スズキ、カワサキモータース、ENEOSイノベーションパートナーズの出資による合弁会社で、会員制のバッテリー交換ステーションを運営しています。
https://gachaco.co.jp/

●ホンダ『CUV e:』の価格
車両本体価格/20万200円(税込)
バッテリー(別売り) Honda Mobile Power Pack e:/10万8900円(税込)
専用充電器 Honda Power Pack Charger e:/5万5000円(税込)

CUV e:は昨年(2024年)10月に発表された世界戦略モデルです。すでに販売している電動スクーターの『EM1 e:』が原付一種(50ccクラス)だったのに対して原付二種になり、出力と速度も向上しています。そのため搭載するバッテリーは、EM1 e:がMobile Power Pack e:を1個だったのが、2個に増えました。

Mobile Power Pack e:の総電力量(容量)は1314Whで、一充電航続距離は60km/h定地走行テスト値で57kmです。

ホンダは2023年11月に実施した事業説明会で、2030年までにグローバルで30車種の電動モデルを発売することを発表していて、CUV e:はそのうちのひとつです。生産はThai Honda Co., Ltd.(タイ)の工場で行います。

●ホンダCUV e: 主要スペック

全長×全幅×全高1970×675×1100mm
シート高766mm
車両重量(※)120kg
定員1人
種別第二種原動機付自転車
モーター交流同期
最高出力6kW/3500rpm
最大トルク22Nm/2300rpm
一充電航続距離57km※
タイヤ(前/後)100/90-12 59J/110/90-12 64J
ブレーキ形式(前/後)油圧式ディスク/機械式リーディング・トレーリング
懸架方式(前/後)テレスコピック式/ユニットスイング式
駆動バッテリー
種類リチウムイオンバッテリー
バッテリー名称Honda Mobile Power Pack e:
搭載個数2個
バッテリー電圧50.26V
バッテリー容量26.1Ah
価格(税込)52万8000万円(※2)
※1 60km/h定地走行テスト値
※2 バッテリー2個、充電器2個を含む参考価格
★車両本体価格(税込)20万200円、Honda Mobile Power Pack e:(税込)10万8900円、Honda Power Pack Charger e:(充電器・税込み)5万5000円

普通に使えるバイクを目指した

チーフエンジニアの後藤香織さん。

今回の東京モーターサイクルショーに行った目的のひとつが、CUV e:を見ることでした。初日の朝一番にホンダブースに行って見ると、すでにたくさんの人が訪れていて歩くのもたいへんです。

そんな中に展示されているCUV e:を見つけて担当員の方にお話を聞いていたら、「今日はLPL(開発責任者)も来ていますよ」と言われました。紹介していただいたのが、チーフエンジニアの後藤香織さんです。

後藤さんはEM1 e:の開発も担当していて、EVsmartブログでも紹介したことがあります。

【関連記事】
ホンダの電動バイク『EM1 e:』の開発責任者を直撃〜EVに余計な音はいらない(2023年11月9日)

まず、後藤さんは今回のCUV e: をどのような思いで開発したのでしょうか。

「バッテリーが2個になり出力も大きくなったほか、航続距離も長くなっているので、今まで(エンジンの)原付二種に乗っていた方の乗り換えも視野に入っています。グローバル戦略モデルということもあり、単にEV(電気自動車)ということではなく、街乗りで本当に普通に使っていただけることを目指して作っています」

「1994年にホンダは初めて『CUV ES』という電動スクーターを出しました。(CUV e:では)その頃から変わらない街中の快適な移動という部分と、ホンダが培ってきた二輪の基本性能を詰め込んでいます」

『CUV ES』は官公庁や自治体などを対象に200台限定で、3年間のリース形式で販売されました。この頃は東京アールアンドデーから『ES600』が出るなど電動スクーターの黎明期でしたが、CUV ESは価格が約85万円と高かったことや、バッテリーが現在主流のリチウムイオン電池に比べて短所が多いニッケル・カドミウム電池だったこともあり、広範な普及には至りませんでした。

1994年に限定発売された『CUV ES』。

それから30年後に復活したCUV e:は、基本性能を詰め込んだというだけあり、モーターを新規に開発するなど、車両の骨格になる部分を内製し性能向上を図っています。以前のEM1 e:は中国で販売している五羊ホンダ製『U-GO』をベースにしていたので、大きな違いがあります。

走行モードは、スポーツ、スタンダードと、出力を抑えたECONの3つです。特徴的なのは、乗ったままでも後退がラクにできるリバースモードを備えていることです。狭い道での切り返しには重宝しそうです。後退は、EVなら簡単に追加できそうな機能なので、今後の電動バイクのスタンダードになってほしいです。

