電力会社が電気自動車革命をリードしつつ利益を上げる方法

電気自動車が広く普及すると、電力インフラの負担が増えることが予想されます。電力会社がこの負担をうまく軽減し、さらに利益を得るためにはどうしたら良いのでしょうか? そもそも、電気自動車は電力網のリスクとなるのでしょうか? アメリカメディアの興味深いレポートをご紹介します。

Charging station of electric car EV

元記事:How Utility Companies Can Lead The Electric Car Revolution & Still Make Money by Steve Hanley on 『CleanTechnica

電気自動車は電力会社の敵?

1914年、トーマス・エジソンは「将来の大きな都市では、電気モーターがトラックを動かすために広く使われ、電気自動車がファミリーカーになるだろう」と言いましたが、彼の予言が実現するのに100年以上もかかってしまいました。ガソリンとエンジンが出回り、エジソンの夢を棚上げにしてしまったのです。

過去1世紀の間、電力会社は電気自動車に電力を送ることを忘れ、代わりに個人の家、ビジネス、産業に注力してきました。しかしより多くの電気自動車が道路上を占めるにつれ、電力会社はビジネスモデルを考え直さなければならなくなりました。電気事業に関わる多くの人が、何十年もかけて慎重に作り上げた既存の電力系統システムに上手くフィットしない電気自動車を脅威と見ています。

皆が一斉に充電したらどうなるのか?

地方の閑散とした通りに住んでいる全ての家族が突然電気自動車を手に入れようと決めたならば何が起きるでしょう? これら全ての自動車オーナーが同時に充電をしようとしたら? ローカルのガソリンスタンドが全てのポンプをパワフルなDCチャージャー(急速充電器)に置き換えるとしたら? 電力会社は電気を売ることによってお金を儲けているのだから、より多くの電気自動車が出てくることを歓迎するべきではないでしょうか? 結局、アマゾンがスニーカーを売るとして、突然スニーカーへの需要が急増したら、ジェフ・べゾスは幸せな男になりますよね?

ところが、電力会社(公益事業会社)は誰よりもリスクを嫌うビジネスモデルであることが知られています。この事業のリーダーは、30~50年ほどのタイムスパンで考えています。慎重に考えられた彼らの計画を邪魔するものは、必ずしも歓迎されないのです。

industrial buildings and solar panels

まず考えられるのは、需要に見合うために高額な新しい発電所を大量に急造しなければなりません。そして電気自動車による増量した負荷がかかった送電系統に対処するため、変電所と物流インフラをアップデートしなければなりません。近い将来、この産業のエグゼクティブは電気車両によって課せられた試練に何十億ドルも使わなければならない必要性に直面することになります。

効率性が鍵

しかし、実は上記の通りにしなくても良いのです。鍵となるのが、私達が既に持っている電気をより効率的に使うことです。アドバンスト・エナジー・エコノミー(AEE)のMatt Stanberry氏は「大雑把に言えば(現状のインフラで電気自動車の急増に耐えられるかという問いの答えは)イエスです。送電系統は大量の電気自動車の導入に耐えられます」と、イェール・クライメート・コネクション(気候変動に関するフォーラム、広報サイト)に語りました。AEEはクリーンで持続可能な世界的エネルギーシステムの発展に注力する業界団体です。

「可能性は十分にあるのです。問題は、どうやってそれを実現するかです。」

エジソン電気協会は、電気自動車のオーナーに電力需要がピークの時ではなく、供給量が多い時間に充電させるための戦略を練っています。ある地域でベストな戦略は、他の地域ではベストにはならないかもしれません。

例えば、カリフォルニア州では太陽光発電所による余剰電気が日中ありますが、メイン州では夜0時から4時にかけて電気需要が最低になります。ニューヨークのコン・エジソン(電気・ガス供給会社=コン・エド)の、電力会社にとって一番タイミングの良い時間に充電をするドライバーへのリワードプログラムは第2期に入りました。プログラムに参加した人には最高200ドルのアマゾンギフトカードが贈られます。

コン・エドは参加者に、充電した時間帯を記録する、インターネットに繋がった充電器を提供します。毎月その装置をキープし、最低1回コン・エドのテリトリー内で充電をすると、5ドルが貰えます。さらに夏場エアコンの電力需要のピークが午後2時から6時にくる期間、深夜12時から朝8時の間に充電すると参加者はキロワット/時間あたり10セントをセーブでき、ピーク時に充電をまったくしなかった場合20ドルを追加で貰えます。

コン・エドの電気自動車プログラムのマネージャーであるSherry Login氏は、イェール・クライメート・コネクションに「年間約10,000マイル(16093km)運転し、夜0時から8時の間だけしか充電しない人は年間500ドルのリワードとボーナスが、サインアップ時のリワードを加えて与えられる」と話しました。意図としては、コン・エドが電気の負荷をうまく処理し、余計な発電所を作る必要が無いようにすることです。「だから、私達は先手を打っているのです。数年以内に、全ての自動車メーカーが、彼らの全ての自動車のプラグインEVバージョンを携えてやってきた時に、慌てることのないようにしたいのです」と彼女は言います。

双方向へ有用性

車両と送電網のための技術は、電力会社にとって、送電網をより効率的に使って費用をセーブするためのもう一つの鍵となります。電力研究所の、電気交通プログラムマネージャーであるDan Bowermaster氏も「車(のほとんど)は1日に20〜21時間動いていません。充電する時間はたくさんあるのです。ということは、(充電を行う時間には)とても柔軟に対処できます」と同意しします。

もう一度言いますが、コン・エドはこの技術の先駆者です。ホワイト・プレイン市は現在5台の75kWh電動スクールバスを所有しています。バスは一日のうちほどんどの時間で使われていませんが、電力会社は電気の需要が一時的に高くなった時にバスのバッテリーに溜められた電気を活用することができます。送電系統設備のスケールで溜められる電気を車両のバッテリーで賄うことはできないでしょうが、送電系統を安定化し、電力会社がバッテリー備蓄を備え付けるためのコストを減らすためには重要な役割を果たしていると言えます。

スマート充電の普及で電気料金が安くなる?

