2023年に続々登場〜激戦EV市場アメリカで販売される最新電気自動車に注目

新車販売におけるEVのシェアでは欧州や中国より一歩遅れた印象があるアメリカでも、2023年には続々と注目の新型電気自動車が登場します。11月に開催されたLAオートショーから、注目の車種をレポートします。

2023年に続々登場〜激戦EV市場アメリカで販売される最新電気自動車に注目

※冒頭写真はTOYOTA bZ Compact SUV。

LAオートショーで発表された注目のBEV

2022年11月18日~27日まで開催されたLAオートショー2022には多数の米国初公開BEVが出展されました。カリフォルニアは1970年代から排ガスに対する規制が厳しく、現在もEPA(米国環境保護庁)基準を上回る独自の排ガス基準を設けています。このような歴史的背景もあってか、アメリカの中でもっともBEV率が高いエリアとして知られています。また、テスラをはじめ新興EVメーカーとして勢いのあるルーシッド(LUCID)やリヴィアン(RIVIAN)もすべてカリフォルニアで生まれています。

ガソリン価格が全米の中で群を抜く高額(取材時はなんとレギュラー1Lあたり230~280円程度でした)であることでも有名。州全体で電動化へのシフトが強い勢いで進められている印象です。

日本時間1月8日の今日は、ラスベガスで注目のCES2023が開催されている最中で、追ってEVsmartブログでもレポートをお届けする予定ではありますが、その前に、LAオートショー2022に出展された注目の最新BEV5台を紹介します。

HYUNDAI アイオニック6

ヒョンデは「アイオニック」シリーズ最新モデルの「アイオニック6」を北米で初公開し、2023年春に発売すると発表しました。日本でもすでに2022年2月より販売が始まっている純電動SUV「アイオニック5」と同じ電気自動車専用プラットフォーム「E-GMP」を採用しており、こちらは純電動セダンとなります。

ただ、同じプラットフォームではあるものの、例えばホイールベースはアイオニック5よりも50 mm短い2950 mmとなっていたり、車体のシルエットは流線形の美しいファストバックスタイルになっていたりと、居住空間よりも外観の美しさ、そしてスポーティーさを重視している印象です。

北米仕様のバッテリー容量は77.4 kWhのみとなり、本国仕様の53 kWhモデルは投入しないとのこと。また、航続距離もEPA(米国環境保護庁)方式でテストした正式な数値はまだ公開されていませんが、メーカー発表では前輪駆動モデルで340 mi(547.18 km)、四輪駆動モデルで310 mi(498.90 km)としています。ちなみに、他の市場で提供されているデジタルアウターミラーは、アメリカ合衆国でこの装備が認可されていない関係で、北米仕様では通常のドラミラーとなります。

また、発表の場では2021年のLAオートショーで発表された大型SUV「セブン コンセプト」の市販モデル、「アイオニック 7」の登場も予告されました。こちらは2023年に正式発表を行うとのことなので、少なくとも北米での販売開始は2024年初頭あたりになるのではないでしょうか。日本では依然として純電動モデルがアイオニック5のみとなりますが、テスラ モデル3やBYD シールのような純電動ミドルサイズセダンへの需要が高まれば、もしかするとアイオニック 6の日本導入も現実的になるのかもしれません。

KIA EV6 GT

同じくE-GMPを採用するモデルが、LAオートショーで北米プレミアとなりました。

ヒョンデ傘下で韓国2番目の自動車メーカー「キア」は2021年8月に「EV6」を発表し、「EV1」から「EV9」までで構成される新しい製品群をローンチしました。北米では2021年11月のLAオートショーにてデビューし、2022年2月に販売が始まっています。先行して2021年12月に発売されたアイオニック5とほぼ同じペースの売れ行きを記録しており、キアは販売開始9ヶ月間で19267台のEV6をアメリカ合衆国にて販売しました。

EV6はアイオニック5と同じプラットフォームを共用するものの、外観は全高が55 mm下がったり、ホイールベースが100 mm短縮されていたりと、見た目もかなりスポーティーなものとなっています。そしてそのEV6に追加されたハイパフォーマンスモデルが「EV6 GT」となります。0-100 km/h加速を3.5秒で行うこのホットハッチは2022年10月に初公開され、すぐさま翌月のLAオートショーにも登場しました。

ブレーキは4 potキャリパーを採用し、通常モデルと比較して制動性能を大幅に向上。また、外観ではリアディフューザーの追加やEV6 GT専用の21インチホイールを設定するなど、独特のスポーティーさを演出しています。また、キアでは初採用となる「ドリフトモード」も大きな話題となりました。

バッテリーは通常のEV6の上位グレードと同様、容量77.4 kWhのものを搭載していますが、搭載する電動モーターはEV6 GT専用となっており、出力は239 kWから430 kW、トルクは605 Nmから740 Nm(通常の77.4 kWh 四駆モデルと比較)までと、大幅に向上しています。0-100 km/h加速は5.2秒から3.5秒まで短縮、そして最高速度は185 km/hから260 km/hとなるので、通常モデルと比較してかなりホットな仕様となっているのがわかるでしょう。

