小型EV『FOMM ONE』で首都高を快走!〜乗り捨てOKのカーシェアに感じた可能性とは

「HELLO MOBILITY」の小型EVカーシェアサービスで『FOMM ONE』を借り、さいたま市から世田谷区駒沢まで約40kmを走ってみました。軽自動車なので高速道路も走行可能。首都高速を気持ちよく駆け抜けて。乗り捨てOKのカーシェアサービスが普及するための必須条件を実感できました。

小型EV『FOMM ONE』で首都高快走!〜乗り捨てOKのカーシェアに感じた可能性とは

ステーションはあってもクルマがない?

今回の試乗検証を思い付いたのは我が家から歩いて行ける世田谷区駒沢にオープンした「ENEOSマルチモビリティステーション」(関連記事)を取材したのがきっかけでした。

2月2日の取材時には2台のC+podがあったのですが……。

ENEOSマルチモビリティステーションには、2月4日の記事でお伝えした「Gachaco」のバッテリー交換ステーションが設置されているほか、「LUUP」の電動キックボード、OpenStreet社が提供する「HELLO CYCLING」の電動アシスト自転車や、同じくOpenStreetの「HELLO MOBILITY」による電動バイク(利用は法人限定)と小型EVのシェアステーションが配置されています。

ガチャコの記者発表を取材した当日は、小型EVのコーナーに2台のトヨタ『C+pod』が並んでいました。私はまだ C+pod にきちんと試乗したことがなく、せっかく近所に便利なステーションができたことだし、一度借りてみようと思ったのですが……。

HELLO MOBILITYのアプリは、以前 FOMM ONE を紹介する記事の取材に際してインストール&登録済みだったので、久しぶりに立ち上げて予約しようとしたものの、貸出可能な車両が「0台」と表示され、借りることができませんでした。どういうこと? と、いろいろアプリを探索してみると、なんと、駒沢のステーションにあったはずの世田谷ナンバーの C+pod が、さいたま市内のステーションで「貸出可能」になっているのを発見しました。

 
(以下、スマホのキャプチャ画像は小さく挿入しておきます。画像をクリックすると拡大表示されます)

日本国内の大手カーシェアリングサービスでは、借りたステーションにクルマを返却する「ラウンドトリップ方式」が一般的です。でも、HELLO MOBILITYの小型EVシェアサービスは「ワンウェイ方式」、いわゆる乗り捨て可能なサービスになっています。つまり、駒沢に配置されていた C+pod は誰かがさいたま市に乗って行き、さいたま市から駒沢に小型EVでやって来る利用者がまだ誰もいない、ということなのでした。

HELLO MOBILITY のサービス詳細については、公式サイトをご確認ください。借りるには別のアプリをインストールしたほうが便利なようですが、HELLO CYCLING の電動アシスト自転車のシェアサイクルも検索できます。

さいたま市から駒沢まで利用してみた

2月6日の月曜日、ランチを食べに三軒茶屋まで歩きながら「これは、私が駒沢に小型EVを運んでくるしかない!」と思い立ち。牛丼食べたその足で田園都市線の三茶駅へ向かいながら、さいたま市内で借りられる小型EVを探してみました。

 

「新都心大橋下」というステーションに駒沢から移動した C+pod が、そして「さいたま新都心バスターミナル」では、以前もこのサービスを試して乗ったことがある FOMM ONE が、それぞれ1台貸出可能になっていました。

当初の狙いからすれば「C+pod を駒沢へ連れ帰る」を選択すべきとは思いつつ。超小型モビリティのサイズでありながら軽自動車登録の FOMM ONE は、高速道路を走ることが可能です。「水に浮く!」で話題になった FOMM ONE ですが、ユニークなのはそれだけではありません。床のペダルはブレーキだけで足で踏むアクセルは無く、ステアリングの裏側左右にあるパドルタイプのアクセルスイッチを手で操作するという変わり種です。以前、さいたま市内を走り回った時にもこのアクセル操作が慣れるほどに面白く、仲間を集めてジムカーナ大会やりたいと思ったほどで、まだ体験できていなかった「FOMM ONE で高速を走る!」にチャレンジしたくなったのです。

【関連記事】
水に浮く! 軽EV『FOMM ONE』はいつから日本で買えるのか?(2021年5月19日)

