BMWが530e iPerformance PHEVを発表・発売開始

BMWがエグゼクティブ・セダンの5シリーズにプラグインハイブリッド、530e iPerformanceを追加。これも740eと同様、ミッション手前にモーターが入る面白いシステムです。PHEVがシリーズ内で目立つ位置づけになりつつあります!2017年6月発売開始です。

BMWが530e iPerformance PHEVを発表・発売開始

SUVのX5e、ミニバンの225xe、3シリーズに330e、5シリーズに今回の530e、7シリーズに740eと着実にプラグインハイブリッド車のフルラインアップ化を進めているBMW。最初に出たX5eのときは、BMW X5 xDrive 40eなどという名称だったのに、今回の530eはBMW 530e iPerformance。なんだか速そうな名前になっています。それもそのはず、実際プラグインハイブリッドを販売するにあたり、お金がかからない・維持費が安い、というのはちょっと当てはまらなくなってきています。バッテリーを始めとする車体の価格増に加え、電力会社の新料金プランからは深夜電力が一斉になくなるなど、電気は安いからPHEVにすれば「元が取れる」という考え方は通用しなくなったのです。
それに代わってBMWがメッセージとして発信しているのは、CO2の削減とパフォーマンス、つまりサクサク速い!ということですね。PHEV車をモーターで走行させる場合、CO2排出量はガソリン・ディーゼル燃料を使った時より削減できます。

ちなみにiPerformanceはカーボンファイバーを意味しています。

実際に530eは5シリーズの中でどのような位置づけなのでしょうか?

5シリーズグレード530e523d530i540i
エンジン出力135kW
システムトータル185kW
140kW185kW250kW
エンジントルク290Nm
システムトータル420Nm
400Nm350Nm450Nm
エンジン2l直42l直4ディーゼル2l直43l直6
トランク容量410l530l530l530l
0-100km/h加速6.2秒7.5秒6.2秒5.1秒

BMW 530e

これを見ると、3リットル直6エンジン搭載の540iが250kW/450Nmで当然最上位グレードなわけですが、良く見ると、530eのシステムトータルトルク、すなわちガソリンエンジンのトルクとモーターのトルクを合わせた場合のトルクは420Nmと、540iの450Nmに迫っています。数値上は0-100km/h加速は540iが5.1秒、530eが6.2秒と1秒以上の差をつけられていますが、このくらいのトルクの差だと、おそらく通常の一般道の範囲や、高速道路での追い越しなどでは530eのほうが速く感じられてしまう可能性も高いと思います。モーターはアクセルを踏んだ瞬間にパワーを送り込みますので、レスポンスが非常に鋭いのです。

740eと同様、530eもモーターがエンジンと同軸に入っていて、変速機の手前に入っています。普通のPHEVは二パターンあり、エンジンは変速機を介してモーターはギア直結(これが一番多いかも)、もしくは両方ともギア直結(アウトランダーPHEVがそうですね、もちろんギア比はそれぞれに異なります)なのですが、530eはどちらも変速機を介するということ。つまり、モーターの作動範囲を非常に大きく取っているということになりますね。高速道路でもモーターの追い越し加速の鋭さを享受したいということなのではないでしょうか。
やはり740eと同じ9.2kWhのバッテリーで、バッテリーのみでのEPA航続距離は25.6km。短距離の通勤の往復には十分な距離です。そして740eと同様に燃料タンクを45.8リットルと小さくして搭載されています。燃料タンクの縮小分とトランク120リットル分がバッテリーのスペースに当てられています。電気とガソリンを両方満タンにすると、EPAトータル航続距離は592kmとなります。

BMW i3を除き、530eを含むBMWのすべてのPHEVは普通充電のみのサポート。基本的には自宅で充電するか、買い物中にショッピングセンター等で普通充電や、ホテル・旅館で寝ている間に普通充電するのがメインとなります。

