45万円で中国ベストセラー 電気自動車『宏光 MINI EV』が日本国内初披露〜最新技術展をレポート

2021年6月23日〜25日、東京ビッグサイト青海展示場で開催された『テクノフロンティア 2021』のEVの関連ブースを取材。45万円という衝撃価格の中国で一番人気の電気自動車『宏光 MINI EV』や、テスラ モデル3 解体実機展示、東京大学の走行中充電技術の3点をレポートします。

45万円で中国ベストセラー 電気自動車『宏光 MINI EV』が日本国内初披露〜最新技術展をレポート

【45万円のEV】五菱製「宏光 MINI EV」

このブースは実車の展示のみで、メーカー説明員はコロナの影響で日本に入国できず不在。バッテリーは車両に積んだ状態で日本へ持ち込めないため取り外された状態となっていました。とはいえ、すみずみまで撮影できましたので、筆者の推察を含めたフォトレポートでお届けします。

エクステリアデザイン・ボディサイズ

正面から見たときは、軽トールワゴンの印象ですが、サイドを見ると全長が短く寸詰まりな印象を受けます。ボディサイズは、

全長:2,920mm
全幅:1,493mm
全高:1,621mm
ホイールベース:1,740mm

という数値で、軽自動車の規格(全長3,400mm以下、全幅1,480mm以下、全高2,000mm以下)と比較すると、全長は短いが全幅がわずかに規格を超えています。仮に、日本国内で登録できたとしても、登録車の扱いになるボディサイズです。

左:前輪 右:後輪

タイヤサイズは12インチ、145/70タイヤを装着、フロントブレーキはディスク、後輪はドラム式です。ホイールのエンブレムの天地を揃えずに展示されてしまうところは、中国っぽさを感じますね。

充電口はフロントグリル中央のエンブレム部分にあります。開閉は手動式。コネクタ形状はタイプ2のようで、ヨーロッパのメネケス社製のように見えるが、説明員がいないため詳細は不明。

バッテリー容量は、20kWh、航続距離200km(計測基準は不明)、充電所要時間は7時間と商品説明パネルに記載されていました。

ヘッドライトはLEDではなくハロゲンランプ、リアコンビネーションランプも形状からLEDではなくフィラメント電球が使用されているかと思われます。「WULING(ウーリン=五菱)」のブランド名が配されたパネル中央の丸いものは、リアゲートの電気式スイッチ。

インテリア・キャビン・ラゲッジスペース

全高約1.6mのおかげで、身長約180cmの筆者は前席後席ともに、頭が天井につくことなく座れました。ただ、前後の間隔は狭く、大人4人が長時間乗るには厳しいキャビン。ホイールベースが軽トールワゴンの平均より約70cmほど短い設計のため、乗車は1名ないしは2名を前提として考えらたのではないかと推察します。ちなみに、中国の車なので左ハンドルです。

シートの座り心地は、車両価格45万円ということを最も実感したところ。クッション材が薄く、ヘタリが早くきそうな印象でした。また、座面、背もたれともに面積が小さく、長時間の運転は厳しそう。コミューターEVと割り切って設計されたのでしょう。また、リクライニング調節レバーの動きが渋く、丈夫とは言えないつくりで、操作をしたとき壊れそうに感じました。

計器類はハンドルコラム上部の、12インチ程度の液晶ディスプレイに集約されています。なお、インフォテインメントシステムやカーナビなどのディスプレイはなく、オーディオも見当たりませんでした。装備されていたスイッチは、インパネセンターに、空調(エアコンは付いており、普遍的な調節機構であった)、ハンドルコラム左奥部に、ヘッドライトレベライザー(手動)、タイヤ空気圧リセットボタンと思われるスイッチ(おそらく、タイヤ空気圧アラート機能を備え、メーターパネルに警告表示が出ると推察される)、フォグランプ、リセットボタン(何のリセットかは不明)ハンドルコラム右側奥に「E/S」と書かれたボタン(ドライブモード切り替えか?)を備えていました。インパネ中央下部には、ネット式の収納を備えています。

