小泉大臣も熱弁!『Mobility Transformation 2021』に感じた「移動の進化」の現在地

株式会社スマートドライブによる『Mobility Transformation 2021』のサマリーレポートなどが公式サイトで配信されました。「移動の進化への挑戦」をテーマに3回目の開催となったカンファレンスでは、小泉進次郎環境大臣、元日産の志賀俊之氏などのキーパーソンが登壇。日本における「移動の進化」の現在地を感じ取れる内容となりました。

小泉環境大臣も熱弁!『Mobility Transformation 2021』に感じた「移動の進化」の現在地

全セッションのサマリーを無料公開

2021年6月29日と30日の2日間、株式会社スマートドライブによるオンラインカンファレンス『Mobility Transformation 2021』が開催されました。初開催となった2019年は虎ノ門ヒルズ(東京都港区)の会場に1500名以上の参加者を集め、昨年は新型コロナウイルス感染拡大への影響からオンライン開催。3回目となる今年もオンラインでの開催となりました。

スマートドライブによると、今回の視聴登録者数は4200名以上、1万2000名を超える累計視聴者数(昨年は7700名)を記録したということで、モビリティ変革への関心の高まりを裏付ける盛況でした。

登壇者の顔ぶれや各セッションのテーマ、また、セッション本編のダイジェスト動画は、『Mobility Transformation 2021』の公式サイトに紹介されています。さらに、「MT Magazine」ページにて、カンファレンスのセッションレポートが公開されています。8月中をメドに、全セッションレポートも公開される予定になっています。現在は、全セッションを1つの資料にまとめたサマリーレポートが公開されています。

多彩な登壇者がユニークなチャレンジを紹介

カンファレンス本番前日の28日に実施されたスペシャルセッションを含め、ホンダやスズキ、ジャガーランドローバージャパンといったモビリティ企業ばかりでなく、多彩な企業のキーパーソンが登壇し、「移動の進化」に関わるさまざまなチャレンジのビジョンや進捗が紹介されました。

『Mobility Transformation 2021』開催に期待する記事でもご紹介した出光興産の超小型EVの展開や、総合エネルギー企業である東京ガスが進めるEV普及への取組など、自動車メーカー以外の、また自動車そのものではなく、いわゆる「CASE」や「MaaS」を具現化しようとするユニークなチャレンジが日本でも数多く動き始めていること。そして、そうしたモビリティの進化は、当然のように電動化を前提に構想し進められていることが印象的でした。

【志賀俊之氏】EVシフトは必然でもある

多様かつ数多くのセッションを全て詳報はできないので、とくに印象的だったセッションのポイントを少し紹介しておきます。

まず、初日冒頭の基調講演では、株式会社INCJ代表取締役会長の志賀俊之氏が、スマートドライブ社長である北川烈氏との対談スタイルで、EVシフトや「移動の進化」についての興味深い見解を示してくれました。ご承知のように志賀氏は、日産自動車時代、COOとして日産リーフを世界に送り出したキーパーソンです。志賀氏の言葉のポイントを、問答スタイルで整理してみます。

日産リーフ発売を決断した思いは?

2005年、そして2010年に向けた日産グリーンプログラムを策定する中で、エンジン自動車が未来永劫サステナブルであり続けられるはずがないという恐怖を感じた。自動車会社はエンジン開発の人の意見が強いので抵抗は大きかったですが、自動車会社自身がゼロエミッションをやらなきゃダメだと痛感したのです。

EVシフトをどう捉えているか?

どんどん厳しさを増す排出規制に対応するため、エンジンのコストは上がり、技術的な限界が近づいてきた。モビリティが排出削減の技術限界を超えようとすると、化石燃料に頼らないテクノロジーへのシフトが必要になる。EVシフトは必然でもあると感じている。

エコシステムの広がりを実感しているか?

今回のカンファレンスに登壇する出光興産によるSSを拠点とした超小型EVシェアリングや、東京ガスによるアセスメントなど、企業の垣根を越えたカーボンニュートラルへの取組は非常に有意義だと感じている。

LCA(ライフサイクルアセスメント)への注目度が高まっているが、モビリティの脱炭素はバリューチェーン全体で取り組む必要があり、自動車会社だけでCO2排出削減は実現できない。関係がない企業はなく、産業全体で寄与していかなければいけないことだ。そうした意識が個人レベルまで広がると、地球の危機も解決に向かえるのではないか。

社会(視聴者)へのメッセージを!

