ダイハツが初めての量産EVとなる「e-ハイゼットカーゴ」と「e-アトレー」の発売を発表。2月2日から全国で販売が開始されました。搭載するバッテリーは36.6kWhと軽EVとしては大容量。ただし、価格はちょっとお高めです。
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満を持して登場したダイハツの軽EV

2026年2月2日、ダイハツ初の量産EVがついに発売されました。今回登場したe-ハイゼットカーゴ、e-アトレーはともに商用モデル。いずれも軽自動車規格に合致した軽EVです。この両モデル、実は2023年に発売予定でしたが、認証不正問題などが原因で遅れていました。まさに満を持しての登場です。
ダイハツ初の「量産」EVという表現をしましたが、ダイハツは大気汚染が深刻化し始めた1965年頃、当時の小石社長が「我が社の創る車だけでも排出ガスと騒音のない車にできないか」という思いを示し、鉛蓄電池のハイゼットEVバンなどを少量生産しEVの実用化にチャレンジしていました。
3社共同開発の「e-SMART ELECTRIC」を搭載
さて、新型となるe-ハイゼットカーゴ、e-アトレーはそれぞれハイゼットカーゴとアトレーがベース。アトレーは以前ハイゼットの乗用版のアトレーワゴンの名でしたが、現在は商用モデルとなっています。少々複雑ですがハイゼットカーゴもアトレーも4ナンバーの商用モデルで、アトレーはそのなかでも乗用車ライクな乗り心地や装備、外観が与えられています。

e-ハイゼットカーゴ、e-アトレーはハイゼット&アトレーのプラットフォームをベースに、バッテリーを床下に搭載。電力供給ユニット(コントロール系)はフロントシート下、モーター&駆動系となるe-アクスルはリヤセクションに搭載され後輪を駆動します。軽自動車に適したBEVシステム「e-SMART ELECTRIC」についてはトヨタ、スズキとの共同で開発されたものですが、それ以外のシャシーやボディなどはダイハツの独自開発です。
e-アクスルを搭載するにあたって、リヤサスペンションをトレーリングリンクの固定式からド・ディオン・アクスル式に変更しています。ICE車ではディファレンシャルケースをボディ(フレーム)に吊る方式ですが、e-ハイゼットカーゴ、e-アトレーではe-アクスルをボディに吊る方式を採用。これを実現するため、メンバー(ボディの構造材)の数などを増やしボディを強化しています。
36.6kWhのバッテリーで一充電走行距離は257km
搭載されるバッテリーは36.6kWhのリン酸鉄リチウムイオン(LFP)で、サプライヤーはBYDの子会社であるFDB社です。普通充電性能は6kW、急速充電性能は50kWを確保しています。モーター出力は47kW/126Nm。カタログスペックの一充電走行距離(WLTCモード)は257km。改めて検証は必要ですが、実用的に200km程度は走れる航続距離性能であると思われます。

V2Lのコンセントはダッシュボードの使いやすい場所に配置。
全車に走行時も使用可能なAC100V/1500Wの外部給電機能(アクセサリーコンセント)を標準装備。サイドウインドウに取り付けるアタッチメント(標準装備)を使って車外へ100V電源のコードを引き出せるようにもなっています。急速充電インレットも全車に標準装備となっており、V2Hにも対応(別途V2H機器が必要)しています。
ラインアップはe-ハイゼットカーゴは1列シートの2名定員と2列シートの4名定員、e-アトレーが2列シートの4名定員で計3タイプです。
既存ユーザーの声に応えて使い勝手を踏襲

乗用車では乗り換え時に上位モデルを選んだりすることがありますが、商用バンモデルは同一モデルを購入することも多くあります。これは仕事で使用するのに商用バンが適しているユーザーの買い替えニーズが高いことが要因です。そして同一モデルに買い替えるユーザーには、荷室寸法の変更が嫌われます。発表会のなかでも、既存のハイゼットユーザーからの「従来モデルに工夫して取り付けた棚が使えなくなるのは困る」といった声に応えて、実用性を工夫したことが紹介されました。

