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日本でも小型EV市場拡大中/『N-VAN e:』が5,000台、『サクラ』と『eKクロスEV』が10万台を突破!

日本でも小型EV市場拡大中/『N-VAN e:』が5,000台、『サクラ』と『eKクロスEV』が10万台を突破!

国内のEV販売シェアを継続的にレポート(関連記事)している八重さくら氏の独自集計によると、ホンダ初の軽EVとして発売された『N-VAN e:』の推定登録数が累計5,000台、さらに『日産サクラ』と三菱『eKクロスEV』が10万台を突破したことが判明しました。本記事では軽EVの販売状況と背景を確認しつつ、国内で加速する小型EV市場に迫ります。

目次

発売から7か月で累計5,000台を突破した『N-VAN e:』

ホンダの『N-VAN e:』は2024年10月に発売された商用軽EVで、ホンダとして初の軽EVでもあります。N-VANはEVモデル単独での販売数は発表されていませんが、筆者(八重さくら)がJADA、全軽自協、ホンダ社から発表されている各データを独自に集計したところ、2025年4月に累計販売台数が5,000台を突破したことが判明しました。

これは発売から7か月での達成であり、商用車としては注目に値します。月別の登録台数を見てみると、初動の9~10月は663台、11月は756台、12月は最高となる882台を記録。2025年1月は821台、2月は634台、3月は739台、4月は592台と、継続的に毎月600~900台程度を維持し、累計では5,087台に達しています。

※発売前の9月の登録は、広報車やディーラー向けの試乗車などと推測。
※ホンダ社の公式発表やJADA、全軽自協の発表をもとに、筆者が独自集計。

また、N-VAN全体に占める『N-VAN e:』のシェアは、発売された2024年10月以降、安定して20%以上を維持。2024年12月には最大となる35.15%に達しています。このシェアをみても、商用軽EVである『N-VAN e:』が一定の支持を獲得している証左といえるでしょう。

※ホンダ社の公式発表やJADA、全軽自協の発表をもとに、筆者が独自集計。

軽貨物事業者から見た『N-VAN e:』の魅力

筆者の事務所では2020年に中古の三菱アイミーブを購入し、軽貨物車として宅配事業に使用しています。本来、アイミーブは乗用車として販売されている車種ですが、後席を外して2人乗りに改造することで、実は貨物自動車としても登録できるのです。

貨物用途への改造後に事業用ナンバーを取得した、筆者事務所の三菱アイミーブ。

ところで、アイミーブを購入した2020年の時点でも、既に貨物用の軽バンとして三菱からミニキャブ・ミーブが発売されていました。こちらは軽貨物として最大限の積載量を確保しつつ、改造不要で貨物自動車として登録できます。一方で、バンの形状ではどうしても電費が悪くなってしまう(航続距離が短くなる)ため、筆者の事務所では積載量を犠牲にして、あえて乗用車のアイミーブを選択していました。

そんななか、ホンダから発売された『N-VAN e:』は約30kWhの電池を搭載し、積載量を確保しつつより長く実用的な航続距離を確保。特に個人事業主で軽貨物を営む場合、まず車両の保管場所(=充電場所)から荷主様の事務所まで、荷物を取りに行く必要があります。その分だけ走行距離が長くなるため、この航続距離の違いが実用性に大きな違いを生むのです。

そして、なんといっても軽バンならではの広い荷室が、商用車としての最大の魅力です。『N-VAN e:』では4人乗りのグレードでも、全ての座席を折りたたむことで、助手席を含めて写真のようにフルフラットにすることができます。さらにスライドドア前方のBピラーを排除したことで、荷物の積み下ろしが容易になります。運送業だけでなく、工具や機器類がかさばる多くの事業用途として、活用の幅が広がるでしょう。

N-VAN e: の荷室。

そんな『N-VAN e:』にも、弱点が……?

ここまで『N-VAN e:』の魅力を紹介しましたが、不満点が全くないというわけではありません。一般的に最もハードルとなり得る点は初期費用、すなわち車両価格でしょう。自家用として登録する場合はCEV補助金(経済産業省所管)として57.4万円が補助されますが、この補助金を考慮しても200万円を超えるため、一般的な軽バンよりも高価です。

ただ、もし軽貨物などの事業用(黒ナンバーの貨物自動車)であれば国によるLEVO補助金(環境省、国土交通省所管)が適用可能となり、補助額が57.4万円から約130万円に大幅に増えます。さらに地方自治体によっては追加で補助があり、例えば筆者の事務所がある千葉県においては、太陽光発電を併設すれば国の補助額の1/2、すなわち約65万円の補助が加わることになります。仮に乗り出しが300万円だとすると、一般的な軽バンと同等以下の約105万円で購入できるのです。

事業用として考えた場合の初期費用の低さに加え、EVならではの燃料代やメンテナンス費用の安さといった維持費の面でのコストパフォーマンスの高さが、『N-VAN e:』が支持される大きな要因であることは、容易に推察できます。

一方で、事業用として登録予定の筆者が一番気になった点は、価格よりも「グレード設定」でした。同車には通常販売向けに2グレード、さらにリース専用の2グレードが用意されていますが、主に以下のような違いがあります。

e: Ge: L2e: L4e: FUN
税込価格(※1)月額32,970円~月額34,720円~2,699,400円2,919,400円
販売方法リース専用リース・通常販売
急速充電オプション標準装備
ADAS(※2)非対応標準装備
定員1名2名4名
最大積載量350kg300kg
※1:リースはホンダ公式サイト記載の6年契約、頭金、ボーナス払い併用の場合。CEV補助金含む。
※2:ADAS(先進運転支援システム)は車線維持やクルーズコントロールなどの「Honda SENSING」機能。緊急ブレーキなどの基本支援は全グレード標準装備。