ハード面の主な変更点は、EM1 e:がインホイールモーターだったのに対して、CUV e:は減速機を介した機構になったことです。後藤さんによればこの変更は「登坂性能や最高速度(出力)の両立のため」だそうです。最高速度は80km/h以上になります。

考えてみるとBMWの『CE04』や『CE02』などプレミアムな電動スクーターは減速機を組み込んだタイプで、インホイールモーターは小型で安価なスクーターに多いです。

CUV e:はプレミアムというわけではありませんが、性能向上を狙って減速機を組み込んだ電動スクーターの乗り心地は良さそうです。試乗できる機会が待ち遠しいです。

大きく改善したソフトウエアでナビ性能もアップ

ソフト面でもCUV e:には大きな進化がありました。搭載しているモニターは7インチのTFTフルカラー液晶メーターで、スマホと連携させることでハンズフリー通話や音楽の再生が可能になります。

システムはホンダの新しいコネクテッド機能、『Honda RoadSync Duo』になりました。搭載しているナビは独自のマップを持っていて、自車位置はGPS信号で確認しますが、自動車のナビのように、トンネルでも位置表示ができるようになっています。

ガチャコを利用する場合、ナビでバッテリー交換ステーションを中継地にするルート検索もできます。この場合、充電残量に応じて交換ステーションを表示してくれます。ステーションはリスト表示されるので、検索も簡単にできます。

ナビの操作は、左手のグリップ手前に装備したジョイスティックタイプのスイッチでできるため、目線を大きく移動させる必要がなく、安全性が高まります。オートバイで前方から視線をはずすのは、とても怖いですから。

ソフトウエアはOTA対応なので、新しい機能が追加されればアップデートされていきます。

また四輪のEVではあたりまえになりましたが、スマホのアプリでバッテリー残量などの確認ができるのも特徴です。これからは、オートバイでもこうした機能が普通になるのかもしれません。

ガチャコ利用なら初期費用が20万円を切る

ここで改めて、ガチャコを利用した場合のCUV e:のコストを考えてみます。

バッテリーが2個なので、自前で揃えて、2個同時に充電するために充電器を2個にすると、合計金額は52万8000円になります。そこそこ高いです。国の補助金額はまだ決まっていませんが、数万円になるのではないかと思われます。ちなみに原付一種のEM1 e:は2万3000円でした。

でも近くにガチャコのバッテリー交換ステーションがあれば、コストは一変します。まず、バッテリーを購入する必要がありません。車両本体が税込みで約20万円なので、数万円の補助金があれば10万円台半ばになります。そして15kWh分の電力量が含まれた月額2805円(税込)の会員料金で、ガチャコのバッテリーを利用することができます。

仮に購入するとバッテリー2個と充電器2個で約327800万円です。ガチャコの現行会費ならおよそ117か月分にもなります。ガチャコを利用するとコストが大幅に下がるだけでなく、バッテリーの劣化を心配する必要がありません。

【関連記事】
ホンダの電動バイク『EM1 e:』を購入【前編】バッテリー交換システム普及に期待!(2023年9月17日)

ホンダのEVスクーター『CUV e:』世界初公開/開発担当者が自らポチる期待の出来映え!

電動シェアスクーターのステーションが併設されている、世田谷区のGachacoステーション。

なおバッテリーの交換ステーションは2025年4月1日現在で、東京都内44か所(23区内に34か所)、埼玉県に2か所、大阪エリアで7か所にあります。都内は2023年9月からだいぶ増えましたが、大阪は変わりません。

言わずもがなですが、バッテリー交換式の電動バイクは交換ステーションの数が利便性、普及速度に直結します。ガチャコのステーションがどんどん増えることを期待したいです。

ところでCUV e:は、開発に携わった人たちの間で購入予約をする人が多いそうです。開発責任者の後藤さんをはじめ、モーターサイクルショーの会場で説明を担当していた開発者たちも購入する予定だと話していました。購入しようと思った理由は、オートバイとしての基本性能の高さとともに、埼玉県朝霞市にあるホンダの研究開発拠点にガチャコのステーションが設置されたことだそうです。確かに、普段から行く場所にステーションがあれば、CUV e:の利便性やコスパは格段に上がります。

なんにしても、作った人が率先して乗りたくなる乗り物は興味をそそられます。私自身、都内の集合住宅在住でオートバイを置く場所がとても限られているのが問題ですが、なんとかすることができたら思わずポチりそうな1台です。

取材・文/木野 龍逸

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この記事を書いた人

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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