バイデン-ハリス政権が米国製EV充電網に向けた新基準と大きな進展を発表

アメリカのEV普及政策の現状を改めて確認するため、2023年2月、バイデン政権が発表したEVに関する新基準について、アメリカのメディア『CleanTechnica』による詳細なレポートを全文翻訳でお届けします。

バイデン-ハリス政権が米国製EV充電網に向けた新基準と大きな進展を発表

メイド・インUSA政策と新たな技術標準がEV充電産業の未来を支える。官民一体となった取り組みが全国規模の充電網の構築を加速させ、製造業の好況を促進させると評価する内容です。

【元記事】Biden-⁠Harris Administration Announces New Standards & Major Progress For A Made-In-America National Network Of EV Chargers by Guest Contributor on 『Clean Technica

※記事中写真はElectrify America のニュースリリースから引用。

EV普及に向けた意欲的施策

車で長距離を旅するアメリカン・ロードトリップ文化を電気自動車でも楽しめるよう、バイデン-ハリス政権は本日、便利で信頼できる国産EV充電網を構築するための一連の施策を発表しました。これらの施策は、アメリカ全土の高速道路や一般道に50万基のEV充電器からなる充電網を構築し、2030年までに新車販売の少なくとも半分をEVで占め、同時に国内のEVおよびEV充電産業の成長を継続する産業戦略も推進することで、バイデン大統領の気候変動に対する意欲的な目標を達成する一助となります。2050年までにネットゼロを達成する過程で、関連する製造業と設置業には様々な高収入の雇用が生まれるのは間違いありません。

バイデン大統領の超党派インフラ法は、EV充電に75億ドル、クリーンモビリティに100億ドル、EVバッテリー部品や重要な鉱物資源、素材などに70億ドル以上を投資するというもので、これらの目玉政策は、インフレ削減法(IRA)の次世代バッテリーに対する画期的な支援、EVの購入や充電インフラの設置を支援するための税控除の新設・拡大、さらにEVや関連部品の国内生産を促進し全国的なEV充電網を構築するための、連邦政府のその他数十もの施策を補完する役割を果たします。結果、アメリカの未来の交通は、これまで以上にクリーンで安全、より安価で、より信頼性の高いものになりつつあります。本日の発表は、アメリカの産業の発展に関する大統領の戦略の成功を示すものであり、メイド・イン・アメリカのものづくりと高収入の労働組合雇用によってクリーンエネルギーへの移行が確実に推進されることを意味します。

バイデン大統領のリーダーシップと、連邦政府による過去に例を見ない投資により、就任以来、EVの販売台数は3倍になり、公共充電器の数は40%以上増加しました。現在、300万台以上のEVが公道を走行しており、国内には13万基以上の公共充電器が設置されています。便利で信頼性の高い充電網をさらに拡充することが、EVの充電をシームレスな体験にする上で決定的に重要です。現在、テスラやGM、EVgo、パイロット、ハーツ、bpなどの企業が、今後2年間に連邦の資金を補う形で民間からも出資し、数千基もの公共充電器を設置して各社の充電網を拡大すると発表しており、EV充電器の設置目標はこれまで以上に達成に近づいています。

具体的な施策の内容は?

ロッキー山脈を望む超高出力急速充電ステーション(出典:Electrify America)

2023年2月15日に発表されたアクションは以下の通りです。

運輸省は、エネルギー省と共同で、長距離運転時など、すべてのアメリカ国民にとってEVの充電が便利で信頼できるものになるよう、新しい基準を最終決定しました。新基準は、どの車種に乗っていても、どの州で充電していても、誰もが充電網を利用できるようにするものです。また、この基準では、充電器を整備する強力な労働力を確保することも求められています。

米連邦道路局(FHWA)は、連邦政府が資金を提供するEV充電器について、ビルド・アメリカ、バイ・アメリカ法に準拠するための最終計画の概要を発表しました。超党派インフラ法を通じて資金提供されるEV充電器は全て、直ちに、米国内で製造されたものでなければならないというものです。この計画では、直ちに、あらゆる鉄製または鋼製の充電器の筐体またはハウジングの最終組み立てとすべての製造工程を米国内で行わなくてはならないとしています。2024年7月までに、部品のコストベースで少なくとも55%を国内で製造しなくてはなりません。

