リチウムイオン電池で進化したBYDのEVフォークリフトの実力とは?

乗用車での日本進出を発表したBYDは、すでに電気バスのほか、リチウムイオン電池を使った電動フォークリフトも日本で発売しています。はたして、EVフォークリフトの実力はいかがなものか。BYD FORKLIFT JAPAN 大阪営業所所長の武内太一さんへのインタビューをお届けします。

リチウムイオン電池で進化したBYDのEVフォークリフトの実力とは?

鉛バッテリーからリチウムイオンバッテリーへ

ブレードバッテリーが象徴する卓越したバッテリー技術で、今や世界トップレベルの電動車メーカーとなった中国のBYD。日本では2015年に初めて電気バス「K9」が京都のプリンセスラインに導入されて以来、現在までに約70台が全国各地のバス事業者に採用されています。2021年からはBYD製EVを採用するタクシー会社も現れ、2022年7月には最新3車種をもって日本の乗用車市場に本格参入することが発表されました。

商用車を中心にBYDの乗り物を見る機会が増えてきましたが、バスやタクシー以外にBYD製の働く車が日本で活躍しているのをご存じでしょうか? それは世界初のリチウムイオンを搭載したBYD製のEVフォークリフトです。

フォークリフトには大きく分けて2種類のパワートレインがあります。ひとつは従来のディーゼルエンジンを用いるエンジンフォークリフト。もう一つが、バッテリーを搭載してモーターで駆動する電動(EV)フォークリフトです。この2つ以外にも豊田自動織機の「トヨタ L&F」ブランドでは燃料電池フォークリフトなども販売されています。

2021年度(2021年4月~2022年3月)における日本国内のフォークリフト販売台数は8万5294台。そのうち、電動は全体の63.4%で年々増加傾向にあります。そして、電動の主流は鉛蓄電池を搭載するモデルです。鉛蓄電池とは電極に鉛を使用し、電解液には希硫酸を用いるタイプのバッテリーで、自動車の電装品へ電気を供給する、いわゆる「補機用バッテリー」と同様の仕組みになっています。最大の特徴はそれまでのディーゼルエンジン搭載型と比べて排ガスや騒音が発生しないことで、クリーンな環境が求められる漁港や青果市場などの食品関係施設で重宝されています。

しかし、排ガスが発生しない利点はあるものの、鉛蓄電池特有の欠点も存在します。第一に挙げられるのが、電解液である希硫酸の存在です。バッテリー液とも呼ばれる希硫酸は使っていくうちに減っていくので、定期的に補充しなければなりません。また希硫酸といえども劇物であることに変わりなく、交換の過程などでバッテリーの破損や漏れがあると危険な状態となります。

また、過放電状態が続くと劣化が進んで性能が下がったり、電池そのものが非常に大型で重い(エネルギー密度が低い)という欠点が挙げられます。使用状況にも関わりますが充電時間は最低でも約8時間必要であるのに対して稼働時間は長くて5時間程度という製品が中心で、「充電に時間がかかるのに稼働時間が短い」という難点もあります。

鉛電池仕様のEVフォークリフトとは別次元の利便性を実現したのがBYDのEVフォークリフトです。世界で初めてリン酸鉄リチウムイオン電池(ブレードバッテリーなどと同じLFPバッテリー)を搭載したEVフォークリフトの量産化を実現したことで、鉛電池で発生していた問題が解消されているといってよいでしょう。

連続稼働時間は鉛蓄電池のモデルが5時間ほどなのに対し、BYDのEVフォークリフトは車種によってはその倍である10時間以上。リチウムイオン電池ならではの急速充電を用いることで、1時間半程度の充電(急速充電器の出力などにもよりますが)でフル稼働が可能となります。

バッテリー自体も10年~15年は使える耐久性を誇っており、BYDでは5年間(もしくは1万時間)の保証を提供しています。安全性についてもBYD自社開発のリン酸鉄リチウムイオン電池は燃焼試験、クギ刺し試験などをクリアしています。

もちろん、環境面でも優れています。EVフォークリフトという時点で排気ガスを排出しないのは当たり前ですが、それに加え、鉛蓄電池で生じる水素ガスがリチウムイオン電池では発生しません。なお日本メーカーの鉛電池仕様は3,5トンクラスまでが主流でそこから上はあまり販売されていません。BYDは8トンまでラインナップしており、建材や港湾、物流や製紙業界、電池メーカーや電線メーカーなどで活躍しています。

大阪営業所所長の武内さんにインタビュー

BYDがBYD FORKLIFT JAPANを設立し、EVフォークリフトを本格的に発売(2020年11月)を開始してから約2年。今までの販売台数は約400台ということですが、実際のところ日本のお客さんからのどのような声が聴かれているのでしょうか?

2022年4月、大阪府摂津市にオープンした BYD FORKLIFT JAPAN株式会社大阪営業所を訪ねて、所長の武内太一さんにお話を伺いました。

取材に応じてくださった武内所長(右)と筆者(左)。

―日本で販売されるBYDフォークリフトはどのようなラインナップでしょうか?

BYDとしては、定格荷重1.6トンから最大8トンまでのカウンターバランス型フォークリフトのほか、リーチタイプ、ハンドパレットタイプなどをラインナップしており、このうち日本では計25車種を扱っています。

―本国や海外向けと仕様と異なる部分はありますか?

