シトロエンから『ë-C4-100% ëlectric』が登場~日本導入時期は未定

2020年6月30日、シトロエンがフル電動の電気自動車、シトロエン『ë-C4-100% ëlectric』について、詳細を発表するプレス向けネットプレゼンテーションを行いました。シトロエンをはじめとするPSAグループの電動化が勢いを増しています。

シトロエンから『ë-C4-100% ëlectric』が登場~日本導入時期は未定

2020年に発表される5番目の電動モデル

シトロエンでは6月16日にインターナショナルのメディアサイトで『ë-C4-100% ëlectric』の発売を発表していました。今回、PSAグループジャパンでは本国での詳細発表に向けて16日のリリースの抄訳を再配信。ただし、英語版のプレスリリースでは触れられていない日本での発売について「日本市場導入の時期、仕様は未定です」と追記されました。つまり、時期など詳細は未定だけど、日本でも発売するからお楽しみに! ということですね。

シトロエン、DS、プジョーなどのブランドをもつPSAグループは電動化に前向きで、シトロエンブランドでは「2025年の100%電動化」することを表明しています。今回発表された『ë-C4-100% ëlectric』は、シトロエン初のプラグインハイブリッドモデル(PHEV)である『C5 Aircross SUV Hybrid』(日本導入時期は未定)、超小型EVの『Ami』、小型商用バンの『ë-Jumpy』、ミニバンの『ë-SpaceTourer』に続き、シトロエンから2020年に発表された5番目の電動モデルとなります。すでに「2020年に6つの電動モデル発売」が予告されているので、今年中にさらにもう一車種が発売されることになるのでしょう。

『C5 Aircross SUV Hybrid』

『Ami』

『ë-Jumpy』

『ë-SpaceTourer』

すでに発表された5車種についても、まだ日本導入の詳細は未定です。とはいえ、超小型EVからCセグメントのハッチバック、SUVにミニバンと、少なくも欧州においては電気自動車の選択肢が広がっています。

同じグループ内のDSオートモビルズから昨年発売された電気自動車SUV『DS 3 クロスバックE-TENSE』の日本導入が発表されたことはつい先日、6月26日の記事としてお伝えしました。昨年9月に日本初公開されたプジョーの電気自動車『e-208』も、もうすぐ日本で発売されるはずです。

シトロエン、そしてPSAの電動化はフォルクスワーゲンなどのドイツメーカー勢と比べても、ひときわ加速している印象です。

汎用性の高いプラットフォームで電動化を加速

『ë-C4-100% ëlectric』は、エンジンを搭載した新型『C4』のバリエーションとして発表されました。シトロエン、そしてPSAグループの電動化の特長といえるのが、ガソリンやディーゼルエンジンのモデルと、バッテリーとモーターを搭載したBEV、PHEVモデルを、EVとICE(エンジン車)の両立を前提として開発された『CMP(Common Modular Platform)』と名付けられた共通プラットフォームで展開していることです。

BEVの長所をより効率的に引き出すためには、フォルクスワーゲンが進めるID.シリーズのように、電気自動車専用に開発したプラットフォームを使う方がいいでしょう。でも、社会が完全に電動化にシフトするには、まだ少し時間がかかります。PSAでは新しいモデルのパワートレインのバリエーションとして「エレクトリック」をラインアップすることで、より多くの車種に電動モデルを用意しやすくしていると捉えることができます。

バッテリー容量は50kWh

6月30日の日本時間21時30分から行われたプレス向けプレゼンテーションは、諸事情あってリアルタイムでチェックすることはできなかったのですが、インターナショナルのメディアサイトでその内容が配信されました。フル電動モデルを含めた新しい『C4』が、シトロエン、そしてシトロエンのコンパクトカーの伝統を受け継ぎながら、レベル2の半自動運転などの運転支援機能やコネクテッド機能、さらに多彩で快適なデザインクコリティとバリエーションを備えていることなど、盛りだくさんに伝える内容だったようですが、EVsmartブログとして気になったポイントをピックアップしておきましょう。