最近組織されたエネルギー・運輸合同オフィスは、「ライド・アンド・ドライブ・エレクトリック」研究開発プログラムのための資金を提供する意向を表明しました。このプログラムは、EV充電器の信頼性、レジリエンス、公平性、人材育成を支援することで、国民全員のためのEV充電器の全国的な充電網を構築する目標を推進するものです。

エネルギー省は本日、23州にわたる数百万人の国民を対象とした革新的な中型/大型EVトラックの充電および水素コリドー(水素ステーションの重点設置経路)のインフラ計画を開発する7つのプロジェクトに740万ドルの資金を提供することを発表しました。

FHWAは、まもなく開始される「充電・給油インフラ(CFI)」の裁量助成プログラムの詳細を発表しました。このプログラムでは、学校やスーパー、公園、図書館、集合住宅など、国民の生活や仕事に関連するあらゆる場所に、公共充電器および代替燃料給油インフラを配備するために、州、地方自治体、部族、地域、公的機関への第1ラウンドの資金7億ドルを含む、5年間で25億ドル以上の資金を提供する予定です。

バイデン-ハリス政権は、上記の投資とメイド・イン・アメリカ政策によって、米国内のEV充電器メーカーや充電ネットワーク事業者の新たな施策を含む、製造業の大規模な雇用や、その他の新規施設の建設が促進されたと強調しました。

こうした発表は、これまで民間企業がアメリカ国内のEV、バッテリー、EV充電器の製造に投資してきた1000億ドルをゆうに超える資金の追い風となります。本日の発表は、大統領の産業戦略が成功している証拠であり、連邦政府の資金が民間投資を呼び込んで、アメリカ国内の製造業と労働組合の高賃金の雇用によってクリーンエネルギーへのシフトを確実にするためのものです。バッテリー製造への投資、インフレ抑制法によるEV購入や充電インフラへの税額控除と合わせ、これらのプログラムは、政権の気候変動目標達成の鍵となります。

立地がよく故障が少なく、ユーザーフレンドリーなEV充電網

充電を身近なものにし、米国内での良質な製造業の雇用を促進するため、バイデン大統領は、2030年までに便利で信頼性が高く、使いやすい、50万基規模のEV充電網を構築することを公約に掲げています。このビジョンをサポートするべく、運輸省はほとんどのEVオーナーが無理なく大陸を横断できるよう主要幹線道路に焦点を当てたEV充電網を構築するという50億ドルのイニシアチブ、国家EVインフラプログラム(NEVI)を発表しました。この全米充電網は、ドライバーにいつでも充電場所を見つけられるという自信を与え、充電インフラとEVへの民間投資を加速させ、2030年までに自動車販売の少なくとも半分をEVにするという大統領の目標をサポートします。

本日、FHWA は合同オフィスの支援を受けて、NEVI が出資する充電器を含む、連邦政府が出資する EV 充電器の新しい国家基準を発表しました。NEVIプログラムには、全米50州とワシントンDC、およびプエルトリコが参加しており、初回の出資で総延長75,000マイル以上の道路網に充電器が設置されます。こうした国家基準は、ガソリンスタンドで給油するのと同じくらい簡単にEVを充電できるよう、連邦政府の資金を適切に割り当てることで使いやすく、壊れにくく、アクセスしやすい場所に充電網を構築するためにためのものです。これまで、充電ステーションの設置、運営、メンテナンスに関する包括的な基準はなく、コネクタの種類、支払い方法、データプライバシー、充電器のスピードと出力、信頼性、全体的なユーザー体験などの主要な評価基準で充電ステーション間に格差が存在しています。EVユーザーを対象とした最近の調査では、充電が遅すぎたり、混雑していたり、そもそも充電器が動作しないなど、充電器に不満があることが報告されています。FHWAの新基準のもと、アメリカ政府はこれを解決します。