変更は特にありませんが、日本仕様としてオプションに色々と設定をしています。たとえば、ハンドルを切った時に急旋回をしないセンサーや、座らないと操作できないシートセンサーなど。これらは安全性を考慮して日本メーカーのフォークリフトでは当然装備されているものです。

また、BYDのフォークリフトは6大陸30カ国で使用されていますが、日本独特の仕様で多いのは「立ち乗り」タイプです。2020年は約8万5000台のフォークリフトが日本で販売されており、うち2万5000台が立ち乗りタイプです。立ち乗りが多いのは世界的に見ても日本と韓国ぐらいですね。

BYDでは元々、立ち乗りタイプが少ない中国やアメリカ、ヨーロッパ向けにフォークリフトを作っていたので、立ち乗りタイプにはあまり注力していませんでした。しかし、そこを攻略していかないと日本市場では勝ち目がないと思っています。日本での販売車種のうち、定格荷重が1.5トンの『RTS15』(リーチフォークリフト)と、2.0トンの『P20JW』(ハンドパレットタイプ)が立ち乗り仕様となっています。

―日本ではなぜ立ち乗りが多いのでしょうか?

国土が狭いことが大前提としてあると思います。狭い通路でフォークリフトを回転させる必要があるので、横幅が小さく最小回転半径が小さい必要があります。座って乗るタイプの場合、通路幅(荷物と荷物の間)は4mぐらい必要ですが、立ち乗りであれば2.7~2.8mあれば済みます。

また、欧米にも立ち乗りタイプはあるのですが、立ち乗りであっても横には座れる椅子が設置されています。働く人への配慮という意味もあるでしょう。BYDとしてはそちらをメインで作っていたので、椅子が横にない本当に立つだけの車種は作っていませんでした。

現在までに400台を販売。日本での評判は?

―日本メーカーの電動フォークリフト(鉛電池)と値段はどれくらい違いますか?

日本メーカーのものは非常に安く、BYD製は機種にもよりますがおおむね2倍程度の価格となります。ただ、日本メーカーのものはバッテリーが4〜5年で劣化して交換が必要となります。2.5トンクラスの交換コストは約130~150万円くらいでフォークリフトが大きくなればなるほど高くなります。BYD のフォークリフトのリチウムイオンバッテリーは、使用環境にもよりますが平均的な鉛電池の約3倍の寿命です。

―日本での評価はいかがですか?

8割以上のお客様から「鉛電池と比べて非常にスムーズでスピードやパワーが違う」と評価をいただいています。充電時間の短さ、稼働時間の長さ、そしてメンテナンスの簡単さも高評価です。

不満としては、やはり販売価格が高いという点があるでしょう。そこをコストダウンできれば、シェアはもっと上がると考えます。ただ、電池が値上がり傾向なので……、大きく価格を下げることは難しいかもしれません。

―たとえば、生鮮食品を扱う現場でどんなアドバンテージがありますか?

クリーンエアな環境で作業が行えるのはもちろんですが、マイナス40度からプラス60度という広範囲の温度条件下で使用が可能です。マイナス環境になると電池製品ですので常時20度で使う100パーセントと、マイナス40度で使う100パーセントは違ってきますがそのあたりも鉛バッテリーより優位性があります。北海道でも数台導入されており、これから増やしていきたいと考えています。

―ところで、世界的な半導体不足ですが、BYDのフォークリフトの生産に影響はありますか?

BYDでは半導体含めて多くの部品が内製化されています。オプションによっては、仕入れの関係で滞ることもありますが、大部分は自社で完結しています。また、四輪車もほぼ内製化できています。それよりも、受注が多すぎて生産が追いついていない状況があります。

※インタビューここまで

大型フォークリフトのEV化も課題

今現在も日本ではまだエンジン車のフォークリフトが半数近くを占めており、2021年度は3万238台(ガソリン、ディーゼル、プロパン)が販売されています。エンジン車はトン数が大きく、大型でなおかつ稼働時間が長いメリットがありますが、そのニーズにもBYDのEVフォークリフトのバリエーションなら対応できそうです。

「今でも港湾部に行くと排気ガスを吹かして稼働しているフォークリフトの姿をよく目にします。そこを攻略していく必要があると感じますね」(武内さん)

モビリティの電動化による脱炭素社会実現は、乗用車だけでは成立しません。バスやフォークリフトなど、幅広いカテゴリーの乗り物で魅力的なEVを展開するBYDのチャレンジは、とても有意義なことだと感じます。

なお、次の記事では実際にBYD製フォークリフトを導入している事業者のレポートをお届けします。

(取材・文/加藤 ヒロト)

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この記事の著者


					加藤 博人

加藤 博人

下関生まれ、横浜在住。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶ傍ら、さまざまな自動車メディアにて主に中国の自動車事情関連を執筆している。くるまのニュースでは中国車研究家として記事執筆の他に、英文記事への翻訳も担当(https://kuruma-news.jp/en/)。FRIDAY誌では時々、カメラマンとしても活動している。ミニカー研究家としてのメディア出演も多数。小6の時、番組史上初の小学生ゲストとして「マツコの知らない世界」に出演。愛車はトヨタ カレンとホンダ モトコンポ。

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