ドアトリムなど全体的に使用されている素材は、樹脂。「ザ・プラスチック」のコスト優先ではありますが、2トーンカラーの配色にオレンジの差し色を入れたり、ペダルに「+」と「ー」のかわいいデザインの記号を配するなど、ちょっとしたおしゃれ感を演出しています。パワーウィンドウスイッチは、申し訳程度のセンターコンソールに配置。シフト操作はダイヤル式です。電源スイッチは、昔ながらのキーを差し込んで回す方式のようです。

全長3m弱でラゲッジスペースの広さを期待するのはナンセンスですが、後席は2分割で背もたれを前に倒すことができ、荷物を置けるスペースをつくることができます。後席背もたれを起こした状態では、荷物は詰めません。また、後席は前後スライド機能がありませんでした。

パワートレイン・足回り・バッテリー

短いボンネットの下には、充電コネクタを受けるインバーターがセンターに(充電口はフロントグリル中央にあるため。画像は右側2枚)、ブレーキサーボとブレーキフルードタンク(画像左下)、ウォッシャータンクなどがありました。おそらく下側にエアコンのコンプレッサーがありそうです。

フロントサスペンションは、ストラット式。スタビライザーは付いていないようです。足回りを覗くと、泥水をはね上げたままの状態であったため、現地で走行されている個体が今回の展示品として日本に持ち込まれたようです。ここも中国らしさを感じたところでした。

リアはデフにモーターを直結。懐かしさを感じるFRのそれと同じものを流用のようです。リアサスペンションは、3リンク式リジッドアクスル。

モーターとインバーターの奥、車両中央部底面には本来バッテリーが配置されるが、展示車でも日本国内に入る前にバッテリーは取り外す必要があったとのこと(イベント主催者の話による)。

「45万円」という価格について

メーカーの五菱は「実値:45万円相当」と伝えていますが、この価格は中国現地販売価格を、邦貨換算しただけの金額と思われ「日本での販売はない」と明記されていました。

「宏光 MINI EV」を日本で輸入販売しようとすると、さまざまなハードルがあります。日本国内の基準に適合するかどうかの試験に通過するための確認のほか、場合によっては、車両に突起物や灯火類など日本保安基準を満たすための部品を新たに製作する必要も出てきます。

また、中国は「58協定」と呼ばれる、1958年に締結された(日本の加盟は1998年)国連欧州経済委員会(ECE)の多国間協定「車両等の型式認定相互承認協定」に加盟しておらず、多くの試験に合格しなければ、通関できません。(協定加盟国は、製造メーカーが作成する技術適合証明書などのドキュメントのみで試験が免除となることが通例)

最近では、中国の高級車「紅旗 H9」が、試験をパスしてナンバーを取得したことが話題になりました。

もし、日本で「宏光 MINI EV」を販売しようとするなら、五菱の正規代理店に名乗りをあげる会社が、ナンバー取得のための確認や調整、必要に応じて部品製造、交換などのもろもろの費用を投資する必要があります。

その費用のうち、最も大きいもののひとつは、充電関係システムとその部品となるでしょう。普通充電のみなら、比較的コストはかからないかと思われますが、急速充電(CHAdeMO規格)への対応は、かなりのコストがかかります。

さらに、日本国内でのメンテナンス等のサービス体制を整えるコストも発生します。

以上のほかにも、必要なコストはありそうですが、日本国内販売時の車両価格は、国内導入のための投資金額を回収する分が、45万円の車両価格に上乗せされることがほぼ確実でしょう。

今までに中国のEVを日本国内導入した類似ケースがないため、車両価格がいくらになるのかの予想は難しいですが、100万円を切る価格設定は厳しく、安くても150万円程度になるのではないか、と推測しています。(あまり参考にはならないかもですが、北米や欧州など協定加盟国からの並行輸入車は、現地価格のプラス100〜200万円ほどとなっています)

>>> 解体モデル3展示レポートに続く。

(取材・文/宇野 智)

