※冒頭写真は道の駅みなみやましろ村(京都府)のJFE製急速充電器(2021年7月撮影)。
JFEテクノス「RAPIDAS X シリーズ」を採用
日本充電インフラ株式会社(本社:神奈川県川崎市)が、同社がEV用急速充電器を設置運営している全国の「道の駅」256カ所のうち200カ所の既設器を更新し、事前の会員登録不要、従量課金制でクレジットカードやQRコード決済が可能なサービスを提供することを発表しました。2024年度中に67カ所、2025年度中に120〜150カ所の急速充電器が更新される計画です。

道の駅では10年ほど前に設置された出力20〜30kWの急速充電器が多かったですが、新たに設置されるのは最大出力50kWのJFEテクノス製「RAPIDAS(ラピダス)X」シリーズになるとしています。
JFEのラピダスといえば、蓄電池内蔵型の「RAPIDAS-R」(関連記事)を思い浮かべますが、今回の発表で紹介されているのは蓄電池は搭載していない「RAPIDAS-X」シリーズです。蓄電池内蔵ではないものの、チャデモ規格の50kW器として唯一、家庭用と同じ「従量電灯契約」で運用できる特長があり、電気基本料金の大幅削減(約70%減)が可能とのこと。機種のカタログを確認すると、1日の充電利用台数が10台までのケースで高圧受電よりも年間電気料金が安価で運用できると紹介されていました。
せっかくEV用急速充電器を設置しても、利用頻度が少ない。そのくせ高圧受電の基本料金が高すぎる! といった設置事業者の苦悩を解決するひとつの方策ということでしょう。
eMPネットワークから離脱し110円/kWh程度の料金に
発表によると、新たに設置される充電器は事前の会員登録不要、従量課金制でクレジットカードやQRコード決済が可能なサービスに進化するとのこと。電気代は設置者都合のトピックですが、会員登録や充電料金はユーザーの利便性に直結するポイントであり、発表された内容はおおむね「利便性向上」に繋がる進化と評価できます。ただし、「RAPIDAS-X」シリーズは1基1口の充電器。高速道路SAPAなどでは複数口設置が進む中、多くの道の駅で相変わらずの1カ所1口の充電スポットが継続されることになります。つまり、日本のEV普及が進むほどに充電待ちのリスクが高まる懸念は残ります。
さらに、e-Mobility Power(eMP)ネットワークの充電カードで利用できるのか? 従量の充電料金は? といったポイントがわからなかったので日本充電インフラに確認してみました。
まず、eMPネットワークからは離脱するとのこと。従って、eMPと提携して自動車メーカー各社などが発行している充電カードでの認証課金はできなくなります。ネットワークを離脱する最大の理由は「充電時間に応じてeMPから支払われる提携料では事業を継続するのが困難」だからということでした。広島県福山市に開設された「Decarbo. Station」(関連記事)がeMP提携を解消したのと同じ理由です。
また、充電料金は未発表ながら、できるだけ安価に提供したいという思いはもちつつ、事業を継続可能な料金を検討した結果として「110円/kWh」程度をメドに調整中であるということでした。eMPのビジター料金が最大出力50kWの場合で55円/分、30分で15kWh充電できたと仮定するとちょうど「110円/kWh」となります。相場感としては理解しつつ、EVユーザーとしての正直な印象は、「高い」です。
高すぎる! と批判する前に、急速充電器の設置運用にどのくらいのコストが掛かるのが概算してみましょう。