借りる直前、返す直前に予約する

よし、FOMM ONE 借りて首都高走って帰ろう! と決め、さっそく予約を入れよう、としたのですが……。

 

HELLO MOBILITY では、貸出予約の有効時間は1時間だけになっています。最初に予約を試みたのは三茶の駅に向かう途中で、ステーションへ到着するのが間に合いそうにないので一旦キャンセル。上野東京ラインという初乗車となる路線の電車で最寄りのさいたま新都心駅まであと数分になったところで改めて予約を入れました。

同様に、返却ステーションの予約もできるのですが、有効時間は30分。借りる時に一応返却ステーション予約も入れたのですが、駒沢到着までに有効時間が過ぎて自動的にキャンセルされたので、首都高の山手トンネルを富ヶ谷で下りて、淡島通りで駒沢に向かう途中の信号待ちで、返却予約を入れ直しました。

一般的なカーシェアリングサービスやレンタカーの場合、スケジュールが決まったら早めに予約するのがセオリーですが、乗り捨て可能な HELLO MOBILITY の場合、貸出の予約は利用する直前(1時間以内)というレギュレーション。「今、そのステーションにクルマがあれば借りられる」という仕組みになっているのです。返却も同様、「今、そのステーションに空いている区画があったら返却できる」ということですね。

スタートや返却は簡単でスムーズ

シェアカーを借り出すときのドアロック解錠や、返却時のドアロックなどはスマホアプリで行います。私が HELLO MOBILITY を利用するのは2021年4月以来でほぼ2年ぶりでしたが、戸惑うことなくスムーズに利用することができました。

 

スタート時はアプリ画面で手順が案内されるし、返却時にはチェックボックスで確認事項が表示されます。こうした機能は2年前にはなかったと記憶しているので、 HELLO MOBILITY も進化しているということでしょう。

いきなりの首都高走行も意外とスムーズでした

さいたま新都心駅から徒歩数分のステーションに到着し、アプリを操作してカーシェアをスタートします。

カーナビやETCは装備されていないので、備え付けのホルダーにスマホをセット。パドルのアクセル操作に不慣れなまま高速に乗るのは少し不安でしたが、高速入口までの市街地走行が習熟運転になるだろうと当て込んで、14時10分頃、早速スタートしました。

ところが、さいたま新都心バスターミナルのカーシェアステーションから首都高の新都心入口までは、5分ほど走っただけであっという間に着いてしまいました。周辺をもう一回りとも思いましたが、乗り始めてみると前回運転した感覚をそれなりに身体が覚えていたので、そのまま高速道路に突入します。

ゲゲッと感じたのは、運転操作ではなく首都高の料金が高いことでした。もう何年もETCで高速道路を利用しているのであまり意識していなかったですが、軽自動車でも1590円もするんですね。

アクションカメラで、少しだけ走行シーンを紹介できる(使い物になりそうな)画像が撮れていました。この写真が入口直後、本線へ向かう上り坂です。

パドルのアクセルスイッチは左右にあります。フルスロットルにしたい時は左右を一緒に手前に引きます。上りの緩いカーブでしたが、しっかり80kmくらいまで加速してくれました。

本線に入ってからは70km弱で走る大型トラックを追い越したりもして。最高速は90km/hに制限されているようですが、片手だけのアクセル操作でも70〜80km/hでスムーズに巡航できました。

一度だけ「オッ!」と感じたのは、山手トンネル内でのこと。渋滞はまったくなくてスムーズだったものの、それなりにクルマは多く。70km/hくらいで走っている時、新宿あたりで挙動が心許ない合流車があって、3台ほど前のクルマが急なブレーキを掛けました。私も急ブレーキを強いられたのですが、フットブレーキを思い切り踏んだ時の制動力が、いつもの自動車よりも控えめで。十分な車間距離を取ってて良かったぁ、という瞬間でした。

FOMM ONE は回生ブレーキを備えていて、今回の記事を書くに当たって以前取材した担当者に確認したところ「アクセルを放すだけでしっかり減速できるよう、回生は強めの設定にしてある」ということですが、速度が出ているところからいきなりの急減速はしてくれません(それはそれで危ないし)。

床のペダルはブレーキのみ。左足を載せてるフットレストは助手席と共用、って感じです。

結論として、FOMM ONE での高速道路クルージングはおしなべて痛快でした。とはいえ、今回走ったのは首都高で周囲の車両の巡航速度も控えめでした。新東名の120km/h制限区間とかを走るのは、かなりチャレンジングな体験になりそうに思います。

駒沢のステーションに FOMM ONE が登場!

