【元記事】 Recap: new brands and EVs electrify AutoMobility LA by Lei Xing
世界最大規模のモーターショー
メディアと業界関係者向けのロサンゼルス(LA)オートショーである『オートモビリティLA』が、今も続くコロナパンデミックによる2年の休止期間を経て、有人イベントとして戻ってきました。ショーは11月17日~18日に、ロサンゼルス・コンベンションセンターで行われました。
私は通常この時期に約1万2,000キロ離れた広州モーターショーに行っているため、地球のこちら側でオートモビリティLAに参加するのは、今年が初めてになります。最後に参加したメジャーなオートショーも2019年広州国際モーターショーで、ちょうど2年前のことでした。実はロサンゼルスと広州は姉妹都市ですので、各オートショーが毎年同じ時期に開催されるのも、その辺が理由かもしれません。
オートモビリティLAやLAオートショーは、広州国際モーターショーに比べて展示スペース、デビューするモデルの数、記者会見、来場者数などのスケールでは小さいのですが、今年はほんの少ししかない記者会見やデビューがかなり注目に値するものでした。新旧アジアのOEMが大半を占めながらいくつかの新しいブランドが登場し、そのデビュー作はほとんどEVだったのです。また輸入業者が持ち込んだ中国製EVを含め(正式に出展した中国系メーカーやブランドはありませんでした)、数多くのサプライズ・デビューや一風変わったEVも見られました。
デビューを飾った様々なEV
フィスカー『オーシャン』
最も期待されていたデビューモデルの1つが、大量生産予定モデルのフィスカー『オーシャン』(Fisker Ocean)です。コンセプトカーは約2年前のCES 2020でお披露目されていました。フィスカー社はデンマーク系アメリカ人で業界歴の長いHenrik Fisker氏が立ち上げたスマートEVスタートアップです。Fisker氏はBMW Z8、アストンマーティンDB9、アストンマーティンV8 Vantage、Fisker Karmaを設計したことで有名で、協業するMagna Steyr 社のグラーツ工場(オーストリア)でLAデビューからちょうど1年後の2022年11月17日にオーシャンの生産を開始する予定です。
オーシャンには3つのグレードがあります。
・『Sport(ベース)』航続距離402km、価格3万7,499ドル(約426万5,200円)、CATL製LFPバッテリーパック、シングルモーター、前輪駆動
・『Ultra』航続距離547km、価格4万9,999ドル(約568万7,700円)、CATL製NMCバッテリーパック
・『Extreme』航続距離563km、価格6万8,999ドル(約784万9,000円)、CATL製NMCバッテリー
なかでもExtremeにはSolarSky(太陽光)ルーフが設置されており、年に約2,400キロ~3,200キロ走行分(理想的な環境下において)の発電ができます。さらにローンチ・エディションのOcean Oneは、記念デジタルシグネチャ付きのExtremeグレードで、最初の5,000台限定となります。
オーシャンの珍しい特徴としては
・倫理的なソースから作られたヴィーガン・インテリアや、リサイクル原料(再生プラスチックボトル、再生ゴム、古着のTシャツ、海から回収された漁網など)を使用
・双方向充電により住宅に必要な電気を最大7日分供給
・回転式センタースクリーンで、ポートレートモードからランドスケープモードにチェンジ
・『Park My Car』自動パーキングアシスト
・ボタン操作1つでフロント、リア、リフトゲートの窓を同時に開け、コンバーチブルに変身
Fisker氏にインタビューをしたところ、量産開始に向けての進捗はかなり良い具合に進んでおり、2022年3月末までには1日2台の車を作れるようになるので、現在予定している2022年11月よりも早くデリバリーをスタートできるかもしれないそうです。社は2023年に4万~5万台、2024年には10万台を大きく超えるオーシャンを生産する目標を立てています。また中国に関してFisker氏は、将来的には現地で生産をする必要が出てくるとしながらも、ブランドを確立するためにまずは早くて2023年末までに、車両を現地に輸出するかもしれないと話しました。
ヴィンファスト『VF e35』『VF e36』
今回北米に正式に進出した別の注目株が、ベトナムの自動車メーカー、ヴィンファスト(Vinfast)社の電気SUVコンビ、VF e35とe36です。2022年前半にプレオーダーを開始し、2022年末までにデリバリーを始める予定です。
ベトナムをリードする複合企業の1つであるヴィングループ(Vingroup)の一員として2017年にスタートしたばかりのヴィンファストですが、最近ロサンゼルス近郊のプラヤビスタに米国本部を設立しました。社は年間25万台の車両を生産可能な、最新の工場設備をハイフォンに持っています。VF e35とe36はそこで生産され、北米市場に輸出される予定です。ヴィンファストの世界進出の先陣を切るのは、元オペルCEOで現ヴィンファスト・グローバルCEO、Michael Lohscheller 氏です。
