カリフォルニア州で電気自動車の2021年市場シェアが約10%に到達

カリフォルニア州新車ディーラー協会(CNCDA)は2022年2月8日、2021年通期の市場動向をを公表しました。レポートによれば、カリフォルニア州では新型コロナのパンデミック前の需要レベルに回復している中、電気自動車(EV)の市場シェアが約10%に達しました。モデル数の増加もあり、市場は今後も拡大しそうです。

カリフォルニア州で電気自動車の2021年市場シェアが約10%に到達

加州では電気自動車の市場シェアが約10%に

CNCDAは四半期ごとにカリフォルニア州の新車登録台数などをまとめたリポート「California Auto Outlook」を公表しています。2022年2月8日には、2021年の第4四半期と、2021年通期の市場動向をまとめたリポートを発表しました。

EVsmartブログでは2019年夏にCNCDAリポートについてお伝えしました。この時には、2018年にEVの市場シェアがハイブリッド車(HEV)を超えたこと、ブランド別販売台数でテスラがスバルやメルセデスを超えたことなどを紹介しました。

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カリフォルニア州で電気自動車の市場シェアがハイブリッド車を超えた(2019年8月19日)

それから2年半後の今回のリポートを見ると、テスラの好調さが持続しているのはもちろんですが、EV全体の市場が大きく伸びていることがわかります。

EVの新車登録台数は、2015年に3万4477台だったのが、3年後の2018年に9万9121台と3倍近くに増え、2019年には10万台の大台に乗りました。2020年はパンデミックの影響で減っていますが、2021年は17万6357台になり、前年比73%増と大きく伸びました。

台数の増加に伴ってEVの市場シェアも2015年以来、順調に拡大しています。2015年の1.7%が2021年には9.5%と、約10%を占めるまでになりました。途中、2018年から19年にかけて、一時的にHEVの市場シェアを上回ることもありました。

※グラフは、2015~2016年はCNCDAの2019年第4四半期報告、2017年以降は同2021年第4四半期報告からEvsmartブログで作成。いずれもソースはExperian。

CNCDAのリポートによれば、カリフォルニア州での2021年の自動車販売台数は193万台で、2019年の209万台を下回っています。原因はパンデミックとともに、世界的な半導体不足に起因するサプライチェーンでのボトルネックの発生です。そうした中でもEVの販売台数が大きく伸びたのは注目に値します。

モデルYは車種別でトップ争い

今のところEV急伸の要因は、そのほとんどがテスラによるものです。

車種別の登録台数では、全ジャンルの上位に常連のトヨタ『カムリ』『RAV4』とホンダ『シビック』が並んでいます。ところが2021年になって、それら王者の間にテスラ『モデルY』が入りこみ、激しいトップ争いを繰り広げたのです。

EV登録台数(2021年 カリフォルニア州)
テスラ モデルY60,394
テスラ モデル353,572
シボレー BOLT9,971
テスラ モデルS4,860
BMW i31,021

※データはCNCDAリリースより抜粋。ソースはExperian

日本で言えば『ヤリス』や『ノート』などとEVの販売台数が並ぶようなものでしょうか。EVの黎明期を思うと隔世の感があるのと同時に、トヨタ『プリウス』が2代目になって市場を席巻し始めた頃をほうふつとさせます。

また、4位『RAV4』のすぐ後ろには『モデル3』もつけています。そのすぐ後には『カローラ』のほか、ピックアップトラックのフォード『Fシリーズ』やシボレー『シルバラード』など、アメリカの定番人気車種が続いています。

モデルYが新市場を開拓か

ちなみに2019年の上半期には、『モデル3』が『アコード』を追い抜いて『シビック』や『カムリ』に迫っていました。その2年後も『モデル3』が市場全体の5位をキープしながら、『モデルY』が上位に入ったことで、テスラが上位5車種のうち2車種を占めることになりました。

車種別登録台数(2021年 カリフォルニア州)
トヨタ カムリ61,599
テスラ モデルY60,394
ホンダ シビック59,818
トヨタ RAV459,157
テスラ モデル353,572
トヨタ カローラ48,915
フォード Fシリーズ46,817
シボレー シルバラード44,670
ホンダ アコード44,576
トヨタ タコマ44,484
ラム ピックアップ41,225
ホンダ CR-V39,405
トヨタ ハイランダー29,598

※データはCNCDAリリースより抜粋。ソースはExperian

CNCDAによる車のジャンル別では『モデルY』はラクジュアリーコンパクト部門に入っていて、6万394台はもちろんトップです。2位のレクサス『NX』が1万2191台なのでぶっちぎっています。なお2019年通期ではメルセデス『GLC』がトップで1万5987台だったので、既存モデルの市場を食っていると言うよりは、まったく違うユーザーを引き込んでいるように思えます。

『モデル3』はニア・ラグジュアリー部門(ラクジュラリー近似みたいな?)という聞き慣れないジャンルでライバルはBMW『3シリーズ』などですが、これも5万3572台の『モデル3』に対して2位の『3シリーズ』が1万2324台と大きく離れています。