NEW CITROËN C4 & ë-C4 – 100% ËLECTRIC : REVEAL MOVIE(YouTube Citroënチャンネル)

まず、搭載される駆動用バッテリーの容量は50kWhと発表されました。欧州ではCCSの100kW充電に対応するとのこと。すでに発表されているプジョー『e-208』も「高価過ぎるEVでは普及しない」として、電池容量50kWhでした。日常的に不満なく使えて、ある程度大衆的な価格の完全電動モデルを提供するためのバランスで、PSAグループは50kWh程度という電池容量を選択しているようです。30kWhリーフをマイカーとして、いろんな大容量EVにも乗ってきた体験的な感覚として、賢明な提言ではないかと感じます。

一充電航続距離は、WLTPサイクルで350kmと発表されました。より実用値に近いアメリカのEPA基準に換算すると約312kmです。高速道路のロングドライブでも200km程度ごとに休憩がてら充電して使えるレベルなので、十分ですね。ただし、日本での実用を考えると高速道路SAPAなどに100kW程度の高出力急速充電器が普及することが必要ですが。また、欧州では100kW充電に対応しているEVも、日本に導入されるとチャデモは1.0規格の50kWまでしか対応していないのが現状(充電器がないから、だと思われます)です。

『ë-C4-100% ëlectric』日本導入の際には、なんとかチャデモ1.2に対応して、設置が進みつつある新電元の90kW器などの高出力器が使えるようになってくれるといいですね。そうすれば「200kmごとに充電休憩でロングドライブ」が実現に近づきます。

最高出力は100kW(136hp)、最大トルクは260Nm。40kWhのリーフが110kW、340Nmなので、ややマイルドなスペックです。また最高速度は150km/hに抑えられているようです。

車体寸法なども、日産リーフ(40kWhモデル)と比較して表にしてみました。

スペック比較表

ë-C4-100% ëlectric日産リーフ(40kWh)
全長4360mm4480mm
全幅1800mm1790mm
全高1525mm1560mm
ホイールベース2670mm2700mm
電池容量50kWh40kWh
一充電航続距離350km(WLTP)
約312km(EPA)
322km(WLTC)
約240km(EPA)
最高出力100kW110kW
最大トルク260Nm320Nm
0-100km/h9.7秒9.0秒

はたして日本ではどんな仕様で導入されるかは未定ですが、発表によると、エクステリアは7色に多彩なカラーパックを組み合わせ31のバリエーションが、またインテリアにも6つのカラーパターンが用意されるということです。先進の運転支援やコネクテッド機能、便利さと快適さを高める工夫を凝らしたデザインなどとの総合力で、かなりの新しさと満足度を得られる電気自動車に仕上がっているのではないか、と思われます。

そもそも、シトロエンに乗るという選択に、なんとなく知的な人を感じ(私個人の勝手な思い込み)たりします。

価格の発表はありませんでした。プジョー e-208が日本初公開された際には、PSAジャパンの広報ご担当者から「EVの維持費の安さなどを勘案して、3年間のトータルではエンジン車と同等程度になるようにしたい」という話を聞きました。今回の『ë-C4-100% ëlectric』でも、同じような志向で価格が設定されるのだろうと推察します。

たとえば日産リーフの場合、40kWhモデルが約400万円〜、62kWhの e+ が450万円程度〜という価格です。勝手な思いとして、なんとか450万円以下で日本導入されれば、とても魅力的な選択肢になるでしょう。

なるべく早く、日本にも導入されることに期待しています!

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 自営の運送業者であり、免許習得以来パジェロ/デリカスペースギアを乗り継いだ者としてはe-Jumpyに強く惹かれますね。
    eNV-200と同じくらいの大きさですが、このまま本当に終わってしまったのでしょうか?
    気になります。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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