EV放浪記2.0【003】BMW i4オーナーとHonda e〜愛車を交換試乗

Honda eオーナーの篠原さんがEVライフを探求する連載『EV放浪記』。第3回は、BMW i4のオーナーさんと互いの愛車を交換試乗。バッテリー容量はほぼ2倍。Honda eとの航続距離感覚の違いを痛感したレポートです。

EV放浪記2.0【003】BMW i4オーナーとHonda e〜愛車を交換試乗

まずはi4で高速道路を走ってみた

茨城県在住の知人であるKさんから「EVを購入したので、良かったら試しに来ませんか」と誘っていただいた。喜んで! ぜひ私のHonda eにも乗ってみてください。交換試乗するのは『BMW i4 eDrive35 M Sport』。高性能スポーツセダンと街乗りコンパクト。あんまり釣り合ってないけど……よろしくお願いします。

某駅のロータリーで待ち合わせ。ピッカピカのBMWが音もなく後ろに止まる。渋い灰色系のペイントは、ブルックリングレー、というらしい。低く構えたスタイルは、いかにも走りそう。大きなキドニーグリルは、よくみると穴は閉じてるクローズド・タイプ。そんなに冷却風はいらないけど、BMWらしいデザインはキープしてるって感じ。

M50周年記念バッジのついたフロント部。よく見るとダクトはほとんど覆われている

「まずはi4で一緒に高速道路を走ろう」という話になり、Kさん宅に私のHonda eを駐車させてもらった。戸建て住宅で、駐車スペースは3台ぐらい止められそうな広さ。充電器は200Vコンセントだった。ハイスペックな「BMW Wallbox」などを想像していたのだが、じつはわざわざ一般的なものにしているのだと、あとでわかる。

さてドライブ。私もそれほど多くのEVを運転した経験はないし、BMW i4は初めて。ドキドキしながら操作系の説明を受けた。でも特別なことはなさそう。ボタンを押しながら動かすシフトレバーに少しだけ戸惑ったものの、極めてオーソドックスだ。横長の大型ディスプレイはHonda eに似ていて親近感が湧く。

走り出した途端に、ニヤニヤしてしまう。交差点を曲がるだけでも気持ちいい。重厚感があるのに精度が高いというか、ミリ単位で思い通りになる感じ。以前にBMW MINIに乗っていた時も、ハンドリングが本当に楽しかったのを思い出した。

回生ブレーキの強弱は、タッチパネル(とシフト脇のコントローラー)で調整できるようになっている。「高い」にしたら、かなりグッと効いてくれる。完全停止まではできないので、最後にちょこっとブレーキ。なるほどなるほど。

高速走行は圧巻だった。常磐道を走らせてもらったが、矢のように、という表現がピッタリ。アクセルを踏み込むと、シューッとどこまでも加速していく。やはりアウトバーンの国から来たクルマ。静粛性もかなり高いので、110キロ区間でも全然スピードが出ている感じがしない。スピードメーターと自制心が必須です。

KさんがEVを購入した理由

加速を楽しむのはほどほどに、速度を落としてのんびり走行。Honda eに乗るようになってから、高速といえば左車線の定速走行が習い性になってしまっている。「クルマのライターさんだから、もっとガンガン飛ばすのかと思ってました」とKさん。期待させて申し訳ないです。自動車評論家でもモータージャーナリストでもなく、腕に自信もありません。いろんな車にびゅんびゅん抜かれながら、あれこれお話を伺った。一番聞きたかったのは、EV購入の理由だ。

理由その1は仕事絡み。じつはKさん、住宅メーカーで施工の仕事をしている。戸建て住戸にEV充電用コンセントを設置するのは、数年前から標準仕様になっているのだとか。でもEVに乗っている顧客はまだいない。会社の同僚も乗っていない。マイカーの買い替え時期が重なったので、試してみたくなったそうだ。

「だって乗ってみないとわからないでしょう。充電時間がどれぐらいかかるとか、充電器はどこにつけるのが便利かとか。同僚には『買ったんですか!』って驚かれましたけど(笑)」