新基準により、以下を約束します。

●一貫性のあるコネクタの種類、出力、急速充電のニーズを満たす充分な数の充電器を確保することで、予測可能で信頼性の高い充電体験を提供する。
●充電器に97%の最低稼働率を設定することで、ドライバーが必要なときに充電できるようにする。
●充電器の位置、価格、空き状況、アクセスなどのデータを地図アプリで公開することで、ドライバーが必要なときに簡単に充電器を見つけられるようにする。
●全ての充電器で同じ本人確認手段が使えるようにすることで、ドライバーが複数のアプリやアカウントを持たなくても良いようにする。
●プラグアンドチャージ(課金情報を入力しなくても、ケーブルを挿すだけで充電が開始される)などの先進的な機能との互換性を充電器メーカーに求めることで、将来にわたってドライバーのニーズをサポートする。

また、この新基準は登録見習い制度やEVインフラ訓練プログラム(EVITP)などの強力な労働力基準を義務付けることで、EV充電へのこれまでの投資が高収入の雇用を創出し、EV充電器が十分にメンテナンスされるようにサポートします。ホワイトハウスのタレント・パイプライン・チャレンジ(インフラ系の雇用を積極的に増やそうとする雇用者をサポートする政策)を通じて、国際電気労働者同胞組合(IBEW)はEVITP経由で2万人の電気技師を認定しています。

これらの基準により、異なる充電網が運営する充電器が同じように動作することが保証され、どの車種でも、どの州にいても、予測可能な充電体験をドライバーに提供することができるようになります。

EV充電網の建設を加速する

バイデン-ハリス政権のEVに関するアクションは充電網の事業者を後押しし、アメリカを横断するEV充電網の構築を加速させます。公的資金が民間投資を補うことで、充電器の空白地帯を無くし、地方やアクセスが困難な場所にサービスを提供し、地域社会の充電能力を高めることになります。本日の発表では、すべてのEVが利用できる公共充電器が10万基以上追加される予定であり、以下のものも含まれます。

テスラは、米国のスーパーチャージャーとデスティネーションチャージャーの一部を初めてテスラ以外のメーカーに開放し、2024年末までに少なくとも7,500基の充電器をすべてのEVに利用可能にします。開放される充電器は、全米に分散される予定です。中には、すべてのEVの移動の自由度を高めるために、高速道路沿いの250kWのスーパーチャージャーを新規および既存合わせて少なくとも3,500基、都市部や地方のホテルやレストランなどでレベル2充電(7kW~19kW)のデスティネーションチャージャーを設置する予定です。EVドライバーは全員、テスラアプリやウェブサイトを使用してこれらの充電器にアクセスできるようになります。さらに、テスラはニューヨーク州バッファローの工場で製造されたスーパーチャージャーの全国ネットワークを2倍以上に拡大する予定です。

ハーツ・レンタカーとbpは、EVの普及を促進するため、全米にEV急速充電網を構築すると発表しています。ハーツとbpは、アトランタ、オースティン、ボストン、シカゴ、デンバー、ヒューストン、マイアミ、ニューヨーク、オーランド、フェニックス、サンフランシスコ、ワシントンDCなどの主要都市を含む全米のハーツ拠点に充電インフラを導入する予定です。充電ハブは、空港などの需要の高い場所で、ライドシェアやタクシー、レンタカー利用者、一般ユーザーに利用していただく予定です。中には幾つか「ギガハブ」と呼ばれる大型充電拠点も予定されています。bp社は、2030年までに米国内のEV充電に10億ドルを投資することを目標としており、ハーツは2024年末までにフリートの4分の1をEVにすることを目標としています。

パイロット・カンパニー、ゼネラルモーターズ、EVgoは、アメリカのハイウェイ沿いにあるパイロットとフライングJのトラベルセンターに、高出力の350kW急速充電器2,000基を設置し、大陸横断充電網を構築するために提携することを発表しました。500カ所近くあるトラベルセンターで充電が可能になることで、都市部と地方を結ぶ長距離のEVドライブが可能になります。本日、両社は、この充電網の最初の200基以上の充電器が、2023年中に利用可能ろなる見込みであると発表しています。

トラベル・センターズ・オブ・アメリカとエレクトリファイ・アメリカ(EA)は、トラベル・センターズ・オブ・アメリカとペトロの一部店舗でEV充電を提供することを発表し、今後5年間で主要幹線道路沿いの200箇所に約1,000基の充電器を設置することを目標に掲げました。

