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EV45台を導入した「アルフレッサ」がアンケート調査/ドライバーの85%が「疲れにくい」と回答

EV45台を導入した「アルフレッサ」がアンケート調査/ドライバーの85%が「疲れにくい」と回答

医薬品卸大手のアルフレッサが、今年から業務用車両として導入したEV(ホンダN-VAN e:)を使う従業員へのアンケート調査を実施。約85%が「疲労感が減った」と答えていることを発表しました。現場を訪ねてドライバーの声や導入の経緯を聞いてきました。

目次

全国各地の事業所に合計45台のEVを導入

取材に訪れたアルフレッサ府中事業所。

アルフレッサ株式会社は、日本の医薬品サプライチェーンを支える社会インフラ企業。医療用医薬品の流通が主な業務です。グループとして「サステナブル社会への貢献」を掲げ、クリーンエネルギーの利用拡大やCO2排出量の削減に取り組んでいます。2025年1月に、アルフレッサと関連物流会社エーエル プラスの業務用車両として、群馬、京都、東京の物流拠点に45台のEVを導入しました。

訪問したのは、EVを導入した府中事業所・営業所(東京都府中市)です。最初に案内してもらったのは立体駐車場の4階。EV用フロアのようになっていて、多くの区画に普通充電器が設置されており、まだ真新しいホンダ『N-VAN e:』がずらりと並んでいました。

N-VAN e:は2024年10月にホンダが発売した軽商用EVです。個人ユースを想定したグレード(e: FUN)も設定されていますが、ここに並んでいるのはもちろん「働くクルマ」たち。撮影させてもらっている間にも、車の出入りはひっきりなし。いかにも物流の現場という感じです。

出力6kWの普通充電器が並んでいました。N-VAN e:は6kWの普通充電に対応しています。

たくさんの荷物を積んで走ることが基本なので、運転席しかないシングルシート仕様(e: Gタイプ)もありました。2席のクルマには、後部座席を外した一般的なものもあれば、発表時に話題になった縦並び2席のタンデム仕様(e: L2タイプ)も。使い勝手を試しているのでしょう。

1日約40kmを走る仕事で電欠の不安はまったくなし

エンジン車からN-VAN e:に乗り換えた多摩第三支店の営業マン、小松幸一郎さんを紹介してもらって、感想を聞くことができました。

さまざまなシートアレンジの使い勝手を試しています。ドライバーは、営業マンの小松幸一郎さん。

「1月から乗っていてかなり違和感はなくなりました。エンジン音がしないので、最初のころはメーターを見て、そのスピードに驚いたりしていました」(小松さん)

エアコンのオン・オフで電費が大きく変わることにも戸惑ったそうです。航続距離が急に減ったりするのは、たしかにEVあるあるです。「ただ、私の移動範囲では電欠が心配になったりすることはありません」と小松さん。担当している病院や開業医、薬局などを回るのが日常業務で、移動距離は1日40kmほどだそうです。

ガソリン車との違いを聞いてみると「動きがスムーズなのがいいですね。上り坂も発進時も楽々ですし、体への負担が少なくなったように感じます。自宅のマイカーはガソリン車なんですが、次はPHEVなども考えるかもしれません」と前向きな答えが返ってきました。EVユーザーの中には「もうエンジン車には戻れない」と話す人がよくいますが、業務用車両を通じてEVの魅力に気づく人がこれから増えるかもしれませんね。

ヤマトオートワークスとの協業でEV化を推進

続いて訪れたのは会議室。車両のEV化を担当したコーポレート本部経営企画部経営企画グループの生方敦之さんにオンラインでインタビューさせてもらいました。

今回のEV導入は、アルフレッサ単体で取り組んでいるのではなくて、ヤマトホールディングスの子会社であるヤマトオートワークス株式会社との協業です。いち早く集配車両のEV化に取り組んできたヤマトグループは、ヤマト運輸などの各社で約2,300台(2024年10月1日現在)を運用中。そのノウハウを活かして、ヤマトオートワークスが、物流会社などの脱炭素化をサポートする「EVライフサイクルサービス」の提供を2024年10月にスタートさせています。アルフレッサは、同サービスの導入第一号となったのでした。

ヤマトとの協業については、ただEVをリース契約するだけではなくて、運用やメンテナンスの支援、エネルギー・マネジメント・システム(EMS)が活用できることなど、総合的なサポートが利点になると考えたそうです。

