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電気自動車ってどこで充電するの?
電気自動車やPHEV(プラグインハイブリッド車)にはバッテリーが搭載されていて、その中に蓄えられている電気の力で走ります。現在発売されている電気自動車やPHEVは、おおよそ50km程度から400km程度、一回の充電で走ることができます。電池の充電がなくなっても、PHEVは搭載しているエンジンで発電しながら走行を継続することができますが、電気自動車は充電が空になる前に、必ず充電しなければなりません。ガス欠と同じです。
電気自動車やPHEVは「充電スポット」で充電することができますが、特に電気自動車については、自宅や会社など、自動車を普段置いてある常置場所に充電設備を設置することが望ましいのです。これによって、自家用車の場合は、帰宅後自宅の充電器に車を接続し、朝までに満タン充電しておくことが可能になります。社用車の場合は、日々の業務終了後、会社の車庫の充電器に車を接続し、やはり朝勤務開始時までに満タン充電しておきます。このように、電気自動車は、自宅に充電設備を設置すると、毎朝満タン充電からスタートすることができ、多くの場合一日の途中で充電する必要がありません。
自宅の充電設備以外に、公共の充電スポットが日本国内にはすでに10,000か所以上あります。ただ、以前の記事にあるように、外出先での充電には時間かかりますので、なるべく外では充電しないほうが時間の節約になります。
マンションだって工事すれば充電できるよね?
自宅が一戸建ての場合は、充電設備を設置するための電気工事は比較的簡単ですが、マンションの場合はそう簡単ではありません。特に賃貸マンションの場合、入居時に充電設備があるマンションを選択することが必要で、入居後に大家さんに「電気自動車用の充電設備を付けて欲しい」という要望を出しても、かなえられないことがほとんどです。賃貸マンションの方は、電気自動車ではなく、PHEVを選択したほうがよいでしょう。
分譲マンションの場合も、充電設備の設置は一戸建てに比べると大きな困難が伴います。一般社団法人 マンション計画修繕施工協会が出している、既存の分譲マンションへの電気自動車充電設備導入マニュアル(PDFへの直リンク)をご覧いただくと分かるように、設置場所の確保、費用負担、合意形成(普通決議が必要)などが必要となり、計画から施工完了まで半年から一年以上の期間が必要になることも多いのです。
分譲マンション住まいの方が充電設備を設置するにあたり、検討すべきことはいくつかあります。まず駐車場のタイプです。平らなコンクリートの上に線が引いてある「平置き駐車場」の場合は、各自の区画に充電器を設置するか、または空いている区画を充電専用として割り当てることにより、そこのみに充電器を設置します。機械式駐車場の場合は、管理会社に相談することが早道です。機械式駐車場では充電器を追加で設置することは一般的に困難ですが、地面と同じ高さにあり動かない区画があったり、駐車場以外の共用部に多少の余裕があれば、そこを平置きの充電器付き駐車区画にすることができます。充電専用の区画を作る場合は、当然ですが電気自動車ユーザーは交代で利用することになります。
次に設置する充電器のタイプです。充電器には急速充電器と普通充電器があり、様々な仕様のものが存在しています。また普通充電器には、ケーブル付き充電器とEV用200Vコンセントの二種類があります。EV用100Vコンセントというのもありますが、将来性が低いためお勧めしません。
各自の区画に設置(平置き必須) | 充電専用区画を用意 | |
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大規模マンション | EV用200Vコンセント | 急速充電器 |
小規模マンション | EV用200Vコンセント | ケーブル付き充電器またはEV用200Vコンセント |
