BYDが小型電気バスを日本で販売。2020年春から納車開始で24年に1000台を目指す!

中国のBYD(比亜迪)の日本法人である「BYDジャパン」が、新しい小型電気バスを日本で発売、3月25日から予約受付を開始したことを発表しました。中国で製造し、納車は2020年の春から開始予定。2024年までに1000台の販売を目指すとしています。

BYDが小型電気バスを日本で販売。2020年春から納車開始で24年に1000台を目指す!

『日本にもBYDの電気バスが続々と導入中!』でもお伝えしたように、日本国内でも公共交通であるバスの電動化気運は高まりつつあり、BYD製の電気バスがその主役の座を占めつつあります。今回発表された量産型小型電気バスは『J6(ジェイシックス)』という車名で、日本の市場ニーズに対応してメンテナンスの効率などを向上、開発されたものです。

乗車定員は25〜31人(バリエーションによる)で、車両価格は統一して1950万円(税抜)に設定。たとえば、日野自動車の小型路線バス用車両『日野ポンチョ』ロングボデー都市型36人乗りは約1675万円(税抜)ですから、従来のディーゼル車やハイブリッド車と比べても十二分に競争力がある価格といえます。

【BYD J6(ノンステップ小型電気バス)主要諸元】

車長×車幅×車高6990×2060×3100mm
航続距離≧ 200km
バッテリー容量105kWh
乗車定員都市型Ⅰ31人
都市型Ⅱ29人
郊外型25人
希望小売価格1950万円(税抜)

2024年までに1000台を目指すということは、年間250台程度の販売台数が目標設定されていることになります。何度も引き合いに出して恐縮ですが、2017年12月に発表された日野ポンチョのリリースによると販売目標台数は300台/年ということなので、これもまた十分に意欲的な目標だといえるでしょう。

BYDジャパンでは、今まで海外での大量納車情報などが多かった自社Facebookページでも、このJ6予約受付開始をアピール。自社ウェブサイトも立ち上げて(たぶん、今までなかったと思います)プレスリリースの第一弾として「日本初の量産型小型電気バスの販売を決定、2020年春納車開始」を掲載。4月11日には東京で、4月15日には大阪で、J6の製品説明会を開催することを発表(詳細は未定)しました。

地方にこそ小型電気バスが必要

BYD製の電気バスは、今まで大型の「K9」や中型の「K7」という車種を中心に、日本でも各地に導入事例がありました。今回の車名は「J6」。まさにJAPANをターゲットに開発された小型電気バスということでしょう。BYDジャパンはプレスリリースの中で、開発の「背景」を以下のように説明しています。

2030年パリ協定達成に向け、⽇本でも CO2 排出量削減の取組として「環境負荷の少ない⾃動⾞の普及及び使⽤の促進」、「⾃家⽤⾃動⾞から環境負荷の少ない公共交通機関への誘導」が推進されています。しかしながら EV バスにおいては価格、航続距離、充電インフラや充電時間など事業化に向けてクリアする課題が多い⼀⽅、国内の社会的背景においては、65歳以上の家族がいる世帯のうち、医療機関までの距離が1キロ以上ある世帯が 23%にのぼるといった、公共交通インフラの不⾜も指摘されるなど、⼤型路線バスや鉄道の届かない「地域交通の細分化」も求められています。

BYD ジャパンでは、以前より全国各地における電気バスの導⼊を進めてまいりましたが、⽇本でこれまで量産化されていない当該⼩型電気バスを、⽇本市場向け仕様として開発し、購⼊しやすい価格帯にて提案することで、さらなる EV の普及に努めていきたいと考えます。

日本が抱える地域交通の問題点をきっちり指摘して、そのための電気バスであることを明言。BYDジャパンの代表取締役は劉 学亮氏という中国人(まだ詳しいプロフィールは存じ上げません)ですが、日本人としても頭が下がる思いです。

ちなみに、同じリリースの中で記されている「今後の展開」も紹介しておきます。

EV、太陽光パネル、蓄電池を中心としたBYDジャパンの一連の新エネルギー事業と、それに関わる企業や団体とのアライアンスにより、環境意識が向上し新エネルギーが活用される社会を目指します。新エネルギー活用の足掛かりとして、2020年から走行する小型電気バス「J6」の販売を、販売開始から5年間で1,000台と計画しています。併せて、今回日本仕様として開発した電気小型バス「J6」をベースに、自動化、VtoH(Vehicle to Home)、VtoG(Vehicle to Grid)、VtoV(Vehicle to Vehicle)の開発を進め、環境問題、高齢化による交通課題解消に貢献してまいります。

なんというか、もう、我が意を得たり! と手を打ちたい気持ちです。

自動運転にも意欲的

このJ6では、レベル3(条件付運転自動化:緊急時にドライバーが対応)の自動運転機能を2020年に追加することも発表しました。この自動運転機能はすでに発売済みの電気バスにも搭載可能ということです。レベル3の自動運転は2018年12月(2020年前半施行予定)の道路交通法改正案で認められるとされており、東京都などで実証実験も行われているようです。

自動運転ラボ『東京都、SBドライブとZMPの支援決定 自動運転レベル3の実証実験へ』

2020年はまさに転機の年といえそうです。ゼロエミッションバスの話題としては、2020年の東京オリンピックではトヨタが完全自動運転の電気自動車『e-palette(イーパレット)』をはじめとする燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)、ハイブリッド車3000台以上を供与することも発表されています。

乗用車の日本展開は、ない……

BYDといえば、中国の電気自動車最大手。もちろん、バスだけでなく乗用車も生産しています。ダイムラーベンツとの合弁会社で開発した『DENZA』など、乗用車のバリエーションも多いのですが……。

BYD E1(同社リリースより転載)

日本経済新聞の報道によると、25日の記者会見でBYDジャパンの花田晋作副社長は「EVの市場規模が小さく(乗用車の)日本での展開はない」と強調したそうです。いずれにしても、小型電気バス「J6」を旅先で見かける機会が、これから多くなりそうな予感がします。

(寄本好則)

この記事のコメント(新着順)3件

  1. JAPANをターゲットに開発された小型電気バス「J6」ですが、公共交通の代替えで
    路線バス仕様が必要かと思われますが、中国で生産されたJ6を日本国内向け路線バスへの
    改造等はどこで行うのでしょうか?小型バスの二次架装を行っていますので何か手伝えるものはないのかと思いましてコメントします。

  2. Eddyさま

    ご指摘ありがとうございます。一カ所タイプミスがありました。修正いたします!

  3. 文中の「BYD製の電気バスは、今まで大型の「K9」や中型の「K7」という車種を中心に、日本でも各地に導入事例がありました。今回の車名は「J9」。まさにJAPANをターゲットに開発された小型電気バスということでしょう。」
    今回の車名は「J6」の間違いではないでしょうか?

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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