2026年が始まりました。フルモデルチェンジした日産リーフやトヨタbZ4Xが登場したのに加え、今年はスズキ「eビターラ」やBYD「ラッコ」、ホンダ「Super-ONE」など、幅広いユーザー層に手が届きやすい新型EVの発売が予定されており、遅れていた日本のEV普及がいよいよ加速することが予測できます。充電インフラに感じる課題や要望について、ベテランEVユーザーの生の声をお伝えします。
「EVsmart meeting」の要点を紹介します
日本で買えるEVの車種バリエーションが増えてきました。国のCEV補助金が最大130万円と、おおむね40万円増額されたこともあり、実質的な価格として「300〜400万円台」で買えるEV車種がグッと増えました。
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さらに、2026年にはスズキのコンパクトSUVである「eビターラ」や、BYDの軽乗用EVの「ラッコ」、日産リーフの「B5」やホンダ「Super-ONE」など、幅広いユーザー層に手が届きやすい新型EVの発売が予定されています。世界の中で遅れをとっていた日本のEV普及がいよいよ加速する1年になることでしょう。
EV普及を考える時、今でも「充電インフラへの不安」を挙げる方は少なくありません。現実として、高速道路SAPAなど経路充電スポットへの高出力複数口設置が進展し、宿泊施設などの目的地充電施設が増えていて、数年前と比較しても格段に日本国内のEV充電環境は良くなっています。
とはいえ、まだまだ改善&進化すべき課題はあります。EVsmartブログでは、2025年6月、実際にEVを活用している方々の思いや提案について議論する「EVsmart Meeting」を開催しました。レポート記事がすっかり遅くなってしまいましたが、2026年の幕開けに際して、改めて関係各所のみなさまに届くことを願いつつ、ポイントをまとめておきたいと思います。

テーマ① 経路充電(急速充電)インフラに望むこと
「経路充電」というのは、ロングドライブの途中に行う充電のこと。休憩などを活用して短時間で充電するニーズが高いことから、おもに「急速充電器」を利用します。
長距離移動中の休憩を兼ねたポイントということで、高速道路のSAやPA、幹線道路沿いの道の駅などが代表的な「経路充電スポット」となります。かつては、高速道路SAPAでも1カ所に1台(口)しか急速充電器が設置されておらず、大型連休などの繁忙期には充電待ちが発生することが少なくありませんでした。
でも、2023年10月、経済産業省が「充電インフラ整備促進に向けた指針」を発表。「高速道路など充電ニーズが高い場所においては、1口90kW以上の高出力の急速充電器を基本とし、特に需要の多い場所においては150kWの急速充電器も設置する」という高出力化とともに「90kW以上を設置する場合には、複数口に対応した機器を設置」する複数口化を明示。日本の公共充電インフラ拡充を担うe-Mobility Power(eMP)が指針に沿った急速充電器の置換や新設を進めたことで、利便性が格段に向上しているところです。
公共充電インフラとして信頼性向上を!
「高電圧への対応、複数台設置、インフラの稼働状況の公開、保守メンテの徹底を望みたい」(安東真太郎さん)
充電器の故障や相性問題(充電器と車種の相性で充電できないケース)にしばしば遭遇することがあり、「そこに行けば確実に充電できる」という信頼性を高めて欲しいという要望です。また、急速充電器が空いているかどうかという「稼働状況(満空情報)が一般的な充電スポット検索アプリや車載ナビで確認できないのが不便」という指摘がありました。
さらなる設置口数の充実を!
「設置ストールを最低でも6口、大規模SAなどは30口程度は設置してほしい。また、原則1回30分の目安を撤廃してほしい」(辻榮亮さん)
高速道路SAPAなどでは複数口化が進展しているものの、今後、さらにEV普及が進めば充電待ちが発生することが懸念されます。テスラのスーパーチャージャーや、欧米、中国などの急速充電スポットでは数十口のストールが並ぶ経路充電スポットがむしろスタンダードになっていることから、日本でもしっかりと拡充を進めてほしいという要望です。
十二分な口数が整えば、現状は「1回30分」という利用時間の目安に縛られる必要がなくなるので、利用するEVのバッテリー容量や充電性能に応じて「30分を超える急速充電ができるようにしてもよいのでは」という提案です。
透明性のある充電料金設定を!