上表にあるように、多くの場合、EV用200Vコンセントの工事が最もお勧めです。この場合、200V x 15A = 3kWの出力で充電することができ、日産リーフでバッテリーが空から約8時間、テスラモデルS 85kWhで約26時間で満タンになります。思ったより時間がかかりますよね?そのため、できれば充電設備は各自の区画に設置することが望ましいのです。
ケーブル付き充電器とEV用200Vコンセントの違いは、コストと利便性です。コンセントの価格は数千円であるのに対し、ケーブル付き充電器は10-20万円の費用(平成26年度現在、次世代自動車振興センターの補助金の対象です)がかかります。その代わり、ケーブル付き充電器で充電する手順は、ケーブルを車に挿すだけで済みます。このケーブルはうまく巻き取れるようになっていることが多く、床や地面には接触しません。一方コンセントの場合は、自分の車から充電ケーブルを出し、片側を車に接続、最後に充電ケーブルの先をEV用コンセントに挿し込みます。この充電ケーブルは床や地面を這いますので汚れますし、充電が終了したらこの汚れたケーブルを自分の車にしまわなければなりません。そういうわけで、もし予算に余裕があればケーブル付き充電器をお勧めしますが、予算もしくはケーブル付き充電器を設置する場所が取りにくいなどの理由がある場合はEV用コンセントを設置するのがよいでしょう。ケーブル付き充電器やEV用コンセントはこちらに一覧があります。
充電専用区画を作る場合、ユーザーの滞在時間を減らしたほうが、設備を有効活用できます。特に大規模マンションで電気自動車ユーザーが複数いる場合には、コストはかかりますが急速充電器の設置をお勧めします。44kWの急速充電器であれば、日産リーフでバッテリーが空から80%まで約30分、テスラモデルS 85kWhでバッテリーが空から80%まで約1時間30分ほどで充電できます。ただ、急速充電器は非常に大きな電力を必要とするため、マンションの既存の設備では賄いきれないことが多く、電気自動車専用急速充電器の同一敷地内複数契約を可能とする特別措置を活用して、マンションの充電専用区画に、直接電力会社から急速充電器専用で電気を引き込む方法をお勧めします。急速充電器の出力が高いほど、ユーザーの滞在時間は少なく、電気の基本料金が高くなります。予想される利用者数に合わせて、急速充電器の出力を決定されることをお勧めします。
自宅に充電設備なくても公共の充電スポットがあるから大丈夫?
ガソリンや軽油で走る車(ICE)はガソリンスタンドで給油していたわけですから、自宅がスタンドになってしまう電気自動車は革命的に便利です。しかし、マンションの場合など自宅に充電設備を設置できないケースもままあります。このような方が、公共の充電スポットだけで電気自動車を利用することはどうなのでしょうか?
PHEVの場合、充電の時間がなかったり、面倒だったりする場合には、ガソリンスタンドで給油すれば自動車を走らせることができます。しかし、電気自動車は必ず充電が必要なので、自宅に充電設備がない方が朝起きて、さあ出かけよう、となった時、電池の残量が不足していれば、まず近隣の充電スポットまで車を走らせ、最低30分間充電する必要があります。
日産リーフの場合、月々1429円だけで、日産ディーラーでいつでも何回でも充電できるプランがあります。そのためこれを活用する方法がないとは言えませんが、いくらガソリン代がかからないとはいっても、数日おきに日産のディーラーで30分待つのはあまり便利とは言えません。
テスラモデルSでは、東京の都心部などスーパーチャージャーの近くに住んでいるなら、そのような使い方をすることはある程度可能になります。バッテリーの容量が大きく、スーパーチャージャーを利用した場合充電速度が非常に高速だからです。自宅充電と比べると不便ではありますが、月1000km程度の走行距離であれば、週に1回スーパーチャージャーまで充電しに行けばいいと考えることもできます。スーパーチャージャーの利用は無料です。
どんな電気工事が必要?