脱炭素社会の実現は人類にとって大きな挑戦だ。EVはあくまでも手段のひとつ。2050年のカーボンニュートラル実現という目標に向けていろいろなイノベーションが起きており、EVは最後のソリューションではないかも知れない。イノベーションへの意欲をもって産業が盛り上がることが大切だ。

人ぞれぞれ、個人ひとりひとりが産業革命以降、地球に掛けてきた負荷への反省を踏まえ、地球に思いを寄せて生活していく社会が生まれることを心から祈っている。

【小泉進次郎氏】個人のライフスタイル変革を

1日目、最後のセッションには、小泉進次郎環境大臣が登壇しました。

株式会社zero to one 代表取締役CEOでスマートドライブ監査役の竹川隆司氏との対談形式で進められたセッションは、竹川氏が小泉進次郎氏とは同じ横須賀出身で旧知の関係ということもあったようで、打ち解けた雰囲気の中、小泉氏の「移動の進化」や再エネシフトへの思いを聞くことができました。志賀氏のセッションと同様に、ポイントを問答スタイルでまとめておきます。

環境面から「移動の進化」をどう捉えているか?

国として2030年に2013年度比46%減とするCO2削減の高い目標を掲げている。2050年の脱炭素社会実現に向けても、モビリティの脱炭素化は不可欠です。

その目標に向けて、環境省としては、EV、再生可能エルギー、そして地域のマイクログリッドを繋げるという目標を持って、今まで最大40万円だった補助金を80万円とする施策を打ち出しました。今まで年間4万台だったEV販売台数を、この補助金によって5万台へ、1万台上積みする目標で、1日に1000件を超えるようなたくさんの問い合わせをいただいたと聞いています。

EVへのシフトは家計や法人のコストダウンにもメリットがあるのでは?

これから「自動車の脱炭素化」と「住宅の脱炭素化」が同時に走っていくことになります。住宅の脱炭素化というのは、太陽光発電パネルの導入や断熱性能の向上ですね。自動車の脱炭素化でガソリン(燃料)代が掛からなくなって、住宅の脱炭素化によって光熱費が下がります。これにEVがセットになって、家とクルマで電力を融通するという、今まででは考えられなかった社会、エネルギーシフト、新たな産業革命が起ころうとしています。そこに向けて政策を打ち込んでいるところです。

レジ袋有料化など、個人の意識変革を促す政策を打ち出している狙いは?

経産省と環境省の役割分担として、供給側(自動車メーカーなど)に示唆するのは経産省の役割であり、需要側、まさに個人の意識変革が環境省の役割です。私が環境大臣としてここでお話しするべきなのは、化石燃料依存の社会から脱却するために、いかに個人のライフスタイルを変換するかということになります。

目標を達成するために、我々(個人)が意識すべきこととは?

とにかく、再エネをみなさんも一緒に進めてください。個人のお宅でも、会社でも再エネ電力への切り替えはできます。自動車業界でも再エネへの歯車が動き始めたと感じています。自工会会長の豊田氏が「再エネを進めなければ雇用に影響が及びかねない」という発言をされましたが、世界では再エネを導入していないといくらいいモノを作っていてもビジネスに参加できないという「再エネ経済圏」が生まれつつあります。たとえば、アップル社と取引するためには、企業として再エネを導入していなければいけないのです。

私が危惧しているのは、世界の急速な動きに対して、十分に情報が届かない中で「気付いたらビジネスの機会を失っていた」という日本企業が出てきたら、日本の産業が大きなダメージを受けてしまうことです。なぜ再エネかというと、再エネでなければチャンスがつかめないビジネスが出てきているからです。日本はまだまだ化石燃料依存型の社会なので、再エネ型の経済社会に変えていくことに全力で取り組んでいるところです。

再エネとは雇用、再エネとは経済です。将来、自動車業界の発展のためには、日本は残念ながら中国のように国内に大きなマーケットがないので、世界の経済の中でいかに稼ぐかということを国内需要とともに考えていく必要があります。今は内燃機関がマジョリティですが、世界では間違いなくEVが伸びていく。成長分野であるEVに目を向けなければ、持続可能性はありません。

すでに、世界では脱炭素に向けた大競争が起きていて、早く脱炭素の方向に舵を切ったところしかつかめない市場と技術、産業の覇権があります。ここに日本も勝負を挑まなければ、次世代の雇用や産業が作れないという危機感が大きいですね。

