EVオーナーは知っておきたい「リチウムイオンバッテリーの上手な使い方」

電気自動車やスマホなどに使われるリチウムイオン電池は、時間が経つとともに持ちが悪くなってきます。そのメカニズムと電池寿命を伸ばすヒントを分かりやすくまとめた記事が米CleanTechnicaに掲載されました。全文翻訳でお届けします。

EVオーナーは知っておきたい「リチウムイオンバッテリーの上手な使い方」

元記事:Great Tips For Care Of Lithium Batteries by Jennifer Sensiba on『CleanTechnica

最近のツイッター上では、World of Engineeringのスレッドがリチウムイオン電池を使う人向けにたくさんの良いアドバイスをくれています。多くの人がリチウムイオン電池に必要なケアをまったく知らないので、この情報を定期的にシェアするのはすごく良い考えです。

リチウムイオン電池について知っておくべき事。
電気自動車、ノートパソコン、スマホを所持しているなら、電池寿命を伸ばすことができます。
さて見ていきましょう。

多くの読者にとっては知っている事ばかりでしょうが、インターネットフォーラム、Facebookグループ、ツイッターなどでこのトピックに対し、懐疑的だったり敵意を向ける人さえいるのを私は見てきました。「自分がエンジニアより分かっていると言うのか?」と彼らは言います。電池のケアに対するよくある反論は、ノートパソコン、太陽光発電機、電気自動車の設計者がすべて考慮してくれているのだから、オーナーは何もする必要がない、というものです。

設計者やエンジニアが電池の安全性や耐久性を考えているのは真実ですが、製品のオーナー、ユーザー、ドライバーであるあなたが寿命をさらに伸ばすためにできることがないという訳ではありません。

さらに、スレッドを見てみましょう。私も適宜説明や情報を加えていきます。

1/7 放電量(DoD)により電池のサイクル数が決定されます。放電量が少ないほど、電池は長持ちします。放電し切る(電気を使い切る)ことを避け、頻繁に充電を行ってください。リチウム電池の電気を一部使うのが良いです。

ここで重要なのは、リチウムイオン電池は古いタイプの充電式電池の設計と違って「メモリ」の問題はないということです。電気を使い切らずに充電をしてもまったく問題ありません。放電が少なければ、それだけ多くの充電サイクルができるのです。次のパートに移る前に、それは覚えておいてください。

2/7 部分的な充放電は電池にかかる負荷を軽減し、寿命を伸ばします。高気温と高電流も電池サイクルに影響を与えます。

3/7 DoDレベルごとに予想される、電池容量が70%まで低下する前のリチウムイオン電池の充放電サイクル回数:
100% DoD→600回
80% DoD→900回
60% DoD→1,500回
40% DoD→3,000回
20% DoD→9,000回
10% DoD→15,000回

ここで具体的に話しているのは、再充電するまでにどの位電池を使うかということです。常に満充電から空にする(100%の放電)ことを繰り返せば、電池容量の半分かそれ以下を使い続けた場合に比べて寿命は相当短くなります。

放電量と電池サイクルの関係は一次関数的ではありません。バッテリー利用を少し控え目にすると、バッテリー寿命のリターンはそれ以上に大きなものになります。よって、あなたがガソリンスタンドで給油するガソリン車のように、1週間か2週間に1回満充電を繰り返しているようなEVオーナーでしたら、車の寿命は毎晩プラグを挿している人と同じ長さは見込めなくなります。

しかし、どの位使うかよりも重要な要素があります。

5/7 ほとんどのリチウムイオン電池にとって1セル当たり4.10V以上の電圧は高圧と考えられます。ピークの充電電圧を0.10V減らす毎にサイクル寿命は倍になると言われています。ダウンサイドとしてはピークの充電電圧を低くするとバッテリー容量が減ります。

6/7 寿命に関しては、ほとんどの電池にとって最適な充電電圧は3.92Vです。4.20V以下で0.10V低くなるごとにサイクルは倍になりますが容量は減ります。電圧を4.20V以上に上げると寿命は短くなります。

バッテリーを長持ちさせるためには、どこまで充電するかも重要です。上記の電圧値は自分でバッテリーパックを作らない読者にとっては馴染みがないでしょうから、少し説明を加えます。

ノートパソコンの電池にはほんの少量のセルしか使われていませんが、コンピューターが動くのに必要な電圧を得られる分だけ束にされています。さらに大きな機器である電気自転車、太陽光発電機、電気自動車などはさらに高い電圧が必要で、使われるセルの数も多くなります。フルサイズの電気自動車には通常400ボルトか800ボルトの電池パックが使われており、ここでも高い電圧を得るために個々のセルが繋げられています。

