ドイツの電気自動車研究が「スマート充電」がいかにスマートか明らかにした

電気自動車が広く普及した際に、それを支える電力をどうするのか、という問題が出てきます。その解決策としてのスマート充電(電気自動車の充電時間を制御するシステム)の有効性を、ドイツのエネルギー会社が検証しました。全文翻訳記事をお届けします。

ドイツの電気自動車研究で、スマート充電がいかにスマートか明らかになる

元記事:Smart Charging Is Better Than Dumb Charging, German EV Study Finds by Steve Hanley on 『CleanTechnica

アンチ電気自動車な人々の言い分

もしあなたが『CleanTechnica』を定期的に読んでいるのならば、化石燃料を通じて作られた資金が電気自動車というコンセプトへの攻撃に使われていることをご存知でしょう。ニュースにはいわゆるシンクタンクが発する、航続距離が短すぎる、充電時間が長すぎる、燃えるバッテリーを積んでいる、障害のある人にはリスクが高い、値段が高い、などの情報が詰め込まれています。批判は電気自動車が既存のガソリン車よりも多くの二酸化炭素を排出する、というところまできています。

やばい話をしてみましょうか。世界中に何百万台の電気自動車があったとして、そのすべてが同時に充電を始めたら、電力システムは凄まじいメルトダウンを起こすでしょう。送電鉄塔がオーバーヒートして火花を散らしながら地面に崩落し、高電圧線があちこちに飛び交って何の罪もない人々を感電死させる…… あぁ人間の業の深さよ!

このような悪夢のシナリオはばかばかしく見えるでしょうが、コーク家(アメリカ保守勢力の主要な支援者一族でビリオネア)の後ろ盾を得、忠誠を尽くしている子分はこういう馬鹿なことを言うのに何の躊躇もありません。まぁそれは良いんです。彼らはデマをばら撒くために、かなりの金額を受け取っていますからね。ただ私達がこれらを「信じる必要はない」ということです。

ほとんどのこのような考えは、多くの嘘を混ぜた中のある小さな事実に基づいて形成されます。世界中のすべての電気自動車が同時に充電し始めた場合、間違いなく送電網に影響は出るでしょう。特に路上に今より何百万台も電気自動車が増えるであろう未来なら尚更です。もちろん、小学校以上のレベルの教育を受けた人ならば誰でも、そのような前提はまったく現実的ではないと分かるはずです。しかし、こと恐怖と嘘をばら撒く事に関しては、化石燃料会社に雇われたコークローチ(コーク家とゴキブリをかけた筆者のオリジナル語)に勝るものはいません。

Netze BWの研究

ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州のエネルギー会社、Netze BW は自社サービスエリア内において、過去15ヵ月間にわたり電気自動車オーナーの充電行動パターンの研究をしてきました。収集されたデータを元にした新しいレポートは、多くの電気自動車が同時に充電される場合に生じる懸念を軽くするものでした。

実験は富裕層が集まる、シュツットガルト郊外のオストフィルデルンルートで集中的に行われました。データによると、電気自動車を持つ家庭のすべてで夜間充電が行われましたが、同時に充電されるのは全体の半分だけでした。ロイターによると、今回の研究のプロジェクトマネージャーであり、Netze BWのエンジニアのSelma Lossau氏は、「この研究結果により、前よりも肩の力を抜く事ができました。将来的には、このような通りに住む住民の半分が電気自動車を所有すると予測されています」と話しました。

この研究以前では、電気自動車所有者は帰宅してすぐにプラグを自動車に差し込んでいました。しかし実験に参加した事により、充電に対する態度に変化が現れました。引退した元校長で、実験時間中ルノー『ゾーイ』を運転したNorbert Simianer氏はロイターに次のように話しました。「はじめのうちは、(充電ができていない故の)一切のリスクも負いたくないし、安心するために頻繁に充電をしていました。時間が経つにつれ、考えが変わったんです。車に慣れて、充電プロセスにも悠々と対処できるようになりました」

Simianer氏と近隣住人には、電気自動車とガレージに設置する22kWのウォールボックス、さらに充電無料の2つの充電器が家の前の通りに与えられました。その代わり普段使っていた車は手放し、夜間の7時間半に Netze BW が時間をコントロールしてモニタリングできる充電方法を受け入れました。

Lossau氏によると、Netze BW は様々なパターンを試しました。例えば最大22kWの電流に車を順に割り当てる、電流を調整して個々の充電時間を長くする、両方を合わせる、などです。 実験に参加した人たちは、バッテリーの状態をアプリでチェックすることに慣れ、家に帰って即座に充電できない状況にもすぐ慣れました。自分の持つ車が、最長50kmの通勤を毎日こなせたからです。