電気自動車やPHEVを自宅で充電するために必要な設備は、一戸建てかマンションか、また必要なパワーによって異なります。基本的に、以下の事項を施工図(新規に作成)に反映して工事を進めます。
- コンセントボックス又は充電スタンドの設置位置を確定
- 配線ルートの確定
- 配線および電線管の選定
- 施工方法の検討確定(土被りの確保など)
- D種接地工事(既設盤接地端子より引込でも可。)
- その他個別条件の検討および確定
電源工事は電気工事業法に従い施工するよう依頼し、施工後は回路の絶縁抵抗及び接地抵抗を測定するなどの検査を行い、工事報告書類等に記録を残すようにするとよいでしょう。
一戸建ての場合
設置するのはケーブル付き普通充電器かEV用200Vコンセントだと思います。電気容量は、テスラモデルS以外の車両では、3kW(200V 15A)を想定します。ただし、将来的に6kW(200V 30A)まで行けるよう、配線や配管等は電気工事士の方に依頼しておくことをお勧めします。日産自動車、テスラ、ゼネラルモーターズの各社が、2017年には300km以上走行できる、バッテリー容量の大きな電気自動車の発売を予定しています。このサイズのバッテリーを充電するためには、6kWのほうが適しています。
EV用200Vコンセントは、日本では標準化されています。これも3kWまでです。
テスラモデルSでは、テスラ専用のケーブル付き普通充電器であるウォールコネクターが付属(記事執筆時現在)していますので、それを設置します。ウォールコネクター自体は16kW(200V 80A)まで対応していますが、電気容量は6kWから10kWあれば十分だと思います。もちろん予算に余裕があれば16kWでも構いません。
工事内容は電気容量によって異なりますし、配管をコンクリート内を通す必要があるかどうか、配電盤からの距離、建物の中に配管を隠したり、地中に配管を埋設したりなどの工事方法によっても異なりますが、最も簡易な工事で5万円から、最大20万円程度になることが多いようです。16kWで地下駐車場での特殊な工事などでは、50万円を超えるケースもあります。
工事後は、充電用のブレーカーと専用の子メーターが付けられ、そこで充電にかかった電気代をおおよそ計算できるようになります。
マンションの場合
マンションは共同住宅ですので、オーナー、区分所有者、管理会社の同意がないと充電設備をつけることができません。米国などでは、賃貸の利用者や分譲マンションの区分所有者から充電設備を設置したいと申し出があり、コストを利用者が負担する場合は、賃貸オーナーや管理会社、分譲の場合は管理組合はそれを受諾しなければならない法律があります。
日本でも将来、そうなる可能性もありますが、現時点ではまだまだ困難が伴うのが現状です。いずれにしろプロが設計、見積もりする必要があります。
工事費用は前出のマンション計画修繕施工協会によれば(資料)、EV用コンセント3個を25mの露出配線で設置する場合に約50万円、ケーブル付き充電器3基を60mの埋設配線で設置する場合に約340万円、急速充電器1基を電柱からの引き込み配線で設置する場合に約291万円となっています。これらの費用は最終的には受益者である電気自動車オーナーが負担する必要がありますので、費用負担方法についても決めておく必要が出てきます。
こんにちは。アイミーブM乗りの電気工事士です。
eKスポーツからの乗換えで三菱の中古軽自動車(5年落ち)を物色していたら電気自動車に辿り着いた訳でして(笑)
電気設備管理の仕事柄、電気工事士の資格はあるのでDIYは可能。
さらに自宅は太陽光発電+エコキュートのおかげで深夜電力が安く、タイマー設置で深夜だけ通電するようにしています。
日産の公式サイトにある「EV普通充電用電源回路ガイドライン」を参考に電材をかき集めて自宅(持ち家)に充電コンセントを設置しました。
2.6mm-VVFケーブル(オール電化用)、アース線、EV用200Vコンセント(鍵付)、タイマー、電磁接触器(マグネットスイッチ)、漏電遮断器(200V30A/感度15mA)などを揃え、故障対策の予備品を含めて4万円で済ませました。
ただ自宅の構造上、コンセントを玄関の軒先につけたため充電コードの長さがギリギリになりましたが(自爆)。
2.6mm-VVFケーブルは内線規定を適用しても33Aまで流せますので6kWでも使えます…ただ今後自宅の充電回路を6kW対応にすると電力会社との契約変更が必要で(現状6kVA)結構大掛かりになりそうです。
こうしてDIYはうまくいきましたが…今後知人友人が電気自動車を導入すれば相談や依頼が来て忙しくなりそうです!!(自爆)
ヒラタツ様、電気工事士の方でも、電気自動車についてよくご存じの方がいらっしゃると心強いですよね。電気自動車ユーザーの方から、「○○Aで充電したい」と言ってるのに100V基準でブレーカーが付けられていた、などあり得ない話をお聞きすることがあります。配線の種類の選択や将来電流を増やすことができるような余裕を見ておく、充電する場合の車の充電口の位置を考えて設計する、など、ぜひ詳しくアドバイスして差し上げてください。
私も、同じ方法で設置しました。一応電力会社さんに相談しました、エコキュートとIHヒーターを利用していたので私は、IHヒーターの電源を利用して設置しました。これからは、急速充電機の利用が高額のなるので、日本一周の夢が、はかなく終わりを迎えるかなと思っています。残念です。