 

今回の走行時間は、14時10分頃〜15時頃までの約50分。借りたり返したりの写真を撮っていたこともあり、利用時間は1時間02分。2200円の3時間パックで借りて300円の安心補償プランにも入ったので、合計2500円。消費税込みで2750円の料金でした。

ほほぉ、と感心したのが、バッテリーの消費量でした。FOMM ONE のバッテリー容量は11.84kWhで一充電走行距離(NEDC)166kmのカタログスペック。車両予約の際の案内でも、SOC100%で166kmの航続距離が表示されていました(FOMM ONE のメーターパネルなどにSOCの%表示はありません)。

とはいえ、さいたま市から都内まで35kmほどは、ほぼフルスロットルの高速道路走行。かなりバッテリーを消耗しちゃうんだろうなと覚悟していたのですが……。返却後、駒沢のステーションに登場した FOMM ONE の案内を確認すると、SOCが「73%」と、思ったより多い残量でした。

高速道路走行の電費性能を、ざっくり「25%で30km」と考えると、75%で90km、つまり「100kmくらいの高速道路走行はできる」と思われます。

急速充電はできないので、SOCが空近くなってしまうと、200Vでざっと4時間くらいは普通充電する必要があるので、遠出はオススメできないですが、侮りがたい使い勝手だと感じました。

駒沢へ小型EVを! というミッションが無事完了。電動キックボードや自転車も利用者がたくさんいる様子(空き区画が多い)でした。

小型EVの乗り捨てカーシェアは、悪くない

今回、乗り捨てOKの小型EVカーシェアを利用してみて、端的に「悪くない」と感じました。身近な生活圏のあちらこちらにステーションがあれば、小型EVが活躍できるシーンはいろいろとありそうです。ただし「あちらこちらにステーション」があるのは、こうしたサービスが定着するための必須条件と言えます。

このキャプチャ画像は、さいたま新都心周辺の HELLO MOBILITY のステーションの位置を表示したものです。さいたま市内にこんなにたくさんステーションがあるのは、ENEOS、さいたま市、OpenStreet による実証実験が行われているからです。このくらい拠点があれば、さまざまな利用シーンで活用できて、車両の稼働率が上がり、「ステーションはあるけどクルマがない」なんてことも減ることでしょう。

駒沢にステーションができたことだし、いっそのこと世田谷区でも小型EV活用に向けた本気の取り組みを始めてくれないものか、と、本気で区役所か区議会議員さんに相談に行ってみようかと思うくらいです。

ちなみに、 HELLO MOBILITY の実証実験は岐阜県の多治見市でも実施されていて、確認すると「駒沢から多治見市へ行って乗り捨てしても問題ない」とのことでした。駒沢から多治見市へは、新東名を使っておよそ330km。「1日100kmちょっとずつ走って普通充電器のある宿に泊まりながら」と想定して2泊3日の道程です。トヨタの本社も近いですし、C+pod で高速使わずに、ってのもいいですね。

どなたか「そのチャレンジ、オレがやる!」という方いらしたら、ぜひレポートをお願いします。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)2件

  1. HELLO MOBILITYのウエブページを見たのですが、超小型EVについては多治見市とさいたま市が対象となっているようで世田谷は出て来ません。もしかして世田谷は期間限定か何かでしょうか?

    1. hatusetudenn さま、コメントありがとうございます。

      ご自身で公式サイトを確認される情報リテラシー、さすがです。
      ご指摘の通り、HELLO MOBILITY の公式サイトで、まだENEOSマルチモビリティステーションについての告知は反映されていませんね。

      でも、アプリではちゃんと表示されますし、今回、実際に利用することもできました。
      また、メールで問い合わせ、さいたま=駒沢の利用(さいたま=駒沢=多治見も!)OKであることも確認済みです。

      今のところ、EVsmartブログ読者だけが知っているお得情報、とご理解くださいまし。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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