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沖縄一周約400kmをEVレンタカーで走破! 離島とEVの相性の良さを改めて考えてみた

沖縄一周約400kmをEVレンタカーで走破! 離島とEVの相性の良さを改めて考えてみた

日本でもEVシフトが少しずつ進み始めている昨今、EV普及率が低い沖縄でなぜEVが普及しないのかを確かめるために、沖縄でEVレンタカー(BYD ドルフィン)を使って一泊二日のテストドライブを行いました。離島とEVの相性の良さを含めてレポートします。

目次

ガソリン代高騰はEVの魅力を高めるのか?

中東情勢の悪化を受けてガソリン価格(レギュラー)が不安定になっています。実際には燃料油価格激変緩和対策補助金の投入によって、おおむね170円/L程度で収まっていますが、補助金がなければガソリン価格はさらに高騰しているという認識は持っておくべきでしょう。

他方で、沖縄県はガソリン価格の高騰が顕著です。ガソリン価格(現金価格)の推移を見てみると、3月25日時点で、全国の平均が175.2円と、18日に記録した186.6円から補助金の効果による価格抑制の効果が出始めています。ところが沖縄では25日時点で211.7円と値上げの動きが止まっていません。これは沖縄本島にガソリンを輸送するタイムラグがあるため、補助金抑制の効果が遅れて効いてくるからです。

実は沖縄には沖縄振興特別措置法に基づく揮発油税の軽減措置(1Lあたり7円の減税)が適用されることで、本島と同等水準、もしくはわずかに安価な水準でガソリン価格が推移していましたが、現在は沖縄だけガソリン価格高騰が続いている状況です。離島ではさらに輸送コストがかさむため、宮古島などでは、一時250円/Lという高値になっています。

いずれにしても、とくにこのような島しょ部において影響が出やすいガソリン価格高騰に対して、EVを導入することで負担を軽減できるのではないかと考える人が出てくるかもしれません。はたして、EVへの転換がガソリン代高騰の対抗策となり、EVの魅力を高めることになるのでしょうか。また、離島とEVの相性はどうなのか。EVレンタカーで沖縄を走ったレポートとともに考察してみたいと思います。

沖縄旅行ではEVレンタカーがオススメ

2025年の秋、沖縄本島をEVで一周する機会がありました。沖縄の一部レンタカー会社ではEVを割安で提供しています。さらに沖縄は一年を通して気候が温暖なため、EVの弱点といわれがちな寒冷時の電費悪化などを気にする必要がありません。まさにレンタカー需要の大きい沖縄において、EVを使わない手はないのです。EVと沖縄はどれほど相性がいいのか。まずは沖縄遠征におけるレンタカーEVで本島一周した際のルートや電費を記録しておきます。

【利用したEVレンタカーの概要】

●車種:BYDドルフィン
●グレード:ロングレンジ
●装着タイヤ:ブリヂストン エコピアEP150(205/55R16)
●一充電走行距離(WLTC):476km
●EPA換算航続距離推定値:約340km(時速100km巡航における航続距離の推定値)
●最大急速充電出力:85kW
●SOC 10-80%急速充電時間実測値:39分

【走行ルートの概要】

① 那覇市街→道の駅ゆいゆい国頭
●走行距離:108.1km
●消費電力量:100%→78%
●平均電費:約9.0km/kWh
●天候:晴れ

最初の走行区間で実感したのが、沖縄本島のスケール感です。というのも、車両を借りた那覇市街から本島北部の道の駅「ゆいゆい国頭(くにがみ)」まで下道で約2時間、100km弱走行するだけで本島を縦断することができます。よって沖縄本島一周と言ってみても、そこまで大した走行距離にはなり得ないのです。

また、下道を使ったこともあってか、電費が伸びたのも印象的でした。そもそも沖縄本島は高速道路の距離が短いので、本土のように高速巡行の際の航続可能距離を考慮に入れる必要も少ないのです。

② 道の駅ゆいゆい国頭→辺戸岬→古宇利島のソラハシ
・走行距離: 110.2km
・消費電力量:63%→40%
・平均電費:約8.5km/kWh
・天候:雨

古宇利島。

二日目は雨が降っていたものの、郊外走行が中心だったことから電費は伸びています。沖縄本島最北端の辺戸岬にはテラチャージの普通充電器が複数口設置されていました。とはいえ、この辺戸岬に数時間滞在するような施設はなく、レンタカーを利用するユーザーがテラチャージのアプリを入れていることは少ないでしょうから、それほどの需要が見込めないのではないかと感じます。

