BYD「K9」は1台6500万円
『西安市がBYD社製の電気公共バス3000台以上を運用開始』でお伝えしたように、中国のBYD(比亜迪股份有限公司)が世界中で電気(EV)バスを売りまくっています。電気バスは日本ではまだまだ普及していませんが、2018年春には沖縄の観光クルーズ船会社がBYDの電気バス「K9」10台を導入してニュースになりました。
『クルーズ船の訪日客、電気バスで送迎 那覇港で沖縄県内初導入』(沖縄タイムス)
BYDの電気バスが日本に導入されたのはこの沖縄が初めてではなく、2015年2月に京都市の京都急行バスが運行する「プリンセスライン」が5台を導入。BYD社製電気バスが日本市場に初めて進出したことで話題になりました。
また、福島県の会津バスでも、観光シーズンの尾瀬国立公園へのシャトルバス(シーズンオフは路線バスとして運行)として2019年1月にBYD社製の電気バスを導入。
『電気バスが1/12(土)10:25(若松駅前発)松長線より運行開始されます!』(会津バスウェブサイト)
※この記事冒頭の写真が導入時のお祓いの様子です(写真提供:会津バス)
岩手県交通でも2019年2月1日からイオンモール盛岡南線(盛岡駅~イオンモール盛岡南)にBYD社製の電気バスの運行を始めています。
『電気バスの運行開始ならびに出発式のご案内』(岩手県交通)
日本各地で導入されているBYD「K9(全長約12m)」という電気バスの価格は、1台6500万円(税別)ほど。一充電航続距離は約250km以上(エアコン使用時)と公表されています。従来のディーゼルエンジンを搭載したバス車両は2000〜3000万円程度が中心ということなので、いくら国や自治体の補助金制度があるとしても、コストに敏感なはずのバス業界で電気バスが「主流」になるにはまだ時間がかかるでしょう。
EVの普及を応援したい気持ちからすると、導入されるバスがどこのメーカーの車両でも構わないのですが、日本メーカーの姿勢があまりにも消極的。というか、実証実験やコンセプカー、ハイブリッドバスの情報がある程度で、純粋な電気バスに関してはほとんど何も動きがないことが気になります。
今までの事例では「改造電気バス」が日本の主流
日本国内では、このほかにも以下のような路線で電気バスが運行されています。
●JR東日本が気仙沼線BRT(バス高速輸送システム)の一部区間(車両を製作した株式会社ピューズの車両紹介ページ)
●三重交通ポケモン電気バス(三重交通ウェブサイト)
●京成バス墨田区内循環バス(墨田区ウェブサイト)
まだいくつかありますが、代表的事例としてこのくらいで。
ただし、日本国内での電気バス導入では、オーダーメイドの改造車両を使った「実証実験」であることが多く、熊本で走っていた『よかエコバス号』も、1年間(短い!)の走行を終えたようです。
『電気バスプロジェクト実証試験報告会(及び試乗会)』(熊本県ウェブサイト)
改造電気バスの製作はEV普及活動に熱心な『東京アールアンドデー』(元社長の小野昌朗さんも存じ上げています)という会社や関連会社が手がけているケースが多く心情的には応援していますが、やはり、メーカーの市販モデルが出てこないと大きな流れにはなりません。BYD社製の電気バスがどんどん導入されている状況をみると、日本メーカーにももっと頑張ってほしいな、と思います。
世界に目を転じてみると、ドイツのメルセデス・ベンツ、スウェーデンのVOLVO社や、アメリカ、カナダのベンチャー企業が電気バスの開発を手がけていますが、現状ではBYDが世界でのシェアを伸ばし続けています。
電気自動車(EV)には、燃料費やメンテナンスコストがエンジン車に比べて安いというメリットがあります。市内循環など、必要な航続距離がEVで十分な路線であれば、電気バス導入のメリットはさらに大きくなるでしょう。補助金抜きでも競争力があるような、魅力的な日本メーカー製電気バスの登場に期待したいですね。
(寄本好則)
路線バスではストップ&ゴーも多く、加速時には最大出力を要する一方で回生や停車の時間も多くていつもそれが要求されるわけじゃないですから
平準化すれば低く抑えることはできます。
水素インフラ自体は、事業者の初期導入コストさえなんとかできればいい
ただし、急速充電式電気バスも、同じ理由で急速受電インフラの初期導入コストさえまかなえればより少ないバッテリー(つまり電気バスの弱点の車両価格の高さもカバーできる)のでどちらが有利かというと・・
まあエンジンに対するメリットは上記のような排ガスが汚くない。静かというのはすでに出ていますが、自分が乗るならやはり振動が走行由来のみで楽ってのがありますね。正直ガソリンエンジンですらきつい
ディーゼルエンジンはきついので、電車に比べてバスがあまり人気のない乗り物なのは遅い・定時でつかないことの次にあると思います。
燃料電池は現在の技術レベルはFCスタックの出力で100kWレベルつまり136ps程度。路線バスに必要な出力は260ps以上、となると結局は残りの出力はバッテリーで補うしかありません。
燃料電池車は結局シリーズハイブリッドですから電力効率は決して良くはありません。その上でFCスタックに加え高出力のバッテリーを搭載する必要があり、現実的に難しいですね。
更にFCスタックの冷却も設計的に大きな技術課題となっています。
水素インフラのエネルギー的課題ももちろんですが出力問題も課題として大きいのが実態です。
以前 秋田県が主体となってEVバスを東京R&Dと開発し、秋田交通が商業運転をしてました。いまは、走行は行っていないようですが、屋根に太陽光パネルをつけていたり、様々な工夫がされておりました。確か車体はいすゞでしたのでBYD対抗版が出るのではないかと期待してます。
