フォルクスワーゲンのe-モビリティプラン=億万長者向けではなく万人に届く電気自動車を

今年IDシリーズの発表と共に積極的な電気自動車路線へのシフトを発表したフォルクスワーゲンですが、社のビジョンと最新のニュースまで網羅した記事をCleanTechnicaが掲載しました。全文翻訳記事でお届けします。

フォルクスワーゲンのe-モビリティプラン~億万長者向けではなく、万人に届く電気自動車を~

元記事:Volkswagen Has An E-Mobility Plan: Make Electric Cars For Millions, Not Millionaires by Steve Hanley on 『CleanTechnica

VW電気自動車計画の全容

フォレスト・ガンプは「行き先を自分で分かっていなければ、そこに辿り着くことはできないだろう」と好んで言ったものです。ドイツのツヴィッカウで11月5日に、フォルクスワーゲン・ザクセンの生産・物流部門専務取締役であるReinhard de Vries氏は、電気自動車の生産計画について説明しました。まず初めのスライドを見てみましょう。ここではID.3が会社の歴史にどのように納まるのか見られます。
(すべてのスライドはフォルクスワーゲンオフィシャルサイトより)

私達のミッション:すべての人に魅力的で、手の届く電気自動車を。

ID.3の価格について知りたかった人達用には、次のスライドが一番詳しく情報を載せています。

ID.3の価格は3万ユーロ(約360万円)以下~、航続距離はWLTP基準で330~550km。 ID.3 1st の価格は4万ユーロ(約480万円)以下~。航続距離はWLTP基準で420km。ハイクオリティ設備搭載。1年間充電無料(最大2千kWhまで)。 億万長者のためではなく、万人のための電気自動車と謳っています。

ツヴィッカウの工場では以前、ゴルフとゴルフヴァリアントを製造していました。2つある生産ラインのうちの片方が閉鎖され、電気自動車生産用に改造されました。もう片方のラインも来年閉鎖される予定(VWは「生産終了」と言っています)で、その際にはこちらも電気自動車用に改造される予定です。社はフォルクスワーゲン、SEAT、アウディ用に、3~6カ月に1モデル、計6種類を導入し、2021年までに33万台の電気自動車を製造する計画です。

ツヴィッカウ工場でのミッション:EOP(End Of Production=生産終了)まで生産性を維持しつつゴルフのマネージメントをする。EVのローンチを完遂する。ベンチマークとなる生産体制を構築する。
ツヴィッカウでのMEBプラットフォームへの変更。12億ユーロ(約1,440億円)を投資。

VWはカーボンニュートラルな方法で電気自動車を生産するために積極的なステップを進めており、バッテリーと車体を作る際に、できる限り再生可能エネルギーを使うことから始めようとしています。さらにバッテリーのリサイクリング計画も見直し、電気自動車用にバッテリーが使えなくなった時の問題に対処する考えです。

車の一生で排出される二酸化炭素を避けるために。
【供給プロセス】バッテリーのセル生産の際に再生可能エネルギーを使用。
【生産】自動車生産の際に再生可能エネルギーを使用。
【運転】Elliを通じたフォルクスワーゲン・グリーン・エネルギーを使用。
【リサイクル】再利用/クローズドループリサイクル。
「避ける、減らす、補填する」

次の2枚のスライドでは、工場の形態改造前、改造後の様子を見る事ができます。

2018年/2019年の工場生産ライン配置。青色の部分でゴルフ、ゴルフヴァリアントを生産。パサートヴァリアントは2018年7月に生産中止。緑色の部分ではラグジュアリークラスの車両を製造。(ベントレーなど)
2021年/2022年、改造後の工場生産ライン配置。オレンジ色の部分で様々なブランドの電気自動車を生産。緑色の部分は2018年/2019年と変わらず。
まとめ:変化は3つの大きなフェーズで行われる。
【フェーズ1】MQB(ICE)からの脱却。
【フェーズ2】MQBとMEBの同時生産。準備を万端にし、ノウハウや経験を蓄積、チームの能力を適正に引き上げる。革新的なテクノロジーで質と生産性を保持。
【フェーズ3】MEBへの完璧なシフトからのローンチ。

次のスライドは一番パワフルなものかもしれません。ここでは会社が電気自動車を作り出すためにエンジニアリングと芸術をどのように組み合わせたのかを表しています。ドイツの素晴らしいエンジニアリング技術の例である一方、ベートーベンやバッハが世に知らしめた芸術性も内包させました。右脳と左脳が合わさって、偉業を達成したのです。

発想/企業文化の成長

中国で試験段階に入る

VWは11月5日からのID.3の連続生産に先駆けて、数週間前にツヴィッカウで試験運転に入りました。そのローンチ・フェスティバルでCEOのHerbert Diess氏は、中国の2つの工場でも電気自動車生産の準備が進められてきたと話しました。彼がここで話さなかったことは、試運転がその同じ週に始まるということでした。

CNBCによると、その週の金曜日に発表をするため、Diess氏は上海にいました。VW社は、中国でのパートナー企業SAICと共に電気自動車を製造する工場に25億ドル(約2,726億円)を投資しました。Diess氏は工場案内の最中に「この動きはVWのe-モビリティ・イニシアティブと共にあります」 と語りました。VWは中国で二番目の電気自動車用の工場を建設中で、ここで作られる車は来年末までにお目見えする予定です。

中国で電気自動車はビッグ・ビジネスで、すべての自動車メーカーは特定の比率の電気自動車を作ることが求められ、できなければかなりの違反金を課せられます。中国のシステムはカリフォルニア州大気資源局が何年も前に整備した、電気自動車に関する命令書を元に作られています。VWはフォード、BMW、ホンダと並んで次の数年でよりクリーンな車を作る協力をすることでカリフォルニア州と合意しており、この方向性には他のメーカーが全力で戦おうとしています。

確実に言えるのは、VWは電気自動車を未来だと見ていて、e-モビリティへの変遷を現実的なプランで押し上げようとしています。社はどこに、どうやって行くのか分かっており、競合他社よりも一歩進んでいるようです。

(翻訳・文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. いつも楽しく拝見させて頂いております。
    ID3の登場、ワクワクしますね。
    vwは、利益率が低くてもクオリティの高い車両を提供し続けてきたメーカなのでEVにも期待大です。アウディとポルシェで利益をカバーし、ID3を一気に普及させる、そんなビジネスモデルに対抗できるメーカは登場するのか?なんて夢想してます笑
    ディーゼルスキャンダルがあったからこそ、ここで一気に汚名挽回して欲しいです。ほんとに素晴らしいメーカなのですから。ディーゼルスキャンもこのための伏線だったのかな?
    テスラ と切磋琢磨しEVをもっと身近なものに。そう願います。

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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