オンラインでお話しを伺った生方敦之さん。

「EMSの導入で事業所全体の電力を『見える化』できることはメリットがあります。たとえば特定の時間帯だけ電力使用量が一時的に上がって、基本料金が増えてしまったりすることがありますが、ピークカットができれば節約につながります。そういうことを、いま検証しているところです。将来的にはEVの充電をコントロールしたり、再生可能エネルギーを活用することなども見据えています」(生方さん)

ドライバーの85%が、EVは「疲れにくい」と回答

アルフレッサでは、EV導入に合わせて「EV運転による疲労感や勤務満足度の変化」に関するアンケート調査を実施しました(調査日は2025年4月7日~18日)。配送・営業など業務にEVを利用することになったドライバー41人がオンラインで回答しています。EVシフトについての現場報告として興味深い内容だったので、その一部を紹介したいと思います。

いろいろな質問項目があるなかで、注目したのは「ガソリン車との比較」を明示している質問です。マイカーを内燃車からBEVに乗り換えるなら、それなりに情報を集めるでしょうし、乗り替えには自分や家族の意思も反映されているはずですが、ある日突然、業務用車両がEVに変わったら、仕事で乗っているドライバーはどう感じるのでしょうか。

「運転による疲労度の変化」という項目では、「圧倒的に疲れにくい」「やや疲れにくい」と答えた人が計35人、約85%を占める結果となりました。また「運転後のストレスレベルの変化」については「かなり低減」「少し低減」が計33人と約80%に達しました。モーター駆動のため振動や騒音が少ないというメリットは、ビジネスユースでもすぐ実感できるということでしょう。駐車場でお話を聞いた小松さんの感想が、そのまま数値化されているような内容です。

5点満点で評価する「勤務満足度の変化」(3項目)は、「運転の快適さ」が平均4.38点、「騒音の少なさ」が平均4.46点、「体力的な負担軽減」が平均3.59点と、いずれもEVシフトに効果があったことをうかがわせる回答となっています。

こうした結果について、アルフレッサでは「心身の健康維持・ストレス低減につながる」「従業員の定着率向上、労働環境改善が期待される」などと評価しています。 一方で「航続距離の延長」(17人)や「充電時間の短縮」(9人)を希望する声もあることから「インフラ整備や技術改善への投資が必要。今後のEV活用拡大に向けて、利便性向上が課題」として対応を進めていくそうです。

ドライバーから寄せられた自由意見には、「運転は非常に快適。加速がスムーズでストレスが少ない」といった肯定的なコメントがある一方で、課題を指摘する声もありました。「冬場の暖房使用でバッテリーの減りが早く、走行距離が読めない」「気温により走行距離が大きく変動し、長距離移動は不安」などです。

N-VAN e:は、カタログ上のバッテリー総電力量が29.6kWhで、一充電走行距離は245km(WLTCモード)。物流拠点から各クライアントなど、ルートが決まったラストワンマイルの運用には十分なように思えますが、EVsmartブログの試乗レポートでは、バッテリー容量に対して実際に走れる航続距離が短いことも指摘されています。

【関連記事】
ホンダ『N-VAN e:』試乗記【木野龍逸/後編】実質的なバッテリー容量は22kWh程度か?(2024年12月2日)

アルフレッサでも、拠点や勤務内容によっては1日の走行距離が100kmを超えるケースもあるそうです。業務用だと一年中エアコンはフルに使うでしょうし、電欠の不安を感じてしまう人がいるのも仕方ありません。このあたりは、もう少し航続距離が長くてリーズナブルな商用EVの登場にも期待したいところです。ただ、EVシフトが従業員の働きやすさやストレス軽減に効果があることが、アンケート調査ではっきりしたことは心強いですね。

「日常的に車を使っている担当者は、たとえエンジン車からエンジン車でも、車両の変更そのものを嫌がる傾向があります。電動化というのは大きな変化なので、ハレーションがあることも覚悟していました。でもいまのところ、多くのドライバーが非常に前向きに受け止めてくれている。今後も配送用の車両を中心にEVの導入を考えていきたいと思っています」(生方さん)

EVを仕事で使うドライバーにフォーカスした定量調査はこれまであまり例がなく、「導入を考えている企業のみなさんもぜひ参考にしてほしい」とのことなので、詳しく知りたい方はこちら(アルフレッサ公式サイト)からご確認ください。

街なかで商用EVを見かけることも増えましたが、ドライバーさんはこんなことを感じていたんですね。実際に「疲れにくい」「ストレスが減る」というメリットがあると知ったら、これまでEVに乗ったことのない人たちも興味を持ってくれるかもしれません。また、運用上の課題についても広く共有することが、EVの普及や脱炭素社会の実現に役立つのだと、あらためて教えてもらえた取材でした。

取材・文/篠原 知存

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この記事を書いた人

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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