BMW 530e

電気自動車やPHEVを語るうえで、ライフサイクルCO2排出量のことを気にされている方もいらっしゃるかも知れません。ISO 14040と14044という標準があるのですが、それによると、248,000kmを走行した後にBMW 530eをリサイクルした場合のライフサイクルCO2排出量、すなわち原材料の採掘から車両の組み立て、実際の走行、そして廃車にするためリサイクルする過程まで含めたCO2排出は、ガソリン車のBMW 530iより、ドイツの電力グリッドを使用している場合に15%少なくなるそうです。BMWはこんなところまで環境に配慮しているのですね。

価格も戦略的です。530e iPerformance Luxuryは793万円なのですが、ガソリンバージョンの530i Luxuryは779万円。違いは14万円しかありません。

BMW PHEVはだんだんとポジショニングがはっきりしてきたように思います。ビジネスを強く意識。CO2排出量が少なく環境にやさしい、しかし力強いBMWのスポーツイメージは維持する、というところでしょうか?家庭に充電環境を設置するのがマンション等では楽ではないという点はさておき、すべての主要シリーズにPHEVを投入してきたBMWの実行力は素晴らしいです。

この記事のコメント(新着順)2件

  1. いつもながら鋭い見解ですね。本当にディラーよりも立ち位置がより目利きにかなっている。しかし、二つほど最近のBMWのeモデルで感じ事を書きます。例えばテスラに惚れた部分で言うと町中でレベル2のオートドライブは怖くて意味がないが、大変便利なワンペダルドライブが出来る。回生ブレーキの効き方トルクのかけ方とスピードの帯域の癖を知ればアクセルの離し方一つで都会の中でも、8割程度はワンペダルドライブで事足りる。モーターならでは恩恵ですが、i3意外は回生での減速行為は危険すぎるし、i3も効き方はスマートでない。PHVでのモータートルク限界が見える。それと今度のBMWの5は本当によく出来た4輪ステアがeからは消えたと聞きました。ディラーからセダンとツーリングを何日も借りて乗ってましたかX4で面倒くさい我が家の駐車場があっさり入り、130キロメートルの車線変更がヨーが皆無の身のこなしは同位相なせる業!本当にもう1台買おうかなと思いました。多分テスラがSだったらツーリングを買っていたかも。あの0ヨーにオートドライブレベル2でオプションのマッサージシートで高速道路はあと100キロは遠出来そうです。テスラもヨーは出ない。エアサスと極低重心で素晴らしいが、兎に角シートが悪い。視野は優れているのに勿体ない。ない物ねだり良くないのですがそれでも近い内にメルセデスが全部詰め込んでくるでしょうね。その時また鋭い見解をお願いします。面白いのはトヨタが躍起なって見習うドイツ勢はテスラをターゲットにしている。にもかかわらず、トヨタはテスラを見限った。愚かなのはどちらだろうか。

    1. 9月にオーナー様、BMW乗りとしてのコメント参考になります!私もハンドリングという意味でBMWは本当に高速道路で安定していて(もちろんメルセデスもですが)長距離行く場合は疲れないですよね。テスラはオートパイロットがあるのでもっと疲れませんが(笑) シートは私は大丈夫なのですが、海外ではおっしゃるようにシートがダメ、とおっしゃっている方は一定数いらっしゃるように思います。おそらく自社で作っているのでまだノウハウが不足しているのではないでしょうか?人の体なんて本当に千差万別ですから、自社で頑張って作らず、シートメーカーをインソーシングでテスラ社内に常駐してもらって作ったほうが、長年のノウハウが活用できていいのかも!?そんなことないのかな。

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この記事の著者


					安川 洋

安川 洋

日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経てイージャパンを起業、CTOに就く。2006年、技術者とコンサルタントが共に在籍し、高い水準のコンサルティングを提供したいという思いのもと、アユダンテ株式会社創業。プログラミングは中学時代から。テスラモデルX P100Dのオーナーでもある。

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