サザンカリフォルニアエジソン社(SCE=電力会社)のカバーするエリアには現在15万台の電気自動車があり、いつ、いくらで充電するのか会社側がコントロールできるスマート充電器を多くの顧客に提供しています。電力需要がピークの時、SCEは充電器を切るか、もしくは節電モードで充電させることができます。この状況での充電体験は顧客にとってスムーズでなければならず、運転を再開する時にSOC(充電率)は80%以上である必要があります。必要な時にすぐ運転できる限り、車が車庫や外のパーキングスペースでどれだけ速く充電されているかなど、誰も気にしません。

これはノースウェストユーティリティーズ(ニューイングランド地域の3つの州に顧客を持つ電力会社)が100のスマート充電器を電気自動車ユーザーに与えた実験で分かったことです。会社は充電時間や充電料金をコントロールすることができましたが、顧客には会社からのシグナルをオーバーライドする(プログラミング内容を書き換える)機能がありました。しかしエネルギー戦略政策課のディレクター、Charlotte Ancel氏によると、ほとんどの顧客はこれをしなかったそうです。彼女は「パイロット版は人々は単純にプラグを挿して放置するということが確実だと示しました」と言います。

マサチューセッツ州エネルギーリソース課のJudith Judson氏は「目指すゴールはピーク需要を増やすことなく電気自動車を増やすこと」だと言います。同時に州はエネルギー貯蓄と再生可能エネルギー活用を増やす計画を立てています。彼女が言うには「政策の組み合わせが本当に必要になってくるのです。既存のネットワークを有効活用し、革新的な新しい技術と組み合わせつつ、効率性に注力する器量が私達にはあるのです。そうすることによって、さらに、本当に多くの電気自動車を私達のシステムに組み込むことができるようになるのです」

Ev station plug and power cable supply

電気コストを下げる

先月出版されたSynapse(環境コンサルタント)による研究では、電気自動車の数と送電網の使用の効率性が増加すると、顧客の電気代が安くなると報告しました。電気自動車が増えると売られる電気量が増え、電力会社の収益が増し、電気料金が下がる圧力がかかります。

フォーブスによると、アメリカ全体では18の電力会社が電気自動車による産業の変化に適応するプロセスを進めているのに対し、残り350の会社は世界がどちらに向かっているのか立ちすくんで眺めています。電気自動車を充電するための電気マーケットのポテンシャルは年2兆ドルに上り、早い時期にここに飛び込んだ会社はパイのうちの大きい部分を占めるチャンスを掴みます。

フォーブスが言うには、トランプ政権は車両排気規制量を昔のリミットまで戻す計画を立てていますが、規制を弱めることは、電気自動車が利益の中心になり得る未来を見据えている電力会社を犠牲にして、化石燃料会社に都合を良くすることになるので、いくつかの電力会社はそのトランプ政権の政策に反対しようとしています。

自分が所有する建物の屋根に取り付ける太陽光発電システムを選択する個人や企業が増えている今、車両排気規制量が昔の水準に立ち返らないようにすることはより重要になってきます。

(電気自動車の本格的普及という)チャンスが、未来を見て毅然と行動を起こそうとしている電力会社の背中を押しています。電力会社は電気自動車から失うものなど何もなく、得るものしかありません。しかし残念なことに、全ての人が将来を受け入れる準備をしているわけではありません。在りし日の幌馬車工場に聞いてみてください(変化に適応できないと絶滅することになります)。

(翻訳・文 杉田 明子)

 


One thought on “電力会社が電気自動車革命をリードしつつ利益を上げる方法”

  1. 電力会社寄りの電気技術者として、この話は十分納得できます。
    かくいう己もピーク時間帯の充電はせず、なるべく深夜時間帯に充電して送電配電系統の安定化を考えているためですが。
    今後期待したいのはVtoHによる配電線電圧平準化ですね…配電線の電圧が低ければ各家庭のVtoHから給電を受け、高ければ逆に充電してもらうとか。
    それを電力会社がうまく取りまとめていけば低コストの蓄電池がついたことになりますから。
    6000V系統の太陽光発電所が天候により発電量が大きく変わり、配電線電圧に大きく死傷している話を聞きました…そういう系統にこそ蓄電所(インバータ+蓄電池)がほしいと思うこともしばしば。電力OBが言う話だからよく判ります。
    電力会社としても配電線の利用率が高ければ少しは儲かるはずです。

    ちなみに発電所増設の計画は過去一年間の30分間のデマンド値(最大電力)で決まり高圧受電の基本料金もそれで決まるためデマンドを抑える制御をしています。
    最大電力を抑えるためのデマンドコントローラーも一部の空調機器などピーク時に止めてもよい機器を選定して入切制御をするものです。たぶん電気自動車の普通充電回路もそうなるのではないかと思いますが。

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