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『BOXIV SHARE』でモデル3を借りてみた/EVカーシェアを広げるためのポイントは?

『BOXIV SHARE』でモデル3を借りてみた/EVカーシェアを広げるためのポイントは?

株式会社BOXIVの代表である「僕テス」トシさんへのインタビュー記事をお届けした次世代EVカーシェアサービス『BOXIV SHARE(ボクシブシェア)』。万博取材に行った大阪で、実際にモデル3を借りてみました。スマホアプリとの連携に優れたテスラ車はカーシェアでとても使いやすいことを実感。テスラのカーシェアがもっともっと広がるためのポイントを考えてみました。

目次

「アプリ完結型」とアピールしている使い勝手はどうなのか?

次世代EVカーシェアサービス『BOXIV SHARE(ボクシブシェア)』は、モデル3やYを中心に、ステーションによってはモデルSやモデルXなどのテスラ車を借りられるカーシェアサービスです。公式サイトなどで「アプリ完結型」とアピールされているように、予約から利用、返却まで、スマホアプリで行います。

4月某日。万博で活躍している自動運転の電気バスに乗ってみるため大阪取材へ出かけたチャンスに、大阪市内のステーションで実際にボクシブシェアを利用してみることにしました。

Android対応のアプリは「開発中」ということで、現状で利用できるのはiPhone専用のアプリです。私はiPhoneユーザーなので、App Storeからダウンロードしてインストール。免許証やクレジットカード情報などを入れて会員登録。と、このあたりまでは前回のトシさん取材時にすでに済ませてありました。

大阪市内、ボクシブシェアのステーションは南森町という地下鉄堺筋線の駅近くにあります。御堂筋を軸にしたキタやミナミといった大阪市内の中心的な繁華街からはちょっと外れた場所ですが、新大阪駅や梅田駅(大阪駅)、万博会場などからの地下鉄でのアクセスはまずますの場所。テスラのスーパーチャージャー「大阪-扇町」もすぐそばにある好立地です。

利用前日、南森町に着いてステーションの場所を確認。右に人が立っている交差点が地下鉄駅の入り口。ホテルも歩いて20秒くらいの好立地でした。隣に白いモデルYが停まっていて「これもシェアカー?」と思ったら、普通にコインパーキングを利用している一般車両でした。

大学が大阪だった私は、大阪取材などで出張の際はミナミに泊まって旧友と飲むのが恒例でした。でも、最近はインバウンド需要でしょうか、ミナミのホテルは1泊2万円超えが当たり前のようになっていて、少し外れた場所でもいいから手頃な宿を探すようにしています。今回は、ボクシブシェアのステーションを基準にして南森町でホテルを探してみると、シェアステーションの目の前にアパホテルがあり、価格も許容範囲だったので宿泊したのでした。

利用開始や返却などの操作は簡単&スムーズ

予約をはじめ、現地での利用開始、さらに返却などの手続きはすべて自分自身がスマホアプリで行います。傷のチェックとともにアプリの指示に従って「ホイルなどの写真を撮影して送信」といった初体験の手順はありましたが、戸惑うほどのことはありません。

貸出時のアプリ操作の流れ。

6時間の利用料金は追加補償込みで1万4100円でした

モデル3を借りたのは、朝9時〜15時までの6時間です。ボクシブシェアの料金は車種やステーション、借りる日程などによって異なりますが、基本的に「ミニマムチャージ」が6時間、南森町のモデル3は10,800円でした。6時間を超える場合、900円/1時間の「アワーチャージ」が必要になります。

また、シェア料金には対人対物、車両補償などの基本補償が含まれていますが、今回は車両補償の免責額10万円やノンオペレーションチャージも免除される「W安心オプション」に加入して、これが3300円/24時間。登録したクレジットカードから引き落とされた料金は1万4100円でした。

私は旅先でもできるだけ電気自動車のレンタカーを借りるようにしていて「EVがなければe-POWERを」ということで日産レンタカーの会員になっています。ノートのe-POWERを6時間借りたら1万円程度。1万4000円はリーフくらいの相場感(最近、現行型リーフのレンタカーはないですけど)だと思います。この価格でモデル3を利用できるなら、個人的には「ステーションさえあればモデル3(テスラ車)を選びたい」と感じます。