この記事のコメント(新着順)15件

  1. 中国韓国の車は爆発炎上します、爆発しても中国は保証しないでしょう、自己責任で購入

    1. まさ 様、コメントありがとうございます。世界で一番売れている電気自動車、テスラモデル3の日本で走行している車はほとんど中国生産で、日本に輸入され、型式認定を受けて走行しています。

  2. 中国向けに設計された宏光MINI EVそのものを日本の規格や嗜好に合わせようとすれば、もちろん相当なコストが掛かる。しかし、このクルマの技術をベースに新設計して日本市場に参入しようとすれば、最初からボディサイズを日本規格に合致させて設計するだろう。
    その場合、カテゴリーとしては、4人乗りまで認められる超小型モビリティとするのではないか?。超小型モビリティは、高速道路走行禁止で最高速も60km/h以下なので、衝突試験は40km/hと緩いなど、軽自動車の型式認定よりずっとハードルが低い。
    日本の軽自動車の新車販売台数は、年間約200万台。超小型モビリティの本格的な市場は未開拓であるが、安価で維持費も安いEVであれば、若者や年配者など潜在市場規模は大きいと思われる。
    宏光MINI EVのメーカーには、すでに複数の日本の自動車メーカーOBが技術アドバイザーとして参画して、開発を進めているもようだ。
    数年後、このクルマの兄弟車(?)が、100万円以下で日本市場(超小型モビリティ)に参入して来る可能性は高い!

    ※超小型モビリティ規格のEVとしては、昨年12月にトヨタが2人乗りのC+pod:シーポッドを発売しているが、価格が165万円~と高価なことがネックとなっている。
    他に、このサイトでも紹介されている出光タジマEVや、EV-LAND VF-4、Paddock e-moなどがある。

  3. i-MiEV乗り電気主任技術者です。
    宏光MiniEVの記事拝見しましたがどれもイマイチ要素満載。このサイズだと軽自動車枠にならない限り売れませんよ!?車幅を20mm減らして適合すればユーザーがある程度割り切れば売れるかもしれませんが。
    最大の問題は日本の保安基準への適合、バスを例にとっても三菱が二階建てバス製造を中止した後長らくダブルデッカーの新車供給がなく最近やっとはとバスが西欧製の日本基準適合車を導入できただけやないですか!?
    何だかんだでMiniEVの新車価格は日本価格150万円以上の予感。そうなりゃガソリン軽にすら負けますね。さらに日産三菱軽EVが200万円以下で出れば全長の短さによる車室面積の小ささがアキレス腱になりかねず、さらにCHAdeMO非対応がトドメを挿す危険大でひょ!!(爆)どうみても卒FIT家庭が買うとは思えまへん。これはi-MiEV(M)中古の大半がCHAdeMOポート搭載やから火を見るより明らか。
    …もうMiniEVよりIMkに期待したほうがエエやないですかー!?

  4.  アメリカ車なら日本は法律を変えてでも優遇するでしょうが、中国製だとハードル上げかねません。せめても、メーカーが日本の軽規格にアドジャスとして、45万とは言わずとも国内ユーザーが満足する最低限の内装、装備にして売り出せば、商機はあるかもしれませんね。どこか力ある商社や独立系カーディーラーが動かないと難しそうですけど。

    1. 世界の動向でも分かりますが、中国メーカーから見ても日本は重要な市場ではないということですね。
      物の本質を見ずに「中国製」や「韓国製」というだけで嫌悪される国なので仕方ないと思いますが…。
      それを乗り越えてまで販売しようと思う企業は無いかと思います。

  5. 45万円のままなら日本の軽EVに限らず、軽自動車自体が中国製格安EVに駆逐されていくと思いますが、150万円なら日本の軽EVもいずれその位の価格になっていくはずです。

    その150万円という価格なら国内のEVでも戦えるであろう価格ですが、果たして元々45万円の車両を、安全性を高めるという名分があっても150万円まで吊り上げる事が出来るのでしょうか?せいぜい100万円くらいでは。
    具体的に150万円の内訳が知りたいです。