【編集部注】試算について日本充電インフラのご担当者から追加情報をいただいたので修正しました。(2025年2月1日)
まず、今回採用する充電器機種は「RAPIDAS-X-AG-DC」と「RAPIDAS-X2-AG-DC」で、国の充電インフラ補助金は道の駅に設置する充電器への補助率は「1/1」で450万円、つまり全額補助金で賄えるとのこと。一方、工事費については入替工事となるため既存機器の撤去費用は対象外。そのほか、配線の長さなど施設の条件によって異なるものの、おおむね300万円程度の初期コストが掛かるとのことでした。
1日の利用台数別初期コスト負担額試算表
1日あたり 利用台数 (台) | 平均充電量 (kWh) | 年間利用台数 | 年間充電量 | 初期コスト (円) | 台数割負担額 ※5年で回収 | kWh割負担額 ※5年で回収 |
---|---|---|---|---|---|---|
3 | 12 | 1,095 | 13,140 | 3,000,000 | 548 | 46 |
5 | 12 | 1,825 | 21,900 | 3,000,000 | 329 | 27 |
10 | 12 | 3,650 | 43,800 | 3,000,000 | 164 | 14 |
短時間で充電を切り上げるケースがあるでしょうし急速充電性能が低いEV車種もあるので、1台当たりの平均充電量は「12kWh」と仮定しました。初期コストの300万円を5年間で回収すると想定した場合(法定耐用年数は6〜8年らしいので、少し余裕をみた試算ですけど)、1日平均の利用台数が3台の場合は46円/kWhになります。
運用コストは、充電量に応じた電気料金のほか「電力契約の基本料金、コールセンター費、メンテナンス費、課金器サーバ管理費、保険料などが必要となるほか、修繕費など突発的な経費も発生する」とのこと。クレジットカードなどの決済手数料が20%といったコストを合わせると「最低でも1日5台程度以上がぎりぎりの採算ライン」と見込んでいるということでした。
日本充電インフラが急速充電器を設置運営しているのは地方の小さな道の駅も多く、1日5台という採算ラインをクリアするのはまだ難しいのかも知れません。なにはともあれ、日本国内のEV普及率が上がらないと充電料金を安く抑えるためのハードルは下がらない、ということですね。
日本全国の「道の駅」は1221カ所、そのうち200カ所ほどのことなので一部ではありますが……。道の駅の充電スポットといえば、パワーエックスが2025年までに全国27カ所の道の駅に蓄電池型高出力急速充電器「Hypercharger」(2口)を設置するプロジェクト(関連記事)を進めていたり、eMPが設置運用する既設器を最大90kWの2口器に更新する動きも進んでいます。
日本全国によりよい充電インフラが広がることを願いつつ、引き続き取材を進めたいと思います。
文/寄本 好則
軽EVやと30分でも10kWh程度なんで1100円前後やと思います。ZESP3が割高な日産サクラ・充電カードが近日値上げになる三菱eKクロスEV乗りがあえてこっちを選択しそう。
自身の住む岐阜県は20kW充電器のある道の駅が多かったから今回の改変はむしろ福音かもしれまへん。
さらにクレジットカードで直接決済できるんもポイント。テラチャージなど携帯会社のポイントも使える充電器も増えてきたから充電カード必須やなくなりつつありますね。
今後はこのタイプの充電器を使いまくり自身のデータを蓄積していきたいです。
国はEVをどれだけ普及させたいのか、それとも抑えたいのか?