https://d3ukgu32nhw07o.cloudfront.net/space_pdf/pdf_file52527b27b6dcf.pdf#search=%27%E7%A7%8B%E7%94%B0EV%E3%83%90%E3%82%B9+%E3%82%A8%E3%83%AC%E3%83%A2%27
KENTさん、コメントありがとうございます。
東京R&Dが製作した秋田のバス。ちょうど、導入時期がEVスーパーセブンの日本一周と重なっていて、会いに行ったことがあります。
EVバスとご対面
http://jevc.gr.jp/2013/?p=3886
日本国内での電気バス導入は、今でも「実証試験」の領域を出ていないのが実情ですよね。東京R&Dにはゴルフ仲間の友人もいて(お互い下手っぴですけど。w)応援していますが、やはり、本気で普及させることを前提にした市販EVバスの登場に期待しています。
BYDの電気バスは、EUでの欧州統一車両型式認証(WVTA)も取得していて、現在、グローバルスタンダードになっていますね。
先日、地元の福島県でもBYDの電気バスが導入されたというニュースを見かけて気になっていたところだったので、とても参考になりました。
残念ながら、日本メーカーに電気バスを作る気がないようなので、BYDが国内市場でシェアを獲得するのは構いません。
地元では、いまだにバスが黒煙を吐きながら走っているので、早くEV化して欲しいです。
もし、BYDが今後も国内で販売を続けていってもらえるなら、地方路線で使いやすい安価な中型モデルを充実させて欲しいのと、バッテリーと車両設計を改善してもっと車両を軽くして欲しいです。
バスのような大型車両なら、天井部分にソーラーパネルを設置することで、遮熱による冷房負荷の軽減と発電による航続距離の改善が期待できると思うのですが、ソーラーパネルを搭載したバスがないのはコストの問題なのでしょうか。
mania3bbさん、コメントありがとうございます。
日本メーカーでEVバスやトラックに前向きなのは、ダイムラーとジョイントできた「E-FUSO」くらいな感じでしょうか。それも、数年前の東京モーターショーで発表があって以来、あまりドラスティックなニュースは流れてきませんね。
ご指摘の「地方路線で使いやすい安価な中型モデル」は、まさに E-FUSO のコンセプトにもぴったりだと思うのですが。
「ソーラーパネルを搭載したバスがないのは」、発電できる電力<走行で消費する電力の差が大きいのと、そもそも、市場がまだ小さくてバリエーションがない(差別化の必要もない)から、ではないかと推察します。
大型車は燃料電池のほうがあってると思うのですがなぜトヨタグループの日野で燃料電池バス作らないのか不思議です。
t.m様、コメントありがとうございます。燃料電池バスは日本国内ではトヨタが直接製造しているように発表されていますね。
https://newsroom.toyota.co.jp/jp/corporate/21862392.html
しかし私見ではありますが、私は燃料電池バスはあまり普及しないと思っています。その理由は以下のようなものです。
まず電気バスのメリットは明確。トルクがあり加速が素早く、黒煙を吐かないので臭わない、かつバリアフリーの観点から役所やショッピングセンター室内まで運行できる。逆にデメリットは航続距離と重量とコストですよね。バスは拠点間を移動する乗り物なので充電インフラは簡単に作れます。
燃料電池バスのメリットは電気バスと似たようなものになります。しかしデメリットは結構大きいのです。航続距離は電気バスと同じくらいかそれ以下。コストはもちろんまだ高い。最大の問題は水素の調達です。
普通の都バスレベルで、水素量はミライのおおよそ5倍、航続距離は200kmです。これで水素の量は21.5kgくらいになるのですが、セルフローダーと呼ばれる大型トラック一台で輸送できる水素量は1400m3とするとおおよそ125kg。つまり5台のバスに供給するともう一台の水素大型トラックが必要になります。50台のバスの拠点には、10台の水素トラックが毎日出入りすることになるわけです。もちろんそれらの水素トラックはディーゼル燃料です。
さらに、燃料電池バスでは水素タンクは屋上に搭載しています。水素は軽いのですがタンクは重いわけで、特に空車時は横転の確率が非常に高まります。そのため、高速道路・長距離バスの運行は難しいと思います。短距離であればまあバスが横転することはないので、このリスクは大きくはないのだと考えて良いと思います。
皆さんこんにちは。
わたしの地元のある自動車学校では、ほぼ8割がたの教習車が旧型リーフ(多分中古車で導入 年式不明)に代わっていてびっくりしました。
ガソリンよりも安いし一回の教習距離(時間)も短いので賢い選択だと思います。
タクシーではまだ見たことがないですが、バスは充電器にもよりますがどのくらい充電時間がかかるのでしょうかね。
大倉様、
http://en.byd.com/usa/bus/k9-electric-transit-bus/
ここに仕様が載っていました。500kWhバッテリーで40kW急速充電器x2という謎の表示。2本の充電ケーブルを同時に使用するのでしょうかね。そうなると急速充電器での満充電までの時間は約2時間半くらいになるかと思います。
実際には朝から晩まで運用して、夜間もっとゆっくり充電するのではないでしょうか。また、昼の間ターミナルに戻ってきている間に、ちょい足しすることもあるのかもしれませんね。