補助金を活用すると価格は約130万円に
2021年3月11日、ルノー傘下の大衆車向けブランド『Dacia(ダチア)』から発表されていた、コンパクトSUVの電気自動車『Dacia Spring(ダチア スプリング)』がついに発売を開始するという発表がありました。予約注文は3月20日から始まります。
フランスでの価格は1万6990ユーロ(約221万円)~で国の補助を差し引くと1万2403ユーロ(約161万円)~と発表されました。フランスではさらに、エンジン車を売却して乗り換えると2500ユーロ(約33万円)のコンバージョンボーナスが給付されるらしいので、130万円ほどで購入できることになります。
まずは欧州で発売、というもののイギリス向けの右ハンドル設定もまだ「検討中」ということで、当面、日本で発売される見込みはほぼありません。でも、サイズなどはまさに日本向き、価格は庶民向きの電気自動車がちゃんと発売されるのは、ヨーロッパを羨むばかりです。
フランスでは、4万5000ユーロ(約585万円)未満のEVを購入する際、税込価格の27%に相当する補助金が出るそうです。日本のCEV補助金は航続距離が基準で電池容量が小さいコンパクトなEVにはやや不利なので、ここも羨むポイントです。
スプリングの電池容量は27.4kWh。航続距離は WLTP Combined サイクルで230km(EPA換算推計約205km)、市街地走行を想定した WLTP City サイクルでは305km(EPA換算推計約272km)とのこと。最高速度は125km/hで、ECOモードにすると100km/hに制限されるようです。モーターの最高出力は33kW(44PS)しかないし、そもそもアウトバーンをかっ飛ぶためのクルマじゃないということでしょう。
電費を計算してみると、Combined サイクルでも約8.39km/kWh。City サイクルではなんと約11.1km/kWh(いずれもWLTP基準)にもなります。EPA換算値でも、Combined=約7.45km/kWh、City=約9.89km/kWh。EVをご存じの方ならおわかりでしょうが、素晴らしい。容量控えめで1トンを切る970kgという車重を実現しているからこそでしょう。電池をいっぱい搭載するばかりが「EVの進むべき道」じゃないということを考えさせてくれる数値です。
EVが「高級車」ではなくなる第一歩
ざっくりと、おもなスペックを表にしておきます。
DACIA SPRING●スペック | |
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全長×全幅×全高 | 3734×1579×1516 mm |
ホイールベース | 2423 mm |
車重 | 970kg |
最高出力 | 33kW |
最大トルク | 125Nm |
最高速度 | 125km/h |
0-50km/h 加速 | 5.8秒 |
0-100km/h 加速 | 19.1秒 |
最小回転半径 | 3.4m |
電池容量 | 27.4kWh |
電圧 | 240V |
セル数 | 12モジュール 72セル |
急速充電最大出力 | 30kW (125A) |
普通充電最大出力 | 7.4kW |
ミラーをたたんで1516mmという車幅や、3.4mの最小回転半径など、ニッポンの道でも扱いやすい魅力的なコンパクトカーといえそうです。そもそも、このスプリングは都市部でのカーシェアリング、またラストワンマイルの配送用車両として開発されたEVです。なので、パッケージングはいろいろとシンプルそのものです。QC最大出力が30kWと低いのは、電圧が240Vと低い(リーフなど市販EVはおおむね400V、ポルシェタイカンは800V)からですね。
ちょっと皮肉っぽく考えると、この控えめな充電性能も「中速」充電器が多い日本向き、とも言えそうです。
ポルシェやアウディ、ジャガーなど、欧州の自動車メーカーからは「EV=高級車」の魅力を高める車種が続々と登場してきました。でも、車両価格1000万円級の魅力的なEVがいくら増えても、庶民にはあまり関係ありません。ダチア スプリングは、EVをより普及するポテンシャルをもったモビリティとするために、ルノーという欧州自動車メーカーが繰り出す大衆車EVの第一歩として高く評価するべきでしょう。