EAはこのほど、カリフォルニア州サンバーナーディーノ郡に新設した75MWのソーラー発電プロジェクト「エレクトリファイ・アメリカ・ソーラー・グロー™ 1」の起工式を行い、米国内の800カ所以上のDC急速充電ステーションを、ゆくゆくは全て再エネでサポートできるよう第一歩を踏み出しました。

メルセデス・ベンツ、チャージポイント、MN8エナジーは、アメリカとカナダに2,500以上の誰でも利用可能なDC急速充電ポートを備えた400以上の充電ハブを展開するパートナーシップを発表しました。

チャージポイント、ボルボ・カーズ、スターバックスは、ワシントン州シアトルとコロラド州デンバーを結ぶ1,350マイルの試験ルート沿いの最大15カ所に60基のDC急速充電器を配備するパートナーシップを発表し、2023年夏までに完了させる予定です。

ゼネラルモーターズは、FLOと共同で、GMの「ディーラー・コミュニティ充電プログラム」を通じて、2026年までに地域コミュニティに最大4万基のレベル2充電器を設置することを発表しました。新しい充電ステーションは、GMのアルティアム・チャージ360ネットワークに加わり、EVユーザーなら誰でも利用できる予定です。

オクラホマ州タルサを拠点とするEV充電スタンド運営会社フランシス・エナジーは、2023年に全米40州に進出し、自治体、ディーラー、先住民保留地、民間企業との提携により2030年までに5万基のEV充電器を設置する計画です。現在、フランシス・エナジーのネットワークの75%はJustice40のコミュニティ内にあります。

ゼロエミッションのトラック輸送ソリューションプロバイダー、フォーラムモビリティは、最近、1,000基以上の急速充電器の配備に4億ドルを投入することを発表しました。この充電インフラは、今後10年間にカリフォルニア州のサンペドロ港とオークランド港で運行しはじめると予測される何千台もの大型EVトラックに対応するものです。この充電設備は、港湾や貨物輸送路における有害な排出ガスを削減すると同時に、恵まれない地域に600人以上の組合員雇用を新規に創出することになります。

フォードは、2024年1月までに1,920箇所のフォード・ディーラーに、誰でも利用可能な、ケーブル2本出しの急速充電器を少なくとも1基設置することを約束しています。

メイド・イン・アメリカのEVの未来

EV充電器に関するビルド・アメリカ、バイ・アメリカ施策は、バイデン-ハリス政権がEV急速充電器製造への国内投資を新たに呼び込むことに成功したことを表しています。充電器メーカーは急速に事業を拡大しており、高品質で「バイ・アメリカ」基準に準拠した充電器を製造するために生産能力を増強し、良い雇用を創出し、米国がクリーンエネルギー業界のリーダーとして強力な地位を維持する支援しています。この戦略により、NEVIプログラムを通じて購入したEV充電器は本日以降全て、米国内で組み立てられたものであり、2024年7月1日までに製造された製品はビルド・アメリカ、バイ・アメリカに準拠するものとします。これにより国内のものづくりの積極的な拡大に貢献するような、サプライチェーンへの投資を支援します。

本日の発表は、米国内でのものづくりを促進するものです。EV充電機器に対するビルド・アメリカ、バイ・アメリカ要件は、製造基盤の活性化につながります。これらの要件に対する段階的なアプローチは、企業がEV充電器の部品の国内生産に投資する動機づけとなり、アメリカの労働者や企業を世界中の競争のリーダー的なポジションにすると同時に、企業がサプライチェーンを国内化するための移行期間も設けてくれます。ビルド・アメリカ、バイ・アメリカ法の要件を満たすために、国内メーカーは積極的に増産しています。行政管理予算局の新しいメイド・イン・アメリカ・オフィスは、省庁の専門家、労働者、産業界と協力し、主要部門における米国のものづくりの拡大を奨励することで産業戦略を確実に実行しています。

EV用充電機器の国内組立要件は、直ちに発効されます。これにより、連邦政府の資金援助を受けるすべてのEV充電設備が、アメリカの雇用と技術的リーダーシップに貢献することになります。