また、本島在住のEVオーナーを想定しても、日産サクラなどの航続距離が短いEV以外は経路充電(目的地充電も含めた外部での充電)を行う機会は少ないでしょうから、わざわざ基礎充電環境よりも高額な普通充電器、しかも周りに滞在するべき施設がない辺戸岬の普通充電器を使用するというケースも考えにくいです。このような普通充電器の需要がどれほどあるのか、とくに、もし補助金が入っているのだとすれば真剣に考える必要があるでしょう。

古宇利島は名護に近い観光スポットです。とくにインバウンドの観光客で盛り上がっていました。

③ 古宇利島のソラハシ→名護市街→那覇市街
●走行距離:125km
●消費電力量:40%→10%
●平均電費:約7.7km/kWh
●天候:雨

那覇市街を出発して本島を周遊した後、ようやく那覇市街に戻ってきました。総走行距離は346.7km、充電残量にして92%分を消費しました。また、途中道の駅で仮眠をとった際にエアコンはつけっぱなしでしたから、実際には85%弱分で346kmを走り切ったことになります。よって沖縄本島をラフに走らせると、ドルフィンロングレンジは概ね満充電あたり400km程度は走行できるといえそうです。

那覇市街まで戻ってくると90kW級以上の急速充電器が複数存在します。ファミリーマートにも90kW級急速充電器が設置されており、深夜でも問題なく使用することができます。ちなみにレンタカーにはeMP充電カードが付帯されていたので、途中の充電も心配はいりません。

もちろんEVを使用したこと経験がない観光客だと充電方法などの心配はあるでしょうが、そもそも満充電あたり400km程度走行可能であり、返却時の充電満タン返しも必要ないため、レンタカー業者に確認したところ「実際には充電を一切せずに返却されることがほとんど」だそうです。

沖縄県民にEVは普及する?

テスラストア沖縄。ショッピングモール一階の中心区画に位置し、平日昼間でも私が観察していた数十分間ほどは、来客が途切れることはなかったです。

さて、沖縄を旅行するにはレンタカーEVとの相性が極めていいということはわかりました。その一方で、沖縄県民の方々がEVを購入するにはいくつかの課題が存在するのだと知ることができました。

① 集合住宅比率の高さ

まず、沖縄が全国有数の集合住宅比率の高い県ということです。2023年10月に実施された国勢調査によれば、沖縄県の集合住宅比率は60.9%と、東京都の71.6%に次ぐ全国2番目の高さです。よって那覇市街を中心とする都市部に在住する人は集合住宅の共同駐車場などに基礎充電環境を構築するか、もしくは街中の急速充電器を基礎充電代わりにして運用するしかありません。

確かに東京都の場合はEV購入の補助金額とは別に支給されるので、イニシャルコストの安さに魅力を感じてEVを購入することはあるかもしれません。しかしながら、沖縄の場合はとくに自治体独自の補助金などはないため、基礎充電環境を構築できない場合、なかなかEVを購入することにはつながらないのです。

② 電気料金が比較的高額

沖縄では本土から化石燃料を輸送して発電する必要があるため、その輸送コストの分だけ本土よりも電気代が高くなっています。たとえば沖縄電力の従量電灯プランにおける最低料金は10kWhまで643.05円、その後120kWhまで40.2円/kWhです。それに対して東京電力のスタンダードSプランは基本料金が311.75円、120kWhまで29.8円/kWhです。さらに九州電力の従量電灯Bプランは基本料金が316.24円、120kWhまで18.37円/kWhと、単価は沖縄電力管内の半額以下です。

実例として、軽自動車の日産デイズと日産サクラで比較してみましょう。レギュラーガソリン価格が170円/Lと仮定すると、

日産デイズ X
●車両価格:147.84万円
●燃費(WLTC):23.2km/L
●走行コスト:約7.33円/km

日産サクラX
●車両価格:259.93万円(CEV補助金:58万円/実質約201.9万円)
●電費(WLTC):124Wh/km
●走行コスト:約4.99円/km

この通り、単純計算とはなりますが、ガソリン価格が補助金によって今後も170円/L程度で留まる場合、同セグメントにおけるEVと内燃機関車のランニングコスト(燃料費)の差は1.5倍(EVが安い)程度でしかありません。もちろんEVの場合はメンテナンスコストが割安になるなどのメリットもありますが、今後CEV補助金が縮小する可能性も十分考えられますし、一概にEVの方が所有コストという観点でメリットが大きいとはいえないのです。