淡路島まで往復してバッテリー残量の心配は皆無

貸出時のバッテリー残量は90%くらい、航続可能距離は373kmと表示されていました。この日の目的地は、メーカーや車種の枠を超えたEVが集まる「AWAJI EV MEET 2025」が開催された淡路島の国営明石海峡公園です。南森町からの片道は70km弱。往復でも150kmくらいなので、バッテリー残量はまったく気にすることなく往復しました。

結果、国営明石海峡公園にはSOC(バッテリー残量)77%で到着。返却前に充電した扇町のスーパーチャージャーには62%で帰り着きました。往復約140kmで、30%弱(推計で約16kWh程度)のバッテリー消費だったことになります。旅先で借りた6時間のカーシェアで走る距離としては、最長レベルではないかと思います。

引き合いに出して恐縮ですが、搭載バッテリー容量が20kWhの日産サクラを借りたとしたら、南森町=淡路島の往復約140kmは帰り道でバッテリー残量がかなり不安(EVに不慣れな方であればなおさら)になる距離でしょう。モデル3なら、このくらいの距離は何も気にすることなく快適なドライブを満喫できるということですね。

スーパーチャージャーでの充電は無料でOK

ボクシブシェアでは、返却時に電気代(燃料代?)の精算は必要ありません。また「返却時のSOCは何%以上で」といった縛りもありません。SOC62%ほどで南森町に帰着したのが12時30分ごろ。15時の返却まで時間があったので、ボクシブシェアとトシさんへのささやかな感謝の気持ちとして、扇町スーパーチャージャーで充電しておくことにしました。

これもいつもの長距離試乗レポートのように細かな確認はしませんでしたが、充電開始直後には127kWの出力を確認。90%になっていた充電限度の設定はいじらず、15分ほどで91%表示まで充電が完了しました。

ボクシブシェアでは貸出時のバッテリー残量を「50%以上」としていますが、実際には80%くらいをメドに運用しているのではないかと推察しつつ。扇町スーパーチャージャーから南森町のステーションまではほんの数百メートルだったので、しっかり90%で車両を返却。現地でメンテナンスを担当するスタッフさんには充電の手間を掛けることなく次の利用者がモデル3を活用できたはずだと思っています。

扇町SCには62%で帰着。

実は、今回のモデル3でのドライブ先。数日前までは淡路島のオフ会ではなく、兵庫県北部但馬地方の郷里で所用を済ませようかとも考えていました。その場合は片道が約150km、往復300kmのトリップになるので、途中1回は充電するのが安心かなとも思っていたのですが。その場合でも、ボクシブシェアではスーパーチャージャーでの充電料金はシェア料金にインクルーズで無料だから安心です。

ただし、郷里の但馬地方にスーパーチャージャーは設置されておらず。結局は大阪に戻ってスーパーチャージャーに立ち寄るのが効率的であるのはちょっと苦笑いなところではありますが……。

自分のスマホのテスラアプリと連携できるのが秀逸

さらに実際にボクシブシェアを借りてみて感じたのが、自分のスマホのテスラアプリと連携できる便利さです。ボクシブシェアの専用アプリでもドアロックやエアコンの遠隔操作などはできますが、車両のセンターディスプレイに表示される二次元バーコードをカメラで読み込むだけで、あらかじめ自分のスマホにインストールしてアカウント登録してあるテスラアプリとシェアカーが連携します。

テスラ車オーナーであれば登録してあるシートポジションなども反映されるとのこと。残念ながら私はテスラオーナーではないのでフル機能の恩恵は受けられないものの、スマホをもってクルマを離れると自動的に施錠、近付くと解錠されるスマホキーが利用できるだけでも「素晴らしい」と感じるポイントでした。

予約時間の30分前から貸出対応してくれたのがありがたい

私はわりとせっかちです。今回、ホテルで朝食を終えて出発準備もOK。「9時の予約時間にならないと使えないのがじれったいな」と思いつつ、8時半にボクシブシェアのアプリを立ち上げてみると、すでに「貸出手続き」のアイコンが表示されていたので、さっそくステーションに行って手続きを開始しました。

トシさんにきちんと確認はしていませんが、おそらく予約時間の30分前になれば利用開始OKなんだと思います。アプリを活用したサービスなればこそ、利用時間などへの対応は杓子定規になりがちに思いますが、ボクシブシェアは柔軟です。細かなところですけど、私のようなせっかちにはとてもありがたいと感じるサービスです。