FHWAのバイ・アメリカ要件は、主に鉄鋼でできているEV充電器の筐体やハウジングに直ちに適用されます。つまり、これらの筐体の製造工程は、溶解や注湯からコーティングの塗布に至るまで、すべて米国内で行わなくてはならないということです。

2024年7月1日以降、FHWAは、EV充電器用に米国内で製造された部品は、この新しい産業の野心的な発展を象徴するように、コストベースで部品の国内製造率を55%以上とするビルド・アメリカ、バイ・アメリカ法の要件を満たすことを要求します。

NEVIプログラムの大部分で設置される充電器がビルド・アメリカ、バイ・アメリカ法に基づく55%国内製造要件に準拠するよう、逆に、その基準を満たさない機器は2024年10月1日までに設置しなければなりません。

連邦政府機関や州は、連邦政府が出資するインフラプロジェクトがアメリカ製の鉄鋼や建設資材、米国内で製造された製品を使用することで「メイド・イン・アメリカ要件」を満たしているか、確認・追跡するプロセスを立ち上げています。ほぼゼロからEV充電器業界を作り上げることに成功した米政府の功績は、メイド・イン・アメリカ政策によって製造業の基盤を構築することができることを表しています。

製造業ブーム

バイデン大統領の経済政策は、製造業ブームを起こしました。メイド・イン・アメリカ要件はすでに、「連邦政府の予算は米国内で生産・調達された製品に配分される」という強いメッセージを市場に送っており、産業界はこれに応えているのです。バイデン大統領の就任以来、企業はEV、バッテリー、充電器の製造に1,000億ドル以上の投資を行うことを発表しています。

最近の報告書によると、米国におけるEVと関連インフラへの民間投資は、今や初めて中国や他の国々を上回っています。3年前は、最先端のEV充電器産業でアメリカの存在感はほとんどありませんでした。しかし現在では次世代EV充電器をアメリカで製造するために、本社や施設、生産ラインなどを新設する投資を行っている企業が増えています。そのうちの6社にとって、こうした投資を行って製造拠点をアメリカに設けるのは初の試みとなります。

投資先は以下の通りです。

オーストラリアを拠点とするEV用急速充電器メーカー、トリチウムDCFC社は、8月にテネシー州レバノンにある米国初の工場の開所式を行いました。この工場では、ピーク時に年間最大3万基のDC急速充電器を生産する予定です。本日、トリチウムは、この施設に250人以上の雇用を追加し、同社のレバノン工場で合計750人以上のクリーンテック関連の雇用を創出することを発表しました。トリチウムは、成長産業における公平な雇用機会を創出するための全米的な取り組みである「ホワイトハウス・タレント・パイプライン・チャレンジ」に参加しています。

エレクトリファイ・アメリカは昨年、世界的な技術・電化企業であるシーメンスとフォルクスワーゲン・グループによる充電ネットワークへの4億5千万ドルの新規投資を発表しました。これらの投資は、2026年までに米国とカナダで、1,800カ所の充電ステーションに最大10,000基の超高速充電器を迅速に配備する計画の一環となります。

チャージポイントは、SMTCコーポレーションとのパートナーシップを拡大し、DC急速充電器の生産を拡大し、カリフォルニア州ミルピタスの施設にレベル2充電器の製造ラインを設置し、製造分野で約250名の新たな雇用を創出します。拡張された施設では、2026年までに10,000基のDC急速充電器と10,000基のレベル2充電器の生産が可能になる予定です。

スペインを拠点にEV充電とエネルギー管理ソリューションを世界に提供するウォールボックス社が、テキサス州アーリントンに北米初の製造施設を開設しました。7,000万ドル、15万平方フィート(約13,935㎡)のこの施設は、同社の次世代型ハイパーノヴァDC急速充電器を含め、2023年に25万基以上、2030年に100万基以上の充電器を生産する能力を備えています。この施設は、2025年までに250人のハイクラスな雇用を、2030年までに700人の雇用を生み出す予定です。

韓国を拠点とする超高速充電インフラに特化したEV充電企業、SKシグネットは、テキサス州プラノに米国初の工場を建設します。2026年までに、SKシグネットは年間最大10,000基のDC急速充電器を生産し、183人のハイクラスな技術者の雇用をサポートする予定です。