「従量課金など、ユーザーにとって納得感が高い透明性のある充電料金設定を望みたい」(久保裕貴さん)
現状、公共の急速充電インフラの多くは時間課金制になっています。EVの充電性能などによって同じ時間でも充電電力量が大きく異なるケースがあることを不満に感じるという指摘です。
従量課金はeMPでも導入に向けた取り組みを進めており、パワーエックスやフラッシュなど一部の充電サービス事業者の急速充電器ではすでに採用されているものの、高速道路SAPAを含めた公共の急速充電スポットにおけるスタンダードになったほうが利用するユーザーとして透明性を感じるという意見でした。
充電終了後放置にはペナルティを!
「充電が終わってもクルマに戻ってこない人に対する重課金制度を導入すべき。マナーからルールに変えるためにも、たとえば77円/分の充電器であれば、10倍となる770円/分とする(2倍程度ではダメだと思う)ことで、5分遅れるだけで3,850円のペナルティを徴収されることとなり、抑止効果が期待できる」(杉本容一さん)
ちなみに、テスラが独自で展開する急速充電スポットのスーパーチャージャーでは、2016年から充電完了して5分が経過すると超過駐車料金(1分50円、満車時は1分100円)が上限なしで課金される制度を導入しています。充電終了後の車両放置や、エンジン車など充電しない車両が停めてしまう「占拠」は急速充電スポットの機能を妨げる要因になっています。
高速道路ICの退出&再入をフリーにする制度導入を!
「高速道路のICから、時間制限のない退出&再入フリーの料金体系を導入すべき。あるいはハイウェイオアシス式に外からアクセス可能な充電エリアを設置してほしい」(中尾真二さん)
ETC2.0で高速道路を乗り降りしても通行料金が変わらない制度が導入されれば、SAPA以外のIC近郊のスポットに、多様なサービス事業者による急速充電スポットが増え、結果的にEVの利便性向上が期待できます。
30分の充電で200km程度は走行できる性能を!
「30分で航続距離にして200km程度走行可能な充電ができれば実用的な不満は感じない」(石井浩一さん)
充電器とともに、市販EVの急速充電性能にも関わる意見です。たとえば、電費が「6km/kWh」と仮定すると、200km走行するのに必要な電力量は約34kWhと試算できます。充電器の最大出力としてはおおむね90kW以上、EV側でも80kWを超える程度の充電性能、もしくはより効率的な電費性能があれば「30分で200km」を実現できることになります。

テーマ② 目的地充電(普通充電)インフラに望むこと
宿泊施設やレジャースポットなど、数時間程度以上を目安に長時間滞在する場所で行うのが「目的地充電」です。出力が低い「普通充電器」のほうがむしろ便利に活用できるケースが多くなります。
最低でも出力6kW以上の充電器を!
「市販EVの大容量化も進んでいるので、最低でも6kW、可能であればそれ以上の出力の普通充電器を設置してほしい」(杉本容一さん)
出力3kWの200Vコンセントを安価に利用できればそれはそれでありがたいものの、最近の市販EVには70kWhを超えるような大容量バッテリー搭載車が少なくありません。SOCが空に近い状態から3kWで70kWhを満充電にするためには20時間以上掛かる計算となり、さすがに力不足を感じてしまうため、普通充電器であっても最低6kWの出力を確保してほしいという意見です。
エンジン車(非充電車両)が停めない工夫を!
「エンジン車など充電しないクルマが充電区画に停めないよう工夫してほしい。目的地充電を歓迎してくれる設置者選びが必要では?」(久保裕貴さん)
急速充電スポットと同様に、充電区画をエンジン車など充電しないクルマが占拠してしまうのが、EVユーザーの利便性を損ないます。設置場所によっては「EV優先」程度でエンジン車が駐車することを禁じていないケースもありますが、充電器があるという情報を頼りにその場所を訪れるEVユーザーにとって「エンジン車が停まっていて充電できない!」のは大きなストレスです。EV充電の必要性を理解し、目的地充電設備の設置を歓迎してくれる設置場所を選ぶことが重要ではないかという指摘です。
予約して確実に充電できるのがいい!
