BYDが日本国内で発売中であるEV車種の認定中古車に対する保証制度をさらに強化することを発表しました。駆動用バッテリーの保証は「10年30万km」に拡大。定期点検や車検費用を含む中古車向けのメンテナンスパッケージ「BYD eパスポートライト」を導入します。
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バッテリー補償を「10年30万km」に拡大
2025年6月2日、BYD Auto Japan株式会社(以下、BYD)は、6月1日からBYD認定中古車の保証制度をさらに強化したことを発表しました。BYDでは2024年3月から認定中古車制度を開始。公式サイトの認定中古車ページには『ATTO 3』、『DOLPHIN(ドルフィン)』、『SEAL(シール)』の3車種がラインナップされています。

BYDジャパンの劉学亮社長とBYDオートジャパンの東福寺厚樹社長(2024年3月1日の戦略発表会にて)。
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保証内容強化のポイントは大きく2つあります。まず、パワー(駆動用)バッテリーについて、従来の「5年間走行距離無制限の一般保証」「8年15万kmの高電圧部品保証」に加えて、「10年30万kmのパワーバッテリーSOH延長保証」が標準で付帯されます。「SOH」とは「State of Health」の略語で、新品時のバッテリー容量に対する健全度を示す指標です。BYDではすでに新車向けに10年30万kmのバッテリー補償制度を導入しており、認定中古車にも拡大されたことになります。
BYDに確認したところ、SOH測定は「正規ディーラーにてBYD専用の診断機で行う」とのこと。ユーザー自身が確認できるメーター表示などはないので、「満充電時の航続可能距離表示が減ってきたかな」と感じたら、定期点検や車検時にディーラーでの測定を依頼するといった流れになりそうです。
もしもSOHが70%を下回った場合は「通常の利用に伴い初期容量の 70%を下回った場合に、無料修理・交換することにより、70%以上の容量復帰」を約束してくれています。BYDのEVは、三元系に比べて安全性と耐久性に優れているのが特徴のリン酸鉄(LFP)リチウムイオンバッテリーを搭載しています。充放電を繰り返す「サイクル寿命」は4000回(毎日充電を繰り返しても10年以上!)とも6000回ともいわれているので、何かトラブルでもない限り「10年30万km」くらいはドンと来い!という自信を感じる保証となっています。
安心感が高いメンテナンスパッケージを設定
2つ目のポイントは、点検や車検および基本的な定期交換部品等が含まれた中古車向けのメンテナンスパッケージ「BYD eパスポートライト」(有償)を導入することです。これも、新車に対して提供されていた「BYD eパスポート」(有償)を認定中古車にも拡大して導入したかたちです。
メンテナンスメニュー(期間は2年間)と車種ごとの価格は以下の通り。
「BYD eパスポート」や「BYD 延長eパスポート」に加入していた場合、認定中古車にはその保証が引き継がれています。さらに6年目以降の保証を希望する場合、59カ月目以降であれば中古車向けの「BYD eパスポートライト」にいつでも加入が可能。購入した中古車が新車時に「BYD eパスポート」に未加入の場合、初度登録から13カ月目以降であればいつでも加入することができます。また、2年ごとに繰り返し加入することも可能となっています。
上質な中古車市場の拡大はEV普及にとって大切
そもそも「EVはバッテリー劣化が不安」というのは、駆動用バッテリーの温度管理システムをもたず急速充電料金の大盤振る舞いをしてしまった世界のパイオニア的EVが広げてしまった悪しきイメージであり、LFPバッテリーで温度管理もしっかりしているBYDの各車種をはじめ、最近の市販EVではほとんど心配ないレベル(機械なのでいろんなケースがあるでしょうけど)に進化しています。
「EVは車両価格が高い」のは、一朝一夕にはどうしようもないところではありますが、こなれた価格で良質な中古車市場が拡大すれば「思い切ってEVに乗り替えてみるか」という方が増えるはず。そして、一度しっかりEV生活を経験したら「次もやっぱりEVがいいな」と感じる方が多いのは間違いないと思います。
意欲的に正規ディーラーの拡大を進めているBYDですが、2024年の日本国内での登録台数は約2200台。グローバルではテスラを追い落とす勢いであることを思うと、日本では「まだまだこれから!」といった現状です。
2025年4月には、日本専用モデルの軽EVを2026年にも発売することを発表(関連記事)しました。さらに、今回の認定中古車保証拡大の朗報です。日本でも、世界レベルのEV普及を着実に進めていくために、BYDのチャレンジを歓迎して注目したいと思います。
取材・文/寄本 好則
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