もちろん、突っ込みどころがないわけではありません。たとえば、発表されたスペックで定員の記載が見つけられなかったのですが、リアシートの写真を見ると「4人」のようです。また、USBポートやBluetooth対応のラジオ(オーディオ)は装備しているようですが、最廉価グレードは急速充電に対応せず、欧州コンボ対応の充電口は約240万円(補助金適用前)の上級グレードに600ユーロ(約7万8000円)でオプション設定となっています。とすると、急速充電可能なモデルは電池容量27.4kWhで約250万円となり、価格的なインパクトは今ひとつ。これなら、近いうちにテスラから登場するであろう「モデル2」とも言われる普及版EVを待つ方がいいのかなと感じるレベルになります。
当面日本では買えないでしょうし、もともとはコンパクトカー作りは得意なはずの日本メーカーには、スプリングを良き手本、踏み越えていくべき先例としていただいて、さらに魅力的なコンパクトEVを繰り出して欲しいと願います。
自動駐車機能とかはいりません。コンパクトなボディサイズで(デザインはコンセプト明確なのが希望)、電池容量30kWhくらい、バッテリー温度管理やチャデモ対応は当然として、できればACC搭載、AC100Vのコンセントを標準装備してくれて250〜300万円くらいだったら、私はすぐにでも予約します。
(文/寄本 好則)
このバッテリ容量でも普通充電で6kW受けられるのは魅力的ですね。初代リーフもアメリカでは6kWの車載充電器が搭載されていたのですが、国内版は3kWでこの差は結構大きいなと感じていました。
記事中に
>ちょっと皮肉っぽく考えると、この控えめな充電性能も「中速」充電器が多い日本向き、とも言えそうです。
とありますが、仮に日本にこの車両が導入されたところで日本の急速充電器は日産の縦細型(NSQC442 / 443シリーズ)以外最大電流値が固定なので、いわゆる中速充電器で充電するとそれ相応の充電量になってしまうのではないでしょうか?
72セルということでカタログ値の240Vは満充電に近い状態でしょうから、実際この車両で急速充電するとなるとバッテリ電圧は200V前後の状態、ということになりそうです。そうなると400V基準で最大電流値が設定されている急速充電器で充電するとkW換算で約半分、500V基準なニチコン製急速充電器だとそれ以下ということになってしまいます。20kW充電器などでは30分フルに充電しても10kWh少々しか入らず4割程度しか回復しないとなると、いくら電費が良かろうとどうなんだろうと思わざるを得ない気がします。
良くも悪くも”6kW普通充電でいいじゃん”、となりそうな車両ですね。
JB さま、コメントありがとうございます。
> 中速充電器で充電するとそれ相応の充電量になってしまう〜
さすがです。ご指摘の通りです。20kW器の出力電流は最大50Aくらいのスペックなので、電圧220Vとして1時間でも11kWhくらいしか入りませんね。
電圧120Vの改造EVで日本一周した時、当時は理屈がよくわからないままでしたが、中速器ではあまりに充電速度が出なくて涙ぐんでいたことを思い出しました。
HONDA eのデザインでこの価格・スペックだったらバカ売れする気がします。
hatusetudenn さま、コメントありがとうございます。
あちこち書いてて「まだ言うか」って話ですけど、私の場合、Honda eが300万円くらいならハンコ握ってディーラーへ行くんですけど。。。
三菱かスバルあたりがice車を諦め、bevに特化したメーカーになってくれればと願います
何となくダチア(ルノー)の陰に日産IMkの姿が見えるような気がしますね。
日本の軽自動車よりは若干大きいようですが、IMkも急速充電を30kW辺りに制限するとか、EPA換算で約200kmの航続距離とか、補助金入れて150万円とか。
先日日経新聞に出た情報を合わせて考えると、期待が膨らみますね。
OYONE さま、コメントありがとうございます。
日経の記事は、IMkに対して期待が膨らむ内容だったと思います。リーフのモデルチェンジも気になるし。。
日本でもどんどん車種選択肢が増えることを期待しています。
発売が待ち遠しいですね。
16㎾やましてや10.5㎾のMiEVってそう思うとやっぱり高かったのかな?
10年前では仕方ないですね^_^;
i-MiEVのアップデートや専用プラットフォーム開発に着手できなかった三菱の不幸が残念ですね。NMKVの奮起に期待したいです。