中国製のEVピックアップトラックやバンがアフリカ市場に進出中

自動車の電動化の波はアフリカにも届き始め、中国製の電気自動車がアフリカの市場に着々と進出していることを、アメリカのメディアが伝えています。全文翻訳記事をお送りします。

中国製のEVピックアップトラックやバンがアフリカ市場に進出中

元記事:Electric Pickups & Vans Are Now Available In Some African Markets — Time For Fleet Operators To Electrify by Remeredzai Joseph Kuhudzai on 『CleanTechnica

アフリカ各国で中国製電気自動車が市場を拡大

アフリカ大陸の企業車両管理オペレーターは、新品の車を大量に買い付けています。彼らはリピーターという重要な顧客でもあり、車両を定期的に買い替えます。買い替えはどのくらい走行したか、もしくは何年使われたかにより決定されます。

電力、水道、通信、農業、鉱山、物流、旅行などの業者から地方、中央政府まで、オペレーターは定期的にピックアップトラックやバンを買っています。これらの車両には電気モデルが無かったので、長い間ICE(内燃機関)車両が買われてきました。しかし多くの企業が素晴らしい電気モデルを出し始めたので、いくつかの国で変化が訪れようとしています。

ガーナでは電気自動車の販売と、少なくとも15車種のリース販売をするSolarTaxiが、Dongfeng(東風汽車有限公司)のRichピックアップトラックを車種のリストに加えました。ガーナは左ハンドル(LHD)市場なので、多くのEVが中国から来ています。従ってLHD電気ピックアップトラック市場へのアクセスもできるということです。JAC(安徽江淮汽車集団)やDongfengなどの中国メーカーは、熱望されているリビアン、フォードF150ライトニング、テスラ・サイバートラックよりも早く市場に到着しました。

Dongfeng Rich 6 EV。東風汽車有限公司は、東風汽車集団とルノー・日産アライアンスによる合弁会社です。(画像は公式サイトから引用)

最新のDongfeng Rich 6 EVは。119kWのモーターと68kWhのバッテリーを搭載、航続距離は400km(NEDC基準)で、急速充電器を使うと80%まで45分で充電できます。SolarTaxiが市場に持ち込むこの電気トラックを、ガーナのオペレーターは車両に加えるか真剣に検討を始める必要があります。電気に切り替えるのに、悩む必要はありません。オペレーションコストと燃料のコストが下がるからです。

今は電気バンも多くの国で売られています。ガーナではSolarTaxiがSkywell D07を提供しています。40.3kWhのバッテリーを搭載、出力70kW、トルクは230Nmでトップスピードは時速100kmになります。また航続距離はNEDC基準で250km、バッテリーは5年または20万kmの保証付きです。SolarTaxiではこのバンを購入するかリースにするか選べます。

Dongfeng、JAC、BYDなどの中国製EVが増加

ジンバブエでは、BYDジンバブエがT3電気バンを提供しています。こちらのモデルには50.3kWhのバッテリーと180Nmのトルクを発する100kWの永久磁石同期型モーター(PMSM)が搭載されています。 航続距離はWLTP基準で269kmです。ジンバブエの大手車両オペレーターであるCMEDは、すでにBYD T3とブレード・バッテリー搭載のBYD E6を買い付け、ハラレの国際空港でT3をシャトルバス用に使っています。CMEDは多くの政府車両を管理しており、電気自動車がそこに加わるのはとても良いことです。社は遠からず電気自動車の数を増やすとしており、政府の他の部門でもEVを使い始めることになります。

BYD T3。(画像は公式サイトから引用)

そのうちの1つが電力会社のZesaで、電気自動車への関心を示しています。Zesaは複数の省庁用に3,000台の車両を必要としていますが、今のところ1,600台が不足しています。Zesa内のある部門はすでに電気自動車への入札をしており、EVをもうすぐ購入することになると見られます。社は燃料のガソリンとディーゼルに多額を費やしています。自社製品(電気)が燃料になった方がよっぽど良いでしょう。ほとんどの車両はオフピークの夜間に自社の敷地内にあるステーションで充電されます。

ケニアでは、Driveelectric KenyaとMETA Electricがそれぞれ、日産e-NV200とBYD T3のリースをしています。ケニアでピックアップトラックとパネルバンの市場は大きく、2020年度KNBS経済調査によると、2019年に10,189台のICE車が登録されました。過去5年では合計57,875台のパネルバンとピックアップトラックが登録されており、その平均は年 11,575 台です。車両の大半は企業車両オペレーターたちに買われており、通常決まったルートを走るので、電動化するには完璧な市場です。オペレーターは通常業務に支障をきたすことなく電気車両を取り入れ、自社のステーションにある充電スポットでの充電計画も簡単に立てられます。

