ひとつの街に「EVバス100台」はおそらく日本初
2023年6月15日、商用電気自動車事業に特化してEV事業を展開する株式会社EVモーターズ・ジャパン(本社:福岡県北九州市)が、2025年の関西・大阪万博へ向けて、大阪市高速電気軌道株式会社(大阪メトロ)へ7月下旬(予定)からEVバス100台を順次納車することを発表しました。
納車予定とされているのは、小型コミュニティバスの『F8 Series4 Mini Bus』が35台、大型路線バスの『F8 Series 2 City Bus』(冒頭写真)が65台という計画です。
今まで、EVsmartブログでも各地に導入されたEVバスのレポートはお届けしてきたし、京都のプリンセスラインなどが数台のEVバスを導入したことは承知していますが、ひとつの街、ひとつの事業者へ一挙100台というのは、おそらく日本で初めての事例だと思います。
EVモーターズ・ジャパン(EVMJ)では、5月に国内初となる商用電気自動車専用の量産組立工場とともにテストコースやEV資料館などを備えた「ゼロエミッションe-PARK」の起工式を行い、2023年秋の完成を目指すとしています。大阪へのEVバスもこの新工場で組み立てられるのか? と思い質問してみましたが、そのあたりはまだ未定。「納期の問題もあり、難しいのではないか」という回答でした。ともあれ、日本のEVバス普及に向けて、大きな一歩であることは間違いありません。
まずは万博の会場工事関係者通勤バスとして運行
100台のEVバスがいったいどこをどのように走るのか。納車先である大阪メトロにも電話で伺いました。
まず驚いたのは、大阪メトロが計画しているEVバスの導入台数はさらに50台を上乗せした150台ということです。内訳は大型バスが115台、小型が35台とのこと。
運行を予定している路線などについては、ちょっと話がややこしいのですが。
まず、先行してEVMJから納車される大型バス65台については、大阪・関西万博の会場整備工事に従事する工事関係者の通勤バス(運行期間は2023年6月1日から2025年2月28日の予定)に順次投入されることが、ニュースリリースでも発表されていました。
運行ルートは ①舞洲から夢洲(万博会場)間、②咲州から夢洲(万博会場)間ということですが、この期間の通勤バスには工事関係者しか乗車できません。
6月15日には、EVバスのデザインが決定したことも発表されていました。
その後、導入されたEVバスは万博会場内外で活躍し、さらに万博が終わった後は、大型路線バスは大阪メトロの関連会社である大阪シティバスの路線バスとして活用。小型バスはオンデマンドバスなどとして活用していく計画(詳細は未定)ということでした。
大阪シティバスが現状で保有している路線バスの台数は全部で529台ということだったので、115台がEVバスに置き換わるとすると大阪の街を走る路線バスの20%以上がEVバスになります。
なんというか、インパクト絶大です。
話を聞いていて気になったのが、150台ものEVバスを、どこでどのように充電するのかということでした。
EVバスの拠点となるのは7カ所ほどある営業所ということなので、ひとつの営業所で21〜22台程度のEVバスが充電することになります。
以前、渋谷の「ハチ公バス」にEVMJのバスが導入された際に確認したところでは、F8はシステム電圧が高く日本国内に設置されているCHAdeMO1.2規格以下の急速充電器では充電できないため、EVMJが独自に開発したCHAdeMO2.0規格(最大出力400kW=400A×1000V)で、最大40kWの2口器(同時充電の場合は各20kW)の充電器で充電するということでした。
20台を同時充電するためには、40kW×10基の充電器が必要で、必要な電力は400kWとなかなかです。
このあたり、EVMJにも「一拠点当たりの配備台数」「充電器仕様」「拠点あたりの充電器基数」「一度に充電するバス台数の想定、電力契約の想定」などを質問しましたが、現在、EVMJご担当者が大阪メトロのご担当者と検討を進めている段階で「7月の出発式ではそのあたりをお話しできると思う」ということでした。
これだけの台数のEVバスフリートが活躍するのは、まさにパイオニア的な事例です。はたして、どのような工夫が生まれ、どのような課題が見えてくるのか。7月の出発式が楽しみです。
取材・文/寄本 好則