    1. 衝突試験の法規だけでも
      ・前面衝突基準(リジットバリア、50km/hフルラップ衝突)
      ・前面衝突基準(デフォーマブルバリア、56km/hオフセット衝突)
      ・側面衝突基準(50km/hムービングバリア衝突)
      ・歩行者保護(32km/h頭部対ボンネット衝突)
      ・シートベルトリマインダ
      等々ありますし、
      UN/ECE規則を検索すればどれだけの法規をクリアしなければならないか分かりますよ。

    2. 連続で失礼します。
      輸入自動車特別取扱制度っていうのを使用すれば年間の販売台数5000台以下なら色々簡略化できるそうですけれども(KTM等が該当するみたいですし、「紅旗 H9」も利用していると思います。)
      https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/201701/00006373.pdf
      それでも自動車技術総合機構が認めている外国の試験機関での試験結果が必要なので、中国の格安EVがその様な試験結果を持っている事が前提ですね。
      無ければ業者が必要な試験を行う必要がありますし、その試験項目と試験費用をリスト化するだけでも一仕事ですよね。組立車制度を利用している(いた?)GLMに聞いてみるのが速いかもです。

    3. ありがとうございます。
      ようするに、150万円程度になることは避けられないのですね。
      そういうことなら、この車は革新的でも何でもない車で、安くもないということになり、日本では売れないな。
      安かろう悪かろうを許容している国でだけ売れるというですね。
      ヒラタツさんのコメントが全てということになりそう。

  6. ちゃんと文章のチェックをしてるんだろうか?
    間違いが多すぎて意味が判らなくなる。
    ・「日本国内で登録できたとしても、登録車の扱いになるボディサイズです。」←意味不明
    ・「タイヤサイズは17インチ」←そんな馬鹿な・・・
    ・「「日本での展示はない」と明記されていました」←販売の間違いでは?

    1. ご指摘ありがとうございます。
      タイヤサイズ、展示→販売など、ご指摘通りタイポです。

      取り急ぎ修正いたしました。

      「日本国内で登録できたとしても、登録車の扱いになるボディサイズです。」というのは、軽自動車として登録(ナンバー取得)はできない、ということです。

      ありがとうございました。

    2. “公道を走る普通車は1台1台、国に登録されますが、これはかんたんにいうと、土地や建物といった不動産の登記に相当します。このため普通車は「登録車」ともいわれます。

       一方、軽自動車は国に登録されません。普通車の登録を行う場所は国の陸運支局ですが、四輪の軽自動車の場合、軽自動車検査協会で検査を受け、車検証とナンバープレートを取得します。これは「届出」と称し、このことから、普通車が「登録車」と呼ばれるのに対し、四輪の軽自動車は「届出車」とも呼ばれます。”

      https://trafficnews.jp/post/65472/2#:~:text=%E5%85%AC%E9%81%93%E3%82%92%E8%B5%B0%E3%82%8B%E6%99%AE%E9%80%9A%E8%BB%8A,%E7%99%BB%E9%8C%B2%E8%BB%8A%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%82%82%E3%81%84%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82&text=%E6%99%AE%E9%80%9A%E8%BB%8A%E3%81%AE%E7%99%BB%E9%8C%B2%E3%82%92,%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%92%E5%8F%96%E5%BE%97%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

    3. キスカさん、詳細な御説明をありがとうございます。
      記事も寄本さんのコメントも言いたいことは十分伝わっていましたが、もし、記事がプロの報道という位置づけのものであれば用語は正しく使うべきですね。
      只のアマチュアのブログ記事レベルであれば、いい加減でも嘘でさえも許容されますので問題なしですが。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

この記事の著者


					宇野 智

宇野 智

エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元「MOBY」編集長で現在は編集プロダクション「撮る書く編む株式会社」を主宰、ライター/フォトグラファー/エディターとしていくつかの自動車メディアへの寄稿も行う。

執筆した記事