この数値はパーセントで現すのがベストです。きちんとしたメーカーはセルを4.2V以上で充電させるようなことはしません。電池寿命のためにも真の100%充電ができないように、通常はバッファーを持たせるようプログラムしています。しかし顧客が払った金額に対しどれくらいの容量を持たせるか考慮し、さらにコストとのバランスも取らねばなりません。よってメーカー側が設定する最大充電量では、80~90%まで充電するよりもやはりダメージが大きいのです。

そこで各セルの電圧は3.92V位に寄せられています(もちろん電池セルによって違ってきます)。

ほとんどのEVで、どの位充電するかの設定はできます。できれば通常は80%にし、フルの航続距離が必要な時だけ100%充電をするのがベストです。それから放電しすぎるのも良くないので、目的地へ辿り着くために必要な時以外は10~20%以下にならないようにしましょう。

4/7 リチウム電池は熱に弱いです。1年間特定の温度で保存した場合の、リチウムイオン電池(40%充電)の回復可能な容量の予測値は以下になります。

0℃→98%
25℃→96%
40℃→85%
60℃→75%

私達のほとんどがすでに知っている通り、温度もバッテリー寿命にとって重要な要素の1つです。

ノートパソコン、発電機、電気自転車、電気スクーターなど、室内で保管できるものは暑すぎたり寒すぎたりする環境に置かない方が良いです。持ち運びできるものは家の中で、室温でキープするのがベストです。暑い車内に放置したり、電気自転車の電池を外に置きっぱなしにするのは電池寿命の観点から見ると良くありません。

EVに関しては、まず冷却システム(通常は冷却水)付きのEVを買うのがベストです。電池を長持ちさせるのに大きな助けになります。冷却水なしのEVが欲しいのならば(日産LEAFが一番人気の車種です)、温暖な気候の場所に住むか、ガレージに入れましょう。冷却水などの機能が付いていても、システムを動かし続けるためにプラグを挿しっぱなしにする必要があるケースもあります。

7/7 電池寿命を伸ばすためにできること。
充電量が100%か0%になる時間を極力作らないようにすること。
充電の一部を使い、SoC80%までの充電にすること。
電池の温度を管理すること。
高圧充電/放電を避けること。

これをEVに当てはめると……

充電率50%~60%に近いところにいましょう

40%~70%、または20%~80%の間で運転しましょう。たまに0%や100%になっても、電池を即座にダメにするわけではありません。しかし一定時間以上その状態を続けるのはかなりの悪影響です。車や機器を自分のニーズに合わせることとバッテリー寿命の最適なバランスを見つける必要があります。

EVを60%充電で冷蔵庫に10年保存し、一度も運転しないこともできます。しかしそれで何が得られるでしょう。あなたにとってのベストが何か、というのが問題なのです。

できるだけ涼しいところに駐車し、プラグは挿しておきましょう

プラグを挿し、80%までしか充電せず、エアコンのついたガレージというのは理想ですが、常に可能なわけではありません。充電50%で職場の駐車場の日陰に駐車する方が、100%でフェニックスの太陽の元に毎日いるよりも良いのです。もう一度言いますが、自分のニーズにとってのベストを尽くしてください。

電池パックには優しく(急速充電/放電を避けましょう)

どんな車でもそうですが、信号が変わった際に毎回アクセルを急激に踏み込めば、燃費を考えた運転に比べて電池に負荷がかかります。誰もが燃費を常に考えていられませんし、そうしたい人もほとんどいないでしょう。なので、単純に楽に構えて普通に運転するようにしましょう。回生ブレーキ(停まる直前にしない)、急速充電(どこかへ行くのにどうしても必要な場合以外はしない)も同じです。

以上のことをやり過ぎない

あなたは何かが必要で機器や車両を買ったわけです。もしかしたら楽しむためかもしれません。したがって電気自動車でありがちなアドバイスのせいで必要のあることや楽しみを奪うようなことはしないでください。

猛暑の中で日産LEAFを運転する必要がある?
運転してください。

あちこちで急停車して遊びたい?
行ってください!

目的地に着くのに100%充電する必要がある?
電欠で立ち往生なんてしないでください!

すべての電池に関するアドバイスは、あなたのライフスタイルにフィットする形で取り入れる必要があります。EV電池パックを50年もたせたところであなたが得るものはほとんどないでしょうし、2072年のEVは今日よりも相当進んだものになっているでしょう。2032年でも恐らく同じです。できる時にできることをして、愛車が数キロメートルでも数年でも長持ちするようにしてください。ただしやり過ぎはダメです。

(翻訳/文 杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. エアコンの付いたガレージ(笑)に停めたいのはやまやまですが実際は青空駐車・・・。
    せめて屋根のあるところに停めたいものですね。
    販売台数でいったら全世界のEVの半分以上を占めていると思われるLFPには当てはまらない記述なのはちょっと気になりますね。
    LFPもリチウムイオン電池の一種ではあるので

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この記事の著者


					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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