南アフリカではまだ電気バンやピックアップトラックは少ないですが、OEMやディーラーが促進していかなければなりません。南アフリカは、アフリカで最大の新車市場を持っています。トヨタのハイラックスはあらゆる車種の中でも長い間トップセラーとなっています。航続距離が300kmを超えるJAC T8やDongfeng Rich6 EVのような電気ピックアップトラックなら、この市場で戦えるでしょう。

南アフリカでは中国ブランドが流行り始めました。中でも称賛の的となっているのがGreat Wall(長城汽車)の新しいICEピックアップトラックであるPシリーズです。このピックアップの電気バージョンは、ニュージーランドなど右ハンドルの国でもうすぐ発売される可能性があります。南アフリカに進出済みのGreat Wallは、通称『バッキ―』と呼ばれるピックアップトラックの最初の市場として、この国に優先して進出するべきです。

長城汽車のピックアップトラック。グローバルのニュースを見た限り、ニュージーランドなどでのEVモデル発売予定は見当たりませんでしたが、今年、オーストラリアやニュージーランドで過去最高の販売を記録したとのこと。(画像は公式サイトから引用)

プレトリア大学での講演中、EskomのCEOであるAndre de Ruyter氏は、「Eskomは年間数百台の軽配達用車両(LDV)/バッキ―を購入します。自社の需要を通じてローカルで作られたEVへ投資し、自動車産業が電動化する機会を作りたいのです。Eskomのオペレーションには欠かせないので、優先するのはLDVとなります」と話しました。

南アフリカで2020年に売れた電気自動車はたった92台でした。そのうち24台がポルシェ・タイカンです。電気ピックアップトラックやバンが南アフリカで買えるようになれば、Eskomのような車両管理オペレーターがEV販売量にブーストをかけるでしょう。

(翻訳・文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)6件

  1. アフリカ(といっても括りに出来ないと思いますが)での充電インフラと、ガソリンスタンドのインフラは、どちらが整備されているのでしょうか?
    アフリカでは、携帯電話が、固定電話より先に普及したように(マサイ族は携帯電話所有率が高いと聞いています)、今ガソリンインフラがないところでは、
    電気のインフラの方が先に整備されるので、ガソリン車ではなくEVを先に買うのでは?
    という気もします。もし、アフリカ諸国でのガソリンスタンドの基数と、充電の基数の比較があれば知りたいです

    1. しげ 様、コメントありがとうございます。
      はい、電力供給は不安定なところが多く、1か月停電なし、ということがない、ような状態のようではありますが、実際に途中で何時間か停電があったとしても、スマホや電気自動車の充電は可能ですし、ガソリンよりはるかに安いと思います。
      砂漠を何日も移動するようなジプシー的な使い方は電気自動車はできませんが、ほとんどの居住者の方の日常使用には問題ないと考えています。

    2. 故障時にエンジン等は現地で修理できると思いますが、evとなると厳しいと思われます。
      そういうアフターケアの修理サービスの充実等も必要になってくると思います。

    3. 国によりますね。
      南アフリカではガソリンスタンドは24時間営業でコンビニ併設、幹線道路沿いに過不足なく配置されており給油の心配をしたことがありません。
      製油所も複数ありますし、周辺諸国に輸出しています。
      4年前旅行で訪れたナミビアは300km以上GSが無いところもあり、そもそも全国で30件ほどしか無かったと記憶しています。もちろん石油類はすべて輸入です。
      中国製の安価なEVを230V普通充電で地域内で使用するというのは十分可能性があるように思います。

  2. Eskomと聞いて脊髄反射してしまいました。ヨハネスブルク日本人学校の電力メーター付替時に通常の10倍以上の電気料金を請求され、全ての電気機器を動かしてもこんなに電気は使えないから調べてくれ、はっきりしないと支払えないと伝えたところ、支払い遅延で電気を止められ、日本大使館まで出てくる騒ぎになったのはもう5年前ですね。
    因みに当時ヨハネスブルクで充電ステーションは見たこと有りませんでした。BMWi8はよく近所で見かけたけど。
    ケープタウンで一回だけ充電ステーションとi3を見ただけですね。
    電力不足で頻繁に停電する状況なので、充電ステーションの前に貧弱な電力インフラをなんとかしろってなりますね。

    1. CEOの名前を見て白人に変わったことに気付きました。
      実務派のラマポーザ大統領に代わってEskomも変わりつつあるという事なのでしょう。今後に期待が持てるのかも知れません。
      ズマ前大統領も逮捕されたことですし。
      思い出してみると、2016年にヨハネスブルクに赴任した時点で既に自宅にはスマートメーターが付いていました。東京の自宅にスマートメーターが付いたのは2019年です。
      余りに進化の遅い電力業界のせいで気付けば世界から周回遅れになりそうですね。

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この記事の著者


					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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