兄弟車のアイオニック5でもハイパフォーマンスモデル「アイオニック5 N」の登場がすでに予告されており、EV6 GTと同等の性能を有することが予測されています。

VW ID.BUZZ

有名なフォルクスワーゲン タイプ2(バス)を現代に蘇らせたモデルとして2017年のコンセプト段階から話題となっていたID.BUZZがいよいよ、北米でも販売されます。欧州では先立って2022年3月に発表、2022年下半期に発売されました。

一方で、北米ではホイールベースを延長させ、3列シートにするという北米独自の仕様になる影響か、発売は2024年を予定しているとのこと。フォルクスワーゲン タイプ2はアメリカでは1960年代のヒッピー文化と深く根付いており、一種のファッションアイコンのような存在としても認知されています。

そのような歴史的モデルが純電動ミニバンとして復活するということで、実際にアメリカでも販売が始まった際にどのように受け入れられるかは非常に気になります。日本への導入も待ち遠しいところです。

ヴィンファスト VF 6/VF 7

ベトナム最大の財閥「ヴィン・グループ」傘下の企業で、初めて本格的に海外進出を果たしたベトナムの自動車メーカーが「ヴィンファスト」です。

2017年に設立した当初はBMW 5シリーズ(F10)がベースの「LUX A2.0」とBMW X5(F15)をベースにした「LUX SA2.0」のみのラインナップでしたが、2021年からは自社独自設計の電気自動車を続々と投入し、2022年1月には「脱・内燃機関」を宣言、完全な電動メーカーへと転身を遂げました。元々内燃機関モデルをそこまで生産していなかったということもありますが、設立間もない段階での方針転換は多くの注目を集めました。

ヴィンファストはフランスやドイツ、オランダなどの欧州諸国での展開に加え、北米市場での展開も大々的に行なっています。2021年には初めてLAオートショーに出展し、北米展開を本格的にスタート。現在までにアメリカとカナダ両国にショールームを約15拠点オープンしただけでなく、将来的にはノースカロライナ州に生産拠点を構えることも発表しており、米国での高い本気度が伺えます。

2022年のロサンゼルスオートショーでは純電動SUV「VF 6」と「VF 7」の量産モデルを、すでに販売を開始しているモデル「VF8」「VF 9」とともに公開しました。また、電気自動車を月額制で保有できるサービスとしてはアメリカ最大の「オートノミー」とも提供し、同社経由で2500台以上を供給することも発表しています。

ヴィンファストの強みは、やはりグループ全体の規模の大きさにあると感じます。親会社が財閥である点を活かし、自社内でバッテリーなどの主要部品を確保できるという点は、既存の自動車メーカーでもなかなか実現が困難なポイントです。バッテリーについては全車種とも10年/20万キロの保証をつけ、さらにはバッテリー性能が70%を切った時に新品に交換する月額制プログラムを導入したことは大きな自信のあらわれとみてよいでしょう。

TOYOTA bZ Compact SUV

EVsmartブログでは原則としてコンセプトカーは紹介しない方針ではありますが、日本メーカーへの期待を込めて触れておきます。LAオートショーに出展された日本生まれの最新EVがToyota Bz Compact SUVです。eTNGAプラットフォームを採用したこちらのモデルは2021年12月にメガウェブ(現在は閉館)で行われた「BEV戦略説明会」にて披露されています。今後市販されるBEV16台の中の1台です。

トヨタ自動車によると、「メガウェブでお披露目させていただいたコンセプトモデルを市販前提として各所をブラッシュアップしたものが今回、LAオートショーに出展されています」とのことでした。

デザインを統括した松本宏一さん(トヨタ自動車クルマ開発センタービジョンデザイン部ZEVデザイン2グループ長)によると、このSUV電気自動車のポイントは「電費」とのこと。

「航続距離にはエクステリアデザイン、全体のシルエットも大きく影響してきます。電費をよくするためには空気抵抗の低いデザインがマストとなってきますので、そこを重点的に配慮しました。CD値の数値は公表されていませんが0.2の前半位です。そのあたりを狙っていかないとなかなか距離が稼げないのです」

発売されるのはアメリカか日本か? どちらが先になるのでしょう。日本での発売が実現すれば、bZ4Xに続くトヨタのBEVとして注目を集めそうです。

取材・文/加藤 久美子

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					加藤 久美子

加藤 久美子

山口県下関市生まれ。大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。95年よりフリー。2000年に自らの妊娠をきっかけに「妊婦のシートベルト着用を推進する会」を立ち上げ、この活動がきっかけで2008年11月「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)においてシートベルト教則が改訂された。 一財)日本交通安全教育普及協会認定チャイルドシート指導員の資格を取得し、育児雑誌や自動車メディア、TVのニュース番組などでチャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。 愛車は1998年5月に新車で購入したアルファスパイダー(26.5万キロ走行)

執筆した記事