電気自動車(EV)から給電するローソンでの実証実験 — V2H & V2G 経由 VPP へ!

災害や事故による停電時や電力消費ピーク時に、建物に電力を供給したりグリッドの負担を減らすために電気自動車から給電する実証実験が、2019年6月より千葉市にあるローソンで始まっています。実際にV2HやV2Gを行い、将来のVPP構築を見すえての実験です。EVsmartブログチームの箱守がさっそく試してきました。

V2H・V2Gを通って、VPPに至る

災害や事故による停電は今でもしばしば起きていますよね。真夏では、高校野球がTVで放送されている時間帯が、企業だけでなく家庭でもエアコンを稼働が多く、電力消費がピークに達しやすいという話をよく耳にしてきました。停電している建物に電気を供給(V2H: Vehicle to Home)したり、ピーク時にグリッド(電力供給網)の負担を減らすため、電力量に余力のある電気自動車から給電(V2G: Vehicle to Grid)してみたらどうなるか、という実証実験が、2019年6月から、千葉県千葉市の南部にあるコンビニエンス・ストアのローソンで始まりました。筆者はモニターに選ばれたので、早速給電しに行ってみました。(事前にモニターに選ばれていない人が行っても、給電できませんので、ご注意ください。)

ローソン蘇我ハーバーシティーの店舗は西に向いているが、給電実験の機器は駐車場の南端に設置されている。

これは、三菱商事とロイヤリティーマーケティングが、BEV・PHVに乗るモニターを募集して6月から実施している「GO ECO! GET BENEFIT! 〜 電動車の電気をポイントに」と銘打った実証実験です。今回は、電力を供給した(放電した)時間に応じて、参加者に「ローソン」のポイント「Pontaポイント」が謝礼として付与されますが、コンビニのポイントが貰えることがこの実験の主目的ではないことは、当ブログの読者の皆さんならお分かりになるでしょう。ご推察のとおり、家庭や公共の建物、企業にある小規模な太陽光や風力による「発電所」と、企業や家庭に設置されている「蓄電池」をつなぎ合わせて、あたかも「一つの大きな発電所」のように制御する「仮想発電所(VPP: Virtual Power Plant)」を念頭に置いたものと言えます。「電気自動車からグリッドへの給電(V2G)」を用いて、VPPがそのように使えるかを見据えた実験でしょう。

都内での会議が延びた影響で、着いたのは夜になってしまった。駐車場は明るく広く、買い物だけでなく洗車などで人が頻繁に来るので、暗闇ではない。

今回の実験には、三菱MiEVシリーズ・日産リーフといったBEVと、三菱アウトランダーのPHEVが参加しています。いずれもCHAdeMOポートを持ち、V2Hと接続できる電気自動車です。EVから給電する実験の場所は、まずは千葉県千葉市の南部にある「ローソン・ハーバーシティー蘇我店」の1店舗だけですが、今後は東京都区内にある店舗にも広げる計画だと発表しています。

今回の実証実験が行われるのは7:00〜23:00ですが、7月最初の2週間は8:00〜20:00の間は係員が常駐していて、操作や疑問に答えてくれます。電気を受ける機器は、「リーフtoホーム」や、先月納入を開始した普及版V2H機器で有名な「ニチコン(nichikon)」製です。

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『ニチコンが低価格39万8千円のV2Hシステムを2019年6月発売』

V2Hの実際の手順

実際の手順はどうでしょうか。順を追って書いてみます。

事前
1.ロイヤリティーマーケティングからのメールにあるリンクのサイトに入り、基本情報を入力。
2. iPhoneかAndroidのスマートフォンに専用アプリをダウンロードし、情報を入力。

現場で
3. 実際に店舗に行き、機器についているCHAdeMO端子付きのケーブルをEVをつなぎ、「放電」ボタンを押す。

暗くてブレてしまったが、この青いボタンが放電開始ボタン。

4. アプリで「放電」ボタンを押す。
5. 給電中に、ローソン店舗で何か買う。レシートを忘れずに!

