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【2026全日本EV-GP 第1戦】テスラvsヒョンデの戦いが白熱/開幕戦はモデルSプラッドのKIMI選手が優勝

【2026全日本EV-GP 第1戦】テスラvsヒョンデの戦いが白熱/開幕戦はモデルSプラッドのKIMI選手が優勝

電気自動車で競う「EV-GP」が開幕。筑波での第1戦は3年連続総合王者を目指すKIMI選手が優勝しました。ヒョンデ IONIQ 5 N が4台参戦するなどして、見どころ満載だったシーズン初戦をレポートします。

目次

4台のIONIQ 5 N が「モデルS」包囲網を形成

「2026 ALL JAPAN EV-GP SERIES」(EV-GP)は日本電気自動車レース協会(JEVRA)が主催しているシリーズ戦です。2026年3月28日(土)に筑波サーキット(茨城県下妻市)で行われた「筑波55kmレース」で、全6戦で競う17年目のシーズンが幕を開けました。10月までに各地のサーキットを転戦します。

初戦にエントリーしたのは13台でした。2024年、25年と総合優勝しているKIMI選手(テスラ モデルS Plaid)が今季も同じマシンで参戦。チャンピオン争いの中心となるのは間違いないでしょう。モーター出力別にクラス分けされているEV-GPの最高峰「EV-1」クラスで、モデルSに対抗するのがヒョンデ IONIQ 5 N勢です。

決勝レース序盤、KIMI選手のモデルSを猛追する加藤選手(No.65)と小峰選手(No.22)のIONIQ 5 N。さらにモンド選手のモデル3(No.55)が追走。

昨年、一昨年と1戦ずつ、KIMI選手を破って優勝している小峰猛彦選手と、EV-GPでは「いつメン」の柴田知輝選手、冨田賢吾選手がエントリー。さらに、今回が初参戦となった加藤正将選手も加わりました。加藤選手はフォーミュラ・ニッポンやSUPER GTも経験しているレーシングドライバー。パフォーマンスブルーのヒョンデ4台が並び、テスラ包囲網形成という印象でした。

初参戦の加藤選手。

EV-2クラス(モーター出力250kW以上400kW未満)には西島真選手とモンドスミオ選手がモデル 3 パフォーマンス(M3P)でエントリーしました。初戦はこの2台だけでしたが、同クラスはM3Pが多数参戦してきた激戦区。2戦目以降の参加チームにも要注目です。

クルマ好きの仲間で持続可能なモータースポーツに挑戦

EV-3クラス(モーター出力150kW以上250kW未満)のエントリーは1台だけで、モデル 3 RWDで初エントリーした天田啓紀選手です。ただし新顔というわけではありません。2023年からe-Powerの日産ノートでEV-R(レンジエクステンダー)クラスに参戦を続けてきた「MKproject」が、今季はBEVにもチャレンジ。天田選手も過去2戦でクラス優勝を果たしています。

MKprojectのみなさん。左端が三井監督。

MKprojectの三井亮監督に話を聞きました。日産ノートで参戦を始めたのは2023年。持続可能なモータースポーツとしてEVレースに取り組んでいるJEVRAの理念に共感できたそうです。「いい歳をした大人が『こういうことにチャレンジしています』とちゃんと言える。そういうモータースポーツをやりたいと思いました」。

翌年からノート2台体制になり、昨年も全戦に参戦するなどEV-GPではおなじみのチームに。メンバーは三井さんのプライベートガレージに集まるクルマ好きのみなさんで、ピットは和気あいあいという雰囲気。

「いつかはBEVも、と考えていました。今年は3台体制で、ドライバーはこれまで通りにレースごとに交代します。BEVはバッテリーの管理が難しいので、まずはモデル3でデータをしっかり集めるのが目標です」(三井さん)

BEVはこのほか、フルカスタムされたモデューロレーシングHonda e(EV-P=プロトタイプクラス)も、3年目のシーズンに挑みます。さらにEV-RクラスにはMKprojectのノートを含めてe-Power勢4台がエントリーしました。

KIMI選手が7戦連続のポールポジション

午前中に行われた予選でトップタイムを記録したのは、KIMI選手(1分01秒137)でした。昨季第2戦から続いているポールポジション獲得は、これで7戦連続です。もはや定位置。2位に入ったのがEV-2クラスのモンド選手(1分02秒704)。パワーに勝るヒョンデ勢を抑えました。3番手が小峰選手、次いで加藤選手で、いずれもIONIQ 5 N。

5番手は西島選手で、これまたクラスが格上の柴田選手と冨田選手を上回るタイムをマーク。グリッド順は「テスラvsヒョンデ」の激しいバトルを予感させる並びとなりました。

予選終了後は、各車が決勝に備えてバッテリーを充電します。ドライバーの皆さんもそれぞれに昼食タイム。

ピットでの話題は「ヒョンデ賞」でした。ヒョンデモビリティジャパンは昨季、IONIQ 5 Nのドライバーを対象に、各レースの上位入賞者やシーズンのポイント上位者に3~50万円の賞金を贈呈していましたが、今季はバージョンアップ。ヒョンデ賞としてEV-GPの総合チャンピオンを韓国で開催される「Hyundai N Festival N1カップ2027」に招待する、と発表しました。渡航費やマシンの準備費用などもフルサポートで、しかもヒョンデのドライバーでなくても対象になるという太っ腹。チャンピオンの座がより輝かしいものになりました。

決勝レースはハイペースで展開

そして迎えた午後からの決勝。ドライコンディションのまま少し気温も上がって、すっかりEVレース日和です。各車がきれいにスタートを切って、ホールショットはKIMI選手が奪いました。続いたのは小峰選手。インからモンド選手をかわして第一コーナーへ飛び込みます。加藤選手も加えた4台がハイペースでレースを引っ張る展開になりました。