ドイツを拠点にバッテリー式EV充電ステーションを提供するADS-Tecエナジー社は、800万ドルを投資し、アラバマ州オーバーンに組み立て、販売、保管、修理を行う米国初の施設を建設する予定です。この施設では、180人以上の雇用が創出される予定です。

オランダのEV充電器メーカー、EVボックスは、イリノイ州リバティビルに初となる北米本社および工場を建設する計画を発表しました。60,000平方フィート(約5,574㎡)の施設で1週間に約200基のDC急速充電器を生産する予定で、この生産規模であれば近隣に80~120名の雇用が創出されると予想されます。

フリーワイヤーは、カリフォルニア州ニューアークに66,000平方フィート(約6,132㎡)の新しいグローバル本社を設立し、2,000万ドルを投じて超高速EV充電器の研究開発と製造に注力し、周辺地域の電化とクリーンエネルギーに携わるエンジニアおよび製造関連のハイクラスな雇用を200人分創出すると発表しました。

ABB E-モビリティは、最近、サウスカロライナ州コロンビアの新施設でDC急速充電器の生産を開始しました。今回の400万ドルの投資は、テキサス州シュガーランドにある研修センターと南カリフォルニアの商品開発/研究施設での事業全体で125人の雇用を増やすという以前の発表に続くものです。

シーメンスは、アメリカで2箇所目のEV充電器製造拠点としてテキサス州キャロルトンを選び、EV充電器の製造拠点を拡大しました。この発表は、シーメンスがテキサス州グランドプレーリーおよびカリフォルニア州ポモナの電気製品工場に新たに投資した1億4,000万ドル以上の資金に基づくもので、これらの施設は重要なインフラ市場に対応し、労働組合員の雇用を支えています。新施設は、2023年春にフル稼働に達する予定です。また、シーメンスは、EVインフラ・トレーニング・プログラム(EVITP)と提携し、アメリカのEV充電器設置作業員の熟練度を向上させるカリキュラムを開発しました。

一気通貫型のEV充電ソリューションを提供するエバーチャージ社は、カリフォルニア州ヘイワードに30,000平方フィート(約2,787㎡)の工場を新設し、2023年中旬頃までに従業員数を倍増する予定です。

溶接の老舗リンカーン・エレクトリックは、オハイオ州クリーブランドの施設で、電源技術における製造・エンジニアリングのコア技術を活用したDC急速充電器の新しい製品ラインを発表しました。

北米のEV充電網運営会社でスマート充電ソリューションプロバイダーのFLOは、今月初め、ミシガン州オーバーンヒルズにある米国初の組立施設に300万ドルを投資することを発表しました。この施設は、2028年までに25万基の充電器を設置し、730人以上の雇用を創出・支援し、ミシガン州の経済に7,600万ドルの貢献をする予定です。

エッジエナジーは、DC急速充電器用の3相パワーコンディショナーを製造するためにオハイオ州に1億5,000万ドルを投資し、今後24ヶ月間に60人の製造およびエンジニアリングの新規雇用を創出する予定です。

ブリンクは、メリーランド州ボウイの施設を3万平方フィート(約2,787㎡)拡張し、10年間で4,900万ドルを投資し、レベル2充電器の製造のために60人の新規雇用を創出する予定です。さらに、2023年には、DC急速充電器の製造工場として広さ200,000平方フィート(約18,580㎡)の施設を新たに建設し、10年間で総額1億5,600万ドルを投資し、160人の新規雇用を創出すると発表しています。

その他の企業やネットワークも、EV充電器のメンテナンスの徹底に取り組んでいます。

チャージヘルプ!は、SAE インターナショナルのサステナブル・モビリティ・ソリューションズと、次世代の認定EVサービス機器(EVSE)メンテナンス技術者のためのEV充電人材育成を支援するパートナーシップを発表しました。EVSEフィールドテクニシャンプログラムは、メンテナンス技術者がハードウェアやソフトウェアの問題を含む充電設備の技術的な部品を診断、報告、修理するために必要なスキルを有するか認定するものです。今後2年間で、この全国的なプログラムは、低所得者層、社会的弱者、一般に少数コミュニティなど、および他業種から転職してきた3,000人以上の研修生を支援し、こうした先進技術の仕事に就かせる予定です。

