著者
充電スポット検索
カテゴリー

アウディが『Audi A6 Sportback e-tron / Avant e-tron』を発売/余裕ある一充電走行距離をアピール

アウディが『Audi A6 Sportback e-tron / Avant e-tron』を発売/余裕ある一充電走行距離をアピール

アウディ・ジャパンが、電気自動車(EV)の『Audi A6 e-tron』シリーズを発売しました。空力性能の改善などで一充電走行距離は最長846kmとなりました。ボディータイプはクーペとワゴンの2種類で、伝統の四輪駆動(クアトロ)もラインナップしています。

目次

国内最長846kmの航続可能距離

A6 e-tronシリーズの発売を発表したブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏。

アウディ・ジャパンは7月24日に新宿住友ビル三角広場(東京)で発表会を行い、プレミアムクラスの電気自動車(EV)の『Audi A6 e-tron』シリーズの発売を発表しました。会場には10台の現行モデルが並べられ、ちょっとした展示会のようでした。

A6 e-tronシリーズは、ボディータイプが4ドアクーペの『スポーツバック』と、ワゴンの『アバント』の2種類で、それぞれ後輪駆動(RWD)モデルと、2モーターで全輪駆動(AWD)のクアトロにした「S6」がラインアップされています。EVのステーションワゴンは、アウディでは初めての市場導入です。

搭載するバッテリーの総電力量は全グレード共通で100kWh。ユーザーが使用可能な実容量(ネット値)は94.9kWhとなっています。

Audi A6 Sportback e-tron / Avant e-tron

Audi S6 Sportback e-tron / Avant e-tron

【モデル別概要】
<4ドアクーペ>
●A6 Sportback e-tron performance ▽駆動方式:RWD▽最高出力:280kW/565Nm▽バッテリー容量:94.9kWh(ネット)▽航続可能距離:769km▽価格:981万円(税込)
●S6 Sportback e-tron ▽駆動方式:全輪駆動(クアトロ)▽最高出力:405kW/580Nm▽バッテリー容量:94.9kWh(ネット)▽航続可能距離:726km▽価格:1440万円(税込)

<4ドアワゴン>
●Audi A6 Avant e-tron performance ▽駆動方式:RWD▽最高出力:280kW/565Nm▽バッテリー容量:94.9kWh(ネット)▽航続可能距離:734km▽価格:1012万円(税込)
●Audi S6 Avant e-tron ▽駆動方式:全輪駆動(クアトロ)▽最高出力:405kW/580Nm▽バッテリー容量:94.9kWh(ネット)▽航続可能距離:706km▽価格:1471万円(税込)

CEV補助金は、日本ではスタンダードグレードにあたる「A6 Sportback e-tron performance」が68万8000円で、他の3つのモデルはいずれも52万8000円と発表がありました。いずれのモデルも「メーカー希望小売価格(税抜)が840万円以上の車両については、0.8を乗じた補助額」という規約に該当していますが、モデルによって補助額が違うのは航続可能距離の影響が大きいそうです。

なおトリムの名称に「performance(パフォーマンス)」とついているのは、欧州名をそのまま使っているためだと思います。欧州ではパフォーマンスの下にスタンダードグレードがあります。また、欧州ではA6にもクアトロがありますが、日本ではスポーツグレードを意味する『S6』だけにクアトロが設定されています。

航続可能距離は最長846km

A6 e-tronシリーズのプラットフォームは、ポルシェと共同開発したハイパフォーマンス系EV用の「プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)」です。ポルシェではPPEを『マカン』に採用。アウディでPPEを採用したのは、『Q6 e-tron』シリーズに次いで2モデル目です。

PPEの採用と、ネット値で94.9kWhという大容量バッテリー、それにCd値0.21というアウディ史上最高の空力性能などのおかげで、一充電での航続可能距離はRWDのA6 e-tronスポーツバックが769kmになります。

全モデルが700km以上!

またA6 e-tronスポーツバックには、エアサスペンションにして車高を落としたりドアミラーをカメラによるバーチャルミラーにするなど装備品を電費向上に振った「レンジプラスパッケージ」を用意。一充電での航続可能距離は最長846km(WLTCモード)にもなります。アウディによれば、日本で販売されているEVの中で最長です。

これだけ走ることができるなら、自宅で満充電にできれば経路充電はほとんど不要かもしれません。それに普段からSOC80%を上限にしても不便はなさそうだし、80%充電ならバッテリーも長持ちしそうです。

急速充電は最大135kWに対応

充電口はもちろん電動。後部フェンダーの左側に急速充電用、右側に普通充電用が配置されていました。

PPEの採用で、システムの中身はアウディの初期型e-tronに比べて、大きく変化しました。ユーザーのメリットで大きいのは、800Vシステムの採用で急速充電の受け入れ出力が最大135kWになったことです。スペック上は、SOC10%から80%まで、最短35分で充電可能とアナウンスされています。

ただ、高速道路上などに設置されている150kW器の多くは、15分間のブーストモード終了後に90kW(200A)になります。

ざっくり計算すると、ブーストモードの15分間で約34kWh、ブーストモード終了後の15分間で22.5kW、30分の合計で56.5kWhになります。高速道路上の経路充電ではこれが上限値になるかもしれません。

一方でパワーエックス製の急速充電器は、最大150kWのブーストモードで10分間の充電後も、120kWで連続充電できるので、35分間の充電で73kWh程度の充電が可能と思われます。