脱炭素に向けた世界の動きは速く感じます。

速いですね。例を挙げると、ドイツの動きです。今までドイツはカーボンニュートラルの達成時期を2050年目標としていましたが、ここ数日の動きとして「2045年」に前倒ししてきました。おそらく、今年11月のCOP26に向けて、世界では同様のいろんな動きが出てくるでしょう。

これは「数字合戦」ということではなく、目標を前倒しすることで、自国の経済を構造転換させていくことを狙っており、技術と市場を取りに行っていますね。日本が、今までの日本のビジネスモデルや「強み」をいくら言ったところで、新たなマーケットの中で稼げるところを見つけなければ、持続可能な繁栄はありません。

そのベースになっているのが「再エネ」です。そういう意味で、再エネ抜きの「Mobility Transformation」はないと言えます。

最後にメッセージをお願いします。

私が再エネを強調するのは、再エネが日本の自前のエネルギーだからです。今、化石燃料に依存していることで、1年間に17兆円を海外に支払っています。日本の中にある再エネのポテンシャルを活用すれば、間違いなく海外に対する支払いは減ります。そして、日本の歴史的命題でもある「エネルギー安全保障」に貢献できるのが再エネです。

地域の中で自前の資源を使い、地域内でエネルギーや資源、経済が循環する「サーキュラーエコノミー」をさまざまな地域で作っていかなければいけません。再エネで災害にも強く、ひとりひとりが安心して生活できる、持続可能な経済社会を作っていかなければいけないと思っています。脱炭素社会とは新たな国土強靱化です。自動車、住宅、エネルギー、さまざまな分野がすでに横串で繋がって、経済社会をリデザインする時代を迎えています。そんな、新たな産業革命の時代を、日本の繁栄の時代にしていきましょう。

ビジョンを共有して「移動の進化」を加速する

志賀氏も小泉氏も、とても聞き応えのある、熱い思いを伝えるセッションでした。本当はもう少しサラッと要約するつもりだったのですが、小泉大臣の熱弁に共感してうなずきながら、ついつい筆が走ってしまいました。

大きなビジョンや、具体的なチャレンジから得られた気付きを共有し、移動の進化を加速する。それが『Mobility Transformation』の目的です。EVシフトや再エネ普及がやや停滞気味に感じる日本の現状ではありますが、すでに「気が付いている」人はたくさんいて、いろんなチャレンジが同時多発的に進んでいるのを実感することができました。オンライン開催ではありましたが、今年も有意義な内容だった、というのが率直な感想です。

次回の開催にも期待したいと思います。

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 小泉進次郎環境大臣がおっしゃっています。
    >私が再エネを強調するのは、再エネが日本の自前のエネルギーだからです。今、化石燃料に依存していることで、1年間に17兆円を海外に支払っています。日本の中にある再エネのポテンシャルを活用すれば、間違いなく海外に対する支払いは減ります。そして、日本の歴史的命題でもある「エネルギー安全保障」に貢献できるのが再エネです。
    >すでに、世界では脱炭素に向けた大競争が起きていて、早く脱炭素の方向に舵を切ったところしかつかめない市場と技術、産業の覇権があります。ここに日本も勝負を挑まなければ、次世代の雇用や産業が作れないという危機感が大きいですね。

    そのとおり!よくぞ言った!(拍手)

    日本自前の再エネ=太陽光、風力、潮汐、海流、地熱、…

    先日もコメントしたように、
    平成の時代までは、再生可能エネルギーは高価なものと決め付けられてきましたが、技術開発や大量生産のお陰で、海外の例では再生可能エネルギーによる電力価格がkWh当たり10円を切る水準になってきています。
    仮に1kWh=15円になれば、BEVの電費は大体5km/kWh以上なので150円で50㎞以上走れるんですよ!

    さあ、旧い利権にいつまでも囚われてないで、日本は他国に率先して再エネを推進していこうではありませんか!

  2. 小泉大臣のセッションの様子からだと、EV補助金は持続しそうですね。V2H設備と併せ、補助金前提でアリア予約してるんで、補助金がなくなると、はしご外された感じで困ります。さらにV2Hを普及させると再生エネルギーに有利だと思うので、盛り上げのためにも、国は周知徹底をお願いしたいと思います。この時期に三菱電機がV2Hから撤退するなど、ニチコン独占で競争原理が働いてないことも問題です。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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