スマート充電での解決策

スマート充電が意味するところは明白です。車にプラグが差し込まれているからと言って、必ずしもその間ずっと充電されていなくても良いのです。インターネットに繋がった充電器は、地域の電力会社が送電網のバランスを取るためにリモートでオン/オフの切り替えをしつつも、顧客がフル充電されたバッテリーで次の日を始めることを可能にします。

スマート充電機器を製造するシーメンスの広報担当である Thomas Werner氏は、「充電プロセスは非常に柔軟にデザインでき、出力をコントロールしたり供給される電力量を下げたりしてネットワークのオーバーロードを減らすように対処できます。ハードウェア及びソフトウェアのデジタル化とコミュニケーション技術が組み合わさってこれが可能になります」と話しました。

ソフトウェアを使うと、電圧の急激な変化により、徐々にダメージが蓄積される電力ネットワークを守る事もできます。これによってドイツ全体で170万kmになる送電網部品にかかる多くの費用を節約できます。

自動車メーカーと電力会社が欲しい物

電気自動車メーカーが欲しいものは、ガソリンのタンクを満タンにするのと同じ速さ、つまり平均5~10分の時間で充電完了する車です。電力会社が欲しいのは、高い費用がかかる送電網にアップグレードする必要の無い充電インフラです。さてここで、ドライバーは、急速充電は良いもの、普通充電は悪い物と考えがちです。

ノルウェーでは電気自動車オーナーは、車を使用していない夜間により遅い(普通)充電器を使用することに慣れてきています。エネルギー規制機関の NVE は、電気自動車オーナーが午後のピーク時間を避けて充電するように説得できなければ、ノルウェーでは次20年で低/高電圧がかかる送電網、変電所、高電圧変圧器に12億ドル(1,270億円)の費用がかかるとの研究結果を発表しました。

しかしこの費用は、電気自動車オーナーが夜充電するようになれば67%減少し、夜遅い時間から早朝にかけてのみプラグが挿されていればほぼゼロになります。NVE はピーク時間に充電をした際にペナルティとして税金を課す事を提案しています。ノルウェーの電気会社 Tibber は、会社が充電時間を選べる事を条件に、既に電気自動車充電用の安い電気を提供しており、また ZAPTEC などの企業は現存の送電網の容量によって、充電を調整する方法を提案しています。

終わりに

他の国と同じように、ドイツでもアパートやコンドミニアムに住む人にとって、夜中に充電するのは非常に難しい状況です。多くのネガティブキャンペーンを展開する人達が、電気自動車は戸建てを持つ余裕のある金持ちのおもちゃだと攻撃しています。電気自動車革命は、すべてのドライバー、特に自分だけの駐車場を持たない人や、路上にしか駐車できない人も巻き込んで起こらなければなりません。

プラグを挿し、充電パラメーターを設定し、電力会社にかかるコストが最も低くなる形で充電を終わらせる方法を見つけられるように、電気自動車オーナーを説得するという挑戦を、電力会社はしていかなければなりません。そのためには人々が態度を改める必要があります。しかし私達が色々なことを妥協し、自動運転で高速を走れるならば、電力会社に自分の車の充電をし続けてもらう正しい道を見つけてもらうことも可能なのです。

もっと良いのは、こうすることによって、電気自動車を攻撃するために化石燃料会社の筒から放たれる矢を更にもう一本取り除けることでしょう。

(翻訳・文 杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 興味深い記事でした。
    確かに毎日通勤で使う程度なら、現状のどの電気自動車でも家に充電環境があれば不便はなさそうですね。
    現時点でランニングコストのメリットは十分にあるので、後は賃貸暮らし転勤族の私みたいな人間に対して、充電行為の負担がガソリン車と遜色ない所まで(全駐車スペースに充電器がつくとか、混雑する時期のSAで急速充電が五分くらいで終わるようになるとか)行ったら是非電気自動車にしたいと思っています。
    記事内部でオイルマネーの勢力が言っていること(危険だとか航続距離が短いとか)に対して反論の大部分は正しいと思ったのですが、後半に向けてむしろ電気業界の回し者臭い部分も感じられ面白かったです。
    特に電力会社にかかるコストを~のくだりは個人的には誰の立場で言っているのかって感じです。
    電気は使って欲しいけど、インフラ整備はしたくないって感じが何とも。
    ユーザーの利便性の低下を我慢しろっていうのは何だか違うと思いました。

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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