「Fit for 55」〜欧州で2035年に新しい乗用車とLCV(小型商用車)のCO2排出量をゼロへ

2023年2月、欧州議会は「Fit for 55」政策パッケージの一環で、新車の乗用車とLCVの新たなCO2排出量削減目標を決議しました。合成燃料(e-Fuel)容認といった動きの一方で、ゼロカーボンへの流れがさらに明確化しています。アメリカのメディア『Clean Technica』から全文翻訳でお届けします。

「Fit for 55」〜欧州で2035年に新しい乗用車とLCV(小型商用車)のCO2排出量をゼロへ

【元記事】 EU Fit For 55: Zero CO2 Emissions For New Cars & Vans In 2035 by Guest Contributor on 『Clean Technica

自動車のゼロカーボン化へ道筋を提示

EU気候中立目標の達成に向け、道路輸送業界はもっと貢献し、車のライフサイクル全体におけるCO2排出量の新しい算定方法を定め、排出ガス規制値と実際の排出量の整合性を取らなくてはなりません。

欧州議会は、新規登録の乗用車およびLCV(Light Commercial vehicle=小型商用車)のCO2排出量基準の改定につき、理事会と合意した内容を、賛成340票、反対279票、棄権21票で承認しました。これは、EUの気候変動に対する野心的な目標達成に向けた動きを踏まえたものです。

新法案は、乗用車とLCVの2035年CO2排出量ゼロ目標達成(注)への道筋を示すものです。2030年の中間排出量削減目標は、乗用車55%、LCV 50%に設定されています。
(注)乗用車とLCVの全ての新車から排出されるCO2を、2021年比で100%削減するEUの目標。

今後予想される主な規制

欧州委員会は2025年までに、EU市場で販売される乗用車とLCVのライフサイクル全体におけるCO2排出量の算定方法、ならびにデータの報告方法を発表予定です。必要に応じて法案も提示される見込みです。

また欧州委員会は2026年12月までに、排出ガス規制値と実際の燃費(またはその他のエネルギー消費)データとの差分を検証し、各メーカーのCO2排出量における調整方法について報告を行い、適切なフォローアップ措置を提案する予定です。

暦年ベースの生産台数が大規模でないメーカー(乗用車1,000~10,000台またはLCV1,000~22,000台)は、2035年末まで適用除外となる可能性があります。なお、年間新車登録台数が1,000台未満のメーカーは引き続き規制が免除されます。

現行のゼロ・低排出ガス車(ZLEV)インセンティブでは、ZLEV(EVや高性能のPHEVなど、CO2排出量が0〜50g/kmまでの車両)を多く販売したメーカーに対する、CO2排出量削減目標は低く設定されています。このインセンティブは、今後は市場の販売動向を踏まえて変更される見込みです。2025年から2029年までは、ZLEVの基準値は新車販売で25%、同LCV 17%となり、2030年にはインセンティブは撤廃されます。

2025年末から2年毎に、欧州委員会は車両からの排出量ゼロ達成に向けた進捗状況を調査し、報告書を発表する予定です。

以下、欧州議会資料より引用

欧州議会のラポーター(報告者)、ヤン・ハウテマ氏(欧州刷新(Renew)グループ、オランダ選出)は次のように述べています。「この規制は、ゼロ・低排出ガス車の生産を奨励しています。2030年目標の野心的な見直しと、2035年ゼロ排出目標を掲げていますが、いずも2050年EU気候中立目標の達成に必要不可欠です。これらの目標は自動車業界に明確な指標を与え、自動車メーカーのイノベーションと投資を活発化させます。消費者も、ゼロ・エミッション車をお手頃な価格で購入して運転することができるようになり、中古車市場も急速に立ち上がるでしょう。持続可能なモビリティが、より身近なものになるのです」

次のステップ

本会議での採択後、理事会での正式承認を経て、本文書をEU官報に公布します。

背景

2021年7月14日、欧州委員会は「Fit for 55」政策パッケージの一環として、乗用車およびLCVの新車に関するCO2排出量基準の改定法案を発表しました。本提案は、EUの2030年および2050年の気候目標に貢献し、市民に利益をもたらし、ゼロ・エミッション技術のイノベーションを促進することを目的としています。

※冒頭写真はベルリン市街の公道上に設置された普通充電設備とID.3 のシェアカー。

翻訳/池田 篤史(翻訳アトリエ)

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この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

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