テスラ&電気自動車のカーシェアがもっともっと拡がるために

ボクシブシェアでモデル3を借りてみて、テスラ車のカーシェアサービスがとても便利で魅力的であることを確認できました。日本におけるEV普及を進めるためにも、テスラ車はもちろん、電気自動車のレンタカーやカーシェアサービスが拡がることに期待しています。

そのために大切なことは何なのか。今回のボクシブシェア体験を通じて感じた利用者目線からのポイントを挙げておきます。

【ポイント1】ステーションが拠点駅やホテルなどに近いこと

自宅にはマイカーがある私の場合、カーシェアやレンタカー(以下、便宜上カーシェアに絞ります)は旅先で使うことがほとんどです。都市部の場合、マイカー代替のカーシェアサービスにも一定のニーズはあるでしょうが、全国への展開、さらに多くの自動車ユーザーが利用するカーシェアと考えると、やはり旅先で利用しやすいステーションのネットワークが整っているかどうかというのが最重要なポイントではないでしょうか。

思い描く理想としては、各地の新幹線駅や空港などを訪れた際に利用しやすいステーションのネットワークが整うのが最強だと思います。また今回の南森町のように、拠点駅や空港からのアクセスがよければ、周辺に宿泊施設が多いとか、スーパーチャージャーが近いといった立地でも十分に魅力的であることがわかりました。

【ポイント2】個人でも参加可能なボクシブシェアならではのネットワークを拡げてほしい

ネットワーク拡大という観点でボクシブシェアの大きな特長といえるのが、以前のインタビューでトシさんが「個人の方でテスラが2台あるから1台をシェアしたいとか、テスラを買うからやりたい! って話でも大歓迎」と言っていたように、個人も含めて協力パートナーを募集している点です。

ベンチャーで起業したばかりのボクシブが独力だけで保有車両を増やしステーションのネットワークを拡げるには大きな投資とリソースが不可欠でしょう。でも、テスラのカーシェアを拡げるという思いを共有するパートナーが全国各地に現れて、それぞれの場所で地の利を活かしたサービスを展開してくれるようになれば、大きな可能性が広がりそうな気がします。

新幹線駅や空港の近くにシェアカーのステーションに利用できる土地を所有していたり都合することができて、テスラ車のシェアをビジネスとしてチャレンジしてみたい! という方は、ぜひ、ボクシブの公式サイトから問い合わせしてみてくださいまし。

ボクシブシェア公式サイト

【ポイント3】割安な24時間料金とかあるとより使いやすくなる

ボクシブシェアの料金設定は前述のようにベースが6時間、以降1時間ごとの追加料金となっています。一般的なレンタカー会社では基本料金は6時間に加えて、12時間、24時間などがあり、12時間や24時間の料金は割安な設定になっていることが多いかと思います。

旅先での利用を想定すると、宿泊を伴うケースが多いでしょうから、とくに「24時間」の、6時間と比較して割安な料金設定があればさらに利用しやすくなると感じました。

たとえば、日産レンタカーのリーフ(現行型)の場合、一般利用の基本料金は6時間が1万4520円に対して、24時間は2万570円と、約40%の増額です。今回、私が借りたモデル3は6時間で1万800円、追加料金が900円/1時間だったので、24時間借りた場合は2万7000円。寝ている間、ホテルの駐車場に停めておくのがもったいないという気分になります。割安な24時間料金が40%増として1万5000円程度であれば、一泊旅行や出張の際にすごく使いやすくなると個人的に感じるのですが、みなさんはいかがでしょうか。

ちなみに、ボクシブシェアでは2025年6月30日までの期間限定で、30時間以上のカーシェア利用でシェア料金が20%割引になる「ロングトリップ20%割引キャンペーン」を実施しています。魅力アップなキャンペーンではありますが、EVを活用したいユーザーが「地方に行くときはボクシブシェアをまず探す」となるようにするためにも、値頃感のある24時間料金はぜひ検討して欲しいと感じたのでした。

ボクシブシェアのステーションネットワークは着実に拡大しています。電気自動車が当たり前という社会の実現に向けて、ボクシブシェアとトシさんのチャレンジをこれからも応援していきたいと思います。

取材・文/寄本 好則

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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