こうして並べると、テスラは同クラスの他車と比較したときに圧倒的な強さを持っていることがわかります。このようなテスラについて、日産のグプタCOOは決算時の記者会見で、EVの認知度を上げたのは素晴らしいと評価していました。

伸び悩むPHEV、伸びるHEV

ではHEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)はどうなっているのかと見てみれば、HEVは2020年から2021年にかけてEVと併走するように数が増えていることがわかります。

CNCDAの過去データが確認できた2012年以降では、2013年にHEVの市場シェアが約7%になったのをピークに下降し、2018年に4.3%の底値をつけました。ただ、その後は上昇に転じて現在はEVと同程度のシェアになっています。

それにしても、HEVとEVの販売台数が同じくらいになっているというのは、日本の状況を考えると驚きです。日本でそうなったら、年間に数十万台のEVが売れるようになりますね。

一方でPHEVは、長いこと伸び悩んでいます。2012年のPHEVの市場シェアは1%程度でした。同時期のEVは0.5%以下です。その後、EVは急激に伸びますが、PHEVは2~3%の間で横ばいを続けています。

この他、ブランド別の新車登録台数では、トップのトヨタ以下、ホンダ、フォード、シボレーという常連ブランドに続いて、テスラが日産を追い抜いて5位に入りました。4位のシボレーにも迫っているので、生産台数が増える2022年は追い越すかも知れません。もしかするとその上のフォードまで手が届くこともありえます。

ブランド別登録台数上位(2021年 カリフォルニア州)
トヨタ335,587
ホンダ201,196
フォード146,486
シボレー123,006
テスラ121,080
日産95,650
Kia78,715
ヒョンデ71,271
メルセデス70,453
スバル66,700
BMW65,310
レクサス57,005
ジープ56,216

※データはCNCDAリリースより抜粋。ソースはExperian

全米ではHEVの販売台数が急増中

とは言えこれは、環境やエネルギー問題などに関心が高いと言われるカリフォルニア州限定のデータです。アメリカ全体ではどうなっているのでしょうか。

ちょうどいいデータがEIAのリポートで紹介されていました。情報分析会社の「Wards Intelligence」がまとめたデータからEIAが作成したグラフです。

これによると2021年末のEV(light duty vehicle)の市場シェアは3.4%です。さすがにカリフォルニア州よりは少ないですが、思っていた以上に多い印象です。1%前後で横ばいの日本とは状況が違うようです。

※グラフはIEAサイトより引用。データソースはWards Intelligence。

2018年半ばからEVのシェアは急拡大していて、それ以前は1%にも足りなかったのが、約半年で2%近くになっています。『モデル3』の量産が軌道に乗り始めた時期と一致しています。

EV以上に伸びたのがHEVの市場シェアで、2019年の2%前後から3倍ほどに増えて6.1%になりました。なおPHEVのシェアは1.4%と、やっぱりいまひとつ伸びていません。全米とカリフォルニア州のギャップが最も大きいのはEVで、西海岸の特殊性というか環境問題への関心の高さ、新しいものを取り込む先進性を物語っていると言えそうです。

テスラ以外のEVが売れるかどうかが分かれ道?

アメリカでEVやHEVが販売台数を伸ばした要因について、EIAのリポートでは車種のバリエーションが増えたことが最大の要因と分析しています。EIAによれば、メーカーは2021年に、HEVとEV合わせて126車種を追加したのに対し、内燃機関の車は49車種の増加にとどまりました。なおEVで増えたのは、クロスオーバーやバン、ピックアップなどで、これまであまり選択肢がなかったジャンルだそうです。

ということで、EV市場はまだしばらく成長が続きそうです。とは言え今はまだテスラ頼み。テスラの生産台数が増えている間はEVの数も増えると思いますが、問題はその後で、既存メーカーが投入してくるEVが売れるかどうかが分岐点になるのではないでしょうか。

デトロイトビューローは1月11日に、EVの車種別販売台数の推計値を公表しています。それによれば、テスラ以外のEVで最も売れたのはフォード『マスタング マッハE』で2万7140台(けっこう売れてた!)、次は全車リコールになっているシボレー『BOLT』で2万7140台、以下、フォルクスワーゲン『ID.4』1万6742台、日産『リーフ』1万4328台などとなっています。

こうした大手自動車メーカーのEVが市場で受け入れられるようになると、EVの数は飛躍的に伸びるでしょう。いつまでもテスラ一択では限界があります。この点に関連してヒョンデ(現代自動車)のJose Munoz COOは、ロイター(2022年1月6日付)にこうコメントしています。

「他メーカーのいくつかは直接、バッテリーEVに参入してきた(ものの)、我々はまだ多くの消費者がEVだけを所有することにためらいを感じていると思っています」

この逡巡を解消するにはEVに対する偏見を減らす必要がありますが、一番の近道は乗る人が増えることで、でもそのためには躊躇する人が減らないといけなくて……、とグルグル回ってしまいそうですが、突破口への第一歩が2022年に見えるといいなと思います。

市場は、競争相手がいてこそおもしろいし、広がっていきます。1年後にどうなっているのか、また調べてみたいと思います。

(文/木野 龍逸)
※冒頭写真はテスラモデルY(提供元:Tesla, Inc.)

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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