このなかで筆者が最も「悩ましい」と感じるのは、ADAS(先進運転支援システム)への対応と最大積載量です。

まず、ADASについては「e: L4」と「e: FUN」では標準装備されている一方で、「e: G」と「e: L2」は非対応で、オプションとしても用意されていません。

一方で、軽貨物事業者として配送業務を請け負う場合、大手事業者を中心に、最大積載量「350kg」の車両を要求されることも珍しくありません。この要求に対応するには、ADASが装備されていない「e: G」や「e: L2」を選ぶ必要があるのです。

筆者にとって、ADASと最大積載量はどちらも優先度が高く、購入にあたって、最大の悩みの種といえます。さらに、「e: G」や「e: L2」がリース専用という点も、非常に「惜しい」と感じます。ホンダさん、ぜひ、すべてのグレードを通常販売してください!

累計10万台を突破した『日産サクラ』と三菱『eKクロスEV』

ここまで商用車として分類される『N-VAN e:』を見てきましたが、乗用車にも目を向けてみましょう。2022年に発売され、日本のEVシェアをけん引してきた『日産サクラ』と三菱『eKクロスEV』の2車種合計の販売数を集計すると……。

※全軽自協の発表をもとに、筆者が独自集計。

なんと、発売から約2年半となる2025年2月に、累計販売数が10万台を突破していたのです。いずれも発売から約3年が経過していて、直近では前年比でみると減少が続いていますが、依然として毎月1,000台~2,000台前後で推移していることが確認できます。

EVsmartブログでは、以前より多くの著者陣が、日常の足として使われる軽自動車と(自宅充電を前提とした)BEVの相性の良さを指摘してきました。これらの軽EVの販売数は、まさに相性の良さを裏付けているといっても良いのではないでしょうか。

国内の小型EV市場の将来は明るい!

軽EVは2009年に三菱が乗用車の『アイミーブ』や商用車の『ミニキャブ・ミーブ』などで先陣を切り、2022年に乗用車の『日産サクラ』や三菱『eKクロスEV』、そして2024年には商用車としてホンダ『N-VAN e:』が参入し、市場を拡大しました。

ホンダは商用車の『N-VAN e:』に続き、2025年内に『N-ONE』ベースの乗用車タイプの軽EVを、さらに2026年には登録車の小型乗用車として2車種の発売を発表しています。今後1~2年で、ホンダのEVの選択肢は大幅に増える見込みです。

また、以下の記事でも取り上げたように、トヨタ、スズキ、ダイハツも商用軽EVの共同開発を発表。ホンダ『N-VAN e:』の競合として、商用軽EVの新たな選択肢になると見られています。

【関連記事】
トヨタ連合の「商用軽EV」2025年度中の導入を明示/納得できる性能と価格に期待(2025年2月3日)

一方で、四半期ベースでテスラを超えて世界で最も多くのBEVを販売しているBYDからも、2026年に日本市場の専用車として、乗用車タイプの軽EVを発売することが予告されました。

【関連記事】
BYDが日本専用モデルの軽EVを発売へ/「庶民の電気自動車」に期待する価格や性能は?(2025年4月23日)

まだ具体的なデザインや仕様は発表されていませんが、SNS上ではBYDの軽EVの試験車両とされるスパイショットも拡散されています。

あくまで噂レベルと捉えるべきですが、このスパイショットからは、スライドドアが採用され、比較的広々とした室内空間を確保していることが見て取れます。仮に乗用車のみ発売された場合でも、筆者の事務所の『アイミーブ』のように改造し、貨物自動車として登録することもできるでしょう。

これらの新たな軽EVに加え、登録車でも2025年にはヒョンデから小型で安価な『INSTER』が発売。さらに世界のEV販売をけん引してきたテスラからも、まもなく『モデル3』や『モデルY』よりも小型で安価な新車種が発表されると見られています。

多くの新車種については、まだ具体的な発売時期や価格、詳細な仕様は不明です。ただ、いずれにしても、2025年から2026年にかけて、日本の自動車市場でもさらに多くの小型で安価なEVが発売されることはほぼ確実といってよいでしょう。

国内におけるEV販売数は2023年を頂点として減少傾向にありますが、筆者はかねてより「EV普及のためには、より安価な車種が必要不可欠」であると指摘してきました。これらの安価な車種の登場により、2026年頃には国内のEV販売数が再び成長に向かうことに期待したいと思います。

文/八重さくら

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この記事を書いた人

現在は主にTwitterや自身のブログ(エコレボ)でEVや環境に関する情報を発信。事務所の社用車として2018年にテスラ モデルX、2020年に三菱アイ・ミーブを購入し、2台体制でEVを運用中。事務所には太陽光発電とテスラの蓄電池「パワーウォール」を設置し、車と事務所のほぼすべての電力を太陽光で賄うことを目指しています。

コメント

コメント一覧 (1件)

  • 軽EVでスライドドア搭載のスーパーハイトワゴン、出ないですかね?
    近距離用のセカンドカーとして欲しいのですが、ランニングコストを抑えたいのでBEVがよく、使い勝手として上記装備も必要です。
    ルークス、N-BOXあたりがBEVモデル出してくれるとよいのですが

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