こうなってくると、そもそも本体価格がCEV補助金を含めても50万円以上も高額なEVをチョイスすることは難しく、可処分所得が低ければなおさらでしょう。

ただし、沖縄は石垣島や宮古島などの島しょ部においても、ユニバーサルサービスの観点から電気料金はほぼ同じです。それに対してガソリン価格は輸送費が増す分、沖縄本島よりもさらに割高となるため、ランニングコストの節約という観点ではプラスと考えることができるかもしれません。

③ 平均的な可処分所得が低い

実は最大の課題なのではないかと感じるのが可処分所得の低さです。国土交通省によれば、統計上の上位40-60%に当たる中央世帯における可処分所得は全国ワーストです。さらに、可処分所得から食費や家賃、水道光熱費を差し引いた差額、つまり毎月自由に使える最大額でも沖縄県が最下位となっています。

たとえばミライズエネチェンジがまとめた「人口一万人あたりのEV/PHEV普及台数」の上位3県である岐阜県、愛知県、岡山県はどれも可処分所得から基礎支出を差し引いた差額で上位10県に該当しています。

もちろん可処分所得が低い大分県もEV/PHEV普及率では5位にランクインするなど、一概に可処分所得とEV普及との相関関係があるとはいえないものの、自動車に使えるお金が他県と比較しても限られていることは間違いありません。

那覇市街中心部から少し離れた幹線道路沿いのヒョンデストア。ディーラーの居抜き物件のような外観で、テスラストアと比較すると気軽に車を見学することが難しそうと感じました。

EV普及を再エネとのセットで進めるポテンシャル

今回の沖縄遠征で分かったことは、観光目的でレンタカーを運用する分には沖縄とEVはとても相性がいいという点です。那覇を出発して本島北部のやんばる国立公園や名護方面を周遊、那覇に戻ったとしても走行距離は300km程度。私の場合は色々立ち寄って340km走行しましたが、EVのエントリーモデルであるBYDドルフィンロングレンジでも無充電で走破することができています。

EVレンタカーを借りる多くのケースでは充電せずに返却することが可能であり、途中の充電を一切考慮に入れずに沖縄観光を楽しむことができるでしょう。これは返却時に給油が必要となるガソリン車と比較しても、むしろ優れた顧客体験となり得ます。

その一方で、沖縄県民がEVを購入するのは、レンタカーのようにはいきません。確かに遠出をしたとしても大した航続距離は必要ないため、長期休暇の際のロングトリップなどの用途を考慮する必要がある本土より、EVは購入の選択肢となりやすいかもしれません。しかし、電気料金や所得水準などの要因でEVを購入する金銭的なハードルが高く、さらに集合住宅の割合が高いことで、基礎充電環境を構築することのハードルも高めです。

また、ガソリン代が高くランニングコストを相対的に抑えることが可能な島しょ部についても、そもそもEVをメンテナンスできる整備工場が非常に限られています。EVが大幅に普及するまでは、それこそ島唯一の整備工場などでEVを整備できる時代は訪れないでしょう。

その上脱炭素という観点でも、島しょ部ではディーゼルや重油による火力発電が主体であるため、EVを導入したからといっても脱炭素に大きく貢献するわけではありません。脱炭素を効果的に進めるには、再エネ発電とセットで導入する必要があり、その分だけハードルが高くなります。ただし太陽光発電と蓄電池、EVを組み合わせて「再エネマイクログリッド」を構築することができれば、仮に今回の中東情勢の悪化などで化石燃料の調達が滞ったとしても、エネルギーの安定供給を実現できるというポテンシャルを秘めています。

いずれにしても、沖縄に来た観光客がEVレンタカーに触れて、EVの静粛性や制振性の高さ、さらにドルフィンではコンパクトな車格に対する車内空間の広さなどの魅力を体感し、その後のEV購入に繋がるなんて効果に期待したい、そう感じる沖縄遠征でした。

今回ドルフィンを借りたバジェットレンタカーの車両基地。手前から2列目がドルフィンの列。今後どれほどEVレンタカーが増えていくのかにも注目です。

取材・文/高橋 優(EVネイティブ ※YouTubeチャンネル

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この記事を書いた人

免許を取得してから初めて運転&所有したクルマが電気自動車のEVネイティブ。

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