55km~60kmの距離に設定されたEV-GPの決勝レースは、どのBEVも全開走行では走りきれません。バッテリーを電欠させず、熱ダレさせずに走り切るテクニックが必要。つまり「どうやって相手にバッテリーを酷使させるか」という駆け引きもまた、レースの見どころになります。

そのあたりを熟知しているKIMI選手は決勝前に「ヒョンデさんにチーム戦で挑まれると難しくなるかもしれない」と警戒していましたが、レースはまさにそういう展開になりました。

IONIQ 5 N が交替でモデルSプラッドを猛追

まずアタックを仕掛けたのは加藤選手。コーナー進入で並びかけるなどトップ奪取をうかがいます。KIMI選手も簡単には譲りません。1分6~7秒台でバトルを演じる2台が少しずつリードを広げていきました。

ところが18周目、加藤選手のマシンはトラブルを抱えたようで急にペースダウンしてしまいます。代わって2位に上がってきたのは小峰選手でした。ペースを上げてKIMI選手を追走します。

この結果、27周のレースを通じてパフォーマンスブルーの2台が交替で白いテスラを猛追する展開になりました。加藤選手も小峰選手も作戦を立てていたわけではなく、「成り行きでそうなった」とのこと。逃げ切ったKIMI選手は「7割ぐらい後ろを見ていたかも」と振り返りました。スリリングなトップ争いが続き、見ている側としては最後まで楽しめるレースでした。

昨年王者のKIMI選手が第1戦を勝利

最後まで激戦の末、KIMI選手が逃げ切って勝利を飾りました。

決勝の結果は、総合1位がKIMI選手、2位が小峰選手、3位がモンド選手。以下、柴田選手、西島選手、加藤選手、冨田選手、天田選手、井岡選手の順でした。

3連覇に向けて順調なスタートを切ったチャンピオンですが、「ギリギリ」という言葉も飛び出しました。「加藤さんがガンガン来たので結構アクセルを踏まされてしまって、後半に小峰さんが来て……。バッテリー残量は17%ぐらいありましたけど、熱がたぶんギリギリでした」(KIMI選手)

テスラの連勝を二度にわたってストップしている小峰選手も、今回は及ばず。「最初は少し引いていて、プレッシャーをかけつつ、終盤で仕掛けられたらと思っていましたが、KIMIさんはまだ余裕があった感じですね。なかなか難しいです」(小峰選手)。

EV-GPならではの「楽しさ」はいろいろ

一方、初参戦で快走を見せた加藤選手はゴール後、バッテリー過熱が失速の原因だったと明かしてくれました。制御が入ってスピードが出なくなり「すっかりお仕置き状態でした」と苦笑い。

「自分なりのマネジメントはしていたんですが、足りなかったですね。最初からしっかりレースプランを組み立てなきゃいけない。内燃機とは違うところで、そこは面白いなと思いました。結果は悔しいですが、ライバルとの違いも試せましたし、次は表彰台を目指します」(加藤選手)。勝利に向けた手応えも感じていた様子で、次戦以降に期待できそうです。

初参戦のEV-GPは悔しい結果だった加藤選手。

同じIONIQ 5 Nで4位に入った柴田選手は、加藤選手に先着できたことを喜んでいました。というのも、クルマを買うきっかけになった試乗イベントで「加藤さんがドライブするIONIQ 5 Nの助手席に乗せてもらった」のだとか。「すげえな、こんなに攻めるんだ、と思ってました(笑)」。そんな相手とサーキットで対決して、勝てたというのはドラマチック。マイカーで気軽に参加できるEV-GPならではのエピソードでもありました。

もうひとつ「EV-GPの魅力」を感じた一幕を紹介します。モンド選手が独自に開発したレース専用アプリです。充電残量やバッテリー温度をリアルタイムで表示するだけでなく、GPSでラップタイムも計測。周回数とタイムの推移を表示して、今のペースで走って熱を持ちすぎないか、最後まで電欠しないか、センターディスプレーに表示することができます。それぞれのタイヤの空気圧もわかるそうです。シーズンオフにAIにプログラミングさせて作ったのだとか。

自作アプリでデータを把握。表彰台をGETしたモンド選手。

EVレースの駆け引きに必要なデータをコクピットで読み取れるようにしたわけですね。これはアドバンテージになりそう。モンド選手は昨季のEV-3クラス王者で、今季はEV-2クラスの制覇を狙います。この日も見事に表彰台をゲットしました。

「データで勝つって、面白いじゃないですか。ただ車を買って乗るだけじゃなくて、データを解析して走り方を考えて、それで順位を上げることができる」(モンド選手)

EVレースでバッテリーの過熱や電欠が起きることを「だからダメ、みたいなマイナスイメージで捉えてほしくない」とモンド選手は話します。「どんなレースもレギュレーションがあるから面白くなるわけですよね。制約があるのはいいことだと思ってます。クリアするためにいろいろ考えるのが楽しいんですよ」。

ゴール直後、熾烈な先頭争いを演じたドライバーが談笑。参戦者がそれぞれにレースを楽しんでいるのもEV-GPの魅力です。

テスラvsヒョンデの爆速対決を軸に、またいろいろなドラマが繰り広げられているEV-GPに、今年も注目したいと思います。新型の日産リーフやスズキ e ビターラ、ホンダ Super-ONEなど、新しいチャレンジャーがどんどん参戦してくれることにも期待しています。

第2戦は4月26日(日)にモビリティリゾートもてぎで開催予定。詳細なリザルトや日程は、日本電気自動車レース協会(JEVRA)の公式サイトに掲載されています。

取材・文/篠原 知存

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この記事を書いた人

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜2025.12)、LiveWire ONE(2026.1〜)。

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