コンパクトクロスオーバーのVF e35と大型SUVのVF e36は、ともにイタリアのPininfarina社が設計しました。両方にレーンアシスト、衝突警告、完全自動パーキング、ドライバーモニタリング、サモンなどのADAS(先進運転支援システム)が搭載されています。またスマートインフォテインメントも備わっており、音声アシスタント、ヴァーチャルアシスタント、e-コマースサービス、その他の車内コントロール機能が含まれます。クオリティに関しては目の付け所が良いのですが、ヴィンファストが米国市場で隙間を狙えるのか、米国消費者を納得させられるのか、また中国勢を倒して日本や韓国の自動車メーカーが切り拓いた成功への道を後追いできるのか、疑問は残ります。
ヒュンダイ『SEVEN』、起亜『EV9』
韓国と言えば、ヒュンダイと起亜はそれぞれSEVEN とEV9のコンセプトカーをお披露目し、大きな注目を集めていました。両車両はともに親会社であるヒュンダイモーターグループのエレクトリック・グローバル・モジュラー・プラットフォーム(E-GMP)をベースにしており、IONIQ5やEV6の次に出すEVのプレビューとなりました。また、共に型破りなデザインのボディを持ち、ファンキーな見た目をしています。
ヒュンダイのSEVENコンセプトは、市販の段階でIONIQ 7 SUEV(スポーツ・ユーティリティEV、ヒュンダイ独自の名称)になる可能性が高いです。その奇妙なボディは、一目で典型的なSUVとの違いが分かります。低く最新のデザインのボンネット、流線型の1枚ルーフ、長いホイールベースは伝統的なSUVと一線を画しています。互い違いに席を配置し、ピラーレスドアがついたプレミアム・ラウンジスタイルのインテリアがヒュンダイの持つ自動運転モビリティの未来ビジョンを具体化している一方、様々なエコフレンドリーな原料を使い、衛生換気システム(Hygiene Airflow System)やUVC殺菌を備えることによってサステナブルで清潔なモビリティ環境を確保します。SEVENは563kmを超える航続距離と、10~80%充電を出力350kWの充電器で約20分以内に充電できることを目標に作られています。
冒険心に満ちた四角いエクステリアを持つEV9のコンセプトカーは、起亜の革新的な『オポジット・ユナイテッド』デザインから強い影響を受けており、BEV時代に向け再解釈されたデジタル・タイガー・フェイス・ファサードが採用されています。ボディサイズは全長4,930mm、全幅2,055mm、全高1,790mm、ホイールベース3,100mmで、航続距離は約483kmとなります。またSEVENと同じく350kWの次世代超高速充電技術を使って10~80%までを20~30分で充電できます。
スバル『ソルテラ』
スバルソルテラは11月11日にワールドオンラインプレミアでお披露目済みですが、ロサンゼルスと広州両方のモーターショープレミアに登場しました。トヨタと共同開発されたe-スバルグローバルプラットフォームをベースにするソルテラは、類似のEV専用e-TNGAプラットフォームをベースにしたトヨタbZ4Xと姉妹車になります。両方ともに、各ブランドで初めてピュアEVとして注力されたモデルとなります。
ラテン語の「太陽」と「地球」を組み合わせて名付けられたソルテラは、伝説のシンメトリカルAWDをフィーチャーした、スバル初の四輪駆動EVです。21cmのグラウンド・クリアランス、12.3インチのタッチスクリーン、最大3.57㎥の室内、最大0.8㎥の荷物スペース、360°サラウンドビューカメラシステム付きのアイサイト・ドライブアシストテクノロジーなど、内外ともに次世代の機能やデザインが、社の信頼性とともに詰め込まれています。StarDriveパワートレインによる航続距離は約354km以上で、自宅でも外出先でも速く便利な複数の充電オプションがあります。米国内のオーナーは3万8,000以上のレベル2またはレベル3DC急速充電が利用可能です。またL3充電器と組み合わせれば、DC急速充電をする際には1時間以内に80%まで充電することができます。
ソルテラのローンチは、日本、米国、カナダ、欧州、中国などで2022年中頃に始まる予定で、米国内ではPremium、Limited、Touringの3グレードから選ぶことができます。
ポルシェ『タイカン』シリーズのニューモデル
ポルシェはLAオートショー で常に強力な存在感を示していますが、今年も同じでした。2019年、タイカン4Sはここでグローバルプレミアを迎えました。今年はポルシェからタイカンGTSとGTSスポーツ・ツーリスモを含む5つの世界最速公開がありました。
タイカンGTSは初のフル電動GTSシリーズとなり、GTSスポーツ・ツーリスモはタイカンとして3つ目のボディスタイルです。タイカン4Sとタイカンターボの間に位置付けられたGTSモデルにも、フロントとリアにシングルスピードと大き目で2スピードの永久磁石同期モーターが搭載され、ローンチコントロールで出される総合出力は590hpになります。93.4kWhのパフォーマンスバッテリープラスと800Vアーキテクチャが標準で、充電は最高出力270kW、具体的にはバッテリーが5~80%まで22分半で充電でき、0-60 mph を3秒半で走ります。