メルセデス・ベンツUSAと労働省は、16~24歳の学生を対象に、メルセデス・ベンツへの就職を含む、自動車技術者としてのハイクラスの仕事に就くための道筋を作るため、全米規模のパートナーシップを結んだと発表しました。ジョブコアでは今後、以下※のキャンパスでハイブリッド車やEVを学ぶ機会や、ハイブリッド車を使った研修の機会を提供する予定です。
※ ケンタッキー州モーガンフィールドのアール・C・クレメンツジョブコア、マサチューセッツ州チコピーのウェストーバージョブコア、ニュージャージー州エジソンのエジソンジョブコア、ユタ州クリアフィールドのクリアフィールドジョブコアです。ジョブコアネットワークは現在、全米50州、コロンビア特別区、およびプエルトリコに合計121のセンターを有しています。

北米でEV充電やその他の電化技術に関する分散型労働者管理ソリューションを提供するQメリットは、2023年に住宅や中堅商業施設に対して12万件以上のEV・電化作業を実施する予定です。この拡大は、Qメリットがこれまでに設置した25万基以上のレベル2充電システムおよび数十万基の関連電化技術に基づくものです。また、Qメリット・リソース・センターを通じて、自社が持つ12,000人以上の電気工事士のネットワークに対して、EVITP研修や認定へのアクセスを容易にします。このプラットフォームは、中小規模の電気工事業者(その15%以上が少数民族や社会的弱者企業)と、電気・電子分野でのキャリアを開始したい個人や、類似した業界からピボットする個人を結びつけることにより、多様性があり気候変動に配慮した労働力の育成を支援します。

上記の発表の詳細については、driveelectric.govをご覧ください。米国におけるEV充電への投資に関するより包括的なリストはこちらをご覧ください。

【関連情報】
ホワイトハウスのFACT SHEET

翻訳/池田 篤史(翻訳アトリエ)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. あまりにも彼我の差が大きくて。
    日本ではGXの投資で10年間で20兆円規模とか言っているようですが、カーボンニュートラル実現に向けて、EVの普及であるとか、充電網の充実であるとか、再生可能エネルギーをどう推進するのかとか、スマートグリットとどう向き合うのかとか、それこそこれからのカーボンニュートラルを実現していく日本の姿というものが全く見えてきません。未来に向けて、何を目指しているのでしょうね。
    EVを普及させていく社会は、雇用の拡大を産むというと言うような記述は、他国のことながら嬉しくなりますよね。
    米国からの圧力無いと変われない我が国ですから、ビシバシ圧力をかけて欲しいけど、ビルド・アメリカ、バイ・アメリカですのもね。そこは期待できないんでしょうね。

  2.  時を同じくして、日本政府がトヨタに次世代電池の開発援助金1200億円を支出するというニュースが流れました。見えてくるのは、米政府の考えていることは、テクノロジーの官による推進よりもEVインフラと製造業の賃金底上げまで考慮した関連産業のテコ入れだということです。製造業を途上国に振るここ数十年のトレンドは自国製造業の空洞化を生み出し、国際政治の争いに巻き込まれ、ひいては自国内の分断を生み出してきました。この点は日本も同様です。
     appleもMicrosoftもそして Teslaも、政府の補助金で業界のマジョリティーを獲得したわけではありません。新技術のイノベーションを自ら開発したことが今の地位を築いたはずです。私は、日本政府が莫大な税金を使って液晶ディスプレイの官民総がかり企業を作った比較的最近の施策を想起してしまいます。液晶ディスプレイの時代は過ぎ去ろうとしているのにです。
     トヨタならそのくらいのR&D予算は訳もないはずです。失敗しても誰も責任を取らない補助金政治は何のイノベーションも生み出さないでしょう。
     先日のトヨタの全個体電池のニュースリリースは、メディアの「誤報」を生み出しましたが、本来ならすでに同電池社が街中を走っているはずのトヨタの過去の発表が全くの絵に描いた餅だったことを指摘するメディアはありません。
     

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この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

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