「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」EVsmartブログ的な見どころ案内

「東京モーターショー」から名称を改め4年振りとなる「JAPAN MOBILITY SHOW(ジャパンモビリティショー)2023」が10月28日〜11月5日(一般公開日)まで東京ビッグサイトで開催されます。プレスデー初日の25日に会場を巡って感じた、EVsmartブログ的な見どころをピックアップしてみます。

「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」EVsmartブログ的な見どころ案内

まだそこ? 「夢」や「ワクワク」を並べた日本メーカー

「ジャパンモビリティショー2023(以下、JMS2023)」が開幕しました。25日と26日はプレスデー。25日には国産主要メーカーなどのプレスブリーフィングが実施されたので、EVsmartブログ執筆陣とともに、私もひと通り巡ってきました。

全体的な印象としては、イベント名称が「モビリティ」と変わったように、エンジン車から電動車へのシフトは明確となり、電動車ならではの新たなモビリティのカタチを探すのが、社会の大事なテーマになってきているってことでしょう。端的にまとめると、すでに「電動化は不可避の流れ」であることを実感できました。

プレスブリーフィングの内容やブース展示について、感じたポイントを挙げていきます。

まずトヨタでは、SUVタイプのコンセプトモデル「FT-3e」やスポーツタイプのコンセプトモデル「FT-Se」が並ぶステージで、佐藤恒治社長が「Find Your Future」をテーマとしつつ、「バッテリーEVと暮らす未来」として「(BEVは)環境に優しいだけではなく、電気エネルギーならではの運転の楽しさも、走りの味もあって多様な体験価値も実現できる」「クルマ屋らしいバッテリーEVをつくる」と語りかけました。

FT-Se
FT-Se
IMV 0

商用EVの「IMV 0(IMV ゼロ)」は、タイをはじめ東南アジアをターゲットにしたピックアップタイプのコンセプトモデルということで、「お客様のニーズ次第で、自由自在にカタチを変えていきます。例えば、畑で収穫した野菜や果物をたくさん運んで、街に到着したら、直売所に早変わり。街の広場では、コーヒーショップなったり、夜にはバーになったり、DJブースにもなります。間もなく発売するアジアでは、すでに様々なカスタマイズのアイディアが提案されています」と、説明されました。

日産は内田誠社長がノーネクタイで壇上へ。アニメキャラとともに全てがEVである「ハイパーアーバン」「ハイパーアドベンチャー」「ハイパーツアラー」「ハイパーパンク」「ハイパーフォース」という5台のコンセプトカーと、その世界観を紹介しました。

ハイパーフォースのデザインとか、さすがに「いやいやいや」って感想ではありますが、アニメの世界観で妄想されたコンセプトカーなので、まあ、微笑みながらスルーしておきたいと思います。

トヨタと日産のブリーフィングが象徴するように、国内自動車メーカーの出展内容はまだ「コンセプトカー」が中心で、「夢」や「ワクワク」といった抽象的な言葉が目立つ印象でした。

日本での発売予定などは明言されませんでしたが、たとえばトヨタの「IMV 0」や、ダイハツの軽乗用EVコンセプト「me:MO(ミーモ)」、軽オープンEVコンセプトの「OSANPO(オサンポ)」など、EVらしい、楽しいモビリティの進展を予感させてくれる展示はあります。

OSANPO

また、ホンダのブースではすでに2024年春の日本発売が発表されている「N-VAN e:」や、着脱式可搬バッテリー「ホンダモバイルパワーパック e:」や電動パワーユニット「eGX」を搭載したコマツとホンダが共同開発した電動マイクロショベルなど、リアルに電動モビリティ社会を想起できる展示がありました。

スズキブースの端っこには、ダイハツ、トヨタとの3社で共同開発している軽商用EVも展示してありました。

リアルなEV車種バリエーションをアピールする海外勢

夢を語る日本メーカーの展示内容とは対照的に、海外メーカーのブリーフィングではリアルなEV車種バリエーションの拡大や、電動化に関わる具体的な技術進展などがアピールされている印象でした。

ちなみに、今回のJMS2023、海外メーカー(インポーター)の出展は、メルセデス・ベンツ、BMW、BYDの3社のみ。EVシフトへの注力を明確にしているフォルクスワーゲングループやステランティスの各社、ボルボ、ヒョンデといった主要メーカーの出展はありません。日本、というかJMSを主催する自工会とEVシフトを目指す各社の思いにちょっとした「ズレ」が生じてきているのかも知れません。

昨年、日本市場進出をはたした中国メーカーのBYDは、壇上で日本導入3車種目となるスポーティセダンEVの「SEAL(シール)」をアンヴェール。2024年春の発売になることを発表しました。NEV販売世界トップに上り詰め「地球の温度を1度下げる」ことに貢献したいと熱く語る、BYDジャパン劉学亮社長のハイテンションが印象的でした。

続いて壇上に立ったBYDオートジャパンの東福寺厚樹社長は、ブレードバッテリーなどBYDのEV技術をアピールするとともに、メルセデス・ベンツと共同開発したミニバンEVのDENZA「D9」と、4モーター駆動でその場で360度回転できる電動オフロード高級SUVである仰望(ヤンワン)「U8」を紹介しました。

D9

D9もU8も今のところ日本導入は未定ということですが、いずれの車種も中国などではすでに販売されているモデルであり、コンセプトカーではありません。別記事で詳報する予定ですが、テスラと世界一を競うEVメーカーとして、車種バリエーションの充実を実感できる展示になっています。

メルセデス・ベンツでは高級オフロードSUVであるGクラスを完全に電動化した「EQGコンセプト」や「AMG C63 S E PERFORMANCE」などをアピール。AMG C63はすでに1660万円で受注しているモデルだし、EQGはコンセプトモデルながら2024年には欧州で発売、日本にもできるだけ早く導入することを明示しています。

また、BMWはSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)と呼ぶコンパクトSUVの新型「X2」と、そのBEVモデルである「iX2」をJMS2023で世界初公開。iX2は「2024年第2四半期導入予定」であるものの、すでに742万円(税込)という価格も発表済み。ブースにはiX1からi7まで、多彩な電動モデルが展示されていました。

東7ホールの次世代モビリティ関連展示も要注目

国産車主要メーカーの展示に「夢」や「コンセプト」が目立つ一方で、ベンチャー企業などが集まった「次世代モビリティ関連展示」がテーマの東7ホールが面白かったです。

『ELEMO』が日本で初めてナンバー取得に成功する際に密着取材(関連記事)するなど、EVsmartブログで注目している HW ELECTRO のブースでは、独自開発した「PUZZLE」と名付けた小型商用EVをお披露目していました。これも、後日詳報したいと思います。

はたして、10年後の日本のモビリティはどうなっているのか。それぞれの視点で見れば、JMS2023にはいろんなヒントが集まっていると感じます。

今回、JMS2023の案内所などに、印刷物としての会場マップなどは用意されておらず、「推しモビ図鑑」というアプリ(案内ページ)で会場マップやブースガイドを案内することになっていました。体験プログラムの予約なども、このアプリから行えるようです。訪れる予定の方は、あらかじめアプリをダウンロードして、使い方に習熟しておくとスムーズでしょう。

お楽しみください!

取材・文/寄本 好則

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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