2つのタイカンGTSモデルは予約を受け付け中で、米国内のデリバリーは2022年の第2四半期に始まる予定です。GTSは希望小売価格13万1,400ドル(約1,489万4,400円)~、GTSスポーツ・ツーリスモは13万3,300ドル(約1,510万9,800円~)です。EPA航続距離と電費は、デリバリー近くに公表されます。
ミュレン『Five』
ミュレン(Mullen Automotive Inc.)は2014年設立のあまり知られていないカリフォルニア発EVスタートアップで、ナスダックには$MULNのティッカーで上場しています。ショーでは電気クロスオーバーである『ミュレンFive』で会場を沸かせました。この車はリンカーン『Aviator Grand Touring』やRivian『R1S』を抑えて2021年ゼロ・エミッション車両賞(Zero Emission Vehicle Award, ZEVAS™)のトップSUV ZEVカテゴリーで、初の受賞をしました。
ミュレンFiveの設計はすべて米国内で行われ、車両はミシシッピ州トゥニカの工場で生産されます。グレードは3つで、ベースモデル、スポーティでセクシーなツーリングバージョン、そして究極のRSバージョンにはカーボンセラミックモーターが備えられ、0-60mphを1.9秒で走り(他2グレードでは3.2秒)、トップスピードは時速約322kmとなります。Fiveには95kWhで550kgを目標とするリチウム硫黄電池が使われ、航続距離は523km以上、0~80%の充電が21分でできます。この車両で独特なのはBピラーの両脇にペルソナと呼ばれるカメラが導入されており、オーナーを約2.7メートル先から視認して、近づくと自動でドアを開けてくれます。同時に車両周辺に8台取り付けられたカメラを使ったセキュリティモードが始動し、怪しい動きが察知されれば録画を開始します。
Fiveの価格は税・補助金抜きでベースモデルが5万5,000ドル(約621万3,600円)、4シートのツーリングが7万5,000ドル(約847万3,100円)です。5年もしくは6万マイル(9万6,560キロ)の保証、バッテリーの10年保証、レベル2家用充電器の設置アシストサービスが付きます。払い戻しのできるデポジット100ドルで予約を受け付け中ですが、デリバリーは2024年の第2四半期まで開始されません。
既存車と変わり種
その他すでに市場に出ているか、もうすぐローンチされるモデルで今回出展されていたのはフォード『マスタング・マッハ-E』、『F-150ライトニング』、ヒュンダイ『IONIQ5』、起亜『EV6』トヨタ『bZ4X』などでした。
自動車業界の外から進出してヘッドラインを狙った企業にはエジソンフューチャー(EdisonFuture)、バービー(Barbie)、ビリティ・エレクトリック(BILITI Electric)がいました。
こちらもカリフォルニアをベースとするスタートアップ、エジソンフューチャーはどちらかというと奇妙な見た目で大型のEF1-Tエレクトリック・ソーラー・ピックアップと、EF1-Vエレクトリック・ソーラー・デリバリーバンを発表しました。詳細は明かされなかったのですが、元テスラ社員で現副社長のEdmund Shen氏は、車両を米国内で作る予定だと話しました。
青天の霹靂だったのがバービーで、Fiat 500eを改造した、実物大のドリームカーが登場しました。トイカー版はウォルマートで29.88ドル(約3,400円)で買えます。
創業から1年も経っていない、インドのスタートアップであるビリティ・エレクトリックは、GMWタスクマンとして知られる電気トゥクトゥク(※三輪タクシー)を配達用に設計しました。社は車両をインドで生産し、欧州、日本その他の市場に輸出しており、今度はe-コマースの大手であるアマゾンやウォルマートを念頭に米国進出を見据えています。
個人的に驚いたのは、正式に出展していなかったにも関わらず、中国ブランドのEVがショー会場で見られたことです。カナダのDSGグローバル社の完全子会社であるImperiumはEV販売及びマーケティングを手掛ける企業で、北米市場向けに手の届きやすい様々なEVを取り揃えています。ショーではSkywell ET5をベースにしたSEV、ZXピックアップをベースにしたTerra-E、その他Urbeeと呼ばれる2シーターの低速車両(中国企業のJonway社製)などを展示していました。DSGグローバルのCEOであるBob Silzer氏は、すべての車両が米国市場の認可を申請中だと話してくれました。果たして消費者の手に渡るのでしょうか。判決が待たれます。
以上が今年のロサンゼルスオートモビリティLAを電動化した、新旧ブランドからのユニークなEVたちでした。
(翻訳/杉田 明子)
最新のEV動向レポート、ありがとうございます。
>なかでもExtremeにはSolarSky(太陽光)ルーフが設置されており、年に約2,400キロ~3,200キロ走行分(理想的な環境下において)の発電ができます。
3,200キロ走行分を電費5km/kWh、日照平均4h/dayで計算するとソーラーパネル出力は440W程度、5h/dayなら350Wですが、ルーフ程度の面積でこれだけの電力を生み出せるようになったんですね。
もう少し発電効率が上がって、駐車中には外部にパネルを展開すれば、日常の走行電力くらいは賄える日が来るかもですね。