ご自宅に一般的な200Vコンセントが付いていたのは、そういうわけか。仕事で施工しているんだから使ってみる。ほんとに大事ですよね、そういうの。

EVシフトの理由その2は、新しい乗り物への興味だという。ハイブリッドエンジンが出た時にトヨタ・プリウスを購入。運転支援システム「アイサイト」に興味が湧いてスバル・レガシィアウトバックに乗った。今回も、クルマ社会を変えつつある新技術としてEVを試したくなったそうだ。

セダンかクーペと考えていたので、BMWのディーラーでi4 eDrive40に試乗。人生初のEV体験の感想は「静かで速い。いままで乗ってきたエンジン車とは別の乗り物と思いました」。最初は価格にためらったが、担当者からエントリーモデルのeDrive35が発売されると聞いた。コストパフォーマンスも含めてライフスタイルに合うと感じて、購入を決めた。

家充電でこと足りて急速充電は未経験

スポーツモデルと直感させるフロントフェンダーのエアダクト。カッコいい!

納車後は、ほぼ毎日のように乗り回している。走行距離は一日平均50キロ前後。あまり遠出をしないので、急速充電はまだ使ったことがなくて、充電カードも未入手。いまのところ家充電だけで十分だという。i4 eDrive35のバッテリー容量は70.3kWh。急速充電は150kWにも対応しているそうだし、そのうちロングドライブに出たとしても、余裕綽々ですよ、きっと。

楽しくEV談義に花を咲かせているうちに、ICをいくつも通り過ぎてしまった。ACCはちょっと試したぐらいだったが、ほんとに疲れない。シートのホールド感が良くて、どこまでも走ってしまいそう。十分楽しませてもらったので、ご自宅に引き返して、今度はKさんにHonda eを試してもらうことにした。

Kさんが運転するHonda eを、i4で追いかける。自分の車を見ながら走るというのはなかなか新鮮。ブレーキランプって、こういう具合に点いてるのか、とか。なにしろHonda eは販売台数が少ないので、街中ですれ違うこともほとんどない。それゆえか、走っているのをみていると、いつまでも飽きない。

EVに乗るのはこれが2車種目というKさんの感想は「普段使いに向いているという感じ。誰でも乗りやすいクルマだと思いました」「技術が実感できるデザインもいいですよね」。あと、Honda eがワンぺダルで静止までできるのは「乗りやすくて良かった」そうだ。そのあとも喫茶店で長々と話し込んでしまった。

電費? 見たことがなかったそうです……

今回、面白かったのは、電費はどれぐらい? という質問に答えが得られなかったこと。Kさんのi4では、航続可能距離がメーターの右下隅に、充電率(SOC)が左下隅に小さく表示されていた。電費もきっとどうにかすれば見られると思うのだが、使っていないのでわからないという。もちろん私もわからない。「表示するやり方を、ディーラーで聞いたような気もするんですが……今度調べときますね」。

EV生活を始めて以来、ずっと電費を気にして乗り続けている私にとってはカルチャーショック。でも最大航続距離が500km以上もあって、家充電ができるEVなら、電費不明でも困らないし、気にならないのかも。思い返せば、内燃車に乗っていた時は、燃費なんてそれほど気にしていなかったっけ。

総充電量がHonda e(35.5kWh)の2倍ぐらいあるi4 eDrive35。高性能スポーツカーと街乗りコンパクトでは、乗り手がクルマに望むことが違うのは当然。エネルギーと向き合う楽しさもあれば、パワフルな走りを期待する人もいる。選択肢が増えていくのは悪い話じゃない。

方向性の違う2台だけど、私が以前から感じているのと同じ言葉をKさんも口にしていた。「一回EVに乗ってしまったら、もう戻れないかな」。

Kさんから届いたi4の電費表示

【追記】その後、Kさんから「電費表示の仕方がわかりました!」と写真付きのメールが届きました。情報が集約されていて見やすい。私ならこれ、つけっぱなしです、きっと。

Honda e のプロフィール(2023/7/11現在)
総走行距離:3万9345km
平均電費:8.5km/kWh

取材・文/篠原知存

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この記事の著者


					篠原 知存

篠原 知存

関西出身。ローカル夕刊紙、全国紙の記者を経て、令和元年からフリーに。EV歴/Honda e(2021.4〜)。電動バイク歴/SUPER SOCO TS STREET HUNTER(2022.3〜12)、Honda EM1 e:(2023.9〜)。

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