テスラの生産台数が2019年第4四半期に過去最高の10万5000台に

2020年1月3日、テスラ社が第4四半期の生産台数と納車台数を発表しました。生産台数は10万4891台、納車台数は11万2000台で、ともに過去最高を記録。これにより年間の納車台数は36万7515台になり、当初目標の36万台を超えました。

テスラの生産台数が2019年第4四半期に過去最高の10万5000台生産

Tesla Q4 2019 Vehicle Production & Deliveries(ニュースリリース)

納車台数は前年比50%増に

ニュースリリースでテスラ社は、納車台数は2018年に比べて50%増加したことを強調しています。

納車台数の内訳は、モデルSとXを合わせて1万9450台、モデル3が9万2550台。生産台数はモデルSとXを合わせて1万7933台、モデル3が8万6958台です。納車台数、生産台数ともに第3四半期を上回っています。また全体の8%がリース販売になっています。

このほか、上海のギガファクトリーでは着工からわずか12か月しか経っていないにもかかわらず、すでに1000台の車を生産し、納車を始めていると説明しています。ギガファクトリー上海は、現状で週に3000台以上の生産能力を持っているそうです。ただし、バッテリーパックの生産が始まるのは2020年12月末になると述べています。

速報値の発表後に株価は上昇

テスラの発表を受けて、前日に430ドルで引けた株価は449.4ドルまで上昇。1月7日には瞬間的に461ドルをつけました。昨年の最安値は訳179ドルなので250%の上昇になります。

テスラ社の株価は、昨年8月にイーロン・マスク氏がツイッターで、1株あたり420ドル(20%のプレミア)で購入して非上場化する方針だと発言したため、米証券取引委員会(SEC)が事実関係の調査に乗り出す事態になりました。この頃はモデル3の生産遅延などもあり、マスク氏の発言は混乱に輪をかけることになり、株価は乱高下していました。

それでも第3四半期にはモデル3の生産が軌道に乗ったことと、1億4300万ドルの純利益を上げて黒字化したため、一気に状況が変わりました。

一方で、収益率の高いモデルSやモデルXの販売台数や生産台数が、2019年前半から比べると大きく減っていることが経営に影響を与えるのではないかという指摘もあります。実際、モデルSとXの合計生産台数は2018年下期に5万2064台だったのが、19年下期は3万5768台まで減ってます。

ただ、第3四半期の状況を見ると、安価なモデル3の増加が収益率に与える影響はそれほど大きくないようにも見えます。なにより、多くのアナリストが第3四半期の赤字を予想していたことに反して、黒字化していることの意味は大きいと思われます。

https://ir.tesla.com/ より引用。

S&P500に入るかも?

ところで、気の早いテスラマニアたちの間ではS&P500(米国株式市場の動向を示す指標のひとつ)の構成銘柄になるのがいつかという話が出ています。S&P500に入ると機関投資家からの信用が格段に上がるなどするため、企業経営への影響も大きくなります。

スタンダード&プアーズが公表しているS&P500の構成要件は、四半期連続で黒字であること、浮動株が発行済み株式総数の50%以上あり、流動性が高いこと、時価総額が53億ドル以上であることが必須です。これらは最低条件なので、すべてを満たしても自動的に選ばれるわけではありません。最終判断はS&Pに委ねられます。

また構成銘柄の総数は枠があるため、どこかが除外されないと入れ替えになりません。こうしたことを考えると、ハードルは低くありません。

加えて、マスク氏の舌禍がないことというのも、テスラ社にとっては大きな条件かもしれません。

2019年12月24日付のニューヨークタイムズ電子版は、マスク氏の言動だけがテスラ社を脱線させることができる、つまり、マスク氏の言動でテスラ社が悪い方に転ぶ可能性があるというアナリストの言葉を紹介しています。ただ同時に、「彼は、よりプロフェッショナルになった」と、SNS等でのマスク氏の言動が改善されたことを評価しています。

おそらく今月下旬には第4四半期の決算発表があるでしょう。決算発表で注目されるのは四半期ベースでの収益はもちろんですが、通期での赤字幅がどこまで減るかです。そしてそれが2020年にどのようにつながるのか。2020年にはモデルYの生産開始もありますが、設備投資も増えています。

いずれにしても2020年も年明け早々から、テスラ社の動きは注目を集めそうです。EVsmartブログでは引き続き、同社の動向を追っていきたいと思います。

(文/木野 龍逸)

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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