『レッドウッド・マテリアルズ』が挑戦するEV用バッテリーリサイクル事業の意義とは?

電気自動車(EV)の数が増える中で必ず出てくるのがバッテリーの製造、廃棄の過程での環境負荷の問題です。自動車メーカー各社も最近、バッテリーのリサイクルに取り組むことを発表していますが、最大のEVメーカーであるテスラの立ち上げに関わった起業家がいち早くリサイクル企業を立ち上げています。JB・ストラウベルの『Redwood Materials』の取り組みを紹介します。

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※冒頭画像はイメージです。

テスラ社の元技術責任者が起業したバッテリーリサイクル企業

Redwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)は、2017年にネバダ州カーソンシティで設立されたリチウムイオンバッテリーのリサイクル会社です。起業したのは、テスラの共同創業者でありテスラのバッテリー関連技術をまとめた立役者とされる、JB・ストロウベル氏です。この人がいなければ、18650を基本にしたバッテリーシステムはなかったかもしれんません。

そのストラウベル氏は2019年にテスラ社を辞め、現在はレッドウッド・マテリアルズに専念しています。

場所がネバダ州なのは、レッドウッド・マテリアルズによれば、EVの数が非常に多いカリフォルニア州に隣接していることが大きな理由です。またカーソンシティはテスラ社のギガファクトリーのごく近くでもあり、レッドウッド・マテリアルズの原材料はギガファクトリーからも調達しています。

レッドウッド・マテリアルズの公式サイトより引用。

リチウムイオンバッテリーの供給量は今後、EV市場の成長にとってボトルネックになる可能性があると考えられています。また原料のリチウムなどの採掘による環境問題への懸念も指摘されています。

そのため自動車メーカー各社はサプライチェーンの透明化、グリーン化はもちろん、リサイクルによるクローズドループの構築を目指すようになってきました。7月に電動化戦略を更新したフォルクスワーゲングループは、バッテリーのサプライチェーンをクローズドループにすることがもっとも持続可能で費用対効果が高いと発表しているほか、プジョー・シトロエンやクライスラーを傘下に持つステランティスや、メルセデス・ベンツもリサイクルが必要だと表明しています。

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そしてレッドウッド・マテリアルズのストロウベルCEOによれば、リチウムイオンバッテリーは非常にリサイクル性が高いそうです。ストロウベルCEOはCNBCのインタビューで、「私たちは原材料の95~98%を回収している。ニッケル、コバルト、銅などの重要な原材料の多くは、本質的に、何度でも再利用することができる」と語っています。

2020年6月、レッドウッド・マテリアルズが、本拠地を置いているカーソンシティに新たな敷地を購入することが報じられました。新しい工場の敷地は100エーカー(約40万5000m2)で、東京ドームの約9個分になります。よくわかりませんが、広いです。

さらに既存の施設の面積を、今後数か月以内に15万ft2(約1万4000m2)から55万ft2(5万1000m2)に拡張することも発表しています。これにともなって、現在は約130人いる従業員を最大500人に増やす予定です。

この拡張計画が明らかになってから約1か月後の2021年7月28日、レッドウッド・マテリアルズは7億ドルの資金を調達したことを発表しました。出資者はゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント、ベイリー・ギルフォード、カナダ年金制度投資委員会などの大手機関投資家です。

この件についてストラウベルCEOは、「この資本により、我々はバッテリーの原材料を持続可能で手頃な価格にするというミッションを加速し、必要な変化を循環型経済という形で実現することができます」と述べています。

レッドウッド・マテリアルズはこの他にも、アマゾンが設立した20億ドルの気候変動対策のための基金から、支援対象に選ばれるなど、少しずつ資金を増やしています。出足はそこそこ順調なようで、アメリカではストロウベル氏が創業した会社ということもあって注目度は高く、これまでにウォールストリートジャーナルやCNBCなどさまざまなメディアが特集記事を組んでいます。

ということで、EVsmartブログでもレッドウッド・マテリアルズに現状を聞くため質問を送ってみました。レッドウッド・マテリアルズとはどのような会社なのか、もう少し詳しく見ていきます。

テスラやアマゾン、パナソニックから原材料を調達

EVsmartブログからレッドウッド・マテリアルズに送った質問は、原材料をどこからどのくらい調達しているか、また今後の見通しはどうかや、バッテリーリサイクルの重要度はこれからどう変化していくか、拡張した土地や工場への投資額はどのくらいだったか、EV関係とそれ以外の電子機器からの調達量の割合はどのくらいかなど、広い範囲のものでした。

これに対するレッドウッド・マテリアルズの回答は、具体的に回答できる部分については数字もあったほか、企業の今後の方針なども含めたものでした。

まず今回の敷地や設備への投資額ですが、「数億ドル」だそうです。まあ、非上場企業なので具体的な金額は出ませんね。

では、レッドウッド・マテリアルズが目標としているのはどんなことなのでしょうか。

「Redwoodは、循環サプライチェーンを構築し、廃棄物を利益に変え、数十万台の車両が数年で市場から戻ってくる前に、EVバッテリーの完全なクローズドループリサイクルのソリューションを開発することにより、持続可能な材料を生み出しています」

今年春にCNBCは、リチウムイオンバッテリーのリサイクル市場は、2019年から2030年にかけて10倍以上に成長し、180億ドル以上になるという予測を紹介しています。そして2030年には市場に出ていったEVの多くが買い換え時期を迎えて、大量の中古車や廃車が出てきます。これは100%というか、120%というか、とにかく確実です。