具体的には、ICE車からEVへの乗り換えを促進するためにもe-ハイゼットカーゴは荷室の寸法はICE車と同一としています。アピールポイントとして紹介されていたのが中京間の畳(1820×910mm)9枚を積むことが可能という積載性能でした。畳屋さんにしか関係ないと思うのは早計です。1820mm、つまり一間の長さに対応しているのは、日本の建築関係などのユーザーにとってはとても重要なこと。さらにe-ハイゼットカーゴは助手席の前倒しも可能で2650mmの長尺物が積載可能です。
快適面では全車の運転席、助手席にシートヒーターを装備するほか、エアコンはオートタイプを採用。アトレーは両側パワースライドドア&イージークローザーを標準装備。オーディオはe-ハイゼットカーゴがAM/FMラジオ標準、e-アトレーはオーディオレス(16cmフロントスピーカー標準)として拡張性をアップさせています。
SOCの%表示がないのは残念

発表会場で給電中の展示車のメーター。SOCの%表示はありません。
EV関連装備についてもう少し詳しく紹介しておきます。充電口は普通、急速ともにフロントのグリル上、少し左にオフセットされた位置となります。200V(3kW用)の普通充電ケーブルは7mが標準装備で、15mがディーラーオプションとして設定されています。また、ケーブル付き普通充電器を所有していることも想定し、充電ケーブルレスのオプションが設定されています。
液晶メーターには「POWER/CHARGEゾーンメーター」が表示され、放電と充電(回生)のエネルギー収支が視覚的に表示されます。瞬間電費はバー表示、平均電費は数字表示で、電池温度もバー表示されます。
バッテリー残量のSOC(%)表示はなく、ガソリン残量のようなバー表示のみ。メーター中央には航続可能距離が表示されますが、残量のSOC表示はEVを上手に使いこなすためにはとても大切な情報です。EVに慣れていないユーザーを想定してのことだと推察しますが、ちょっと残念なポイントでした。
価格は全モデルが300万円超え
価格は以下のように発表されました。

● e-ハイゼットカーゴ 2シーター:314.6万円
● e-ハイゼットカーゴ 4シーター:314.6万円
● e-アトレー RS:346.5万円
※価格はすべて消費税込
全車が300万円を超えました。当面の競合と考えられるホンダ「N-VAN e:」は、搭載するバッテリー容量が30kWhで、約267万円〜292万円ですから、おおむね40〜50万円ほど高い設定です。今年はさらにBYDの軽EV発売が予定されていて、チャレンジングな価格設定になるのではと期待されていることもあり、待ちに待ったダイハツの初EVが、多くの人に「これなら買える」と感じさせてくれるインパクトのある価格設定ではなかったことは、これもまた少し残念に感じます。
国のクリーンエネルギー自動車(CEV)導入補助金額はまだ発表されていません。軽EVの補助金額は最大58万円と規定されており、前述のN-VAN e: や日産サクラは57.4万円。ダイハツの軽EVも同等の金額になることが予想できます。そのほか、各地方自治体からの補助、事業用車両向けの補助金制度もあるので、税金面まで含めて考えると負担感はかなり軽減できそうです。
また、登録車の商用モデルは初回車検が2年で、以後は1年ごとですが、軽商用は初回2年で、その後も2年ごとです。商用モデルは車検が面倒で費用がかかるといった心配も軽自動車の場合はありません。

発表会では、販売戦略についても積極的に取り組んでいくことが説明されました。ユーザー向けにオリジナルデザインの充電カード(エコQ電連携)を用意するほか、EVに詳しいスタッフを育成して「電動師」の称号を与え、専門性のある対応を行えるようにしていくとのこと。

とはいえ、月間販売台数の目標は2車種合わせて300台とやや控えめな印象です。商用車はフリート契約で一気に台数が伸びる可能性があります。一契約で4桁台数ということも十分にありえるだけに今後、より意欲的な目標を掲げ「商用軽EVで脱炭素社会実現に貢献」という、この日説明された言葉通りの意気込みが具現化することに期待しています。

販売店スタッフにEVに詳しい方が増えるのは、EV普及にとってすごく大事なポイントだと思います。
なお、同日OEMモデルとなるトヨタの「ピクシス バン」もEVモデルが追加されました。ピクシス バンはデラックスの1グレードで4シーター仕様。価格は316.4万円でe-ハイゼットカーゴと同じです。
取材・文/諸星 陽一






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