「ことに宿泊施設では、事前に予約の連絡をすることで確実に充電可能になることが大切」(辻榮亮さん)
EVで宿泊を伴う長距離旅をする場合、宿泊場所で充電できるかどうかは、旅程を大きく左右します。EVsmartブログではルートインホテルズが「宿泊者に限り予約可能」となったことを紹介する記事を紹介しているように、EVで便利に旅するために、とても大切なポイントだと考えています。
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メンテナンスの徹底を!
「複数台設置、現実的な価格体系、容易な決済手段の導入が大事。さらに、メンテナンスの徹底を望みたい」(安東真太郎さん)
普通充電器についても、ひとつの施設で複数台(口)が設置されていれば、想定外の「充電できない!」トラブルを減らすことができるでしょう。また、せっかく空いている充電器が故障で使えないという事態を避けるためにも、しっかりメンテナンスしてほしいという要望です。
充電プラスアルファのサービスを!
「温泉宿や観光施設に普通充電スポットがあるなら、地元の美味しいお店を紹介してくれる仕組みや割引サービスがあるなど、「充電×ごはん」を楽しめるプランがあれば、EV旅行がもっと特別な体験になります」(石井啓介さん)
EVが普及するにつれ、充電プラスアルファのサービスは設置施設の「付加価値」になることが予想できます。これからどんどん「EV充電器」は来客が訪れる施設にとって「あって当然」の設備になっていくはず。ユーザー本位のアイデアで、EV旅の楽しさがどんどん広がることを期待しています。
日本を豊かにしてくれるEV施策の広がりに期待!
「私は寒冷地の市役所職員ですが、再生可能エネルギーの有効活用と地域課題の解決は税収が少なく財政規模が小さい小規模市町村では困難です。充電に関する制度やサービス設計はどうしても都市部向けとなっていて、地方にとってはアンマッチを感じます。日本社会全体の利益のために、利用者の利便性とエネルギー政策全般の有効活用を一体的に実現できるEV充電サービスの進展を期待しています」(上野右貴さん)
最後に、東京で開催した「EVsmart meeting」に東北地方から参加してくださった上野さんのご意見です。化石燃料ではなく、電気の力で走れるのがEVの最大の特長であることは言うまでもありません。再生可能エネルギーの有効活用など、日本全体のエネルギーシフトを見据えた視点はとても大切だと共感します。
前述したように、日本の充電インフラは着実に進化してEVの利便性は高まっています。一方で、頻繁に充電スポットを利用するEVユーザーの視点に立つと「もっとこうだといいのにな」という思いがあるということです。より便利で持続可能なEV充電インフラの構築に向けて、関係各所のみなさんがアイデアや実行力を発揮してくれると素敵です。
日本国内で買えるEV車種が増えるとともに、豊かなEV社会が具現化されていくことを期待しています。
取材・文/寄本 好則






コメント
コメント一覧 (2件)
あと、「6kW以上の普通充電」という意見もありましたが、200Vの6kWだと30Aの電流を流す必要があります。「6kW以上」だと30A以上必要ですから、充電機器まで取り回す電線も太くする必要がありますし、(知見はありませんが)同じ所に複数台設置するとなると電気契約料金も高くなるのではないでしょうか。
200Vの6kW(30A)がお金をかけないでできる上限ではないと思います。
記事を読んでの第一印象は、大容量の新しいEVに乗って長距離移動するだろうオーナーの意見だなぁということでした。
それはそれで1つの意見ですが、将来を見越して遠出をほとんどしない地域移動がほとんどのEVユーザの増加も考えると、3キロワットの普通充電をあらゆるところに設置していくという方向性もあっても良いのではないかと思いました。
自動車メーカーも大容量の高価なEVばかり作るのではなく、今後は20kWh程度の儲けは少ないけれど、買いやすい価格のEVを普及させることも、これからのEV普及社会にとっては重要なのではないかと思います。エネルギーの安全保障の観点からも。