キャデラックがテスラに対抗するため EVシフトを受け入れないディーラーをバイアウト

GMの高級車ブランドであるキャデラックが電気自動車シフトに本腰を入れ、EV化を歓迎しないディーラーを自社網から放り出し始めました。『CleanTechnica』から全文翻訳記事でお届けします。

キャデラックがテスラに対抗するため EVシフトを受け入れないディーラーをバイアウト

Cadillac Is Buying Out Dealers That Don’t Want To Modernize In Order To Compete With Tesla by Johnna Crider on 『CleanTechnica

電気自動車シフトか現金か

キャデラックは昨年、電気自動車を受け入れない自社ディーラーをバイアウトするオファーを始めました。時代に適応しないならば業界から出ていけということです。多くが電気自動車を受け入れず、オファーされた現金を選んで店を閉じました。

キャデラックは2018年に比べて40%減らしたディーラー網と新型EVを携え、ラグジュアリー電気自動車市場のテスラやその他のライバルに戦いを挑んでいくと、今日ロイターが報じました。ただし、キャデラックは3年前に930あったディーラーを2021年末までに560に減らすとしていますが、それでもどの米国ラグジュアリーブランドより多い数が残ります。

グローバル部門責任者であるローリー・ハービー氏は、キャデラックが米国ディーラーネットワークの再編をほぼ終えたとロイターに話しました。ニューヨーク、アトランタ、ビバリーヒルズ、サンフランシスコには新しいディーラー・ショールームもオープンしました。また最大市場である中国では、2021年初頭からの9ヶ月で売り上げが20%アップしたそうです。記事によると、テスラはディーラーネットワークを持たず顧客に直接車両を販売していますが、キャデラックはキャデラック・ライブと呼ばれるバーチャル・ショールームで対抗します。ハービーはキャデラック・ライブを通しての問い合わせは増えているが、しばらくは販売とサービスをディーラー経由で行うとのことです。

キャデラックは2022年の夏に、最初の『リリック』から始まる一連のEV群をローンチする予定です。現在までに21万6,000人がキャデラックの新しいEVに関心を示し、今もその数は増え続けており、ハービー氏は予想を超えた反応であったと話しました。キャデラック製EVへの関心が多ければ、社がEVにより真剣に向き合い、大量生産計画を立てることにも繋がるのではないかと見られます。

キャデラックのEV・リリック。画像はキャデラック公式サイトより。

記事通りにキャデラックがテスラと肩を並べるためには、ディーラーネットワークを現代化する以上の事が必要になります。フォードのジム・ファーレーCEOは、ディーラー制度でEVを売るのは複雑であると示唆しました。ここに疑いの余地はありません。彼が指摘したのは、顧客に車両を販売して納車するまでに複雑な工程が存在しないテスラの直接販売モデルの方がよほど簡単だということです。また価格付けもシンプルで交渉できない点にも注目しています。彼は策略に乗せようとしてくるディーラーに対して多くの消費者が抱える問題点を、ディーラー業界を貶めることなく、丁寧にポジティブに指摘したのです。

自動車ディーラー販売のビジネスモデルは非常に時代遅れで、これから成功するには現代化以上のことが必要になります。ディーラーと従業員はEV販売に関心を持たねばなりません。今年始め、コネチカット州上院議員のウィル・ハスケル氏とポッドキャストで一緒になる機会がありました。そこで分かったのはディーラーが掌握済みの市場のコントロールをあきらめたり、現状を変える事を本気で嫌がっているということでした。テスラと競争する気がまったくないのです。キャデラックに関しては電気自動車を迎え入れようとせず、現金を選んでキャデラックの販売を止めたディーラーがかなりいたことからも、かなり明白でした。

ハスケル氏が言うには消費者が新車を買う方法は長い間たった1つに限定されてきました。ディーラーはその特権を生かし『底辺への競争』状態で、狡賢い販売戦略を練られる現状に安心しきっているのです。世論調査ではEVが自由市場での競争に参加できるようにすべだとの意見に住民は賛成しています。「何十年…… ほぼ一世紀にわたって生き永らえたディーラーモデルは、万人向けではありません。現状維持はすべての人のためになっておらず、だからこの法案が人気なのです」。

彼はまた、多くのディーラーがまるで優れたビジネスモデルを持ち、顧客が好んで出向いてきているかのように感じているとも言及しました。ハスケル氏はそうは思いませんが、顧客が決める事です。広告支出がないテスラの成功は、顧客の判断を明確に表しており、社が提示したのはEVを買う最も簡単な方法でもあります。価格交渉をすることなく、ウェブサイトに書かれた金額を支払うだけです。余計な工賃や手数料はかかりません。

これは消費者が望んでいる変化であり、ディーラーが成功するには、顧客のニーズに合わせて適応する必要があります。

(翻訳・文/杉田 明子)

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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