BEVから機器に給電しているようす。ケーブルは一般的なCHAdeMOのケーブルより細くて取り回しが楽だ。

給電(放電)を終えるには
6. 10分・20分・30分のどれかの放電時間になったら、機器の「停止」ボタンを押す。
7. アプリの「放電停止」ボタンを押す。
8. 機器の「コネクタロック」ボタンを押して接続を解除する。
9. 機器と車輌をつないでいたケーブルを外す。

放電を終えるには、左端の緑色の「停止」ボタンを押す。その後、ケーブルを外す前に、右端の黄色い「コネクタロック」ボタンを押して、コネクタを電気的に外すことが必要。忘れそうで怖い。

その後
10. アプリ上でカメラが起動するので、先ほどのレシートを撮影する。

給電後に、ローソンで買ったレシートをアプリ連動のカメラで撮影。説明係員の方に撮影に協力していただいた。

11. アプリ上でPontaポイントが貯まる。
12. アプリ上のアンケートに答える。

以上です。

気づいた点

筆者が実際に体験した際に感じた注意点は、

(a) スマートフォンのGPSをオンにしておくこと。

(b) Wifiは切っておくか、事前にローソンのWifiにつないでおく。でないとアプリで放電開始の送信ができない。

(c) 放電終了時に「コネクタロック」ボタンを押してからケーブルを外す。うっかり、コネクタをロックしたままで外しそうになりました(汗)。

係員が20:00までは常駐しているので、操作などは教えてもらえました。

すぐにポイントが付与される

今回筆者は20分間放電しましたが、登録時のポイントなのか、筆者のPontaカードに残っていたポイントなのかはっきりしませんが、アプリ上の表示では「e-ポイント累計」が「173p」と表示されています。名前からすると、給電に対するポイントだと思われます。なお、何kWh放電したかは表示されませんが、テクトムの電力量計は「97%」から「73%」まで減っていたので、「24%」を給電したものと思われます。10.5kWhの i-MiEV M ですから「2.5kWh」を放電といったところでしょうか。

専用アプリの画面。給電後にポイントが計算されて表示される。20分の放電で173ポイントになった。フライドチキン1個分だろうか?

さて、こうしたサービスが始まると「変な使い方」をする人が出るかもしれないと、筆者たちは最初危惧していました。月額定額で充電し放題のプランに入っているユーザーが、プランで電気を汲んで来てローソンで給電し、ポイントを稼ぎまくるというものです。しかし大丈夫でした。1回の給電は30分までで、1日あたり1人の登録者に対して最大3回までしか給電できないようになっていました。もっとも、30 × 3 = 90分を毎日わざわざ費やす人も居ないでしょうね。

これまでの動きと今後のねらいをおさらい

みなさんは覚えていらっしゃるでしょうか。昨年(2018年)9月初めには、「日産自動車と東京都練馬区が、電気自動車を使った災害時の電力供給で協力を開始」というニュースが伝えられました。また今年6月の初めには、「東京電力と三菱自動車などが連携して経産省のV2Gを利用したVPP実証事業に参加した」というニュースが伝えられたばかりです。今回の実証実験もこうした流れの延長線上であることが分かります。将来のVPP構築に向けて、一般のEVユーザーにV2Hを実際に体験してもらう。そうして社会にV2HやV2Gを広く認知してもらおうという戦略もあるのでしょう。

V2H・V2Gのシステムがさらに洗練されて構築されれば、被災地の避難所にEVで出向いて、「電気が復旧した地域や、付近で発電できている太陽光発電施設まで電気を汲みに行って、停電している避難所まで運んで来る」ようなボランティアも、今後可能になるかも知れませんね。

こうしたV2H機能は、2019年夏時点では日本製EVの独壇場です。筆者も、テスラを始めとした海外勢EVとの規格が速やかに統一され、一日でも早く海外勢EVもV2HやV2Gに普通に対応してくれることを強く望んでいるひとりです。

EVsmartチームでは、日本のEVが世界で最も早く実用化したV2Hなどの「電力供給」という先進的機能について、今後も追い続けてお伝えしていきたいと考えています。

(取材・文/箱守 知己)


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