またポルシェジャパンがABBと共同開発したポルシェターボチャージャーなら連続で最大150kWを流せるので、A6 e-tronの充電性能をフルに発揮できそうです。

アウディ、フォルクスワーゲン、ポルシェなどが設置を進めている急速充電ネットワークのプレミアム・チャージング・アライアンス(PCA)を利用すれば、ポルシェターボチャージャーの恩恵を受けることができます。

アウディ・ジャパンでは、e-tronを新車で購入してPCAに登録すると、1年間分の月額基本料金と充電料金が無料になるキャンペーンを実施中です。

A6 e-tronの航続可能距離を考えると、自宅に充電器がなくても近くにPCA加盟店があれば、たいていの場合は経路充電不要で快適なEVライフが送れるかもしれません。

PPEでモーターも軽量化

EV用プラットフォーム、PPEの採用は、充電以外でも性能向上につながっています。例えばモーターは、容積が約30%縮小、重量は約20%軽くなったそうです。

小さくなってもパワーアップです。最高出力はA6 e-tronが270kWで、一時的に出力をアップするローンチコントロール使用時は最高280kWになります。0-100km/h加速は5.4秒です。

AWDのS6 e-tronは前後にモーターを搭載していて、システム最高出力が370kW、ローンチコントロール使用時は405kWまでアップします。ローンチコントロール使用時の0-100km/h加速は3.9秒です。

この他、操作系の特徴では、ステアリング裏のパドルで回生ブレーキの強弱調整ができます。パドルを使って、マニュアル操作が3段階のほか、ワンペダルドライブのモードと、前方の車に追従しながらの自動減速モードを設定可能です。

マニュアル操作では、回生ブレーキをいちばん弱くするとコースティングになります。こうした運転感覚は、試乗する機会があれば確認したいと思います。

今後はコンパクトサイズのEVも導入?

ところで、フォルクスワーゲングループ・ジャパン(VGJ)は2022年に、2025年までにアウディブランドの日本でのEV販売シェアを35%にする目標を掲げていました。

しかし今回の発表会の質疑応答の中で、VGJの社長を兼任するアウディ・ジャパンのブランドディレクター、マティアス・シェーパース氏は、「まさか(日本の)EV全体の市場シェアが、当時より落ちるとは予想していなかった」と、驚きを隠さずに話しました。

「電気自動車の時代が必ず来る」と語ったシェーパース氏。

そして、「次の2〜3年間で30%にいくことはないと思っている。日本の実需に合わせて10〜15%(になるのではないか)」という予想を述べました。

アウディは発表会の中で、現状の日本市場でのEVのシェアは、全体の1〜2%と説明しました。2025年に35%という目標を発表したときには、EVの市場シェアは約1.5%でした。

一方で欧州市場では2025年に入ってEVの販売台数が再び伸びています。アウディによれば現在は約20%のシェアになっています。日本市場がちょっと特殊な環境にあるとも言え、日本を基準に考えると隘路にはまっていく可能性があります。

こうしたことからシェーパース氏は、日本市場の変化のなさにも関わらず「戦略としては何も変わらない。EVは今年の1月から6月に、全世界で900万台が売れた。電気自動車の時代が必ず来る。ヨーロッパを中心にまた伸びてくる」と強調しました。

また発表会後に囲み取材に応じたシェーパース氏は、欧州などで販売台数を伸ばしているバッテリー容量の少ないEVについて、「市場のトレンドだと思う」という考えを示しました。

そして、「ボリュームゾーンは、ゴルフや、A3などの車。そうした車種もいずれ日本に導入する。その時には、そんなに大きなバッテリーは積まない」と述べました。

コンパクトなバッテリーを搭載した大衆車種がデビューする「いずれ」が、いつになるかはわかりません。今のところは1000万円クラスのEVの販売も頭打ちというわけではないので、すぐというわけではないでしょうが、それでも今後の楽しみが増える言葉でした。A6 e-tronシリーズの発表会で一番の収穫は、この言葉だったかもしれません。期待を込めて、今後のアウディに注目したいと思います。

主要スペック表

モデルA6 Sportback e-tron performanceAudi A6 Avant e-tron performanceAudi S6 Sportback e-tronAudi S6 Avant e-tron
全長×全幅×全高4930×1925×1495mm4930×1925×1530mm4930×1925×1465mm4930×1925×1505mm
ホイールベース2950mm
車両重量2220kg2240kg2370kg
回転半径5.7m
定員5人
タイヤサイズ前:225/55 R19/後:245/50 R19前:235/45 R20/後:265/40 R20
駆動RWDAWD
モーター永久磁石式交流同期型前:非同期型/後永久磁石式交流同期型
最高出力270kW(ローンチコントロール起動時:280kW370kW(ローンチコントロール起動時:405kW)
前:140kW/後:280kW
最大トルク565Nm前275Nm/後580Nm
一充電航続距離(WLTC/国交省審査値)769km734km726km706km
駆動バッテリー
種類リチウムイオンバッテリー
総電力量(ネット)94.9kWh
総電圧662V
急速充電の対応出力135kW
普通充電の対応出力8kW
価格(税込)981万円1012万円1440万円1471万円
CEV補助金68万8000円52万8000円52万8000円52万8000円

取材・文/木野 龍逸

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

コメント

コメントする

目次