電柱を活用したEV急速充電器設置サービスの「正体」を東電タウンプランニングに聞いてみました。

2019年6月11日、日本経済新聞が『電柱をEV充電の拠点に 東電、普及へコスト半減』とする記事を掲載。電気自動車(EV)用急速充電器を電柱に固定して設置することで、設置コストが半分になるという報道でした。記事中には「工事費用は通常の300万円程度から半減できる」といった記述もありましたが、出力など詳細はわかりません。はたして、どのようなサービスなのか、その正体を探ってみました。

電柱を活用したEV急速充電器設置サービスの「正体」を東電タウンプランニングに聞いてみました。

サービスの主体は東電タウンプランニング株式会社

まずは、東京電力の知人を通じて探ったところ、日経の報道ではこのサービスを提供するのが「東京電力ホールディングス」となっていましたが、正しくは東京電力の子会社である「東電タウンプランニング株式会社」であることがわかりました。さっそくアポイントを入れて、ご担当者にお話しを伺ってきました。

一般にはあまり知られていませんが、無電柱化の設計施工、電柱広告、配電工事など、電柱に関わるさまざまな事業を行っている会社です。

電柱で支える急速充電器設置方法は特許申請中

ニュースの肝は「電柱を活用してEV用急速充電器を設置することで、設置コストが半減する」という点です。日経の記事中には、想定されている充電器の出力や、設置できる電柱の場所や条件などは明記されていません。実施主体である東電タウンプランニング株式会社のご担当者に確認できた内容をご紹介します。

電柱で支えることで基礎工事を簡略化可能!

通常、急速充電器を設置する際には強固な基礎を作り、アンカーボルトで固定するガイドラインが示されています。今回の工法では、基本的に充電器は「置くだけ」で、電柱に固定することで基礎工事の簡略化が可能。コストダウンに繫がるのです。場所によっては浸水対策のかさ上げなどが必要なケースもあるでしょうが、基礎自体を地面に固定する工事の手間が省けます。

電柱に急速充電器を固定する施工方法は、特許申請中とのことです。

給電は電柱から直接入力

現状、多くの急速充電器では電柱からの給電は地中に配線されているケースがほとんどです。この工事にも、安くないコストが掛かります。でも、今回の工法の場合、電柱から直接給電(入力)するので、配線が短く済むのに加え、地中配線などの工事が不要になります。

通常の施工に比べて設置コストを下げられる理由は、「電柱に固定」と「電柱から直接給電」の2点です。

ちなみに、日経の記事では「工事費用は通常の300万円程度から半減できる」と書かれていましたが、東電タウンプランニングの資料では一般設置タイプのコストは500万円〜と例示されており、どの程度コストダウンできるかは、設置場所の条件などによって「ご相談」となっていました。

設置場所の選定などは、まだこれから

設置する場所や台数についても「まず首都圏で100台を設置しEVの普及をふまえ数百台に増やす」(日経新聞)との記述がありましたが、このサービスはようやく内容が固まり「これからサービスインするところ」であり、具体的な台数などの目標は設定されていないとのことでした。

「道の駅や高速道路のSAPA、商業施設などのニーズを探り、電柱の強度などそれぞれの場所の条件を確認しながら設置を進めていくことになります」(東電タウンプランニング)

設置場所は私有地がイメージされており、設置する事業主体はその場所を所有する民間企業など。電気自動車が増え、急速充電器設置のニーズが高まるにつれ、設置コストの安いこのサービスへの需要も高まるという目論見です。

出力50kWモデルの充電器も設置可能

設置する充電器の性能は、どの程度の出力が想定されているのでしょうか。

この工法では、電柱固定のメリットを活かすため、50kW以上の受電に必要なキュービクル(高圧受電設備)の設置は想定されていません。つまり、50kW以上の出力をもつ急速充電器の設置はできないということになります。

ただし、今回の場合は急速充電器専用の引き込み線増設が認められる「特例」を活用した工法なので、電柱側の変圧器性能が許す限り、高圧受電のレギュレーションぎりぎりまでの出力であれば対応可能。たとえば「性能的には50kWタイプの急速充電器を設置して、44kWで運用する」といったこともできるそうです。

急速充電器のラッピングにも対応!

東電タウンプランニングは、電柱広告、電柱ラッピングなどの事業も行っています。そのノウハウを活かし「急速充電器をラッピングして広告を表示するといったご要望にも対応します」とのこと。

操作方法や課金などについての表示はないと困りますが、場所ごとに、見た目ユニークな急速充電器が続々と登場、ということになるかも知れませんね。

短期間で設置可能。補助金などのコンサルティングも行います

サクッと写メで恐縮ですが、東電タウンプランニングが配布しているリーフレットが、これです。

相談を開始してから、実際に充電器が設置されるまでの期間は約3ヶ月程度とのこと。①現地調査と設置場所の提案 ②設計図面の作成 ③各種申請代行・協議代行 ④設置工事 ⑤動作試験 まで、設置検討から運用開始までを一括でサポートしてくれるサービスになっています。

具体的には、充電器設置が国などの補助金対象となる以下のような施設への普及を考えているそうです。

●サービスエリアやパーキングエリア、道の駅など
●商業施設、宿泊施設、マンション(分譲、賃貸)、工場、事務所など

こうした場所の関係者で「ん? あそこの電柱に充電器あったら便利じゃね?」という心当たりがある方は、まずは東電タウンプランニングに連絡してみるのがオススメです。

【問い合わせ先】
東電タウンプランニング株式会社
CS事業本部 事業推進企画部
TEL:03-6759-9706

実際に、充電スペースに適した場所に都合良く電柱があるケースというのは、なかなかハードルが高いような気もしますが、コストを抑えた充電器設置方法のバリエーションが広がるのは魅力的なことだと思います。

あちらこちらでこの電柱充電器に出会えるようになる日が楽しみです。

(寄本好則)

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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