インフラ整備なんだから行政がもっと積極的に関わらないといけないのではないのか。海外はもう300kw級の充電器も普及しているというのに。一度イオンの30分300円の急速充電を使ってしまうともはや自宅の充電器なんか使いたくなくなる。家で充電するときの半額以下だ。従量制課金は当然としても1kw110円は取りすぎではないのか。昼間の電気があまり気味なのであれば、powerX のように蓄電池内蔵タイプのものをどんどん作ればいいのではと思う。
コスト上乗せ方式で計算したらそのくらいの値段になるというのはわかりますが、その値段だったら近場オンリーのユーザー以外はEVを一層忌避するという結果になるのは火を見るより明らかですね。どうなるか見ものです。
クレカ決済はありがたいけど、高いんだろうなあと思って読んでみると案の定高かったですね。初期投資、維持費、電気料金、耐用年数を考えたら、急速充電ビジネスは10年前から変わらず厳しい状況ですか…
三菱の充電カードも値上げされたし、イオンの急速充電(30分300円)だけが最後の希望です。
新しいタイプの充電器は期待したいところですが、充電カードの月額料を払っているのでこのようなタイプの充電器は、緊急時でもない限りなかなか使わないかもしれません。
最近、軽のEVなどでも充電カードなしの方も増えていると思いますし、ENEOS Charge Plusなどの月額が発生しないサービスのみで過ごしている方は良いのかもしれません。
事業者の都合で値段が高いのは仕方ないとは思いますが、だからといって使ってあげようみたいなユーザーがどれぐらいいるのかわかりません。
兵庫県の姫路にある「スズキ販売新兵庫 スズキアリーナしらさぎ中央」というところはeMPの料金とエコQ電による従量制と両立している珍しいところですごく便利で使い分けしています。両立していただけると、eMPから支払われる提携料は少ないかもしれませんが、充電カードを持ってないユーザーが増えているとすると利益は出てくるとは思います。利用率が増える方が良いとは思います。
他にもeMPで利用すると30分制限がありますが、従量制だと制限がないとか、QRが読み込めるとなると、施設利用に応じてQRコードを発券されてそれを利用すると割安になるなど、充電カード持ちでも有益なものがあるなら従量制で使うかもしれません。
とか書いておきながら、私は、経路充電に使えそうな位置にある道の駅は急速で良いと思いますが、それ以外の道の駅は普通充電のエネチェンジで十分だと思っています。数時間の仮眠などにも使えますし、電欠の緊急時でも、近くの急速充電まで持つぐらいなら何時間も充電しなくても良いと思います。最近いくつか道の駅にできていますが、どんどんエネチェンジの急速充電が道の駅に増えてくることを期待しています。
TaruG さま、コメントありがとうございます。
本当は道の駅でも急速複数口設置が進むといいですね。とはいえ、コストと稼働頻度のバランスで難しいこともわかるので。ご指摘のように6kW普通充電器並べて、滞在時間の価値を高める取り組み(施設内レジャーコンテンツの充実や、廉価なパーソナルモビリティシェアで地域観光とか)が広がると面白いなと夢想してます。
ありがとうございます。
「道の駅 丹波マーケス」は90kWの2口出しタイプになったみたいで、大きくて経路充電にちょうど良いところはとても助かります。「道の駅 針テラス」なども同じようになって欲しいかと思います。ここはビジターでも500円のお値打ち価格なので、増設で現行のは残しておいて欲しいぐらいです。無くしてしまって90kWを2台で分けるより効率良いというのもあります。
本題ですが・私のコメントの誤字で「どんどんエネチェンジの急速充電が道の駅に増えてくることを期待しています。」は書きたかったのは目的地充電でした。書き間違えました、失礼しました。エネチェンジのある道の駅が増えてくれると助かります。
クレカ決済はありがたいですがPowerXやエネオス(62円/kWh)くらいの単価を目指して欲しかったですね。
しまねこ さま、コメントありがとうございます。
ENEOS Charge Plus はまだ時間課金だと思うので、会員価格の46.2円/分で30分15kWhで試算すると92.4円/kWh になりますね。いずれにしても、パワーエックスを含め、先行投資の企業努力でEV充電インフラ拡充を進めてくれていることに感謝です。
まだ記事にしていないですが、週明けの2/3から、ENEOS Charge Plus とEV充電エネチェンジのローミング連携が始まります。より使いやすい充電インフラが広がることを願っています。
https://enechange.co.jp/news/press/eneoschargeplus_roaming/
寄本様
エネオスは50kW器なので30分フルに機能を使える前提で充電器側では22.5kWh位は消費していると考えています。
それであれば92.4円の2/3の62円/kWhという考えです。
装置はフルに使う前提というのは設備を置く側としては妥当だと思います。
記事中でも、実績データに基づく「30分で15kWh」で試算しているので、それに合わせました。
ご指摘のように、充電性能が優れたEV車種であれば20〜23kWh弱くらいは入るでしょうね。