その時になって慌てるのではなく、今から原材料を供給する体制を整えていくということですね。

では現在の取扱量はどのくらなのでしょうか。

「わずか数年で、北米で最大のリチウムイオン電池リサイクル業者になりました。今日、すでに年間約3GWhを受け取っています。これは、EVで約4万5000台以上、バッテリーの重量では1日あたり60トン、年間では約2万トンに相当します」

これらの原料は、レッドウッド・マテリアルズが提携しているパナソニック、リーフのバッテリーを生産しているAESCエンビジョン、そしてアマゾンから主に供給されています。アマゾンとの提携に関しては、CNBCのリポートの中でストロウベルCEOが、「アマゾンは、AWSを使用したデータセンターから、Kindleなどの消費者向け製品に至るまでさまざまな分野でバッテリーを使用しているため、興味深いパートナーです。さまざまなプロジェクトについて話し合っていますが、消費者に、いくつかの本当に興味深い機会を提供する可能性があります」と語っています。

ロイターの報道によれば、アマゾンは年間100億個の商品を配送しているほか、輸送やデータセンターの環境負荷が大きいため、環境活動家からの厳しい視線に晒されているそうです。確かに事業活動の幅広い部分にリチウムイオンバッテリーが関わっているため、レッドウッド・マテリアルズの事業活動が格段に重要度を増していくlのは間違いないでしょう。

こうして集めた原材料から、どのくらいの金属がリサイクルされるのでしょうか。レッドウッド・マテリアルズによれば、ニッケル、コバルト、リチウム、銅などについては「約95~98%を回収」し、バッテリーメーカーやEVメーカーに戻しているとのことです。金属部分はほとんどリサイクルされていることになります。

都市鉱山事業の未来はEVの未来に直結

日本でも携帯電話やノートパソコンなどの電子機器が急激に増えた20年ほど前に、「都市鉱山」という言葉がメディアにたくさん登場しました。電子機器の部品から金属を回収して、もういちど使うというものです。電子部品は、最終的に製品に組み込まれるものの他、一定数は必ず不良品になるので、使われずに廃棄されるものがあります。これらを回収、再利用するので都市鉱山と言われました。今は法律の規制もあるため、パソコン関連の製品は回収が義務化されています。

ただ、日本では今でも都市鉱山の掘り起こしがあまり進んでいないようです。独立行政法人物質・材料研究機構は、2012年の数字をもとにした「都市鉱山関係データ」を公表しています。リポートでは「日本の国内蓄積だけでも、多くの金属で世界の数年分の消費に相当する量がある」としながらも、「蓄積量はあくまで『存在するはず』の量で、ここからどうやって埋蔵量のようにすぐリサイクルできる状態にするかが課題として残ります」としています。

けれども、EVに使われるバッテリーの量は、小型の電子機器と比べるとケタが違います。原材料確保の難しさは自動車メーカーの共通認識で、だからこそリサイクルを柱のひとつに据えています。

レッドウッド・マテリアルズは会社の目標について、EVsmartブログに次のように回答しました。

「レッドウッドは、材料のコストを削減し、これらの重要な原材料の循環経済の持続性を確保する技術により、リサイクル経済を着実に改善することに焦点を当てています。またレッドウッドは、EVやとエネルギー製品のクローズドループのサプライチェーンを構築し、それらをさらに長期的に持続可能にし、バッテリーのコストを削減し続けます。私たちは、これから数十年以内にすべての輸送が電化し、すべての電気が持続可能になることを知っています。これらのソリューションに電力を供給するために必要なリチウムイオン電池やその他の材料は、クローズドループの中で再利用する必要があるため、高度なリサイクルにより、現在の鉱山からの採掘に取って代わる必要があります」

ではレッドウッド・マテリアルズの現状はどうかというと、今はまだ、原材料を鉱山で掘ってきた方がコストは安いそうです。CNBCのリポートで、ストロウベルCEOはリポーターから、「レッドウッド・マテリアルズは原材料の再販売で収益を上げているか、それともまだ利益が上がっていないスタートアップの段階か」と聞かれて、次のように答えています。

「私たちはまだ(スタートアップの段階)です。私たちはまだ非常に急速に成長している途上なのでオペレーションと設備の構築に資本を消費しています」

ただ、同じリポートの中でストロウベルCEOはこうも話しています。

「先を見据えれば、私たちはこの規模の100倍で運用する必要があります。これは、ほんの数年で解決する必要があります。本当に代替手段はありません」

欧米は脱炭素社会の実現、パリ協定の目標達成のために、また、常識や仕組みが激変する自動車産業で生き残るためにも、迅速なEV化を進めようとしています。だとすると時間はあまり残っていないことになります。レッドウッド・マテリアルズの事業がどうなるかは、EV化に向かう世界にとって大きな意味を持っています。これからも動きがあれば紹介していきたいと思います。

(文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. >レッドウッド・マテリアルズによれば、ニッケル、コバルト、リチウム、銅などについては「約95~98%を回収」し、バッテリーメーカーやEVメーカーに戻しているとのことです。金属部分はほとんどリサイクルされていることになります。

    ↑さすがですね。(拍手)

    >ただ、日本では今でも都市鉱山の掘り起こしがあまり進んでいないようです。(中略)ここからどうやって埋蔵量のようにすぐリサイクルできる状態にするかが課題として残ります

    う~ん、資源の乏しい日本が「何を寝ぼけたことを言ってんの!?」って思いますね。
    何でも輸入慣れしてしまっているのでしょうか? 今や先進国の中で最も所得が低くなってしまった日本は、国内のエネルギーや資源を大切にしないといけませんね!
    そのうち、「EVもほとんど輸入」ってのは勘弁して欲しい!

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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